第7回ドリーム小説大賞
選考概要
編集部内で大賞候補作としたのは、「訛り雀がチュンと鳴く」「キミを手放す夏休み~流しそうめんに思い出つめて~」「俺は改造人間」「さぼてんと行こう」「おひさまのあたる部屋」「DOOR ――道を開く者――」「霧原骨董店」「まこちゃん街歩き」の8作品。
選考の結果、いずれもそのまま出版化するのは難しいと考え、編集部内で支持の高かった「訛り雀がチュンと鳴く」を大賞に選出することとした。
「訛り雀がチュンと鳴く」は、幼い頃に主人公が死なせてしまった雀のチュンが、妖怪として現れたことから始まる物語。チュンをはじめとしたキャラクターが個性的で、高い文章力によって、作品の奥深さと軽妙さがバランス良く描き出されている点が高評価につながった。
「さぼてんと行こう」は、母親離れできない夫との関係を主人公が解消しようとするストーリー。リアリティがあり読者を引き込む力を持った作品だが、心情描写やさぼてんの描き方に物足りなさがあった。
「DOOR ――道を開く者――」は、死者を導く案内人という商業的に受け入れられやすい主人公の設定を評価。ただ、各エピソードがあっさりとして奥行きに欠ける点がマイナスとなった。
「キミを手放す夏休み~流しそうめんに思い出つめて~」は、共感しやすいテーマで登場人物全員に好感が持てる作品。本作ならではの新しい視点や切り口があれば、なお良かった。
「霧原骨董店」は舞台設定は良いものの、登場人物やストーリーにインパクトが不足しているのが惜しかった。
「まこちゃん街歩き」は日常からの再発見というテーマ設定でうまくまとめられた作品だが、登場人物の心情表現にもうひと工夫あると良かった。
「おひさまのあたる部屋」は舞台設定やキャラクターは良かったものの、感情の機微を描ききれておらず、作品の味わいに物足りなさが残った。
「俺は改造人間」は悪の組織の怪人に改造されてしまった父親の奮闘コメディ。斬新な設定ではあるが、それだけに読者を選んでしまうのが惜しかった。
訛り雀がチュンと鳴く
ふろんてぃあーず ~バケツさんの細かめな開拓記~
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。地道な生産を楽しみながらお客さんを大切にする主人公の日常が温かい筆致で描かれており、親しみを感じられました。プレイヤー同士のちょっとした揉め事や、スキルアップしていく主人公の様子が物語のアクセントになっていて、気になる展開に多くの読者が引きつけられたのではないでしょうか。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
心優しい主人公の悠護、独特の訛りが可愛らしいチュンをはじめ、キャラクターの造形が見事でした。加えて、冒頭の弁当消失事件や、おじいさんの孫探しなど、複数の伏線をきちんと回収しながら物語を展開するところには構成力の高さを感じます。公園でチュンが本心を悠護に告白して成仏するクライマックスシーンの描写も素晴らしく、二人の友情に心を打たれました。