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第八話

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 「さて、村人達にどう説明したら良いのだろう?」

 あの元家族が好きなだけ騒ぎ立ててくれたお陰で、私の名前も村人達にバレたと思う。
 お年を召した方々は大丈夫だとは思うんだけど、若者になると話が変わってくるのよね。
 どの世界でも、若者は都会に憧れる傾向がある。
 そしていざ都会に行くと…成功者では無い者達の大半は現実を知って打ちのめされる。
 田舎の若者は大して資金も商売の腕も無い者達は、都会に行った所で成功する物は本の一握りで、観光をして帰って行くというのが関の山だ。
 そして大体口をそろえて言う事と言えば、「金があったら…」と嘆く者が多い。
 余生を田舎でゆっくり過ごしたいという年寄りはともかく、若者に関しては別な話で…?
 カロナック王国では懸賞金で金貨2000枚、ゼムスカーラン王国では懸賞金で金貨5000枚がこの村にいると解れば、若者達は逃す手はないと思うだろう。

 「セーレナリアさん…ではなかったのだな。」
 「申し訳ありません、別に犯罪者という訳ではないのですが偽名を使わさせて頂きました。」
 「セレナ様と仰いますと、カロナック王国の聖女様ですよね?」
 「はい…そこの馬鹿王子が身分が低く聖女というだけで王族に嫁入りするのが気に入らなくて、国王と王妃様がいない時を見計らって自分の言う事を聞く都合の良い女性を用意して私を婚約破棄したのですが、同時に国外追放を言い渡されて腹が立ったのでカロナック王国に張ってある結界を解除したら、王国が壊滅したのは私の所為だと言い触らしたみたいで…」
 「どうしようもない王子だな。 では、ゼムスカーラン王国での事は?」
 「私はゼムスカーラン王国で、王国から勇者に認定された者達と行動を共にしていたのですが、とにかくこの勇者が女癖が悪い奴で私にも手を出して来まして、腹が立ったのでボコボコにのしてから使えこなせない聖剣を奪ったらこうなってしまって。」

 まぁ、あの浪費癖がある馬鹿勇者に金貨5000枚も支払える金額なんかない所を見ると、国王に私のありもしない戯言を言って金を出させたのでしょう。
 本当にどっちの馬鹿も碌な事をしないわね?

 「聖女は世界に誕生して世界に発表されておられるが、まだ勇者が世界に誕生したという者が現れていないから各国が勇者を作りだして任命させているのだろうけど、ゼムスカーラン王国の勇者はそんなに禄でもない奴なのか?」
 「とてもが魔王を倒せる存在だとは思えませんね。 他の王国にも勇者が誕生しているので、そちらに期待をしたい所ですが…」
 
 勇者と聖女は世界に必ず現れる存在だった。
 私は聖女として誕生し、世界に公表されたのだが…?
 勇者はまだ誕生していなくて、国民達を安心させる為に各国の王国側から勇者を誕生させて発表するという感じだった。
 ただこれだけはどうしても謎なんだけど、ゼムスカーラン王国でどうしてカルイオみたいなのが勇者に選ばれたのかが意味不明だった。
 王族の関係者だったとかという話だったら納得は出来るんだけど、勇者認定されるためには厳しい条件をクリアした者だけが選ばれるという基準になっているんだけど、どう考えてもアレが最終迄残ったとは考え難かった。
 
 「さて、今回私事でご迷惑をお掛けしましたので体調の悪い方から順に治療魔法を施してあげますわ。」
 「おぉ、それはありがたい! 実はこの村の年寄りたちはどこかしらの痛持ちなのでな。」

 私は各家を村長さんと共に回って治療魔法を施して行った。
 なんだけど、各家を回っている間は若者の姿を一切見なかった。
 私は嫌な予感がして、やる事をやったら村の好意で宿泊をさせてくれるという話を断り山に帰って行った。

 《離れた場所に数人がこちらの様子を窺っているわね?》
 「でしょうね…お年寄りの人達は私の事は何も干渉しないとは言ってくれたけど、若者達は別よね?」

 私は様子を窺いながら山に帰って行くのだが、どうやらここで仕掛ける気はない所を見ると私のねぐらを確認するみたいだった。
 私は山に着くと洞穴に入る事はせずに、道具をしまう為に作った掘っ立て小屋2号の中に入った。
 前回作った粗末な小屋とは違って、今回の掘っ立て小屋は造りはしっかりしていて少し大きい。
 
 「ここで仕掛けて来る…かな?」
 《違うみたいね、全員引き挙げて行ったみたいよ。》
 「…という事は、暗くなるのを待ってから攻める気かしら?」

 私は畑にある成長途中の野菜を回収した。
 そして掘っ立て小屋2号の中の道具も一緒に収納魔法に入れた。
 全員引き挙げて行ったとはいえ、もしも監視がいる場合を懸念して念の為に掘っ立て小屋2号から転移魔法を使って洞穴の中に転移した。
 これでもしも監視人がいたとしても、私は掘っ立て小屋の中に入った事になるから狙いはこっちを狙う筈?
 私は洞穴の入り口を強固な結界を張り巡らせた。

 「来るとしたら夜ね?」
 《恐らく…?》

 私は中から様子を窺っていた。
 そして夕暮れから夜の闇が広がっていった頃…村人達が松明を灯してやって来たのだった。
 
 「さて、どうしようかしら?」
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