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第三章 魔法道具店の開店迄のクエスト

第六話 色々やらかしてしまった…後編

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 ホーンラビットの生息地では、ホーンラビット達が巣穴に出たり入ったりしていた。

 そしてギリッシュはというと?

 私の少し後方で腕を組みながら私を監視する様に立っていた。

 正直言って、見つめられていると色々とやりにくい。

 私の実力を先程の女性達から聞いているから、恐らくはすぐに助けに入れる様に準備をしているんだろう。

 私は杖を構えてから睡眠魔法を唱えて…振り返ってギリッシュに放ってみた。

 ところが…ギリッシュに睡眠魔法は効かなかった。

 「お嬢とあの男にはレベル差がありますので、今のお嬢の魔法はほぼ効きませんね。」

 「私の実力を見せるのはあまりしたくないから眠らせようと思ったのに…」

 「流石にギルドランクAというところでしょうか? お嬢の並の弱体魔法ではほぼ効果はありませんね。」

 「だとすると…実力を見せなきゃダメかなぁ?」

 私は深い溜め息を吐くと、諦めながらギリッシュに言った。

 「少し目を閉じていて貰えませんか?」

 「そんな事をしたら、リアが危険な場合に陥った時に守ることが出来ないだろう…」

 そりゃそう言うよね、私の護衛で来ているんだから。

 私はもう実力を隠すのはやめて、地面に手を置いて…地属性魔法のアースクエイクを放った。

 するとホーンラビットの周辺に地震が起きて、ホーンラビットが驚いて巣穴から飛び出して来た。

 私は宙にファイアボールをホーンラビットの数だけ出現させると、ホーンラビットに向けて放った。

 すると、ホーンラビットに全て命中し倒す事が出来ると、ホーンラビットの死体を全てストレージに収納した。

 「これで討伐完了!」

 そう言ってギリッシュの方に向くと、ギリッシュは呆けた顔で私を見ていた。

 「これで依頼は達成出来ました。 護衛をして下さり有り難う御座います。」

 私はお辞儀をしてから街の方に戻ろうと歩みだすと、ギリッシュは私に向かって叫んで来た。

 「リア、君の魔法は威力の弱い魔法では無かったのか?」

 「あれは…あまり目立ちたくなくて、試験の時は態と威力を抑えて魔法を使っただけです。」

 「それに君は、詠唱を全く唱えていなかったよな⁉︎」

 「私は無詠唱が使えます。 流石に上級魔法とかになると無詠唱では無理なので、詠唱を唱える事はありますが…」

 「討伐したホーンラビット達が消えたが⁉︎」

 「あれはストレージという空間収納魔法で、生物以外は全て収納する事ができます…って、くれぐれも秘密にしておいて下さいね。」

 私はギリッシュに念を押しておいた。

 ギリッシュは頷いて見せると、何やら考えている素振りを見せた。

 「リアが頑なに俺の事を拒んだのにはこういう理由があったからなのか…」

 「えぇ、だから1人で大丈夫だと…」

 「これなら確かに1人でも大丈夫そうだな、だが慢心して油断はしない事だな。」

 「大丈夫です、それはよく言われていますので…」

 私とギリッシュは街に向かって歩き出していた。

 そして歩きながら話をしていた。

 「リアの能力ではランクアップはすぐだろうが、登録したのはつい先日という話だったが…何でそんなに急いでいるんだ?」

 「私はお店を開きたくて…低ランクが店員だと、高ランクの方の中でタチの悪い人が脅しを掛けて商品を奪って行くという話を聞いたので。」

 「うむ、高ランクの冒険者の中にも確かにそういう輩もいるな。 まぁ、どういう店を開くかにもよるが…」

 いずれはお店を開くのだから、何を売るかくらいは話しても平気かな?

 「ギリッシュさんは、レオナリア・テールナールという人は御存知ですか?」

 「いや、知らないな…」

 「テルシェリア王国でポーションを開発した女性です。」

 「ポーションを開発したのは女性だったという話は聞いていたが、名前までは知らなかった…それで、その人物がどうしたのだ?」

 「私はその人と友達で…私が冒険者になると言った日に彼女は心配してポーションをを分けてくれたのです。」

 「あのポーションか…」

 ギリッシュは腰のポーチからポーションを取り出した。

 「それは下級ポーションで一般に販売されていた物で…」

 私はストレージから中級ポーションを取り出した。

 「これは下級よりも効果の高い中級ポーションです。」

 「ちょっと待て、売られていたポーションが下級という事は…中級はもっと高価になるんじゃないか?」

 「私は元の値段は知りませんが、非常に高価で一部の者にしか購入出来なかったと話を聞きました。 私はお店を開いて売る商品は、魔道具の他にポーションを販売しようと思っているのです。 それも良心的な値段で…」

 「なるほど…だから早くランクを上げるというのはそういう事か! 確かにポーションを販売するとなれば、先程言った輩が奪いに来るという話もあり得なくはないな…」

 「それに良心的な価格で売るという話は、彼女からの願いでもあるのです。 それによって多くの人を助ける事が出来るようになりますからね。」

 「確かに…リアはポーションがこの国で幾らで売られていたか知らないんだよな?」

 「えぇ…」

 「銀貨30枚だ。」

 「たっか! だから一部の富裕層にしか買えなかったのね…」

 あんな量産的な質に悪い薬草を使用して作った物がこんなに高値で取引されていたら…両親の高価な宝石を身に付けていた理由が分かったわ。

 「しかしポーションを良心的な値段で販売するとなると…転売目的で金に物を言わせて買い占める輩が出て来ると思うが?」

 「あ、そういう対策も考えていますので大丈夫ですよ。 転売が出来ないように魔法を施す…とか、買い占めるという行為が出来ない様に購入数を制限するとか。」

 「ふむ…先日俺が貰ったポーションが下級で、リアが持っているのは中級と言っていたが…上級ポーションというのもあるのか?」

 「ありますね、流石に中級以上は良心的な価格…というには無理になると思いますが。」

 ギリッシュは立ち止まって何やら難しい顔で考えていた。

 そして私にこう言った。

 「リアに今度紹介したい者がいるので会わせてあげよう。」

 「紹介したい人…ですか?」

 「あぁ、俺と同じ高ランクの冒険者で…俺やそいつ等がリアが店を開く際に後ろ盾になれば、無茶な事をしでかす事は無くなるだろ? 無茶を通そうとする輩には、俺達を敵に回すという事になるからな…」

 あ、それは物凄い心強い!

 私もランクを上げるのが目的の1つだったけど、私だけでは正直言って不安が無かった訳ではないからだ…けど?

 「当然だけど…見返りを要求されるのですよね?」

 「高ランクの冒険者はそれなりに金を稼いでいるので、後ろ盾をするからポーションを寄越せなんて言わないさ。 ただ、販売数を少し融通してくれると助かるがな。」

 ちゃっかりしてるな…けど、その程度の見返りなら問題は無いか。

 私とギリッシュは街に帰ってから冒険者ギルドに顔を出して、討伐依頼達成してFランクにランクアップした。

 私だけなら怪しまれていただろうけど、ギリッシュが側にいたので問題は無かった。

 私はギリッシュにお礼をいうと、ギリッシュは「またな!」と言って去って行った。

 私はその時、「またな!」の意味を理解していなかった。

 とりあえずはこの調子でランクを上げて行けば…と思っていたんだけど、討伐依頼を受けた際に何故か毎回ギリッシュも着いてきた。

 あまり…ギリッシュには着いて来て欲しくなかったんだけど、私は断ってもギリッシュが勝手に着いて来るので諦めた。

 私は諦めて同行を許していたんだけど、当然だけどソレを快く思わない人物達もいる訳で…?

 ある時、依頼を受けようとカウンターに行くと後ろから声を掛けられた。

 振り返るとそこには、以前ギリッシュと親しそうにしていた女性達だった。

 あぁ…やっぱりこうなるよね?
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