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第三章 和平交渉への旅編

第六十一話 王都コーネリアの城下街…

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 「あぁ…着いてしまったな。」

 俺が転移したのは王都コーネリアの王城前ではなく、城門の外側の騎士達がいない場所だった。

 


 何故そんな場所に来たのかというと…女性達3人が王都コーネリアの街を見てみたいという話だった。

 考えてみると…まず俺は城門から少し離れた場所で幹部のジャイアントオーガを討伐した後に騎士団に捕まって連行されている時に、夜の城下街を歩いて城まで行ったがちゃんとは見てはいない。

 アヴェルユージェンがミンフィーリアを王都コーネリアに連れて来た時は、ほとんど王城の中で街には来ていない。

 レオーネは自国以外に他大陸の他種族の街を歩くのは初めてで、リルーシャは城の中の生活だけで自国の街に行くことすら禁止されていた。

 なので俺達はゆっくり街を見て回る様な事はできなかった。

 ならばと思って…俺とアヴェルユージェンは、女性達の願いを叶える事にした。

 俺達は城門から街に入った。

 城までの道には色んな店が並んでいたのだった…こんな感じに。

 


 「初めて来てみたが…結構色々な店があるんだな。」

 「私は他の街の中には入った事はありましたが、王都コーネリアは初めてですね。」

 女性達は各店の商品を眺めながら移動していた。

 すると女性達を通行人が物珍しそうに見ていたのだった。

 「あーやっぱ目立つな。」

 「ですね、ニンフ族と獣人族と龍人族ですからねぇ…」

 俺とアヴェルユージェンは彼女達に離れない様に一緒に行動した。

 流石に一緒にいればナンパしてくる様なやつはいないだろうからだ。

 「旦那様、この装飾品のネックレス…素敵ですね!」

 「どれどれ…?」

 2人が話している装飾品のネックレスを見てみた。

 すると飾りっ気や細かい細工のない一般的な平民が身に付ける様なネックレスだった。

 「この世界の装飾品レベルって…この程度か。」

 「いえ、十分すごいと思いますが?」

 俺が地球にいた頃は刀鍛冶職人の祖父の元で調理器具や農具を作る以外に、銀を加工してアクセサリーなどを作っていた。

 平和な時代に刀はあまり売れないし、かと言って調理器具や農具だってそれほど売れるわけではない。

 家に持ち込まれるのは修理や補修が主で、それ以外の収入品として指輪やブレスレットなどのアクセサリーを作って売っていた。

 ただ…この世界だったらこの程度の物は売れるだろうけど、地球ではこんな地味な物はまず売れ残る。

 細かい装飾や派手な物でもない限り売れる事はなかった。

 俺は以前牢屋に入っていた時に、石から銀や金を生み出す事が出来たので、それらを加工して地球のアクセサリーレベルの物を大量に作り出していた。

 「ウチの商品にケチ付けるのか?」

 声がした方を見ると、ガタイの大きい中年くらいの店主が俺の事を睨んできた。

 「別にケチを付けるつもりはないさ。 ただこの程度の物は大した事がないレベルだと思っただけだ。」

 「それをケチを付けているというんだ!」

 俺は収納魔法から暇潰しで作ったアクセサリー30点をテーブルの上に並べた。

 「これらは制作時間が1時間程度で、これは少し細かったので2時間半程度掛かったな。」

 「何だと? こんなに細かい装飾を施して…1日掛からなかったというのか⁉︎」

 「この程度の物ならな…これより細工の細かい物なら時間はかなり掛かるだろうけど、それでも1日は掛からないさ。」

 店主はネックレスの裏に名前を彫ってある物だったが、俺が作ったのは指輪の表面と内側に文字を刻んだ物だった。

 スキルが影響しているのか、思ったよりも早く完成していた。

 「確かに…こんな装飾がしてある品を作れる奴なら、ウチの商品をケチ付けるのも頷ける。 こんな細かい装飾はドワーフでも不可能だろう。」

 俺はアクセサリーを仕舞おうとすると店主が言って来た。

 「これらの品だが…うちで買い取らせてくれないか?」

 「別に売るのは構わないが、全てを買い取れる金はあるのか?」

 「値段にもよるが…」

 「まさか買い取ってから自分が作ったと言って売りに出す気じゃねぇだろうな?」

 「そんな事はしない! これらを見て研究しようと思っただけだ。」

 俺はアクセサリーの中から指輪を店主に渡した。

 その指輪は、中心のルビーを両側に彫られた女神が手を添えている様な指輪だった。

 「これと同じ物を作ってみろ、全く同じ物が出来たのなら…残りのアクセサリーはタダでやるよ。」

 「かなり日数が掛かってしまうが…良いか?」

 「俺達も旅の途中で立ち寄ったのでな、次にまた来るのは大分先になるので…その時に確認しに来るからその時に見せてくれ。」

 「分かった! それで名前を聞いておきたいんだが?」

 「俺の名前か? 俺の名前は内側に書いてあるから確認してくれ。」

 店主は目を凝らして指輪の内側を見るが…俺の書いた文字は見えていなかった。

 さて、次に来るまでに俺の名前が分かっていれば良いが…って⁉︎

 話が長すぎて他の者達は別の店に移動していた。

 俺は皆を探しながら合流したのだった。

 「ここに居たのか。」

 「随分話し込んでいたので先に行きました。」

 「それで、ここで何をしているんだ?」

 「小腹が空いたという事で、この店のお菓子を買っていたのですが…」

 アヴェルユージェンは無言でクッキーの袋の口を開けて渡してきた。

 俺は袋の中から1枚取り出して口に入れると…ほんのりとした甘さがしていた。 この甘さは恐らく…小麦の甘さなのだろう。

 単純にいうと…あまり美味くはなかった。

 「ヒカル殿が作ってくれたものに比べると、甘さが全くありませんね。」

 「俺のは砂糖とバターをふんだんに使っているからな。」

 この世界ではチーズは作るのにバターの存在を知らない上に、牛乳は好まれないらしく飲む者はほとんどいなかった。

 そして砂糖も…希少故に菓子店では使用出来ない。

 仮に使用でもしたら庶民には手を出せない金額になっているだろう。

 俺はスキルの植物発生と植物成長で甜菜やサトウキビを急成長させて入手しているので、収納魔法の中に大量にある。

 アレナの一件以来…俺は皆に見せない様に馬車の中には置かず収納しているのだった。

 まぁ…レオーネもリルーシャも素直に言うことを聞くので、アレナの様に勝手な事をすることはないと思うが。

 「それにしても…この世界の菓子はこんなものなのか。」

 伝承の異世界人は真面目な男で、この世界に法律や規律を世に広めたという話だった。

 なので文化的な物を発展させる物はほとんど無かった…いや、自分の好物だったそばやうどんを広めたのでそれは現在でも引き継がれている。

 真面目な男が唯一広められたのがそれだけで、ラーメンは無理だったんだな。

 まぁ家庭によっては、そばやうどんを作る家はあってもラーメンを1から作るということはないだろう。

 俺は菓子の棚を見て回ると、明らかに見慣れた物が棚にあった。

 「これって…カロリーネイトか?」

 真面目な男の主食がこれだったのか?

 だから食文化がそれほど広まらなかったのか。

 そういえば…カードゲームはあったが、チェスやリバーシはなかったし、それ以外の娯楽も無いところを見ると…伝承の異世界人とはつまらない男だったんだな。

 それから俺達は色々な店を回ってから城に辿り着いた。

 


 「はぁ…なんか憂鬱だな。」

 「どうしたのですかヒカル殿?」

 「2つの国は無事に完了したが…2つの国の王女を連れ歩いていると知ったらどういう反応になるのかと。」

 「まぁ、確かにその可能性はありますね。」

 俺達は城の中に入り国王にレオーネとリルーシャを紹介した。

 すると懸念していた事が起きるのだった。
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