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第三章 魔法道具店の開店迄のクエスト

第十七話 社交界

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 私は現在、ドレスを着て夜会に参加していた。

 やる事やってさっさと帰りたいんだけど、パテットが…いや、ディスガルディア共和国の大統領補佐官がテルシェリア王国に来ていたら当然そうなる。

 それにしても…たった数時間程度で良くこれだけの貴族を集められた物ね。

 貴族って暇なのかしら?

 私はこういった夜会にはあまり興味が無い…というかルーナリアと参加していたけど、主役はいつもルーナリアで私はオマケだった。

 両親も私は無能と言い、ルーナリアは有能と言いふらしていた。

 まぁ、ルーナリアの有能さは…会話すれば有能なのかどうかがすぐに分かる。

 見栄を張り、私と比べ、仕舞いには私に虐待していると言い降らす始末。

 そして悲劇のヒロインぶって周りから同情を誘い、私は影でそれを信じた馬鹿な貴族令息や貴族令嬢から虐められる始末だった。

 「やっぱり、パテットは人気だねぇ。 挨拶をする為に貴族達が列を成しているわ。」

 国王陛下は夜会を開く時に私とパテットを発表した。

 パテットは大統領補佐官が来た事で、私はポーション製作者として…ね。

 ただ、私は先程から来る貴族を皆断っている。

 「レオナリア嬢、以前は酷い扱いをして…」

 「良いのですよ、貴方の令息にグラスの中身を頭から掛けられた事なんて…もう気にしておりませんから。」

 「私の娘が以前…」

 「私の足を引っ掛けて転ばしてから踏みつけた事ですか? チクったら殺すと脅迫された事ですか?」

 「くっ……」

 そう言って私の元に来る貴族を追い払っていた。

 私はどの令嬢や令息からされた仕打ちを全て覚えている。

 私に接近して来た理由は、ポーションの融通してもらう為に来ているのがバレバレ。

 全く許す気はないから融通もするわけが無い。

 こんな夜会は早く終わって帰れないかなぁ?

 …なんて悩んでいると、やっと開放されたパテットがこっちに来た。

 「あ~~~やっと開放された!」

 「お疲れ様。」

 私とパテットはやっと一息つけて料理を皿に取っていた。

 「全くもう…相変わらずこの国の貴族はストレート過ぎるんだよね。 アレだけあからさまだと、まともに相手をするのが疲れるくらいにね。」

 「大国のディスガルディア共和国のNo.2が来ているなら、関わりを持ちたいと思ってくる人も多いでしょう。」

 「何べん断ってもしつこいったらありゃしない!…で、リアの方はどうだった?」

 「こっちも過去に起きた事を謝罪してくるんだけどね、貴族は私の事を散々罵倒したし、息子や娘は散々酷い事をしてきた癖に謝罪で許して貰おうと思っているみたいでね。」

 「それだけポーションの魅力があるっていう事でしょ…」

 私とパテットはそんな話をしていると、遅れて入って来た一団がいた。

 それを見て思わず「ゲッ!」っという下品な声を上げてしまった。

 「誰なんだい?」

 「この国の公爵令嬢のサフィール様です。 彼女だけには会いたくなかった…」

 サフィール・レドメンゲル公爵令嬢…かつてはドミニオンの婚約者だった令嬢だった。

 「君はこの国では会いたくない人が多いよね…って、こっちに来るみたいだけど?」

 「はぁ…めんどくさ。」

 私は手で頭を押さえていると、サフィール公爵令嬢は私を見て声を掛けてきた。

 「どうして平民がこんな場所に居るのかしら?」

 そっか、遅れて来たから今回の話を聞いていないのか。

 私はドレスの裾を持って挨拶をした。

 「お久しぶりですね、サフィール公爵令嬢様…」

 「貴女は私の話を聞いていたのかしら? 何故この様な場所に平民が紛れ込んでいるかを聞いているのよ!」

 本当に…この女は面倒臭い。

 本来なら公爵令嬢と婚姻をなさるのは第一王子のドミニク殿下なのだが、あの脳筋は自分の嫁は自分で決めると言って突っぱねた。

 第二王子のドミニティ殿下は一応婚約者は居て、確か侯爵令嬢だったかな?

 あの変人で変わり者のドミニティ殿下と対等に付き合えるという事で婚約した令嬢だった。

 それで…巡りに巡ってサフィール公爵令嬢の相手が第三王子のドミニオンになったんだけど、まぁ、公爵令嬢と言っても長女という訳ではないしね。

 ただ、そんなサフィールも私に婚約者を奪われた形になるから、私に対する当たりが結構きつかった。

 …なんだけど、相変わらずこの人は人の話を聞かないのよねぇ?

 私はパテットを見ると、口元が不適に笑って見えた。

 「君さぁ、失礼じゃないのか? ボク達は国王陛下に呼ばれて来賓として招かれているというのに!」

 「何なのこの子供は! こんな子供まで何でこの会場にいるのよ‼︎」

 それを聞いた周りの者達は顔が真っ青になった。

 止めに入りたい所だが、相手は公爵令嬢なので迂闊に注意しに行ける者はいなかった。

 「この国の貴族は本当に無礼な奴らが多いね、流石田舎者の山猿だけの事はあるよ。」

 「何ですって! 誰の子供よ、この無礼な子供の親は⁉︎」

 すると騒ぎを聞いてか…レドメンゲル公爵がこちらにやって来た。

 「先程から何の騒ぎだ‼︎」

 「お父様、この子供が私に無礼…」

 「よぉ、バスーティアス! 暫く会わない内に随分肥えたな!」

 「ん?」

 レドメンゲル公爵は滅多に呼び捨てにされる事はなくて、パテットの方を向いたが…?

 「この子供が! お父様に向かってなんて口の聞き方をするのよ‼︎」

 すると、レドメンゲル公爵はパテットの前に跪いた。

 「お父様、何をなされているのですか! こんな子供に…」

 レドメンゲル公爵は立ち上がってサフィールを拳で殴ると、サフィールは一回転して地面に倒れた。

 「お久しぶりで御座います、パテット閣下! 娘の無礼をお許し下さいませ…」

 「流石にグーで殴るのはどうかと思うよ。」

 レドメンゲル公爵は立ち上がってサフィールに向かって言った。

 「この方はな、ディスガルディア共和国の大統領補佐官殿であり、遥か昔に魔王を倒した四英雄の1人だ! お前は…この国を滅ぼしたいのか‼︎」

 「え、そんな方とは知らず…」

 「そういえば、バスーティアスには昔に話した事があったなぁ。」

 「レオナリア嬢も申し訳ありません。」

 「いえ、別に構いません。」

 「この方の事は分かりました…が、何故この平民に謝罪などするのですか‼︎」

 レドメンゲル公爵は再びサフィールに手を挙げそうになった。

 パテットの合図で私は魔法でチェーンバインドで拘束した。

 「バスーティアス、流石に状況を考えなよ。」

 「申し訳ありませんでした。」

 私はレドメンゲル公爵を拘束から解いてあげた。

 「レオナリア嬢はこの国でポーション開発した製作者だ。 止まった供給が再開されるかもしれないという話だったのに…」

 「私はこの国ではもう作らないので、この国には流通という形で流すつもりでしたが…」

 私はサフィールを見てから言った。

 「彼女からされた仕打ちは数多くありまして…流通を考えようかと思っています。」

 流石に私のこの発言は公爵と言えども焦り出した。

 「そ、それでは慰謝料をお支払い致しますので…」

 「でもそれは、公爵家でお支払いするというだけであって…別にサフィール様は何もなさらないのですよね?」

 「まぁ…」

 私は過去に酷い目に遭わされた令息や令嬢達に復讐しようと思った。

 復讐と言っても…酷い目に遭わせる訳では無い。

 酷くは無いけど、過酷なだけで…。

 私は拡声魔法という声を大きくする魔法を使って会場内に伝わる様に叫んだ。

 『この会場にいる以前私に酷い仕打ちをしてくれた令息と令嬢にお伝えします!』

 すると会場にいた者達は私の方に向いた。

 『私に仕打ちをした方々の事は、で不問に致します。 その条件とは、ここにいる貴族達は領地はお持ちですよね? その領地から1ヘクタールを使用して、令息や令嬢には薬草を栽培してもらいます。 土を耕し、作物を植え、水を与えて面倒を見て、成長したら収穫をする…これだけの事です。』

 貴族の令息や令嬢にこんな事が出来るわけがない。

 『ただし、成長の仕方を他人に聞く事は構いませんが…仕事をするのはあくまで1人でお願いします。 私には全てを見通す鑑定という魔法が使えますので、第二、第三者が手伝った場合はすぐに分かりますので不正はなさらないように…』

 こんな事を言われたってやろうとする者は居ないだろう。

 なので、こう言ったらどうなるかな?

 『収穫量や品質によって…ポーションを王国とは別に融通致します。 そしてこれを成した方から規定の量のポーションが届く仕組みになりますが…如何致しますか?』

 すると会場のあちらこちらから声が上がった。

 だけど…会場を後にしようとする者は見当たらなかった。

 どうせ、明日からやる!

 そういう者達が多いのだろう。

 なのでこんな事を言ってみた。

 『私の話を聞いて何人かが会場を後にしましたね? 言っておきますが、ポーションは数に限りがありますし、仮に粗悪品を薬草と称して納品したら今後一切の取引は致しませんので…でも、この会場に残っている者達よりも先に会場を後にした人達は見どころがありますし…ポーションを融通する権利が与えられるかもしれませんねぇ…?』

 私がそう言うと、会場にいた貴族達が一斉に会場を後にした。

 残った者がいるとすれば…王族と一部の者達くらいだった。

 「さて、これでお開きになるでしょうし…さっさと帰り支度を始めましょうか!」

 「リアも人が悪いな、たった1人で農民でもない貴族が1ヘクタールの畑を管理出来ると思っているのかい?」

 「無理でしょうね、でもポーションが絡んで来るとどうなるかな?」

 私とパテットは、国王陛下に挨拶をして会場を後にした。

 城に泊まっていってくれと言われたけど、それは丁重に断りを入れた。

 私は転移魔法を使おうとすると、パテットに止められた。

 「せっかくテルシェリアに来ているから、帰る前に立ち寄りたいところがあるんだけど…良いかな?」

 「それは構わないけど、街の中?」

 「ううん、街の外だよ。 案内するからブリオッシュに乗って行こう!」

 そう言って私はパテットの案内で空を飛んでいた。

 一体…どこに行くつもりなんだろう?
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