第17回絵本大賞
選考概要
前回の応募数を上回り、全870作品が集まった第17回絵本大賞。親子で楽しめるクスッと笑える作品から、ユニークな設定で読者を引き込む作品まで、個性的な絵本が多く集まった。
一次選考を通過した31作品の中から、編集部による検討を経て大賞候補となったのは「フルーツパンダ」「カチカチバター」「はいたつだぞう」「オバケのケ」「わたし、きれい?」「ぼくはごはんゆうしゃ」「シリウスまでさんぽ」「ミスターパパのめいろ」「みどりのかみのブナ」の9作品。
いずれも工夫を感じる意欲作ではあったものの、ストーリー、画力ともに突出した作品はなく、残念ながら『大賞』は該当作なしとなった。これらの候補作の中で、ポイント最多であり、カラフルで食いしん坊なパンダが可愛い「フルーツパンダ」に『読者賞』を授与。テーマ別賞では、いろいろなバターたちをキュートに表現した「カチカチバター」を『キャラクター絵本賞』とした。お仕事を頑張るゾウの活躍を楽しく読み上げた「はいたつだぞう」は、該当するテーマ別賞がなかったため『読み聞かせ動画賞』を新設。現実世界に様々な手法で紛れ込むオバケを描く「オバケのケ」を『アイデア絵本賞』、怖いながらもマスクの下の顔が気になる「わたし、きれい?」を『ちょっと怖い絵本賞』、ダイナミックな構図が目を引く「ミスターパパのめいろ」を『親子で遊べる絵本賞』に選出。最終選考に残ったものの、惜しくも受賞しなかった作品については、奨励賞とした。
「フルーツパンダ」は、フルーツを食べると色が変わってしまうパンダのお話。パンダのコロコロと変わる表情が色鮮やかに描かれており、魅力的だった。
「カチカチバター」は、固くて溶けないバターを主人公にしたお話。キャラクターごとに個性が感じられ、カチカチバターとちいさなバターの掛け合いには心が温まった。
「はいたつだぞう」は、ゾウが様々な動物たちに荷物を届けるお話。読み聞かせ動画というスタイルが新しく、荷物と引き換えにもらえるハンコのデザインも秀逸だった。
「オバケのケ」は、いろいろなところに潜むオバケを見つけるお話。こっそり隠れているオバケたちの姿が微笑ましく、オチまで含めて楽しめた。
「わたし、きれい?」は、口裂け女の都市伝説をモチーフにしたお話。ページをめくるごとに様々な顔が現れ、読者を飽きさせない工夫が感じられた。
「ミスターパパのめいろ」は、パパが発明した迷路に吸い込まれてしまった女の子、コンブが冒険するお話。舞台ごとに多様な迷路を用意し、親子で楽しめる作品に仕上がっている。
今年はクオリティの安定した作品が多く集まったが、一方、突き抜けたインパクトのある作品が少なかった。今後は、既存の型に捉われない、自由な発想を活かした設定やよりアイデアに富んだ作品が増えることを期待したい。
なし
フルーツパンダ
カチカチバター
切り絵のような温かみのある絵柄で描かれるバターたちが可愛らしく、読んでいて癒やされました。終盤のカチカチバターと小さなバターの会話は、優しさや思いやりの重要さが伝わってくる内容だったと感じます。
はいたつだぞう
読み聞かせ動画という形式で投稿された異色作でしたが、 動物の個性に合わせて住居やハンコの押し方が工夫されており、作品の世界観に引き込まれました。また、主人公であるぞうすけのお届け方法がダイナミックで、ラストまで楽しく読めました。
オバケのケ
日常生活の様々な場面によく見るとオバケがいるというアイデアは、大人にも子どもにも親しみやすい発想でした。「オバケなんだねえ」という言葉の繰り返しも楽しく、声に出して読んでみたくなるお話になっていました。
わたし、きれい?
口裂け女のマスクの下が、実は他の動物の顔だったら……というコンセプトが新しく、怖さと楽しさ、ユーモアを兼ね揃えています。ゾクゾクしつつもページをめくる手が止まらなくなってしまう作品でした。
ミスターパパのめいろ
主人公の冒険の様子が終始楽しそうに描かれており、グイグイ読ませる勢いがある作品だと感じました。ストーリーの展開と共に、読者が様々な迷路遊びを楽しめる仕組みになっているところも魅力的でした。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。フルーツを頬張るパンダが愛くるしく描かれています。食べるものによって色が変わるという王道の設定をしっかりと表現した点が、読者から支持を集めたのではないでしょうか。