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第九話

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 私は岩山の洞穴の中から外の様子を窺っていた。
 …とはいえ、洞穴の入り口が開いている訳ではなく…隠蔽魔法で山の斜面と同じ様に偽装しているのでバレる事はない。
 更に隠蔽魔法は、外側からは普通の山の斜面にしか見えないけど、内側からなら透けて見えるのである。
 
 「ひぃ…ふぅ…みぃ………20人近くいるわね?」
 《そういえば、セレナは小屋に何か仕掛けてなかった?》
 「手紙を書いて置いておいた。 多分今頃…?」

 小屋の扉を蹴り飛ばした若者の1人が別な物に手紙を渡していた。
 その手紙を松明で照らしながら若者達は内容を見た。
 そして手紙の内容を確認した若者の1人が、手紙を丸めて地面に叩き付けると…他の者達に命じて若者達は散って行った。

 《何かだいぶ怒っていたみたいだけど…ここには居ないってだけを書いた訳じゃない様ね?》
 「少し怒らせる内容を書いておいた。 散って行ったのは、私を探しに行ったんだと思う。」

 ちなみに私が手紙に書いた内容はこうだった。

 【あ~んなバレバレの尾行で後ろから後を付けておいて気付かないと思った訳? しかも監視を1人も残さずに帰って行くなんて馬鹿なの? そういう訳で、皆が居なくなった事を見計らって私はこの山から退散します。 今頃はゼムスカーラン王国との国境辺りに着いているかもね。 無駄な事を御苦労様ね、バイバ~イ!】

 「…とまぁ、こんな感じで書いておいたので。」
 《それは怒るわよ! それにしても、ゼムスカーラン王国との国境ねぇ? カロナック王国もゼムスカーラン王国も行く気は無いのよね?》
 「それなんだけど…考えが変わったわ! このままだと懸賞金の所為で船にも乗れないし、それどころか他の街にすら入れない可能性だってあるから、今度こそあの馬鹿王子に会って懸賞金の件を無くさせるわ!」
 《う~ん?》
 「どうしたの、フォルティーナ?」
 《2つの懸賞金の用紙を見た時に、生死を問わず…ではなかったよね?》
 「そうね、必ず生かして連れて来いって書いてあったけど。」
 
 フォルティーナからは何か考えて唸っている声が聞こえて来た。
 何だろう?

 《仮によ…仮に両国がセレナに懸賞金を出した理由を考えてみたんだけど、1つはこの大陸から出させない様にするのが目的なんじゃないかしら?》
 「その可能性はあるかもね。 懸賞金を出された賞金首は、好き好んで街の中に入ろうとはしない筈だし…更に警戒の厳しい港にはまず立ち寄らないでしょうしね。」
 《もう1つは、どっちの国もセレナを罰するのが目的では無くて…呼び寄せるのが目的なんじゃないかな?》
 「カロナック王国に関しては、会合から戻って来た国王夫妻が王国のあり様を見て…という可能性はあるかも知れないわね。 もしくは馬鹿王子が何かいらない事を吹き込んだ可能性もあるかもしれないけど。 ゼムスカーラン王国はどう見てもカルイオの私怨が絡んでいる様にしか思えないけど?」

 カロナック王国は一度は魔物の軍勢によって壊滅させられた。
 だけどあれから4年も経過していたら、完全ではなくても幾らかは復興しているのかな?

 「これからカロナック王国に行ってみるわ!」
 《こんな夜遅くに? 明日にしたら?》
 「…うん、それもそうね。 それに先程の若者達の数人が残って周りで私の痕跡を探しているみたいだし。」

 余程の馬鹿じゃなければ、手紙の内容を全て真に受けないか。
 その為に数人の残しているみたいだけど、生憎そこからは痕跡は追えないのよねぇ。
 私は洞穴の奥にある寝室で眠りに就いた。
 そして翌日、洞穴の中にある生活雑貨を全て収納魔法に入れてから外の様子を窺ってみた。

 「外には居ないみたいだけど…?」
 《いえ、小屋の中に何人かいるみたいよ。》
 「なら、ここから転移魔法でカロナック王国に向かうとするわ。 下手に外に出て行っても…まぁ、村人では相手にならないけど下手に騒がれるのも面倒だしね。」

 私は転移魔法を使ってカロナック王国から少し離れた高台の村にやって来た。
 ここは以前に、カロナック王国が壊滅して行く様を見ていた場所だった。

 「完全に復元は無理だったみたいだけど、幾らかはマシになっているみたいね?」
 《カロナック王国は以前見た時は…それ相応にふさわしい建式ある作りだったけど、今は見る影もないわね。》
 
 私は一応変装をしてからカロナック王国の城下町の門の前に転移をした。
 入る時はすんなり入れたけど、城下町は…思い出の中の街並みではなかったが、幾らか復興して生活が出来る位にはなっていた。

 「さ~て、馬鹿王子は何処にいるのかな? 事と次第によっては、半殺しにして…」
 《セレナ、目的が変わっているわよ。》

 私は久々のカロナック王国を見ながら城を目指して行った。
 そして…?
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