上 下
9 / 85
第一章 魔王軍討伐編

第六話 面倒事…

しおりを挟む
 「父様、違うんです!」

 「お父様、違います!」

 アレフとアレナは連行されて行った俺を弁護するべく…国王の前で進言した。

 まぁ…あの会話を外の扉越しで聞いていれば、王子を脅迫していると取れる風に聞こえたみたいだ。

 「指揮官である王子は死にました…」

 こんな事を聞いていたら、暗殺するものではないかと疑われてもおかしくはない。

 「では何をしていて息子を殺害しようとしていたんだ?」

 「人聞きが悪いな、俺は元の世界の遊具を持ちだして王子と王女と遊んでいただけだ。」

 俺は収納魔法からチェスを取り出して説明した。

 「これはチェスと言って、自分がキング…つまり王となって配下を動かして相手の王を討ち取るために戦略を巡らせて遊ぶ遊具だよ。 王子は俺にキングを奪われたので、「指揮官である王子は死にました。」と言ったら、その言葉を聞いた騎士達が勝手に勘違いしたという訳だ。」

 「お主は与えた猶予の時間の中で遊んでいたのか?」

 「色々話を聞いてな、第一王子は武の王子という話で武器を持って魔王軍と戦っていたが、アレフ王子は知の王子という話で戦略を得意とするという話だったから、遊具だが知略を巡らせて遊ぶ物でどれ程の物かと確かめさせて貰っていたんだ。」

 「そうなんですよ父様、これは遊具には違いがありませんが…遊具と言っても遊びでやる物ではなく戦略が必要となる物なので。」

 アレフは負けた所為からなのか、まだまだ遊び足りない…もとい、戦略を学ぶ為に奪われたり休みを潰されまいと必死に国王に説得していた。

 国王は顎に手を当てながらチェス盤を眺めていた。

 「国王もやりたいのですか?」

 「興味はあるが…」

 それを聞いたアレフは国王に駒の動かし方の説明をした。

 国王ともなれば知識は豊富な為に、駒の動かし方をすぐに理解した。

 そしてチェスを開始して…数十分後。

 「無能な指揮官である王は死にました。」

 「ぐぅぉぉぉ…」

 …という結果になった。

 「無能とは…少し酷くは無いだろうか?」

 「配下を無駄死にさせて、指揮官である王が打ち取られておいて…無能と呼ばずに何て呼べば?」

 「しかし、配下も我には大事な部下であり…」

 「これは所詮遊具の駒で、別に打ち取られても実際に配下が死ぬ訳ではありません。」

 「それは分かっているのだが…」

 俺は元の世界でもチェスが強いという訳ではなかった。

 それでも王族の2人には圧勝出来ていた。

 「これで先程の言葉は誤解という事は理解して貰いましたか?」

 「う…うむ。 これは中々に面白いものだな!」

 アレフを見ると、やりたそうにウズウズしている様だった。

 すると国王はもう1つの遊具であるリバーシにも目を付けた。

 国王の目線が気になったアレナはリバーシのやり方を説明し、次はリバーシでの対戦をする事になった。

 この王族達は負けるのがそんなに嫌なのだろうか?

 まぁ負ければ悔しいのは違いないが、俺の罪は許されたのかを聞きたかった。

 なのでリバーシ…オセロについては本気を出す事にした。

 俺はチェスはあまり強くは無かったが、リバーシでは学校内では最強だった。

 なので…リバーシ盤が全て埋まる前に早々に決着を付けた。

 「う…うむ、これも中々に面白いものだな。 だが所詮は遊具だ。」

 「いるんですよね、負けた言い訳に遊びだからと言って逃げる人が…」

 「うぐっ!」

 これに関してもアレナがやりたそうな顔をしていた。

 まぁ、そんなこんなで…俺の事は誤解だという事が解って無罪放免となった。

 …なのだが、これだと残りの6日間はアレフやアレナの事が反故になってしまうと感じたので、俺は国王にこう進言した。

 「残り6日間は約束通りに一緒に過ごしていても構いませんよね?」

 「それは遊具で遊ぶという事なら看過出来兼ねるが…?」

 「遊具で遊ぶ…というのは間違っておりませんが、これには理由があるのですよ。」

 「ふむ?」

 「アレフ王子には戦略の強化としてチェスの対戦をしていき、俺を倒せる程になって貰います。」

 「それをしたところで何か得られる物があるのか?」

 「俺は元の世界では別にチェスが強かった訳ではありませんが、そんな俺にすら勝てないのなら魔王軍との戦いで大した戦略も立てられずに配下や部下をみすみす死なせる様な事をなさるのは愚行でしょうから…」

 「確かにな。」

 「このチェスという遊具は、要は腹の探り合いの様な物なので…数をこなしていけば新たな戦略を立てられるカギとなり確実な勝利を出来ると思うのですよ。」

 「確かに戦略が必ずしも功を奏するという事は無いからな。 ならリバーシはどう説明する?」

 「リバーシに関しては…アレナ王女の嫁ぎ先に持って行くという事である程度の印象が良くなると思われます。 嫁ぎ先は辺境の…古い習慣を重んずる所なのでしょう?」

 「まぁ、そういった場所だが…?」

 「その様な場所では遊具はおろか、楽しみすら大してないのかと思われます。」

 「それで、アレナにどう関係する?」

 「アレナ王女様にもある程度の数をこなして戴き、ある程度の強さを身に付けて戴きたいと思っています。 自分の持ち込んだ遊具で簡単に負ける様ではそれこそ足元を見透かされますからね。」

 俺は残り6日程度だが、休ませるという名目を元に俺も遊びたいという意思を伝えた。

 別にこのまますぐに魔王退治に出発しても良いのだが、大した関係も築かずに魔王を退治した所で感謝はされても互いに喜びを分かち合うという者がいないのも寂しいからな。

 それに俺は魔王を退治した所で元の世界に戻れる訳ではないし、死ぬまでこの世界で暮らしていかないといけない訳だから…より多くの縁や絆を求めてもバチは当たらないはずだ。

 さて、こう話しては見たが…国王は首を縦に振るだろうかねぇ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。 ネット小説やファンタジー小説が好きな少年、洲河 慱(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りに雑談をしていると突然魔法陣が現れて光に包まれて… 幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】という素晴らしいジョブを手に入れたけど、僕はそれ以上のジョブと多彩なスキルを手に入れた。 王宮からは、過去の勇者パーティと同じジョブを持つ幼馴染達が世界を救うのが掟と言われた。 なら僕は、夢にまで見たこの異世界で好きに生きる事を選び、幼馴染達とは別に行動する事に決めた。 自分のジョブとスキルを駆使して無双する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?」で、慱が本来の力を手に入れた場合のもう1つのパラレルストーリー。 11月14日にHOT男性向け1位になりました。 応援、ありがとうございます!

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

虐められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手に入れたので復讐することにした【再投稿版】

野良子猫
ファンタジー
高校二年の桜木 優希はクラス中で虐められていた。 誰の助けも得られず、ひたすら耐える日々を送っていた。  そんなとき、突然現れた神エンスベルによって、クラスごと異世界に転移されてしまった。  他の生徒に比べて地味な恩恵を授かってしまった優希は、クラスメイトに見捨てられ命の危機にさらされる。気が付くと広がる純白の世界で出会ったのはパンドラと言われる元女神だった。  元の世界へ帰るため、優希は彼女と契約を結ぶ。 「元の世界に帰るのは僕だけで十分だ!」 感情や感覚の一部を代償に、最強の力を手に入れた優希は、虐めてきたクラスメイトに復讐を決意するのだった。  *この物語の主人公は正義の味方ではありません。   「虐められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手に入れたのでとりあえず復讐することにした」の再投稿版です。設定やストーリーをいろいろ変更しています。    小説家になろうでも連載されています

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

異世界転移したので、のんびり楽しみます。

ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」 主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです

深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ
ファンタジー
日本の社会人として暮らす|大倉潤《おおくらじゅん》は女神に英雄【ジュン】として18才に若返り異世界に召喚される。 ジュンがチートスキルを持たず、他の転移者はチートスキルを保持している為、転移してすぐにジュンはパーティーを追放された。 ジュンは最弱ジョブの投資家でロクなスキルが無いと絶望するが【経験値投資】スキルは規格外の力を持っていた。 この力でレベルを上げつつ助けたみんなに感謝され、更に超絶美少女が俺の眷属になっていく。 一方俺を追放した勇者パーティーは横暴な態度で味方に嫌われ、素行の悪さから幸運値が下がり、敵にマークされる事で衰退していく。 女神から英雄の役目は世界を救う事で、どんな手を使っても構わないし人格は問わないと聞くが、ジュンは気づく。 あのゆるふわ女神の世界管理に問題があるんじゃね? あの女神の完璧な美貌と笑顔に騙されていたが、あいつの性格はゆるふわJKだ! あいつの管理を変えないと世界が滅びる! ゲームのように普通の動きをしたら駄目だ! ジュンは世界を救う為【深刻な女神力不足】の改善を進める。 念のためR15にしてます。 カクヨムにも先行投稿中

処理中です...