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第三章 魔法道具店の開店迄のクエスト

第十四話 パテットの正体

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 私とパテットは転移魔法でグランマの家がある樹海の家の前に転移した。

 「此処も随分と久しぶりだね、最後に来たのは100年前くらいだったかな?」

 「そうですね、軽く1世紀は過ぎていましたから…」

 「普通にそんな会話をしているのが凄いわ。」

 私はグリモアールを出現してから扉に近付けて鍵を開けた。

 私とパテットは部屋の中に入ると、グリモアールが反応して中の照明がついた。

 パテットは中をキョロキョロ見て懐かしんでいた。

 「相変わらずというか、ごちゃついている部屋だね。」

 「これでも綺麗にしているんですよ…ブリオッシュが。」

 「リアーナ嬢にお任せすると余計に汚くなりますからね。」

 「あははーリアは不器用そうだもんね。」

 そんな風に笑っていたと思ったら、急に真面目な顔で聞いて来た。

 「それで…そのレオナリアという子はどこにいるんだい?」

 私はストレージから解除薬をを取り出して飲み干した。

 すると赤い髪と瞳の色が緑色に変化…戻った。

 「御初にお目に掛かります、パテット・テンガーロット様…私がレオナリア・テールナールと申します。」

 「…なるほど、その緑色の髪と瞳は確かに緑園と同じ色だね。 その色になって初めて緑園の血縁者だと理解出来たよ。」

 「では、此処まで来る事になった経緯をお話し致します。」

 私はパテットに今迄テルシェリア王国で起きた事を事細かく説明した。

 パテットは頷きながら聞いていたけど、話を聞き終わると難しい顔をしていた。

 「それは確かに厄介な話だね。 簡単に国王から承認を得られれば…何て言ってごめんね。」

 「いえ、それでパテットに相談したかったんだけど…」

 「あれ? 様はもう無しなのかい?」

 「付けた方が良いですか?」

 「いや、むず痒くなるから良いよ。」

 「じゃあ、何で要求したのよ…」

 私とパテットは笑い合った。

 「それにしても、国外追放されていたとはね…テルシェリア王国は他国に比べて辺境にある閉鎖的な国だから、魔力持ちと分かれば躍起になって引き止めようとするからね。」

 「多少の貿易は行ってはいるんですけどね、ベルシュナーデ王国に比べると盛んな方ではありませんが…」

 「こうなって来ると簡単に話が通じる相手ではないね…と言いたい所だけど、実は話が通じる切り札があるんだよね。」

 「英雄の威光を使用するんですか?」

 「英雄の威光…何それ?」

 「え…魔王を倒した勇者パーティーは、四英雄として後世に語り継がれたって…」

 「あぁ、そっち? ボクが名乗りあげても、信じないんじゃないかな? 300年前の話だし、本人かどうかの確認なんか取れないからね…それに後世に伝わったボクの姿って凄く美化された肖像画になっているし…」

 私は以前に魔王を倒した四英雄の肖像画を思い出した。

 パテットは今の姿と違って…物凄い美少女に描かれていて、確かにあの肖像画では似ても似付かない姿だった様な気がする。

 「リア、何か失礼な事を思ってないかな?」

 「いえ、思っていません! それで、切り札というのはどんな物なのですか?」

 「まぁ、良いや! 勇者パーティー…いや、四英雄が魔王を倒した後にどんな風に過ごしていたか知っているかい?」

 「いえ…後世に伝わっているのは、魔王を倒した四英雄は…勇者は聖女と結婚して国を治めて、残りの二人は姿を消した…と。」

 「勇者と聖女がメインの話という事は、教会の連中が考えそうな話だね。 ボクと緑園はどうでも良いのか…だからボクの肖像画が似ても似つかないんだね。」

 「えっと…?」

 「あぁ、こっちの話。 えーっと…そうそう、ボク達が魔王を倒した後に勇者と聖女は国を治めた…という話は合っているよ。 ただし、その国はもう無いけどね。」

 「え?」

 そういえばそうよね、勇者と聖女が国を治めた…という話は書かれていたけど、何処の国とまでは書かれていなかった。

 私が読んだ四英雄物語も改訂版だったし…80年前の。

 「どうして国は…」

 「ちょい待ち! 話が逸れたので戻す事にするよ、勇者と聖女の話はいずれね。」

 「あ、はい。」

 凄く気にはなるんだけど、今は切り札の話を聞かなくちゃね!

 「ボクと緑園は勇者と聖女の国を治めた事を見届けてから、2人で放浪に旅をした。 魔王を倒した後とは言っても魔物が居なくなった訳ではないからね。 数年掛けてボクと緑園は旅の終着点という場所に辿り着いた。 リアはディスガルディア共和国は知ってる?」

 「遥か北方にあるヴェルギルス大陸にある国の事ですよね?」

 「そう、ボクと緑園はその国に辿り着いたんだけど…其処は人が時が止まったみたいに動かなくてね。 ボクと緑園はその原因を掴む為に色々調査をしていたんだけど…ある時にその原因を突き止めることが出来たんだけど…」

 「何かあったの?」

 「色々調べていく内に分かったんだけど、そこは古代に繁栄した国でね…その時代ではあまりにも高度な技術を持っていたんだけど、他の国からその技術を手に入れようと何度も襲撃にあって、それに嫌気がさした国の人々達は…時を止める装置を作ったんだよ。」

 「何というか…信じられない話ね?」

 「ボクと緑園はその装置を起動した…までは良かったんだけど、その時に装置から声がしたんだよ。 王国を起動する代わりにある条件を言われてから、ボクと緑園の生の時間を止められたんだよ。」

 「その条件って?」

 「王国の国民達の時を動かす代わりに、ボクと緑園の生の時間を止める…というのと緑園はこの国の行く末を見届ける…だったかな?が条件だったんだ。 緑園はディスガルディア王国の技術に興味津々だったし、死を気にしないのであれば研究に没頭出来るからといって喜んでいたんだけど。」

 「ならパテットは?」

 「ボクは………この話はいずれまたしてあげる。」

 何か悲しそうな顔をしているけど、パテットが話してくれる時に聞こうと思った。

 「ごめんね、また話が逸れちゃった。」

 「いえ、面白い話が聞けたから別に良いけど…」

 「それで切り札の話に戻るんだけど…王国の国民達は数世紀の時を得て目覚める事ができた。 すると、王国の国民達は装置から起動してくれたボクと緑園を国の代表者として治めてくれないかと言われたんだけど…緑園は賛成だったんだけど、ボクはあまり気乗りがしなくてね。 緑園はディスガルディア王国の女王として君臨し、ボクは当てのない旅に出たんだよ。」

 「ん? ちょっと待って…! なら、グランマとパテットがこの場所で会ったという話は?」

 「あぁ、それはね…ディスガルディア王国の技術って、リアの作った魔道具より遥かに劣る物で…まぁ、骨董品みたいな物かな?」

 「骨董品?」

 「とてもじゃないけど、こんな骨董品を他国が狙うとは思えなくてね…王国の国民達は、その骨董品を現代風に作り変えて世に広めたのが魔道具になったという訳。 まぁ、今から200年くらい前の話だけど…」

 「それで切り札って?」

 「そうだね、その話をしないとね。 緑園が女王となって国を治めている時に、国民のある男性と結婚をして子供が生まれたんだ。」

 「不死なのに子供が出来るの?」

 「不死というだけで体は女性のままだからね、ただ…旦那さんの方は不死ではなかった為に寿命を迎えて普通に天国に旅立って行った。」

 「そんな事があったのね…」

 「旦那さんが亡くなった後の緑園はそれは酷い有様で、死ねない体に何度も何度も心臓にナイフを突き立てて…何度も自殺を計ったんだけどやはり死ねなくてね、そして次は死ぬ為の方法を模索していたんだ。 だけど、不死はかなり厄介な物でね、その時の緑園は目も当てられない状態で…」

 愛する人が先に死んだらそうなるんだね。

 「そしてこんな所にいたらどんどん悪い方向にしか考えなくなると思って、緑園を連れて再び旅に出たんだよ。」

 「女王なのに国を出て平気なの?」

 「あー…その当時は息子さんも亡くなってしまっていて、孫の代になっていたんだけど…緑園は孫に腫れ物扱いされる様になっていてね。」

 「それも不死が原因?」

 「そう…何十年経っても見た目の姿が変わらない事を不気味だと思ったんだろうね。 孫達は王国を出て何処かの地に移って暮らし始めてね、ボクは国民に王政の廃止し共和国として新たにスタートさせようとしたんだけど、やはり代表者は必要という事になって…」

 パテットはお茶を飲んでから話を続けた。

 「ボクはこんな状態の緑園では国を任せるのは無理だと言って、しばらくの間だけ休息を与えてくれと頼んだんだよ。 すると国民達はそれを了承して、仮の代表者を大統領に任命して任せて国を離れたんだ。 そして長い間を旅をしていて…安住の地として緑園が生まれ育ったこの家で暮らす様になったんだ。」
 
 「じゃあ、グランマは今は?」

 「恐らくディスガルディア共和国にいるんじゃないかな? そしてやっと切り札の話になるんだけど…リア、君はディスガルディア共和国の大統領の正当な血縁者になるんだよ。」

 「正当な後継者? なら母も祖母も当て嵌まるんじゃないの?」

 「ごめん、言葉が足りなかった。 そのを持った者が血縁者の証になるんだよ。 正当な…というのはそういう意味。」

 グランマが一族の中では嫌われ者と言っていた意味が分かった気がする。

 グランマの性格からすると、子孫達がどうなったのかを気になっていたんだろうね。

 母親はグランマの事を嫌っていたけど、グランマが母親を見る目は何処か物寂しそうな感じだった。

 「あれ、そうなると…? パテットの立場ってディスガルディア共和国ではどういう感じなの?」

 「ボクは大統領補佐という立場かな? 面倒事は緑園に押し付けた形になるから、ボクはその地位にいる。 でもまぁ、緑園が何かの事情で国を離れる際には…ボクは代わりを務める事になるけどね。」

 「なら血縁者の私よりもパテットの方が立場は上じゃないかな?」

 「………もしかして、ボクも一緒にテルシェリア王国に連れて行こうとしている?」

 「だって私の言葉だけよりは信用されると思うんだけど…」

 「あーーーやっぱりそうなるのか。」

 貴重で面白い話が色々聞けたけど、1番はグランマのいる場所を聞けたのは嬉しかった。

 後は…テルシェリア王国でポーション製作者の承認を得るだけなんだけど?

 何だかまだ一波乱ありそうな気がするなぁ?
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