第10回ファンタジー小説大賞
選考概要
1831作という過去最高の応募数となった今年、編集部内で一次選考において大賞候補としたのは、「いずれ最強の錬金術師?」「超越者となったおっさんはマイペースに異世界を散策する」「緑の魔法と香りの使い手 ~女神からハーブ魔法を貰って転生した女子大生は異世界で喫茶店を開きたい」「転生令嬢は庶民の味に飢えている」「じい様が行く」「公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印をおされましたが今日も元気に生きてます!」「異世界隠密冒険記」「異世界召喚、神様に加護2人分貰いました」「異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん (森でのんびりさせていただきます)」「この世界の平均寿命を頑張って伸ばします。」「いや、自由に生きろって言われても。」「異世界で怠惰な田舎ライフ。」「勇者として異世界転移したが、呆気なく死にました。」「電気工が異世界に行ったら」「世話焼き男の物作りスローライフ」「魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます」「異世界転移はペットを連れて☆チートな守護者の異世界ライフ」「異世界に転生したら狼に拾われました。」「ディファレント ―警視庁公安部D捜査班―」の19作品。
定番のチート冒険モノやユニーク職業モノ、こつこつ生産系だけでなく、愛らしいもふもふのマスコットが登場するほのぼの日常系など、近年の読者ニーズをしっかりおさえた作品が集まった。また、いわゆる「おっさん」を主人公にした人気設定も健在で、更にはそこからの派生モノとして、おじいさんやおばあさんをチート主人公にするというインパクトの強い作品も見られた。
その後、最終選考で大賞候補として残ったのは、「いずれ最強の錬金術師?」「超越者となったおっさんはマイペースに異世界を散策する」「緑の魔法と香りの使い手 ~女神からハーブ魔法を貰って転生した女子大生は異世界で喫茶店を開きたい」「転生令嬢は庶民の味に飢えている」「じい様が行く」「異世界隠密冒険記」「異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん (森でのんびりさせていただきます)」「異世界召喚、神様に加護2人分貰いました」「公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印をおされましたが今日も元気に生きてます!」「異世界で怠惰な田舎ライフ。」の10作品。
これらの候補作品の中で、編集部内でもっとも高い評価を集めた「超越者となったおっさんはマイペースに異世界を散策する」を大賞に選出した。また、圧倒的なポイントで読者賞に決定した「いずれ最強の錬金術師?」も、大賞授賞作に次ぐ編集部の支持を集め、通常の読者賞の賞金にプラスして評価することとなった。また、大賞には一歩及ばずながらも非常に優れた作品であった「公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印をおされましたが今日も元気に生きてます!」「異世界召喚、神様に加護2人分貰いました」の2作品を優秀賞に選出し、「緑の魔法と香りの使い手 ~女神からハーブ魔法を貰って転生した女子大生は異世界で喫茶店を開きたい」「異世界で怠惰な田舎ライフ。」の2作品を特別賞とした。
「超越者となったおっさんはマイペースに異世界を散策する」は、丁寧な物腰ながらもノリの良い主人公をはじめとして、旅に同行する妖精や冒険者、主人公と同じく日本から召喚された勇者と、どのキャラクターもユニークで魅力的だった。キャラクター同士のかけあいのテンポの良さと、ほのぼのとしつつも小気味良く展開するストーリーが高い評価を集めた。
「いずれ最強の錬金術師?」は、ウェブ系生産ファンタジーの王道とも言えるストーリーながらも、登場するスキルや主人公の作り出すアイテムによって、オリジナリティのある展開となっていた。また、シンプルかつ分かりやすいチートや魅力的なハーレム要員など、読者のツボをおさえている点にも票が集まった。
「公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印をおされましたが今日も元気に生きてます!」は、跡継ぎ失格でもお気楽な主人公をはじめとして、キャラクターに勢いのある作品だった。コメディ基調でありながらもシリアスなパートも組み込まれており、起伏に富んだストーリーの構成力とそれを支える筆力が高く評価された。
「異世界召喚、神様に加護2人分貰いました」は、主人公が素直で好感の持てるキャラクターであることに加えて、三者三様に個性溢れる従魔たちとのやりとりがテンポ良く軽妙であることから、男女問わず幅広い層が楽しめる話に仕上がっていた。
「緑の魔法と香りの使い手 ~女神からハーブ魔法を貰って転生した女子大生は異世界で喫茶店を開きたい」は、メインとなる喫茶店のストーリーだけでなく、もふもふのペット、薬師、ダンジョンでの冒険と、多彩な要素と展開を描く筆力の高さが評価された。
「異世界で怠惰な田舎ライフ。」は、田舎でのどかに暮らしたい主人公の怠惰な性格と、転生時に手に入れたチートスキルのせいでいつの間にかトラブルに巻き込まれていくストーリーのミスマッチが生み出すギャップが、作品の大きな魅力となっていた。
また授賞には至らなかったが、「転生令嬢は庶民の味に飢えている」は、食欲を刺激する丁寧な料理描写のみならず、個性的な聖獣たちとの契約や、家族や友人とのコミカルなやり取りまで、バランスよく書き上げられており、構成の巧みさが高く評価された。
「じい様が行く」は、異世界に転生した主人公がゲーマーのおじいちゃん、というユニークさが目を引いた作品。旅に同行するスライムの幼女が愛らしく、またほのぼのしつつもチートを駆使してテンポ良く展開するストーリーに、ぐっと引きこまれた。
「異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん (森でのんびりさせていただきます)」は、異世界に飛ばされてチートな力を手に入れたおばあちゃんと、そんな彼女のデタラメっぷりに振り回されてしまう周囲の人間との、ユーモラスなやり取りが人気を集めた。
「異世界隠密冒険記」は、読者ニーズの高い王道の異世界転移系ファンタジー。スキルのツリー構造をはじめとしてキャラクターや世界観の設定がしっかりと練られており、クールな主人公が強敵相手に無双していく展開には爽快感があった。
また大賞候補作あるいはそこからは漏れてしまった作品の中にも、是非出版化を進めたい、出版化の道を探りたい魅力のある作品が数多くあり、順次個別に連絡をしていく予定である。
超越者となったおっさんはマイペースに異世界を散策する
いずれ最強の錬金術師?
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。WEB上で人気のある王道展開ながらも、スキルの設定が非常によく練られており、それが物語の展開に個性を与えていました。全体として古き良きRPGゲームを彷彿させる雰囲気が漂い、登場人物たちと共にゆったりとした旅をしているような気分を味わえる作品になっていると感じます。
異世界召喚、神様に加護2人分貰いました
従魔とのやり取りが愛らしくて魅力的でした。進化するにつれて喋り方も変わってますます個性的になっていき、従えているというよりも仲間になっていくように感じられて、楽しく読むことができました。また、主人公をはじめとしたキャラクターたちが、思いやりのある素直な性格で、大変好感が持てました。
公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印をおされましたが今日も元気に生きてます!
個性豊かなキャラクターたちが生き生きと描かれ、メリハリのきいたストーリーと勢いある展開が魅力的な作品でした。本来持って生まれるはずだったチート能力を取り戻した主人公が、周囲から認められていく過程には爽快感があります。思わずクスリとしてしまう小ネタもちりばめられており、楽しく読み進めることができました。
緑の魔法と香りの使い手~女神からハーブ魔法を貰って転生した女子大生は異世界で喫茶店を開きたい
ひょんなことから異世界転生した美鈴が、冒険者や料理人などいろいろな経験を経て、目標に向かっていく様子が丁寧に描かれた作品でした。異世界での家族となるシルバーウルフのぽちをはじめとして、冒険者や町の商人、貴族など、たくさんのキャラクターたちが彼女の力となる点も魅力的だと思います。
異世界で怠惰な田舎ライフ。
主人公の怠惰なキャラクターと練り込まれたスキル設定が上手く組み合わされている点に、大きな魅力を感じました。また、ユーリとローラの会話を通じたほのぼのとした雰囲気と穏やかな田舎の情景描写による、のどかなスローライフ感は、最近の読者ニーズにもよくマッチしていると思います。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
物腰の柔らかいマイペースな主人公ヒイロをはじめとして、酒飲みな冒険者バーラットやイタズラ好きな妖精ニーアなど、ユニークなキャラクターが非常に魅力的で、そのやり取りにもクスリと笑えるポイントがふんだんに盛り込まれていました。全体的にほのぼのしたストーリーながらもチートを駆使したバトルシーンは小気味良く、また王道を踏まえつつもオリジナリティのある展開で、終始ワクワクしながら読み進められる作品でした。