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第一話

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 私こと、セレナ・ヴィシュランティスは自我元に認める美少女である。
 運動神経抜群で頭脳明晰、容姿端麗と三拍子揃っている。
 ところが、この容姿の所為で碌な目に遭わなかった。
 カロナック王国時代は、聖女に任命され…一時期は美の聖女とまで言われたが、すぐに廃れた。
 そして待っていたのは、過酷な勉強や授業や鍛錬の日々。
 容姿のお陰で…という事はまるでなく、王子と顔合わせする迄は自分の容姿は全くと言ってよい程に気にしていなかった。

 カロナック王国が壊滅する際に逃げてきて、私は冒険者になったけど…ソロで活動していたのに周りの男達からの勧誘が後を絶たなかった。
 初めは…治癒術士系のジョブが重宝されているので声を掛けて来る者が多かったと思っていたら、ただのナンパだった。

 「旅の間、君を守らせてくれ! そして街に帰ったら幸せな時間を君に上げるよ!」
 「黙って俺に付いて来い! そうすれば妾として可愛がってやるからよ!」
 
 まぁ…こんな事を言って誘ってくる奴が後を絶たなくて、片っ端から拳で黙らせてきた。
 そうしたらいつの間にか声を掛ける者が居なくなっていた。
 ここ迄は良かった。
 問題はこの後だった。
 ゼムスカーラン王国から勇者の紋章を授かった者からの誘いが来た。
 どうやら勇者は、私が聖女だという事を見抜いていた。
 それ以降という物、しっつこいまでの勧誘が始まり…私は根負けして勇者のパーティーに入った。

 勇者の名前はカルイオという。
 年齢は私と同じか少し上だった。
 彼はゼムスカーラン王国から勇者の紋章を授かっただけではなく、聖剣まで所持をしていた。
 聖剣を所持する勇者の紋章を持つ者…そうなれば物語に出て来る勇猛果敢な者かと思っていたが、戦闘は酷い物だった。
 まずパーティー構成が勇者以外全員女だった。
 そして戦闘では、連携というのがほぼ皆無で…その場の勢いだけで戦っている感じだった。
 私は補助魔法や回復魔法を駆使していたが、あまりにも戦闘が下手なので指摘をすると…周りの女達からヤジが飛んできた。
 そんな私がこのパーティーで我慢している理由は、ソロで活動するよりは幾分かマシだったからだった。
 …ところが、このパーティーはそれだけでは終わらなかった。
 夜の見張りは交代制の筈…なんだけど、私以外は全て勇者と同じテントに寝泊まりをして喘ぎ声がいつも漏れていた。
 そう、このパーティーは勇者カルイオのハーレムパーティだった。
 私をしつこく勧誘して来たのも、私の容姿と体目当てで誘ってきたとしか思えなかった。
 だけど、しばらくの間は私も手を出される事が無く安心していた。
 私がテントに寝ている時にカルイオが入って来なければ…。

 「毎晩の様にあんな声を聞いていたらお前も溜まっているだろ? 俺が相手をしてやるよ‼」
 「結構ですから、出て行って下さい‼」
 「遠慮するなよ、口ではそう言っても体はどうだ?」
 「本当に辞めて下さい‼」

 私は何度も拒んだが、その日は引き下がったものの…翌日にはまた絡んで来た。
 そして何度も拒絶をするが、引き下がろうとはせずに来たので…カルイオの顔が変形する位までボッコボコに殴った。
 翌日…プロローグの冒頭にあったように、勇者カルイオは私に言って来た。

 「セレナ・ヴィシュランティス! お前を勇者パーティーから追放する‼」
 「あーはいはい、わっかりました。」

 これで…この下品な男と縁が切れる。
 ところがこの男は、ただで引き下がる様な男ではなかった。

 「お前が泣いて乞いて来るのなら、追放は勘弁してやっても良いぞ! その代わり、お前の体を差し出せばの話だが!」
 「追放なんでしょ? これで清々するし、戻る理由なんて全くこれっぽっちもないから!」
 
 勇者カルイオは信じられない様な顔をしていた。
 この馬鹿勇者は…何処かあの馬鹿王子を彷彿とさせてくれた。
 自意識過剰で自惚れ屋なので、私に追放を命じると泣いて乞うてくると思っていたらしい。
 するとこの勇者カルイオは、何か焦りだした。

 「伝承では、勇者の傍には常に聖女がいる。」
 「それで?」
 「追放というのは、お前の気持ちを確かめる為であって本気ではないんだ。」
 「追放なんですよね? 了承しましたので、これで失礼します。」

 私は立ち去ろうとすると、前に回り込んで立ち塞がった。
 私は溜息を吐いてから言った。
 
 「まだ何か?」
 「今の勇者パーティーには、聖女が必要不可欠なんだ!」
 「それは王国から、聖女を手放すなとでも言われたのですか?」
 「ま…まぁ、それもある。」
 「追放された身なので、喜んでお受けしますので。」
 「いや、他にも理由があってだな!」
 「他に理由って…私に他のメンバーみたく夜の相手をしろって話ですか? 娼婦じゃないんですから断固としてお断り致します。 話がそれだけなら…」

 私は今度こそ立ち去ろうとすると、勇者カルイオは私の前に来て土下座して言った。

 「セレナよ、あの時の事は謝るし…お前には一切手を出さないと誓う‼」
 「そんな口約束が信じられると思います? 私がどんなに拒んでも勝手にテントに入って来る人間の言う事を信じろと?」
 「頼む! いまお前にパーティーから抜けられると本当にマズいんだ‼」

 私は憐みと蔑んだ目で勇者カルイオを見た。
 本当にどうしてこんなに女に節操のない奴が勇者に選ばれたんだろう?
 私は土下座をして頭を垂れているカルイオにアッパーを喰らわせてから宙に浮かせて、後ろ回し蹴りで後方に吹っ飛ばした。
 その弾みだったのか、カルイオの鞘から聖剣が地面に落ちた。
 私はその聖剣を見てから拾い上げた。

 「あ、意外に軽いし使いやすそうね?」

 私は聖剣を振り回すと、カルイオは信じられない顔をしていた。

 「何故…勇者にしか持つ事が許されない聖剣をセレナが持てるんだ⁉」
 「聖剣が貴方を見限ったからじゃないの? こんな情けない姿をした勇者に…」
 《その通りよ。 この男って本当に女にだらしなくて節操がないから!》
 
 聖剣から女性の声が響いて来た。
 どうやらこの聖剣は、インテリジェンスソードの類みたいだった。

 「この声は…貴女なの?」
 《貴女は私の声が聞こえるのね!》
 「手にしてから聞こえているよ。」
 《本当にあの勇者の名を騙る男とは偉い違いね! あの男は私の呼びかける声に全く反応が無いんだもの。》
 「それで…本当に貴女はあの男に見切りを付けるの?」
 《当然でしょ! 私の声を聞ける人に使って貰った方が、私の力を存分に使えるからね。》
 「セレナは誰と話しているんだ⁉」

 カルイオがそう言うという事は、本当に聖剣の声は聞こえてないみたいね。
 これじゃあ、見限られるのも納得だわ。

 「勇者の聖剣を聖女が使っても平気なの?」
 《別に私は勇者だけにしか使えないという訳ではないからね。 時が経つに連れて…聖剣は勇者の所有物になったみたいで、私としては声を聞こえる者ならその人物に使って貰った方が良いから、別に勇者だろうと聖女だろうと気にしないわ!》
 「…とは言っても、この場で持ち去ったら王国から睨まれそうだしね。」
 「お…おい、持ちるとか何を言っている⁉」
 《なら契約をしましょう! 私の名はフォルティーナ…光と水の守護聖剣です。》
 「私の名前は、セレナ・ヴィシュランティス。 聖剣フォルティーナよ、私は契約を誓います‼」

 聖剣フォルティーナは、周囲を照らす程の強い光を放った。
 そしてミドルソード程の長さだったのが、ロングソード並みに成長したのだった。
 真の聖剣となったフォルティーナの力は、何か凄みを感じた。
 
 「これが貴女の真の姿なのね、フォルティーナ…」
 《そうなんだけど…驚いたわ、私は成長する剣ではあるんだけど、いきなり最終形態迄進化した持ち主は貴女が初めてよ!》
 
 私は聖剣フォルティーナを振り合した。
 先程よりも手に馴染む感じだった。

 「セレナ…俺の聖剣に一体何が⁉」
 「もうカルイオの聖剣ではないわ。 聖剣フォルティーナは私と契約をして私の物になったから。」
 「ふ…ふざけるな‼ それは俺の聖剣だ‼」
 「いいえ、もう私のだから諦めなさい! それじゃあ、私はここでお別れね!」

 私は転移魔法で街に移動した。
 勇者カルイオは、恐らくはこの先…勇者として活動は出来難くなるだろう。
 勇者カルイオはゼムスカーラン王国にどんな言い訳をするのかな?

 「さて、この国ももう居られないわね。 何処に行こうかな?」
 《何か目的はあるの? 魔王を討伐するとかといった目的が…?》
 「魔王は勇者に任せて、私はまた当てのない旅を続ける事にするわ。」
 《なら、聖武具を集めてみない? セレナだったら身に付ける事が出来ると思うから…》
 「何も目的が無くてフラフラするよりは良いか! それでその聖武具は何処にあるの?」
 《この大陸から近い場所だと…エルフの大森林に盾があるわね。》

 次の目的地が決まりました。
 次の場所は、エルフの大森林がある樹都ルーフェンに向かいます。
 こうして私は、フォルティーナという旅の御供を得た。
 これからどうなって行くのでしょう?
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