第12回絵本・児童書大賞
第11回絵本・児童書大賞
選考概要
応募数が過去最高となる610作にのぼり、2017年にアルファポリスにてオープンした絵本投稿サイト「絵本ひろば」の影響が強く感じられた、第11回絵本・児童書大賞。
大賞候補作となったのは、「魔法使いアルル」「ろぼっとはーと」「【改定版】ありがとうのさんぽ」「ぼくたちは まっているんだ」「ねんねの おと」「おばあさんとくろねこおこげ」「パンくんのパンケーキ」「ひみつぎんこう」「いっしょにはいろ」「山の中お化け病院」「ひっこんだ」「あしたは さんまたいかい」「おやすみ」「せかいいち大きなへび」「とべないカエルのカール」の15作。
最終選考の結果、抜きん出た作品がなかったために賞金50万円とした大賞の該当作はなしとし、その代わり賞を増やし賞金を分け合うこととした。まず、大賞には一歩及ばずながらも編集部からの評価が高かった「ぼくたちは まっているんだ」「ひみつぎんこう」の2作品を優秀賞、そして「ねんねの おと」を今年新設した寝かしつけ絵本賞に選出した。また、優秀賞の2作品に次ぐ評価だった「パンくんのパンケーキ」「いっしょにはいろ」には特別賞を授与。さらに惜しい点がありながらもアイデアあふれる優れた作品であった「山の中お化け病院」「ひっこんだ」の2作品にはアイデア賞を新設し、授賞することを決定した。残念ながら、こんな絵本見たことない!賞にふさわしい作品はなしとし、その他、最終選考に残ったものの惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。
「ぼくたちは まっているんだ」は、水族館でも隠れた人気者であるチンアナゴとニシキアナゴを主役にした作品。子供目線のテーマを選んだ着目点と、海の世界と生き物をセンスのいい構図と色使いで描く巧みさ、またページをめくるのが楽しい展開が高く評価された。
「ひみつぎんこう」は、秘密を預ける銀行というユニークな設定の作品。温かみのある絵柄と短い文章で不思議な物語が上手く纏められている点に加え、登場人物達の色々な秘密にもユーモアが利いており、その発想力を支持する意見も多かった。
「ねんねの おと」は、「夜に聞こえてくる音」をテーマにした、子ども心をくすぐる絵本。やわらかいタッチの絵と、ゆったりしたリズムの繰り返しの内容が、まさに寝かしつけにふさわしいと好評だった。
「いっしょにはいろ」は、なぜかカバと一緒にお風呂に入ることになった女の子のシュールなお話。一見不思議な世界観であるはずが、味わいのある絵と文章の巧みさが手伝って、とてもハートフルな物語として成り立っていた。
「パンくんのパンケーキ」は、ゾウのパンくんの家を次々と友達が訪れてくる物語。ページをめくるたびに増えていく料理と友達の絵が、絵本の定番である繰り返しの展開のシンプルかつ強力な魅力をしっかりと演出していた。
「山の中お化け病院」は、お化けのための病院のお話。いかにも子供受けする設定や、キャラクターがお化けであっても怖がらず楽しめる愉快な文章に高いセンスを感じる一方で、絵の仕上がりが今一歩という意見が多かった。
「ひっこんだ」は、大きな音に驚いた色々な登場人物がきゅっと縮まってしまうお話。思いもよらぬ「ひっこんだ」姿の荒唐無稽さがウリながら、その魅力を最大限に生かすべき絵にやや粗さが目立ってしまったのが残念だった。
なし
魔法使いアルル
ぼくたちは まっているんだ
チンアナゴとニシキアナゴという意外な生き物を主役に据えながら、デフォルメを利かせてしっかりと魅力的に描き、圧巻の構図や期待の膨らむ展開で楽しませてくれる作品でした。テーマ選びから画面構成まで、総合的に高いレベルで仕上がっていたと感じました。
ひみつぎんこう
秘密を銀行に預けるという発想が面白く、預けにきた人々の秘密の内容もくすっと笑えるユニークなものでした。秘密があぶくになって飛んでいき、ばれてしまうという表現も可愛らしいと思います。ストーリー、イラストともに完成度の高い作品だと感じました。
ねんねの おと
描かれている動物たちが可愛らしく、とても魅力的な作品でした。短い言葉でつづられる物語は、おだやかでありながら温かく、まさに子どもたちを寝かしつけるときにふさわしい作品だと思います。
なし
パンくんのパンケーキ
ぞうのパンくんのもとにたくさんの動物達が訪れ、お友達が増えていく様子が細かく描かれていたのが魅力的でした。いつになったらパンケーキを食べられるんだろうと、わくわくしながら作品の世界に引き込まれました。
いっしょにはいろ
お風呂場から出ていったと思ったらまた戻ってくるカバの姿がとてもユーモラスに描かれていました。女の子が、何かとカバの面倒を見てあげる様子も微笑ましく、子供と一緒に楽しめる作品だと思います。
山の中お化け病院
お化けが通う病院が魅力たっぷりに描かれていて、ワクワクしながらページをめくることができました。出てくるお化けたちは不気味ながらも親しみやすく、またオチも秀逸なストーリーだと感じました。
ひっこんだ
亀やかたつむりだけでなく、犬の鼻やキリンの首などが縮むさまは、ユーモラスなイラストとあいまって子供達の笑いを誘うかと思います。柔軟な発想を盛り込んだ、アイデアの光る作品だと感じました。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。旅と冒険の中で成長していく主人公アルルの姿が、とても綺麗な文体で表現されていると思います。王道のファンタジックな世界観の魅力が、多くの読者を惹き付けたのではないでしょうか。