第13回恋愛小説大賞
選考概要
前回の応募数を上回り、過去最大の規模となった第13回恋愛小説大賞。全2005作品の中から、編集部内で最終選考において大賞候補としたのは、「出涸らし令嬢は今日も生きる!」「妹ばかり可愛がられた伯爵令嬢、妹の身代わりにされ残虐非道な冷血公爵の嫁となる」「モブなのに巻き込まれています~王子の胃袋を掴んだらしい~」「乙女ゲームの攻略対象者筆頭に溺愛されています。モブですらないのにナゼ?」「【R18】お見合い相手は無愛想な警察官僚でした~誤解まみれの溺愛婚~」「惨めに捨てられた悪の伯爵夫人ですがなぜか友人の息子である王子に溺愛されています」「女官になるはずだった妃」「精霊守りの薬士令嬢は、婚約破棄を突きつけられたようです」「勝手に婚約破棄されてた挙句完全に包囲されてて逃げられないんだけど」「地味姫と黒猫の、円満な婚約破棄」「フラグを折ったら溺愛されました」「悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました」「金と銀の婚礼-臆病な聖女と初恋の王子様-」「悪役令嬢のおかあさま」「【完結】兄の遺言~それでも抱いてくれますか?~【R18】」「人質王女の恋」「なんで婚約破棄できないの?!」「茉莉花の蕾は後宮で花開く~妃に選ばれた理由なんて私が一番知りたい~」「魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました」「たとえ好きだと言えなくても」「冤罪をかけられ国外追放された令嬢は、隣国の皇帝に拾われました」の21作品。
最近のウェブ小説で人気を誇る悪役令嬢系の作品に加えて、婚約破棄や悪役令嬢に「モブ」を組み合わせた恋愛ファンタジー作品も目立ち、新たな流行の兆しが感じられた。また、今回編集部賞として新設したジャンルの中華・後宮ラブファンタジー、胸がときめく甘い現代恋愛小説など、さまざまなテイストのラブストーリーが集まった。
これらの候補作の中で、編集部内で最も高い評価を集めた「妹ばかり可愛がられた伯爵令嬢、妹の身代わりにされ残虐非道な冷血公爵の嫁となる」を大賞に選出、大賞に次いで高評価を得た「モブなのに巻き込まれています~王子の胃袋を掴んだらしい~」「乙女ゲームの攻略対象者筆頭に溺愛されています。モブですらないのにナゼ?」の2作品を優秀賞に選出した。さらに「【R18】お見合い相手は無愛想な警察官僚でした~誤解まみれの溺愛婚~」をエタニティ賞、「茉莉花の蕾は後宮で花開く~妃に選ばれた理由なんて私が一番知りたい~」を中華・後宮ラブ部門として編集部賞とした。
また、最終選考に残ったものの、惜しくも授賞に至らなかった作品を奨励賞とした。
「妹ばかり可愛がられた伯爵令嬢、妹の身代わりにされ残虐非道な冷血公爵の嫁となる」は、虐げられてきた令嬢の身代わり結婚をテーマにした恋愛ファンタジー。健気で天然なヒロインと冷血公爵のやりとりがユーモアたっぷりに綴られていて、二人の関係性の変化が巧みに描かれていた。小説としての完成度も高く、作者の筆力の高さが窺える作品だった。
「乙女ゲームの攻略対象者筆頭に溺愛されています。モブですらないのにナゼ?」は、おばちゃんだった前世の記憶を持つヒロインと、乙女ゲームの攻略対象者である第二王子との恋愛を描いた作品。新たな家族を作るべく自立して生きるヒロインに加え、サブキャラクターたちも個性的で好感が持てた。
「モブなのに巻き込まれています~王子の胃袋を掴んだらしい~」は、乙女ゲーム世界のモブに転生した主人公が、友人であるゲームヒロインの行動を上手にたしなめつつ、食文化を開拓していくファンタジー。食欲をそそる料理シーンの描写が見事で、読者を飽きさせない、オリジナリティ溢れる展開が魅力的だった。
「【R18】お見合い相手は無愛想な警察官僚でした~誤解まみれの溺愛婚~」は、最悪な出会い方をした二人が、結婚生活を通して歩み寄っていく恋物語。溺愛されていることに気がつかないヒロインと、不器用なヒーローのすれ違いに、じれじれ・ドキドキしながら読み進めることができる良作だった。
「茉莉花の蕾は後宮で花開く~妃に選ばれた理由なんて私が一番知りたい~」は、女官の登用試験に訪れたヒロインが、ひょんなことから皇帝に見初められる中華ラブファンタジー。家族から虐げられてきたヒロインが健気に奮闘する姿がいじらしく、またあやかしの要素も盛り込まれるなど工夫が凝らされていた。
第13回を迎えた恋愛小説大賞。2000を超える作品が集まったこともさることながら、質の高い人気作が大幅に増加し、飛躍の年となった。
大賞候補作に加え、それ以外にも是非出版化を進めたい、あるいは出版化の道を探りたい、魅力たっぷりな作品が数多くあり、個別に連絡をしていく予定である。
妹ばかり可愛がられた伯爵令嬢、妹の身代わりにされ残虐非道な冷血公爵の嫁となる
出涸らし令嬢は今日も生きる!
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。凛とした強さを持つヒロインが生き生きと描かれていて内心の鋭いツッコミも小気味よく感じられました。各シーンの緊張と緩和のバランスもよく、先の展開が気になる素敵な作品でした。
モブなのに巻き込まれています〜王子の胃袋を掴んだらしい〜
人気の設定を上手に掛け合わせ、オリジナリティに溢れた展開を生み出した、非常に優れた作品でした。料理シーンの描写も丁寧で、選考員一同、思わずうどんを食べたくなったほどです。キャラクターも非常に親しみやすく、続きがとても楽しみです。
乙女ゲームの攻略対象者筆頭に溺愛されています。モブですらないのにナゼ?
前世が喪女のおばちゃんであるクレアがその逞しさでグイグイとライオネルを引っ張る様が面白く夢中で拝読させていただきました。そのほかのキャラクターもみな、どことなくユーモアがありクレアとのやり取りもクスッと笑え、読者の人気も頷ける作品でした。
【R18】お見合い相手は無愛想な警察官僚でした〜誤解まみれの溺愛婚〜
お見合い結婚から始まるすれ違いと溺愛という、読者の読みたいポイントがしっかりと押さえられている作品でした。ほのぼのとした日々の中に起こる事件もバランスよく描けていて、最後までふたりを見守りたくなりました。
茉莉花の蕾は後宮で花開く 〜妃に選ばれた理由なんて私が一番知りたい〜
虐げられながらも、くじけず前向きに頑張る主人公と、俺様ではあるけれどまっすぐな皇帝の軽妙なかけあいが微笑ましい良作でした。人気の中華・後宮の設定に加えて、あやかしやもふもふ要素も物語の世界観に自然に溶け込み、筆力の高さが窺えました。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
虐げられた令嬢の身代わり結婚という王道テーマが高い筆力で丁寧に綴られていて、非常に読者を惹きつける物語となっていました。ちょっと鈍感で可愛らしいアネッサと、彼女に振り回される公爵のやりとりや、二人の心が近づいていく過程も大変魅力的でした。