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第一話 婚約破棄
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僕達は幼馴染だった。
貴族の位は違うけど、いつも一緒にいた。
12歳の時に、マリアはアベルに告白をした。
アベルは了承し、僕は祝福をした。
それから月日は流れて…
そして、今日は公爵家主催の婚約披露パーティだ。
当然、主役はアベルとマリアの婚約だった。
来賓客は、王族、公爵、侯爵、伯爵と豪華な面々だ。
貴族達は会食を楽しみ、楽団の演奏でダンスを踊っている人もいた。
そして、鐘が鳴ると皆は公爵に目線が向いた。
『紳士淑女の皆様、本日はようこそいらっしゃいました。 ただ、残念なお知らせをしなければなりません。』
台の上でアベルはそういうと、マリアは戸惑っている顔をしている。
今日は婚約発表の場であるのに、こんな話は打ち合わせに無かったからである。
カインは何事かとアベルの話に注目した。
『私アベル・スチュアートは、本日皆様にクライネート侯爵令嬢のマリア譲との婚約を発表するものだったのですが、実はマリア譲より気になる人が出来てしまい…マリア譲との婚約を破棄したいと思います!!』
マリアとカインは唖然としている。
まさか婚約披露パーティの会場で、アベルがとんでもない事を言い出したのだ。
会場内もざわざわと騒ぎだしている。
「え…えと…あの…では、お聞きいたしますが、アベル様の気になる御方は、どなたなのでしょうか?」
近くにいた御婦人がアベルに質問した。
アベルはマリアの手を放し、カインの前に来て手を広げた。
『私の…マリアより愛する人は、カイン・ファーランス卿である!!』
「「はぁっ!!???」」
カインとマリアは、素っ頓狂な声で叫んだ。
マリアは今では落ち着いた女性になっていはいるが、昔はお転婆だった。
カインはアベルがマリアを試す為に、ワザと盛り上げるような演出をしている物だと思ったのだが…?
『では、カインよ! 僕の愛を受け入れておくれ…』
そういってアベルは、カインを包み込むように抱きしめて、頬にキスをした。
カインはアベルを振りほどき、距離を置いた。
「アベル…君は一体何をするんだ!?」
「カイン…以前君は、私を好きだと言ってくれたじゃないか!」
「それは友達としてだ! 君にはマリアがいるだろう!」
「マリアも好きだよ。」
「なら、何故マリアに恥をかかせる真似をした?」
「マリアは好きだが、友達という感覚でしかない。 だが、カインを見てカインを思うと、僕の気持ちはカインに向いていき…どうしようもない気持ちへと変化していったんだ…」
アベルは頬を赤く染めながら熱い視線をカインに送った。
カインはその目を見て、ゾワワワワ…と寒気が体中を走った。
「カイン…私の愛を受け取ってくれないか?」
そういってアベルはカインの前で手を差し出した。
当然、カインは手を払った。
「大体、君は僕をどうしたいんだ!?」
「え? この場で言わないと駄目なのか? 皆の前で恥ずかしいのだが…」
「あぁ、聞かせてくれ! 是非聞かせてくれ!!」
「僕はこのまま屋敷の部屋に連れて行き、君の匂いを楽しんだ後にキスをして…ベッドに誘ってから愛し合い、朝になる頃には君の肌で触れてない場所は無いくらいにキスをしていこうと…」
「うわぁぁぁぁ、気持ち悪! 僕は女性は好きだが、男色の趣味は無いぞ!!」
「カインとの愛は、性別を超えた愛なんだよ!」
正直、アベルの事が解らなくなっていた。
カインはマリアを見ると、青い顔をしてアベルを見ていた。
それどころか、会場が静まり返っていてドン引き状態だった。
「さぁ、私の愛を…」
そういってアベルは、カインの背後から抱きしめて、右手でシャツのボタンをはずして胸元に手を差し込もうとした。
カインは当然、アベルを振り払って遠くに離れた。
「そもそも! なんでそんな急な話になっていた? 昨日までは普通だったのに…」
「実はね、僕は寝ている時に前世の夢を見たんだ。 そして、前世の僕とカインは恋人同士だった。 だが、僕は平民で君は貴族の娘で、君の両親は猛反対で結ばれる事がないと知った時、僕達は毒を盛って来世で愛する事を誓いあったんだよ。 例え同性であってもね…。」
カインとマリアは頭を抱え始めた。
恋愛について知る為に、アベルは一時期はロマンス小説を読み漁っていた。
「そんな話のロマンス小説を読んで、自分はその主人公だと思ったのか?」
「僕が嘘を話していると思っているのか!?」
「いや、どう考えても小説の中の話にしか思えない!! それに何をもって僕を前世の恋人だと思ったんだ?」
「カインは… マリアより細く、マリアより華奢で、マリアより品があり、マリアより美形で、マリアより色気があり、マリアより………」
カインはマリアを見ると、真っ赤な顔をして震え始めていた。
アベルはマリアの欠点ばかり話している所為で、マリアの怒りは頂点に達していた。
そして、本来ならあり得ないのだが、侯爵令嬢が公爵令息の顔を思いっきり殴ったのだ。
「そこまで私を辱めるのなら、良いわよ! 婚約破棄は喜んで受けいれてあげるわ!! そして、貴方との関係もこれまでよ! 二度と声を掛けないでよ!!」
「痛いじゃ無いかマリア…君は何故そんなに怒っているんだ? カインと比較したら全て当てはまる事しか言ってないのに…」
アベルは殴られて鼻血を出しながら言った。
平然とした態度でマリアに接して発言をしているアベルは、人を怒らせる天才だとカインは思った。
そして案の定、マリアはアベルの腹に飛び蹴りを喰らわせて会場を去って行った。
だが、これでまだ終わりでは無かった。
取り残されたカインと貴族達には、まだ信じられない事が起きるのだった。
貴族の位は違うけど、いつも一緒にいた。
12歳の時に、マリアはアベルに告白をした。
アベルは了承し、僕は祝福をした。
それから月日は流れて…
そして、今日は公爵家主催の婚約披露パーティだ。
当然、主役はアベルとマリアの婚約だった。
来賓客は、王族、公爵、侯爵、伯爵と豪華な面々だ。
貴族達は会食を楽しみ、楽団の演奏でダンスを踊っている人もいた。
そして、鐘が鳴ると皆は公爵に目線が向いた。
『紳士淑女の皆様、本日はようこそいらっしゃいました。 ただ、残念なお知らせをしなければなりません。』
台の上でアベルはそういうと、マリアは戸惑っている顔をしている。
今日は婚約発表の場であるのに、こんな話は打ち合わせに無かったからである。
カインは何事かとアベルの話に注目した。
『私アベル・スチュアートは、本日皆様にクライネート侯爵令嬢のマリア譲との婚約を発表するものだったのですが、実はマリア譲より気になる人が出来てしまい…マリア譲との婚約を破棄したいと思います!!』
マリアとカインは唖然としている。
まさか婚約披露パーティの会場で、アベルがとんでもない事を言い出したのだ。
会場内もざわざわと騒ぎだしている。
「え…えと…あの…では、お聞きいたしますが、アベル様の気になる御方は、どなたなのでしょうか?」
近くにいた御婦人がアベルに質問した。
アベルはマリアの手を放し、カインの前に来て手を広げた。
『私の…マリアより愛する人は、カイン・ファーランス卿である!!』
「「はぁっ!!???」」
カインとマリアは、素っ頓狂な声で叫んだ。
マリアは今では落ち着いた女性になっていはいるが、昔はお転婆だった。
カインはアベルがマリアを試す為に、ワザと盛り上げるような演出をしている物だと思ったのだが…?
『では、カインよ! 僕の愛を受け入れておくれ…』
そういってアベルは、カインを包み込むように抱きしめて、頬にキスをした。
カインはアベルを振りほどき、距離を置いた。
「アベル…君は一体何をするんだ!?」
「カイン…以前君は、私を好きだと言ってくれたじゃないか!」
「それは友達としてだ! 君にはマリアがいるだろう!」
「マリアも好きだよ。」
「なら、何故マリアに恥をかかせる真似をした?」
「マリアは好きだが、友達という感覚でしかない。 だが、カインを見てカインを思うと、僕の気持ちはカインに向いていき…どうしようもない気持ちへと変化していったんだ…」
アベルは頬を赤く染めながら熱い視線をカインに送った。
カインはその目を見て、ゾワワワワ…と寒気が体中を走った。
「カイン…私の愛を受け取ってくれないか?」
そういってアベルはカインの前で手を差し出した。
当然、カインは手を払った。
「大体、君は僕をどうしたいんだ!?」
「え? この場で言わないと駄目なのか? 皆の前で恥ずかしいのだが…」
「あぁ、聞かせてくれ! 是非聞かせてくれ!!」
「僕はこのまま屋敷の部屋に連れて行き、君の匂いを楽しんだ後にキスをして…ベッドに誘ってから愛し合い、朝になる頃には君の肌で触れてない場所は無いくらいにキスをしていこうと…」
「うわぁぁぁぁ、気持ち悪! 僕は女性は好きだが、男色の趣味は無いぞ!!」
「カインとの愛は、性別を超えた愛なんだよ!」
正直、アベルの事が解らなくなっていた。
カインはマリアを見ると、青い顔をしてアベルを見ていた。
それどころか、会場が静まり返っていてドン引き状態だった。
「さぁ、私の愛を…」
そういってアベルは、カインの背後から抱きしめて、右手でシャツのボタンをはずして胸元に手を差し込もうとした。
カインは当然、アベルを振り払って遠くに離れた。
「そもそも! なんでそんな急な話になっていた? 昨日までは普通だったのに…」
「実はね、僕は寝ている時に前世の夢を見たんだ。 そして、前世の僕とカインは恋人同士だった。 だが、僕は平民で君は貴族の娘で、君の両親は猛反対で結ばれる事がないと知った時、僕達は毒を盛って来世で愛する事を誓いあったんだよ。 例え同性であってもね…。」
カインとマリアは頭を抱え始めた。
恋愛について知る為に、アベルは一時期はロマンス小説を読み漁っていた。
「そんな話のロマンス小説を読んで、自分はその主人公だと思ったのか?」
「僕が嘘を話していると思っているのか!?」
「いや、どう考えても小説の中の話にしか思えない!! それに何をもって僕を前世の恋人だと思ったんだ?」
「カインは… マリアより細く、マリアより華奢で、マリアより品があり、マリアより美形で、マリアより色気があり、マリアより………」
カインはマリアを見ると、真っ赤な顔をして震え始めていた。
アベルはマリアの欠点ばかり話している所為で、マリアの怒りは頂点に達していた。
そして、本来ならあり得ないのだが、侯爵令嬢が公爵令息の顔を思いっきり殴ったのだ。
「そこまで私を辱めるのなら、良いわよ! 婚約破棄は喜んで受けいれてあげるわ!! そして、貴方との関係もこれまでよ! 二度と声を掛けないでよ!!」
「痛いじゃ無いかマリア…君は何故そんなに怒っているんだ? カインと比較したら全て当てはまる事しか言ってないのに…」
アベルは殴られて鼻血を出しながら言った。
平然とした態度でマリアに接して発言をしているアベルは、人を怒らせる天才だとカインは思った。
そして案の定、マリアはアベルの腹に飛び蹴りを喰らわせて会場を去って行った。
だが、これでまだ終わりでは無かった。
取り残されたカインと貴族達には、まだ信じられない事が起きるのだった。
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