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第六話 散策
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カインは、また前世と思われる夢を見ていた。
「……、私…妊娠したみたいなの。」
「僕が……との子供か! 僕はいま最高に嬉しいよ!」
ガッチリした体格の青年は、空に向かって嬉しそうにガッツポーズをした。
だけど、彼女を見ると浮かない顔をしていた。
「お父様にはバレてないとは思うのだけれど、メイドの1人が疑っているみたいなの。」
「それだと、君の父上にもバレるのは時間の問題か…」
青年は額に手を当ててから、気合を入れて拳を握った。
「僕が何とかしてみせるよ! だから、……は、少しの間待っていてくれないか?」
「私には、もう貴方しか信じられない物。 いつまでも待っているわ!」
そして青年と令嬢はキスをして…
カインはそこで目覚めた。
………宿の部屋………
カインはベッドを起き上がって、顔を手で押さえた。
「またあの夢か…」
毎回毎回、男にキスをされて目覚めるなんて、あまり良い気分じゃない。
だが、夢の中の令嬢は確かに僕で、相手の男は考えたくないけどアベルなんだろうか?
そんな事を考えながらマリアのベッドを見ると、マリアも起き上がっていた。
そして、指を唇に当てて顔を赤くしていた。
「マリア…?」
「カイン! お…おはよう!」
おはよう?
窓の外はまだ薄暗い。
「マリアはいつも早起きなのかい?」
「そんな事は無いけど、ベッドが変わった所為で寝付けなかったのかも…」
マリアはそういうが、明らかに何か様子がおかしかった。
「僕はもう少し寝るよ、まだ外は薄暗いしね。」
「あ…うん、分かったわ!」
カインは横になると、ほどなく寝息を立てて眠った。
マリアは腕を組んで考えた。
《周りの建物の風景は確かに帝国建築の様式だった。 そして、どことなくカインに面影のある女性、でもそれが前世の夢だったら、アベルの見たのは? 私は女性とキスした男性だった… もう、訳が分からないわ⁉》
考えても仕方がないのでマリアも横になって寝た。
そして2人は、中途半端な時間に起きた為に、少し寝過ごしたのだった。
2人は起きると、支度をして外に出た。
近くのカフェで朝食を済ませると、地図を見た。
「僕がいつも夢に出てくる場所は、レンガ造りの少し広めの納屋で、床には藁が敷いてあった。 名前はいつも解らないんだけど、僕の前世だった女性は伯爵家の令嬢という話だった…くらいかな?」
「ひとえに伯爵家と言っても、数が多いわよ? でも、床に藁が敷いてあってレンガ造りだとすると、少なくとも街中ではないわ。 だとすると、今日訪れる場所は…市街地郊外ね。 北側を探してみましょう。」
僕とマリアは、散策しながら北側を目指した。
そしてそれらしき納屋があれば、持ち主に頼んで見せて貰った。
30件近く探したけど、それらしき建物や納屋も見付からなかった。
アベルは前世と言っていた…
だけど、正確な年数は言ってなかった。
僕も彼女の来ていたドレスが100程前くらいという曖昧な情報しかない。
もしかしたら、納屋は立て直されていて、もう無いかもしれない…
マリアは嘸かしがっかりしているだろうと思っていたが、地図を見ながらブツブツと話している。
「マリア、今日はこれ位にしようよ。」
「えぇ、そうね。 明日はこの場所に行ってみましょう!」
そういってマリアは、地図の場所を見せてくれた。
そしてカインとマリアは、宿に帰る途中のパン屋でサンドウィッチを買って帰ると、それを食べてから眠りについた。
今日はかなり歩いた所為で、体はクタクタだったのですぐに寝れた。
………一方、アベルはというと………
船員から船が出て行った後で港で待ち惚けを喰らっていた。
船員の話を聞くと、カインと特徴の一致した人物が船に乗って行ったという。
アベルは次にきた船に乗り込んでアーベント皇国を目指した。
ハイウィンド伯爵の作戦に見事に引っ掛かったのであった。
「……、私…妊娠したみたいなの。」
「僕が……との子供か! 僕はいま最高に嬉しいよ!」
ガッチリした体格の青年は、空に向かって嬉しそうにガッツポーズをした。
だけど、彼女を見ると浮かない顔をしていた。
「お父様にはバレてないとは思うのだけれど、メイドの1人が疑っているみたいなの。」
「それだと、君の父上にもバレるのは時間の問題か…」
青年は額に手を当ててから、気合を入れて拳を握った。
「僕が何とかしてみせるよ! だから、……は、少しの間待っていてくれないか?」
「私には、もう貴方しか信じられない物。 いつまでも待っているわ!」
そして青年と令嬢はキスをして…
カインはそこで目覚めた。
………宿の部屋………
カインはベッドを起き上がって、顔を手で押さえた。
「またあの夢か…」
毎回毎回、男にキスをされて目覚めるなんて、あまり良い気分じゃない。
だが、夢の中の令嬢は確かに僕で、相手の男は考えたくないけどアベルなんだろうか?
そんな事を考えながらマリアのベッドを見ると、マリアも起き上がっていた。
そして、指を唇に当てて顔を赤くしていた。
「マリア…?」
「カイン! お…おはよう!」
おはよう?
窓の外はまだ薄暗い。
「マリアはいつも早起きなのかい?」
「そんな事は無いけど、ベッドが変わった所為で寝付けなかったのかも…」
マリアはそういうが、明らかに何か様子がおかしかった。
「僕はもう少し寝るよ、まだ外は薄暗いしね。」
「あ…うん、分かったわ!」
カインは横になると、ほどなく寝息を立てて眠った。
マリアは腕を組んで考えた。
《周りの建物の風景は確かに帝国建築の様式だった。 そして、どことなくカインに面影のある女性、でもそれが前世の夢だったら、アベルの見たのは? 私は女性とキスした男性だった… もう、訳が分からないわ⁉》
考えても仕方がないのでマリアも横になって寝た。
そして2人は、中途半端な時間に起きた為に、少し寝過ごしたのだった。
2人は起きると、支度をして外に出た。
近くのカフェで朝食を済ませると、地図を見た。
「僕がいつも夢に出てくる場所は、レンガ造りの少し広めの納屋で、床には藁が敷いてあった。 名前はいつも解らないんだけど、僕の前世だった女性は伯爵家の令嬢という話だった…くらいかな?」
「ひとえに伯爵家と言っても、数が多いわよ? でも、床に藁が敷いてあってレンガ造りだとすると、少なくとも街中ではないわ。 だとすると、今日訪れる場所は…市街地郊外ね。 北側を探してみましょう。」
僕とマリアは、散策しながら北側を目指した。
そしてそれらしき納屋があれば、持ち主に頼んで見せて貰った。
30件近く探したけど、それらしき建物や納屋も見付からなかった。
アベルは前世と言っていた…
だけど、正確な年数は言ってなかった。
僕も彼女の来ていたドレスが100程前くらいという曖昧な情報しかない。
もしかしたら、納屋は立て直されていて、もう無いかもしれない…
マリアは嘸かしがっかりしているだろうと思っていたが、地図を見ながらブツブツと話している。
「マリア、今日はこれ位にしようよ。」
「えぇ、そうね。 明日はこの場所に行ってみましょう!」
そういってマリアは、地図の場所を見せてくれた。
そしてカインとマリアは、宿に帰る途中のパン屋でサンドウィッチを買って帰ると、それを食べてから眠りについた。
今日はかなり歩いた所為で、体はクタクタだったのですぐに寝れた。
………一方、アベルはというと………
船員から船が出て行った後で港で待ち惚けを喰らっていた。
船員の話を聞くと、カインと特徴の一致した人物が船に乗って行ったという。
アベルは次にきた船に乗り込んでアーベント皇国を目指した。
ハイウィンド伯爵の作戦に見事に引っ掛かったのであった。
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