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第五章 悲恋の章
第十八話 復活!
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「わたし…ふっかーつ!!!」
ソーマとの破局から3日間…落ち込むだけ落ち込んだ、へこむだけへこんだ、泣くだけ泣いたら吹っ切れた。
その間…店は臨時休業のままだったけど、お客様の事を考えるとこれ以上店を閉めているのは申し訳ない。
私は両頬を叩いてから…少し痛かったけど、部屋から出て1階の店舗に降りて来た。
「皆…おはようございます!」
「副てんちょ~!」
「リアーナさん!」
「お姉ちゃん!」
「お嬢!」
「今日からお店を再開させますので、宜しくお願いします!」
私は蔓延の笑みでお辞儀した。
「お姉ちゃんは…もう平気なの?」
「うん! 私には恋愛は早かったし、別に急ぐ必要もないしね。 それにこんな私を好きになってくれる人なんてそうそう見付からないし…」
「いや、そんな事はないと思うけど…?」
「そうですよ、ウザったい位にリアーナさんに迫って来た方がいるじゃないですか!」
「ティファルさん、そんな人いたの?」
「はい、テルシェリア王国の第一王子と本人は言っておりましたが…」
「え? ドミニク王子⁉」
ドミニク王子がこの店に来ていた事はルーナリアは知らなかったので、すごく驚いていた。
「辞めてよ! あんな人と一緒になるくらいなら…私はギヴェリアンと結婚するわ‼」
「辞めてお姉ちゃん…せめて人類にして‼」
ギヴェリアンというのは、森やダンジョンの掃除係と呼ばれる…台所にいる黒光りするカサカサと動くアレの事である。
別に何かの悪さをする訳でもないのだが、見た目と動きが不快で…昆虫学者でもない限り皆敬遠する虫型モンスターだった。
「リアーナさんがそこまで言うくらい毛嫌いしていたのですね。」
「アレと一緒になるくらいなら…私は一生1人でも良いです。」
「人見知りの無いお姉ちゃんがそこまで毛嫌いするなんて…ドミニク王子は一体何をしたのよ?」
「はい、この話はこれでおしまい! 開店準備は出来ているかな?」
「3日間も休んでいたからね、いつでも開店出来るけど…時間がまだ早くないかな?」
私は壁に掛かっている時計を見ると、本来の開店までまだ2時間もあった。
私1人だったらいつでも開店しても良いんだけど、皆の事を考えるとそうもいかない。
「そんな事よりもお嬢、何かお腹に入れて下さい。 この3日間は碌に食べていなかったのですから…」
ブリオッシュにそう言われて、私と皆はテーブル席に付いて食事を始めた。
皆はいつも通りの量だったけど、私だけ大盛りで盛られていた。
食べられないかと思っていたけど、意外とスルッとお腹に入って行った。
食事が終わり…食器が片付けられていくと、ティファルさんが新商品として開発した花の紅茶を振舞われた。
飲むとホッとしてリラックスする様な感じがした。
「ティファルさん、この紅茶は美味しいですね!」
「ハーブ草のカモミールを使用した物です。 リアーナさんのディメンションガーデンで収穫した物で作りました。」
「これなら十分にお店に出せるかもしれませんね…」
「他にも各種ハーブの紅茶と…」
「ティファルさんとの共同開発で製作した、ハーブを使用した石鹼と洗髪剤も完成したんだけど…?」
「どれどれ?」
ハーブで作った物だと香りが強い場合がある…んだけど、それほど強い香りはせずに滑らかな触感だった。
ルーナリアも宿った魔力を使いこなせる様になっていた。
それでもポーション作りの魔力の使い方はまだまだだけど、化粧品に関しては問題ない…どころか、私より上手く出来ていた。
考えてみれば…ルーナリアは幼い頃から貴族が使う化粧品関係を使用していた。
一方私は、化粧品なんていうものは社交界に出る時以外はほとんど使用していた事が無かったので…感覚的なもので作った私の化粧品よりも、ルーナリアの作った化粧品の方が品質は高かった。
「ルーナリア…」
「何、お姉ちゃん?」
「化粧品関係は今後はルーナリアに任せるわ。」
「ほ、本当?」
「私が作るよりは遥かに完成度が高いしね。 これなら商品として店に置いても構わないわ。 それとティファルさんの紅茶もね。」
「「ありがとうございます!」」
正直言うと…ルーナリアが化粧品関連を受け持ってくれると大変ありがたい。
忙しい時期だとポーションと化粧品作りは結構骨が折れる作業だった。
ポーション作りも化粧品作りも、どちらも同時進行は出来なかった。
どちらも繊細な物を要求される為に、妥協は許されないからだ。
だからルーナリアが化粧品関連を行ってくれると大変ありがたかった。
「あ、副てんちょ~良いですかにゃ?」
「なぁにフリッツ?」
「冒険者ギルドの方から、万能治療薬はまだかと催促されたにゃ!」
「あー…忘れてたわ。」
「お姉ちゃんが忘れるなんて珍しいね?」
「それもこれも、ドミニクのクソ王子の所為で…」
私はルーナリアにその時の経緯(拉致)を話した。
話を聞き終わった時、ルーナリアは手で頭を押さえていた。
「確かに理由がそれなら…ドミニク王子を毛嫌いするお姉ちゃんの気持ちが分かるわ。」
「万能治療薬の材料は…マンドレイクとマンドラゴラの体液なんだよね。」
「マンドレイクって…引っこ抜くと叫び声をあげて、その声を聴くと死んでしまうというアレ? でも確か…テルシェリアの宮廷薬剤師は叫ばせない為に土を掘り返してから根元を切って入手したって…」
「あ、それだと何の薬効も得られないから…マンドレイクの場合は引っこ抜いた後に叫び声を上げるけど、疲れ果てるまで泣き終わった物じゃないと薬効が得られないの。」
するとフリッツが思い出したように言った。
「その話なら聞いた事があるにゃ! 奴隷の獣人族の首とマンドレイクの茎の根元部分にロープを括り付けてから走らせると楽に収穫できると。」
「その獣人族って勿論…」
「死ぬにゃ! 中には叫び声を聞いても死なない種族もいるという話らしいにゃんだけど…」
「酷い…」
「この大陸では獣人保護法という事で無碍には扱われにゃいが…他大陸では獣人族は奴隷にされている国もあるにゃ!」
「それで…お姉ちゃんはそんな危険な物をどうやって収穫するの?」
「マンドレイクの周りに遮音結界。」
「なるほどね…でも、マンドラゴラも抜いたら襲って来るんじゃなかったっけ?」
「水魔法で球の中に入れて溺死させる。」
「なんかえげつないね…」
「マンドラゴラは土の中にいる間は土の養分を吸っているけど、一定の時間で地面に顔を出すのよ。 酸素の取り込みは人間と同じで口から呼吸するからね。」
「そうなると…今日はお姉ちゃんは外なんだ? お手伝いはいる?」
「いてくれるとありがたいけど、ティファルさん…私とルーナリアが抜けても平気? 代わりにブリオッシュを置いていくから。」
「今のお嬢なら、グリモアールだけあれば魔法は問題ありませんしね。」
「こちらも大丈夫ですよ、商品棚は補充する必要がない位に充実していますので…」
私とルーナリアは外に出る準備をすると、開店させてから客足を見て…ティファルさんとフリッツで対処が可能だと分かると出掛けて行った。
久々にルーナリアとの冒険者仕事…がんばるぞぉ!
ソーマとの破局から3日間…落ち込むだけ落ち込んだ、へこむだけへこんだ、泣くだけ泣いたら吹っ切れた。
その間…店は臨時休業のままだったけど、お客様の事を考えるとこれ以上店を閉めているのは申し訳ない。
私は両頬を叩いてから…少し痛かったけど、部屋から出て1階の店舗に降りて来た。
「皆…おはようございます!」
「副てんちょ~!」
「リアーナさん!」
「お姉ちゃん!」
「お嬢!」
「今日からお店を再開させますので、宜しくお願いします!」
私は蔓延の笑みでお辞儀した。
「お姉ちゃんは…もう平気なの?」
「うん! 私には恋愛は早かったし、別に急ぐ必要もないしね。 それにこんな私を好きになってくれる人なんてそうそう見付からないし…」
「いや、そんな事はないと思うけど…?」
「そうですよ、ウザったい位にリアーナさんに迫って来た方がいるじゃないですか!」
「ティファルさん、そんな人いたの?」
「はい、テルシェリア王国の第一王子と本人は言っておりましたが…」
「え? ドミニク王子⁉」
ドミニク王子がこの店に来ていた事はルーナリアは知らなかったので、すごく驚いていた。
「辞めてよ! あんな人と一緒になるくらいなら…私はギヴェリアンと結婚するわ‼」
「辞めてお姉ちゃん…せめて人類にして‼」
ギヴェリアンというのは、森やダンジョンの掃除係と呼ばれる…台所にいる黒光りするカサカサと動くアレの事である。
別に何かの悪さをする訳でもないのだが、見た目と動きが不快で…昆虫学者でもない限り皆敬遠する虫型モンスターだった。
「リアーナさんがそこまで言うくらい毛嫌いしていたのですね。」
「アレと一緒になるくらいなら…私は一生1人でも良いです。」
「人見知りの無いお姉ちゃんがそこまで毛嫌いするなんて…ドミニク王子は一体何をしたのよ?」
「はい、この話はこれでおしまい! 開店準備は出来ているかな?」
「3日間も休んでいたからね、いつでも開店出来るけど…時間がまだ早くないかな?」
私は壁に掛かっている時計を見ると、本来の開店までまだ2時間もあった。
私1人だったらいつでも開店しても良いんだけど、皆の事を考えるとそうもいかない。
「そんな事よりもお嬢、何かお腹に入れて下さい。 この3日間は碌に食べていなかったのですから…」
ブリオッシュにそう言われて、私と皆はテーブル席に付いて食事を始めた。
皆はいつも通りの量だったけど、私だけ大盛りで盛られていた。
食べられないかと思っていたけど、意外とスルッとお腹に入って行った。
食事が終わり…食器が片付けられていくと、ティファルさんが新商品として開発した花の紅茶を振舞われた。
飲むとホッとしてリラックスする様な感じがした。
「ティファルさん、この紅茶は美味しいですね!」
「ハーブ草のカモミールを使用した物です。 リアーナさんのディメンションガーデンで収穫した物で作りました。」
「これなら十分にお店に出せるかもしれませんね…」
「他にも各種ハーブの紅茶と…」
「ティファルさんとの共同開発で製作した、ハーブを使用した石鹼と洗髪剤も完成したんだけど…?」
「どれどれ?」
ハーブで作った物だと香りが強い場合がある…んだけど、それほど強い香りはせずに滑らかな触感だった。
ルーナリアも宿った魔力を使いこなせる様になっていた。
それでもポーション作りの魔力の使い方はまだまだだけど、化粧品に関しては問題ない…どころか、私より上手く出来ていた。
考えてみれば…ルーナリアは幼い頃から貴族が使う化粧品関係を使用していた。
一方私は、化粧品なんていうものは社交界に出る時以外はほとんど使用していた事が無かったので…感覚的なもので作った私の化粧品よりも、ルーナリアの作った化粧品の方が品質は高かった。
「ルーナリア…」
「何、お姉ちゃん?」
「化粧品関係は今後はルーナリアに任せるわ。」
「ほ、本当?」
「私が作るよりは遥かに完成度が高いしね。 これなら商品として店に置いても構わないわ。 それとティファルさんの紅茶もね。」
「「ありがとうございます!」」
正直言うと…ルーナリアが化粧品関連を受け持ってくれると大変ありがたい。
忙しい時期だとポーションと化粧品作りは結構骨が折れる作業だった。
ポーション作りも化粧品作りも、どちらも同時進行は出来なかった。
どちらも繊細な物を要求される為に、妥協は許されないからだ。
だからルーナリアが化粧品関連を行ってくれると大変ありがたかった。
「あ、副てんちょ~良いですかにゃ?」
「なぁにフリッツ?」
「冒険者ギルドの方から、万能治療薬はまだかと催促されたにゃ!」
「あー…忘れてたわ。」
「お姉ちゃんが忘れるなんて珍しいね?」
「それもこれも、ドミニクのクソ王子の所為で…」
私はルーナリアにその時の経緯(拉致)を話した。
話を聞き終わった時、ルーナリアは手で頭を押さえていた。
「確かに理由がそれなら…ドミニク王子を毛嫌いするお姉ちゃんの気持ちが分かるわ。」
「万能治療薬の材料は…マンドレイクとマンドラゴラの体液なんだよね。」
「マンドレイクって…引っこ抜くと叫び声をあげて、その声を聴くと死んでしまうというアレ? でも確か…テルシェリアの宮廷薬剤師は叫ばせない為に土を掘り返してから根元を切って入手したって…」
「あ、それだと何の薬効も得られないから…マンドレイクの場合は引っこ抜いた後に叫び声を上げるけど、疲れ果てるまで泣き終わった物じゃないと薬効が得られないの。」
するとフリッツが思い出したように言った。
「その話なら聞いた事があるにゃ! 奴隷の獣人族の首とマンドレイクの茎の根元部分にロープを括り付けてから走らせると楽に収穫できると。」
「その獣人族って勿論…」
「死ぬにゃ! 中には叫び声を聞いても死なない種族もいるという話らしいにゃんだけど…」
「酷い…」
「この大陸では獣人保護法という事で無碍には扱われにゃいが…他大陸では獣人族は奴隷にされている国もあるにゃ!」
「それで…お姉ちゃんはそんな危険な物をどうやって収穫するの?」
「マンドレイクの周りに遮音結界。」
「なるほどね…でも、マンドラゴラも抜いたら襲って来るんじゃなかったっけ?」
「水魔法で球の中に入れて溺死させる。」
「なんかえげつないね…」
「マンドラゴラは土の中にいる間は土の養分を吸っているけど、一定の時間で地面に顔を出すのよ。 酸素の取り込みは人間と同じで口から呼吸するからね。」
「そうなると…今日はお姉ちゃんは外なんだ? お手伝いはいる?」
「いてくれるとありがたいけど、ティファルさん…私とルーナリアが抜けても平気? 代わりにブリオッシュを置いていくから。」
「今のお嬢なら、グリモアールだけあれば魔法は問題ありませんしね。」
「こちらも大丈夫ですよ、商品棚は補充する必要がない位に充実していますので…」
私とルーナリアは外に出る準備をすると、開店させてから客足を見て…ティファルさんとフリッツで対処が可能だと分かると出掛けて行った。
久々にルーナリアとの冒険者仕事…がんばるぞぉ!
応援ありがとうございます!
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