第9回ドリーム小説大賞
選考概要
編集部内で大賞候補作としたのは、「高校生なのに娘ができちゃった!?」「友達はエアコンお化け〈社内デザイナー奮闘記〉」「着ぐるみ若葉におまかせあれ! ~がけっぷち商店街からはじまる、女子高生と着ぐるみの青春物語~」「アルプスのおでん屋」「裏垢、つくってみた。」「月の香り」「探偵は他人の夢を覗き視て傍観する。」「サチスイ」「ワスレナグサ ─私を忘れないで─」「ウラオモテ」「私が私で彼が彼であるということ」「好きな人がいることにした。」の12作品。
最終選考の結果、いずれも大賞には一歩及ばないとし、評価が分かれた「サチスイ」と「好きな人がいることにした。」の2作を特別賞に選出することとした。
「サチスイ」は、幸高校吹奏楽部の活動模様が各メンバーの視点から描かれた青春群像劇。根強く人気のある吹奏楽部という設定をベースに、部活の様子を丁寧にわかりやすく描いている点が評価された。読者に自分の青春時代を想起させるようなリアリティがあった反面、キャラの個性とドラマ性にやや欠けるのが残念だった。
「好きな人がいることにした。」は、交通事故に遭ってしまった少女と、その少女の前に突如現れた『声だけしか聞こえない』少年との恋模様を描いた、甘く切ない青春ストーリー。女子中高生読者に好まれそうな設定と雰囲気のある繊細な文体がとても魅力的だったが、ラストに至るまでの展開にもう一工夫欲しかった。
なし
未来の貴方にさよならの花束を
サチスイ
幸高校吹奏楽部のみんなが一つの目標に向かって努力する姿に心を打たれる作品でした。メンバーそれぞれの心情が繊細に描かれており、思わず自分の学生時代と重ねてしまいます。文章も平易でわかりやすく、物語の世界にすっと入り込むことができました。
好きな人がいることにした。
非日常的なモチーフをベースにした甘酸っぱい青春恋愛が、巧みな構成で描かれていました。特に作中にちりばめられた伏線の回収が見事で、読後の爽快感がとても魅力的です。また、主人公の心情描写のみならず、場面描写も緻密で、筆力の高さが窺えました。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。個性的な登場人物達による青春模様が巧みに描き出された作品でした。少し冷めた視点を持つ主人公が、奔放なヒロインと仲を深めていく展開に、胸がきゅんとした読者も多かったのではないでしょうか。