キャラ文芸 退職小説一覧

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俺は大阪府警察本部捜査一課長を最後に警察を勇退した。 警察官時代は「鬼泣かせ」や「閻魔」などの異名を持ち、捜査本部が担当する凶悪事件にあたってきた。 殺人犯や放火魔、裏社会で生きる者たちや、国家転覆を図ろうとする輩とも対峙したことがある。 頭の先から尾っぽの先まで警察という餡が詰まった俺が、第二の人生の職に選んだのは「笑い屋」だ。 笑い屋というのは、笑わせ屋とは違う。 依頼者を笑わせるのではなく、俺が笑うのだ。 つまり俺の笑顔を売っていて、俺の笑いが商品だ。 「スマイル0円」というのがあるが、あれの有料版ってところか。 そんなの需要があるのかと思うかもしれないが、テレビ番組で誘い笑いをしたり、お笑いショーの「サクラ」の依頼があったり、細々とやっている。 俺の顔を見たことがある奴なら、さらに疑問に思うだろう。 その顔で、笑って金がもらえるのかと。 確かに、俺の小学生時代のあだ名は「殺し屋」だったし、中学からは「組長」になった。 強面の王道を行っているといえばそうだろう。 年を重ね、それに名誉の負傷もあって、俺の顔には右の目元に4センチ程度の切り傷があり、眉間に深い堀もできた。 電車や飲食店では、俺の周りだけスペースができることも多い。 それでも依頼はやってくる。 息子の漫才を観て笑ってほしい。 夫の葬儀で笑ってほしい。 不倫の記者会見で笑ってほしい。 警察官時代には、笑いから最も遠いところにいた俺が、こんな依頼をどうするか。 いや、ちゃんと依頼を全うしないとおまんま食い上げだ。 まぁ、興味があったら読んでくれや。
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文字数 13,921 最終更新日 2024.09.01 登録日 2024.08.25
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