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第三章 魔法道具店の開店迄のクエスト

第十六話 国王陛下との面会

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 私とパテットは謁見の間の敷かれた赤い絨毯を歩いて国王陛下の玉座の前に来た。

 私は跪いて頭を下げ、パテットは立ちながら軽く会釈をした。

 すると国王陛下は立ち上がって、パテットに向かって深くお辞儀をした。

 「お久しぶりです、パテット様!」

 「久しぶりだね、ドミニヴァス…最後に会ったのは君がまだ王子の頃だったかな?」

 「左様で御座います。 戴冠式の折には大統領がお見えになられましたので…」

 国王陛下の名前ってドミニヴァスって言うんだ?

 初めて知った。

 「それと、レオナリア嬢も久しいな…」

 「陛下におかれましては…」

 「良い良い、其方が戻って来てくれたことを嬉しく思うぞ!」

 何かいつの間にか戻って来た事になっている?

 別に承認許可を貰いに来ただけで、戻って来たわけではないんだけどなぁ…

 「して…二人が揃ってお越し頂いたのはどう言った事でしょうか?」

 「ドミニヴァス、リア…いや、レオナリアにポーション製作者の承認を与えて欲しいのだよ。 出来れば署名でね。」

 「それは一向に構いませんが…レオナリアはこの国に戻って来てくれた訳だし。」

 「いえ、陛下…私は戻るつもりはありませんでした。 他国でもポーションを製作する為の製作者の承認許可を欲しくて参っただけです。」

 「何だと⁉︎」

 やはりこういう言い方をすると承認は貰えないかな?

 するとパテットは任せて…という表情をした。

 「ドミニヴァス、レオナリアに製作者の承認を与えてくれないかな? レオナリアはテルシェリア王国に戻らない代わりに、製作したポーションをこの国にも流通させるから。」

 「…どういう事でしょうか?」

 「レオナリアはね、我が共和国の大統領であるグランマリー・バーンシュタットの血縁者であり、ディスガルディア共和国の次期大統領候補として名が上がっているんだよ。」

 「「え?」」

 私と国王陛下は声が合わさった。

 国王平気は驚きを隠せないという驚きで…

 私はそんな話を一切説明されていなかったので、戸惑いを隠せなかった。

 …っていうか、そんな話になるなら前もって話しておいてよ!

 私はパテットを見ると、軽く舌を出してウィンクした。

 そうだった、パテットはこういう性格だった…

 「ディスガルディア共和国・大統領のグランマリー様の…ですか?」

 「あぁ、そうだよ。 リアの…レオナリアの髪と目の色がそう物語っているからね。」

 国王陛下は私の髪と目をマジマジと見ていた。

 「言われてみれば確かに…大統領のグランマリー様と同じ色ですね。」

 「この世界でこの髪と目の色を持つ者は、代々ディガルディアを治める者の証となっているので…だからレオナリアはこの国に戻る事はなく、ディスガルディアで面倒を見ようと思っていたんだけどね。」

 国王陛下は頭を抱えて溜め息を吐いていた。

 レオナリアが戻り、ポーションを製作から販売を行う事で経済状況が潤うのではないかと…

 ただ、レオナリアを無理に引き留めた場合は…ディスガルディア共和国を敵に回す事になりかねないという話に発展するかもしれない事に。

 「しかし…ですな、レオナリアは我が国の民でもあり…」

 「ドミニヴァス、君は…ディスガルディアを敵に回したいの? 飛空挺船団が20隻もあればこの国を制圧出来るし、30隻で世界の地図から消す事も出来るよ。」

 「いえいえいえいえ…滅相も御座いません‼︎」

 国王陛下は疲れ果てた様子で荒い息を吐いていた。

 私は初めて聞く言葉にパテットに小声で聞いた。

 「パテット、飛空挺って何?」

 「大いなる空を駆ける船の飛空挺、ディスガルディア共和国には100隻を保有しているんだ。」

 「ディスガルディアって軍事国家だっけ?」

 「違うよ。 だけど、魔王討伐以降に人との小競り合いや物資の奪い合いで戦争を起こそうとした国があってね、それを懸念したグランマリーが抑制する為に作った船なんだよ。 それで世界の国の王を抑制しているんだ、馬鹿な真似を考えるのなら火を吹くよってね。」

 「それを脅しに使うってどうなの?」

 「あくまでも冗談だよ。」

 冗談にしてもタチが悪いでしょ!

 するとドミニティが話に参加して来た。

 「パテット様、それは我が国と宣戦布告と取れる発言になりますが…」

 …と言いつつ笑ってる気がするんだけど?

 「ドミニティ、余計な事を言うな! お前は飛空挺の戦力を知らんからそんなことが言えるんだ! 飛空挺1隻でドラゴンを葬る事が出来るんだぞ‼︎」

 「な…何ですってぇ~⁉︎」

 うわ~芝居掛かった態とらしい演技感満載ね。

 この感じからすると、ドミニティ殿下は私の味方をしてくれると思って良いのかな?

 「父上! 此処は逆らわずに承認をするべきですよ! レオナリアはこの国には留まりませんが、ポーションの供給は続けてくれると言う話ですし…」

 ドミニティ殿下はそう言って私にウィンクした。

 あ、ここがタイミングか!

 「陛下、私は承認だけ欲しいのです。 それ以外にこの国に危害を加える様な事は致しません!」

 「あぁ、ボクも少し意地悪をし過ぎたね。 やる事をしてくれたら何もしないと約束するよ。」

 「承認を戴けるのなら、陛下にこのポーションを進呈致します。」

 私はドミニティに黄金色のポーションを渡した。

 国王陛下はドミニティから黄金色のポーションを受け取った。

 「これも…ポーションなのか?」

 「はい、父親が持って来た粗悪な薬草では作れなかった中級以上のポーションで…これはそれの最上位のポーションです!」

 国王陛下はその黄金色のポーションを恐る恐る口にしてから一気に飲み干した。

 すると…国王陛下の呼吸が安定し?

 「これは凄いな! 今迄辛かった体の痛みや呼吸が楽になったぞ。」

 「このポーションは陛下の病を完全に除去させる治癒ポーションです。 残念ながらこの国では薬草の関係上で作る事は叶いませんが…他の国でなら作る事は可能なんです。」

 「なるほど、これは確かにこの土地での薬草では無理だろうな。」

 国王陛下は宰相を読んで署名にサインと国璽の判を押した。

 これで承認許可を得る事が出来たわ!

 なんか脅迫名が事をしたのは否めないけど。

 後はさっさと帰りたい所だけど…まだ帰れないのよねぇ?
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