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第五章 悲恋の章
第十三話 勘違い?
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その日…ギルとレイヴンとソーマが時間をずらして会いに来た。
会いに来た理由は、昨日にルーナリアの「良い人」発言によるものだった。
律儀というか何というか…?
ルーナリアの様に女の子としての魅力がある子ならともかく、私みたいな無愛想な女を好きになる人はそういないはず?
ルーナリアの姿で店を立っていた時に去ったら、「次はいつ来る?」とか沢山の手紙が届いていた。
逆に私が店からいなくなってもそんな心配をしてくれた人はいない。
私は自分の胸を揉みながら…「やっぱり男の人って胸が大きい方が良いのかな?」なんて言っていると、いつの間にかギルが目の前にいたのに気が付かず…
「それは一部の男達だけであって、それが全てではない!」
そう言いながら目を伏せてフォローしてくれた。
…っていうか、一部始終を見られていたのが恥ずかしくて私は俯いていた。
それから少し長い沈黙の後に私はギルに声を掛けた。
「それで、今日は何の御用ですか?」
「昨日、君の妹のルーナリア…だったか? 言われた事について考えてみたんだが、俺は今までリアの事をそう言った目線で見た事がなくてな…」
「あれはルーナリアの悪ふざけみたいなものですから気にしなくても良いですよ。」
「だとしても…だ! リアは自分を卑下する癖があるみたいだからハッキリ言っておく。 君は十分に魅力的な女性だ‼」
「あ、ありがとう…」
まさかギルからそんな発言を言われるとは思わなかった。
「ギル、気を使ってくれているのね?」
「今のは本心で言っているだけで、別に気を使った訳じゃない。」
そんな事を言われても、私とギルは10歳くらい離れている。
そんな私に大人のギルが恋愛に発展するとは思えない。
そうじゃなくたって、ギルの周りには素敵な女性達が大勢いる。
「だからリアの事は真剣で考えようと思っている。」
「いやいや、本気にならないでよ。 ルーナリアも冗談で言ったようなものなんだし…」
「そうだとしても、こんな浮ついた状態ではリアに失礼に当たるしな…だから答えが出るまで少し待っていて欲しい!」
ギルはそれだけ言うと店を後にした。
ギルがどこまで本気なのかが分からないけど、まぁ私を選ぶという考えには至らないだろう。
それから暫くして…今度はレイヴンが店にやって来た。
「リアーナ、昨日の事なんだが…」
「ルーナリアの発言の事ですよね? ルーナリアも少し悪ふざけが過ぎ…」
「私はリアーナの事はそう言った目で見ていなかった。」
レイヴン深々と頭を下げて来た。
周りから見られたら、私はフラれた様に見えるだろう。
だがレイヴンは理由を説明してくれた。
レイヴンは…男色と言うわけではないが、女性があまり好まないと言う話だった。
辺境伯の仕事は主にベルシュナーデ王国の防衛と言う任がある。
その為に最前線で戦いに赴かなければならない。
数年前に両親が魔物の襲撃で命を落としてから、レイヴンは二十代前半で辺境伯と公爵の地位を受け継いだ。
若くして公爵の地位を受けたレイヴンには、多くの婚姻の知らせが届き、社交界では公爵地位目当ての令嬢が押し寄せて来たと言う。
群がって来た女性達のほとんどは、公爵としての地位しか興味を示しておらず…レイヴン本人を見る様な真似をする女性は現れなかったと言う。
「そこで私は婚姻する女性にある条件を付けた。 それは…自分の身は自分で守れる強さを身に付ける事だ。」
レイヴンの母親も元は王国騎士という話だった。
魔物の襲撃で前線が倒されたら、次は本陣に流れ込んで来る。
まだまだ経験不足だったレイヴンは状況を見る為に本陣の方に行き、魔物に殺されそうになった所を両親に救われたという話だった。
その時に両親が死ぬ原因を作ってしまったと言う。
「今は昔と違って…魔物の襲撃はそれほど多くはなくなったとはいえ、全くない訳ではない。 そうなった際に守られるだけの女性は必要なくて、共に戦える女性が必要なんだ。」
冒険者では無い限り、貴族女性は戦いの経験がまるで無い。
でもそれは…レイヴンには必要がないという話だった。
そんな話をしていると、私の隣にはいつの間にかルーナリアが一緒になって聞いていた。
「そう言う話なら、お姉ちゃんは優良物件じゃないかな? 魔法は使えるし、魔物どころか魔獣すら圧倒出来る力はあるし、貴族で爵位に伯爵位があるんだから…」
「ちょ、ちょっとルーナリア!」
「レイヴンさんには悪い話では無いですよね?」
レイヴンは私を見つめて来た。
ついさっきは私の事は眼中に無い様な事を言ってフラれた感じになっていたけど…?
「別にお姉ちゃんだって今すぐ答えが欲しいと言うわけでは無いだろうし、レイヴンさんがもう少しじっくりと考えてみたら如何ですか?」
レイヴンは少し考えた後に一言「分かった」というと、店を後にして行った。
「お姉ちゃん、レイヴンさんは脈有りかも知れないわよ。」
「ルーナリア‼︎」
ルーナリアは舌を出してウィンクすると、そのまま2階へあがって行った。
流石にレイヴンと私は無いかなぁ?
ギル以上に年上だし…
そんな事を思いながら考えに耽っていると…次はソーマが大きな花束を持って現れたのだった。
その花束は薔薇の花束で赤や黄色や青や黒やピンクなど…色々混じっていた。
薔薇の花言葉は薔薇の色によって違うけど、根本的な部分で言えば…愛を送る言葉だったとティファルさんから聞いた事があった。
ただ…赤一色とかピンク一色なら分かるけど、黒薔薇や青薔薇の花言葉を理解しているのだろうか?
もしも知っていて渡して来たのなら…ソーマの愛が重く感じていた。
ソーマは無言で私に薔薇の花束を渡すと、そのまま店を出て行った。
私はティファルさんにソーマからもらった事を話した。
「ソーマ君は…多分花屋にある全ての薔薇を買い占めたんだろうね?」
「ですよね? じゃなければ、黒薔薇や青薔薇の花言葉を知らずに渡したりはしないでしょうからねぇ?」
黒薔薇には「永遠の愛」という花言葉以外に、「貴女はあくまで私の物」とか「憎しみ」や「恨み」という言葉がある。
青薔薇には「夢叶う」とか「奇跡」とか「神の祝福」という花言葉があるけど、何も言わずに渡しただけで無言で帰られると何を伝えたかったのか意味が分からない。
「多分…愛情表現を現したかったと思うんだけどねぇ?」
「ここまでいろんな色が混じっていると…理解に苦しみますよね?」
…とはいえ、男性から贈り物をされるというのは嬉しい物です。
ティファルさんは薔薇の花束を活けて貰って店に飾る事にした。
それから数日間、3人は店には来なかったんだけど…答えはいつ聞けるのかなぁ?
特にソーマだけは説明が欲しい…
会いに来た理由は、昨日にルーナリアの「良い人」発言によるものだった。
律儀というか何というか…?
ルーナリアの様に女の子としての魅力がある子ならともかく、私みたいな無愛想な女を好きになる人はそういないはず?
ルーナリアの姿で店を立っていた時に去ったら、「次はいつ来る?」とか沢山の手紙が届いていた。
逆に私が店からいなくなってもそんな心配をしてくれた人はいない。
私は自分の胸を揉みながら…「やっぱり男の人って胸が大きい方が良いのかな?」なんて言っていると、いつの間にかギルが目の前にいたのに気が付かず…
「それは一部の男達だけであって、それが全てではない!」
そう言いながら目を伏せてフォローしてくれた。
…っていうか、一部始終を見られていたのが恥ずかしくて私は俯いていた。
それから少し長い沈黙の後に私はギルに声を掛けた。
「それで、今日は何の御用ですか?」
「昨日、君の妹のルーナリア…だったか? 言われた事について考えてみたんだが、俺は今までリアの事をそう言った目線で見た事がなくてな…」
「あれはルーナリアの悪ふざけみたいなものですから気にしなくても良いですよ。」
「だとしても…だ! リアは自分を卑下する癖があるみたいだからハッキリ言っておく。 君は十分に魅力的な女性だ‼」
「あ、ありがとう…」
まさかギルからそんな発言を言われるとは思わなかった。
「ギル、気を使ってくれているのね?」
「今のは本心で言っているだけで、別に気を使った訳じゃない。」
そんな事を言われても、私とギルは10歳くらい離れている。
そんな私に大人のギルが恋愛に発展するとは思えない。
そうじゃなくたって、ギルの周りには素敵な女性達が大勢いる。
「だからリアの事は真剣で考えようと思っている。」
「いやいや、本気にならないでよ。 ルーナリアも冗談で言ったようなものなんだし…」
「そうだとしても、こんな浮ついた状態ではリアに失礼に当たるしな…だから答えが出るまで少し待っていて欲しい!」
ギルはそれだけ言うと店を後にした。
ギルがどこまで本気なのかが分からないけど、まぁ私を選ぶという考えには至らないだろう。
それから暫くして…今度はレイヴンが店にやって来た。
「リアーナ、昨日の事なんだが…」
「ルーナリアの発言の事ですよね? ルーナリアも少し悪ふざけが過ぎ…」
「私はリアーナの事はそう言った目で見ていなかった。」
レイヴン深々と頭を下げて来た。
周りから見られたら、私はフラれた様に見えるだろう。
だがレイヴンは理由を説明してくれた。
レイヴンは…男色と言うわけではないが、女性があまり好まないと言う話だった。
辺境伯の仕事は主にベルシュナーデ王国の防衛と言う任がある。
その為に最前線で戦いに赴かなければならない。
数年前に両親が魔物の襲撃で命を落としてから、レイヴンは二十代前半で辺境伯と公爵の地位を受け継いだ。
若くして公爵の地位を受けたレイヴンには、多くの婚姻の知らせが届き、社交界では公爵地位目当ての令嬢が押し寄せて来たと言う。
群がって来た女性達のほとんどは、公爵としての地位しか興味を示しておらず…レイヴン本人を見る様な真似をする女性は現れなかったと言う。
「そこで私は婚姻する女性にある条件を付けた。 それは…自分の身は自分で守れる強さを身に付ける事だ。」
レイヴンの母親も元は王国騎士という話だった。
魔物の襲撃で前線が倒されたら、次は本陣に流れ込んで来る。
まだまだ経験不足だったレイヴンは状況を見る為に本陣の方に行き、魔物に殺されそうになった所を両親に救われたという話だった。
その時に両親が死ぬ原因を作ってしまったと言う。
「今は昔と違って…魔物の襲撃はそれほど多くはなくなったとはいえ、全くない訳ではない。 そうなった際に守られるだけの女性は必要なくて、共に戦える女性が必要なんだ。」
冒険者では無い限り、貴族女性は戦いの経験がまるで無い。
でもそれは…レイヴンには必要がないという話だった。
そんな話をしていると、私の隣にはいつの間にかルーナリアが一緒になって聞いていた。
「そう言う話なら、お姉ちゃんは優良物件じゃないかな? 魔法は使えるし、魔物どころか魔獣すら圧倒出来る力はあるし、貴族で爵位に伯爵位があるんだから…」
「ちょ、ちょっとルーナリア!」
「レイヴンさんには悪い話では無いですよね?」
レイヴンは私を見つめて来た。
ついさっきは私の事は眼中に無い様な事を言ってフラれた感じになっていたけど…?
「別にお姉ちゃんだって今すぐ答えが欲しいと言うわけでは無いだろうし、レイヴンさんがもう少しじっくりと考えてみたら如何ですか?」
レイヴンは少し考えた後に一言「分かった」というと、店を後にして行った。
「お姉ちゃん、レイヴンさんは脈有りかも知れないわよ。」
「ルーナリア‼︎」
ルーナリアは舌を出してウィンクすると、そのまま2階へあがって行った。
流石にレイヴンと私は無いかなぁ?
ギル以上に年上だし…
そんな事を思いながら考えに耽っていると…次はソーマが大きな花束を持って現れたのだった。
その花束は薔薇の花束で赤や黄色や青や黒やピンクなど…色々混じっていた。
薔薇の花言葉は薔薇の色によって違うけど、根本的な部分で言えば…愛を送る言葉だったとティファルさんから聞いた事があった。
ただ…赤一色とかピンク一色なら分かるけど、黒薔薇や青薔薇の花言葉を理解しているのだろうか?
もしも知っていて渡して来たのなら…ソーマの愛が重く感じていた。
ソーマは無言で私に薔薇の花束を渡すと、そのまま店を出て行った。
私はティファルさんにソーマからもらった事を話した。
「ソーマ君は…多分花屋にある全ての薔薇を買い占めたんだろうね?」
「ですよね? じゃなければ、黒薔薇や青薔薇の花言葉を知らずに渡したりはしないでしょうからねぇ?」
黒薔薇には「永遠の愛」という花言葉以外に、「貴女はあくまで私の物」とか「憎しみ」や「恨み」という言葉がある。
青薔薇には「夢叶う」とか「奇跡」とか「神の祝福」という花言葉があるけど、何も言わずに渡しただけで無言で帰られると何を伝えたかったのか意味が分からない。
「多分…愛情表現を現したかったと思うんだけどねぇ?」
「ここまでいろんな色が混じっていると…理解に苦しみますよね?」
…とはいえ、男性から贈り物をされるというのは嬉しい物です。
ティファルさんは薔薇の花束を活けて貰って店に飾る事にした。
それから数日間、3人は店には来なかったんだけど…答えはいつ聞けるのかなぁ?
特にソーマだけは説明が欲しい…
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