第7回BL小説大賞
選考概要
編集部内で大賞候補作としたのは、「毒を喰らわば皿まで」「第七王子、参る~転生したらおデブで引きこもりの王子になりさがっていました~」「アーケイディア ~死にたくないので英雄様を育てる事にします~」「半魔の竜騎士は、辺境伯に執着される」「荒野の魔人と偽りの花嫁」「絶対に運命から逃れたいΩと絶対に運命を捕まえたいαの攻防」「37歳のオッサンが戦場で女神と呼ばれる世界」「戦闘機乗りの劣情」「ほの明るいグレーに融ける」「彼岸の傾城傾国」の10作品。
その後の検討の結果、いずれの作品も筆力が高く、物語の構想もよく練られていたが、残念ながら商業的ニーズを満たした大賞にふさわしい作品は見当たらず、選考員の評価が高かった「アーケイディア ~死にたくないので英雄様を育てる事にします~」「半魔の竜騎士は、辺境伯に執着される」の2作を特別賞とすることにした。
その他、最終選考に残ったものの、惜しくも授賞に至らなかった作品を奨励賞とした。
「アーケイディア ~死にたくないので英雄様を育てる事にします~」は語り口が平易で読みやすく、主人公と未来の英雄との関係性の変化が丁寧に描かれていた。背景描写や心理描写も巧みで、最後まで読み手を飽きさせない、意欲作であった。
「半魔の竜騎士は、辺境伯に執着される」は主人公と、彼を憎みながらも執着する相手のせめぎ合いがドラマチックに描かれた作品。登場人物の会話のテンポがよく、地の文とのバランスもよく取れており、ファンタジーBLとしてストーリーの完成度も高かった。
また授賞には至らなかったが、それぞれに魅力があり、各選考員が推した作品もあった。
「第七王子、参る~転生したらおデブで引きこもりの王子になりさがっていました~」は異世界転生した主人公が堅物騎士から愛される作品。前世が元デザイナーという意外な設定を生かした世界観は、斬新で引き込まれる。一方でBL要素が薄く、賞への選出には至らなかった。
「荒野の魔人と偽りの花嫁」は魔人と身代わりの花嫁との偽りの結婚から始まる王道のBLストーリー。目新しさが足りない点はあるが、人気の設定や展開がふんだんに盛り込まれており、ふたりの心の交流や少年が積極的になっていく過程の描写は安心して楽しむことができた。
「絶対に運命から逃れたいΩと絶対に運命を捕まえたいαの攻防」は人気のあるオメガバースに独自の設定が加えられ、一際強い存在感を放っていた。主人公が葛藤する心の機微も繊細に描かれており、物語への没入感は高かったが、もう少し世界の広がりがほしかった。
なし
毒を喰らわば皿まで
アーケイディア 〜死にたくないので英雄様を育てる事にします〜
未来の英雄を育てるため主人公が奮闘するという設定がユニークで、面白いと感じました。また、快活で少し不器用なリアンが可愛らしく、応援したくなるキャラクターで、未来の英雄アルフレドとの関係がどのように変わっていくのかと、先を読み進める手が止まりません。設定や世界観も緻密で非常に読み応えがありました。
半魔の竜騎士は、辺境伯に執着される
別れた恋人との再会から始まるラブストーリーという、王道かつ人気の要素を踏まえた展開と、主人公が半魔であり竜の言葉がわかるという独自性の強いファンタジー設定が魅力的です。主人公たちはもちろん、彼らを取り巻くキャラクターが生き生きと描かれ、二人の恋路をより盛り上げてぐっと物語に引き込まれました。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
奨励賞
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第七王子、参る~転生したらおデブで引きこもりの王子になりさがっていました~ (真) <4 位>
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荒野の魔人と偽りの花嫁 ( 高井うしお ) <25 位>
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。異世界転生して悪役令嬢の父親になったという、冒頭シーンからまず引き込まれます。また主人公に加え、決して善人ではない、弱点を持ったそれぞれのキャラクターに人間的な魅力を感じました。さらに、練りこまれた緻密な設定が目を引き、最後まで読者を飽きさせない展開からも、筆力の高さが伺える作品でした。