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第三章 魔法道具店の開店迄のクエスト

第三話 ナンパ男と黒騎士

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 「ちょっと待ちな、お嬢ちゃん。」

 「何でしょうか?」

 その男は入り口の横で壁にもたれ掛かりながら声を掛けて来た。

 見た目的には20代前半というところでしょうか、筋骨隆々というわけではなくスラリとした体格で…前髪の先端が上に跳ねている様な髪型をしていた。

 「お嬢ちゃんは初心者だろ? 1人きりだと危ないから俺が付いて行ってやろうか?」

 「親切な人もいるも…」

 「お嬢、これは親切では無くナンパという…女の体目当てのいやらしい男です。 そういえば、こういう男がいるのを忘れていましたね…自分の落ち度でした。」

 だからか、私の顔を見ずに体の方ばかり見ていたのね。

 「いえ、結構です。」

 私は丁寧にお断りをした…筈なんだけど、ナンパ男は諦めなかった。

 「無理をするなよ、お嬢ちゃんだけだと危険だぜ!」

 「私には貴方と一緒にいる方が身の危険を感じます。」

 ドミニオン…とはまた違うタイプの不快感を感じるわね。

 こんな人を見て親切な人に見えた世間知らずの自分が恥ずかしいわ。

 私は何とかギルドから出ようとするけど、ナンパ男は入り口を塞いで通れなくしていた。

 「お嬢ちゃん、本当に危険なんだぜ!」

 「私の依頼の場所は街のすぐ近くの場所ですので…」

 すると私とナンパ男とのやり取りを見ていた周りの人達が騒いでいた。

 「バロックの奴はまたかよ。」

 「新人の女を見ると必ず声を掛けるよな。」

 「助けてやるか?」

 「いや、あの女って自称魔法使いのショボい魔法しかできなかった奴だろ?」

 「価値がある奴ならともかく、価値が無いのなら助ける必要は無いだろう。」

 周りの人達はリアーナを助けてくれる様子は無かった。

 「たとえ街の近くだとしても、門を越えれば盗賊や悪党はいるんだぞ‼︎」

 しつこい…どう言えば開放してくれるんだろう?

 私の言い方が甘過ぎたのか…ハッキリ言うことにした。

 「不快なのでやめて貰えませんか?」

 「不快だと?」

 「えぇ、不快です! 寝る前に明かりを消した後に、台所に現れるすばしっこくてカサカサ動く黒光りしたアレと同じくらいに不快なんです!」

 私はハッキリとそう言った。

 私の言葉を聞いていた周りの人達から笑い声が上がった。

 「あの嬢ちゃんやるじゃねぇか!」

 「新人にしては…結構気が強い奴なんだな。」

 すると、虚仮にされたと思ったナンパ男は私の腕を掴んで言って来た。

 「下手に出ていれば…あまり調子に乗るなよ!」

 私は振り解こうとしたけど、ナンパ男の握力が強過ぎて振り解く事が出来なかった。

 するとナンパ男は私を外に連れ出してから勝手に歩き出した。

 「ど、どこに連れて行くつもりよ⁉︎」

 「俺に恥を掻かせたんだ、それ相応の償いをしてもらわねぇとなぁ?」

 私は力を入れて見たけど、ナンパ男の力の方が強くて抵抗も虚しく終わった。

 このままだと、本当に何処かに連れて行かれるかもしれない…そう思って周囲を見るが、誰も助けに入ろうとする者は居なかった。

 私は目立つ事を避けようと魔法を使わないつもりだったけど、この際は仕方ないと思って魔法を放つ準備をしていた。

 すると、私の腕を掴んでいるナンパ男の腕を、掴んだ者が現れた。

 「あぁ…んだよ‼︎」

 「其方の女性が嫌がっている素振りが見えたのでね、離してやってはくれないか?」

 私は声をした方を見ると、そこには黒い鎧を着て黒髪黒目の長髪の男が立っていた。

 黒騎士…というイメージだった。

 「お前…俺が誰だか知っているのか! 俺はランクEのバロックだぞ‼︎」

 「俺はランクAのギリッシュというのだが…」

 「この女は俺の女でこれから…って、黒騎士ギリッシュ! 瞬殺の処刑人のか⁉︎」

 「俺の事をそう呼ぶ奴もいるな…所で君は彼の女という話だが?」

 「いえ、違います! ギルド内で声を掛けられて、何度も断ってもしつこくて…そうしたら強引に腕を掴まれて連れて行かれそうになって。」

 ギリッシュという男がバロックの掴んでいる腕に力を込めると、バロックの腕から骨が砕けた音が聞こえた。

 するとバロックは地面に倒れて腕を押さえながらのたうち回っていた。

 ギリッシュはバロックの髪を掴んでから、「二度と彼女に近付くな‼︎」というと、バロックは怯えた表情をして何度も頷くとそのまま走り去って行った。

 ギリッシュは私の方に向いて聞いて来た。

 「大丈夫だったか?」

 「お陰で助かりました。」

 「奴に掴まれた腕が赤くなっているが…」

 「これくらいなら大丈夫です。」

 手っ取り早く回復魔法を使うのが早いんだけど…今はあまり目立つ事は避けた方が良いとのブリオッシュの言葉だったので、私はカバンから瓶を取り出して中の液体を掴まれていた赤くなっている場所に垂らした。

 すると少し腫れていた掴まれていた場所が綺麗に消えた。

 「凄いな…君はポーションを持っているのか!」

 「これは、友人から冒険者になるんだったら持っておきなさいと渡された物なので…」

 …という事にした。

 考えてみれば魔法もそうだけど、ポーションも同じ位に珍しい物だった。

 私は少し軽率な行動をしてしまったと後悔した。

 「ポーションは最近、テルシェリア王国からの供給が止まってしまってね。 俺もどうにか手に入れたいと思っているんだが…?」

 「私も友人から渡されたポーションは残り2本しか無くて…」

 まぁ、私がポーションを作らなくなったので供給が止まるのは仕方ないでしょう。

 私が作れる物ならルーナリアも作れるとか父親は言っていたけど、魔力が全く無いルーナリアが完成なんて出来る訳がないから供給が止まってもおかしくは無いわね。

 また作ろうと思えば作れるしね。

 私は今回の感謝の気持ちとしてポーションを1瓶上げる事にした。

 すると、あの程度の事でポーションは高すぎるという事で…ギリッシュは私に銀貨5枚を渡してくれた。

 「感謝するよ。」

 「私の方こそ助けて頂きありがとう。」

 私とギリッシュはそう言った後に別れたのだった。

 「お嬢、お礼としてポーションを渡してしまった時はどうかと思いましたが、思わぬ所で資金を得られましたね。」

 「だけど、銀貨5枚って少し高過ぎないかな?」

 私が使っていた薬草はそれほど高い物を使用していた訳ではなかったから、効果もあまり高く無い…薬草よりは多少効能が高い程度なので、値段的には安い物だと思っていたんだけど。

 そういえば…作ったポーションを父親が販売する様になってからやたら高価な宝石類を身に付けるようになったのよね。

 結構ぼったくったのね。

 「そうですね…元の値段はいくらだったのでしょうか?」

 ギリッシュが銀貨を渡してきた事を考えると…相当な金額でこの国では売られていたんだろう。

 私は雑貨屋に行く事なく、宿を探してチェックインをした。

 そして色々な事が起きていて少し疲れたので早めに眠りにつこうとベッドに入った。

 「黒騎士のギリッシュ…また会えるかな?」

 私はそう呟いた後に眠りに入った。

 これが…私とギリッシュとの出会いだった。
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