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家族最低の章
私の生きている意味って何? (1話完結)
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私の名前は、ワターシ・アイウエオ。
アイウエオ男爵家の長女です。
私は今、アイウエオ男爵家の領地で採れる魔石の浄化作業をしています。
魔石は、浄化作業をしないと一般には使えません。
なので、浄化作業が必要なのですが…私は休みなく働かせられています。
この浄化作業が私にか出来ないからです。
「ワターシお姉様、浄化作業の済んだ魔石はこれですか?」
「イモート、今あるのはそれで全部です。」
「たったこれっぽっちですか? お姉様、ちゃんと浄化作業しているんですか?」
「やっているわ! でも、食事をあまり摂らせて貰えない上に、寝る時間も殆ど無くて浄化作業の効率も落ちます。」
すると、イモートが魔石を持って何処かに出て行きました。
そして帰ってきた時には、父親のパーパ・アイウエオが一緒でした。
「またお姉様が言い訳するんですよ、お父様…」
「おい、ワターシ‼ こんな量で何を威張っているんだ⁉」
「ですが…休みもなくの作業では、私が壊れてしまいます!」
「なら、他の者を雇うだけだ! そうした場合は、お前は不要になるから、不要な奴は家には要らないから出て行くんだな!」
私は常にこう言われて親の命令に従って来た。
だが、もう…この理不尽な命令にも嫌気がさしてきた。
「イモート、そろそろ時間では無いのか?」
「あら本当? では、学院に行って参りますわ!」
妹はそういうと、部屋を出て行った。
元々男爵家は、領地が少ない土地を与えられて、領民の数も少なかった。
ある時、領地にある採石場から魔石と呼ばれる黒い石が発掘された。
最初は魔石が起死回生になる物だと思っていたのだが、黒い魔石では全く使い物にならなかった。
屋敷に持ち帰り、何とか使えないかと模索している時に、幼い私が黒い魔石に触れると白く輝き、魔石を浄化した。
すると、今迄使っていた新たなエネルギーとしての需要が出て来て、他国からも注文が殺到し、貧しかった男爵家は潤って行った。
だが、魔石の解析だけはあまり進んでおらず、魔石を浄化できるのは私と数人しかいなかった。
私は部屋に軟禁されて、ひたすら魔石の浄化をやらされていた。
両親と妹は贅沢な暮らしをし、私には必要最低限の物しか与えられなかった。
私が学院に行きたいというと、お前に学院は必要ないと言われ、妹だけが学院に行く事を許された。
そしてかれこれ10年余り、私は外の景色すら見る事なく魔石の浄化をやらされているのだった。
「もう…無理です!」
「何がもう無理なんだ? 注文の分はまだ終わってないぞ‼」
「浄化が終わっても次から次えと増えるではないですか⁉」
「それはお前の浄化が遅いからだ! つべこべ言わずにさっさとやれ!」
すると、派手なドレスに宝石を付けた女性が入って来た。
私の母のマーマ・アイウエオだ。
「さっきから聞いていれば…全く浄化しか取り柄が無いのに言い訳ばかりして!」
「全くだ! イモートはあんなに優秀な子なのに、ワターシは言い訳ばかり漏らしやがって…」
「私だって学院に行ければ、優秀な所をお見せ出来ます!」
「なら、その間は誰が浄化作業をするんだ?」
「お父様が言っていた通りに、他の人に任せれば良いのではないですか?」
そう、浄化作業を出来る者は他にもいる。
昔ならともかく、今の男爵家なら人を雇う余裕位あるのだ。
「そうだなぁ…お前ほどの浄化能力がある者が見付かったら考えても良い。」
「そうね、見付かれば構わないわよ! ただし、その時は貴女には家を出て行って貰いますので、平民として自分で稼いで学院に行くなり、結婚相手を探すなり好きになさい!」
「そ…そんな…!」
「いやなら文句を言わずに続けろ!」
「今の貴女には、これしか取り柄が無いのですから、サボるんじゃないわよ‼」
私にそういうと、両親は部屋から出て行った。
確かに浄化作業が出来る人は他にもいる。
だけど、私程の浄化能力を持っている人はいないし、浄化した後の純度の高い魔石を作れる人もいない。
なので、両親は色々理由を付けて私を出す気は一切ないのだ。
「まだ、あんなに山の様に積まれている。 これでは、いつまで経っても終わりが見えない。」
私が浄化作業が出来る様になる事を知った両親は、この部屋から一歩も出してはくれなかった。
部屋には分厚い扉に鍵が掛かっており、窓が一切ない部屋。
本もぬいぐるみすらない部屋で、あるのはベッドとトイレのみ。
こんな部屋でよく10年間も耐えて来たと思う。
栄養が行き届いてないので、体は妹よりも小さい。
逆らおうとしても、力では一切勝てなかった。
「もう…死にたい。」
そう思った事は何度あった事か…
だが、下手な事をすると監視をされている為にすぐに誰かが飛んでくるのだ。
そして体罰を受ける…何があっても逃げる事が出来ない。
死ぬ事すら許されない。
「続けましょう…」
また次の黒い魔石を取り出してから浄化作業をした。
すると、浄化が終わると白く変化する筈の魔石が、虹色になっていた。
今迄にはない現象だった。
「綺麗! だけど、なんだろう?」
私は虹色に輝く魔石を浄化した。
だけど、虹色から白に変わる事は無かった。
他の魔石を手に取ってから浄化をするが、同じ様に虹色になるだけだった。
その後の7個も全て虹色に変化しただけだった。
「どうなっているの? 何故、こんな色に⁉」
すると、監視から聞きつけた両親が部屋に入って来た。
そして虹色の魔石を手に取ってから、何かの魔道具に近付けた。
「これは、なんという純度だ! 素晴らしい‼」
「ワータシ、一体何をしたの⁉」
「私にも解りません! 突然こんな色に…」
すると両親は、虹色に輝く魔石を持って部屋から出て行った。
そしてしばらくしてから部屋に戻ってきて、新たな命令を私にしてきた。
「あれは今迄の様な魔石とは全くの別物だ! これからはアレを作りだすんだ!」
「あれはいつもの浄化作業をやっていてあぁなっただけで、やり方は解りません!」
「口答えをするな! いいからやるんだ‼」
「そうよ、貴女にはそれしか取り柄が無いんだから‼」
私は魔石の浄化作業を続けて行った。
だけど不思議な事に、次も…その次も虹色に輝いていたのだった。
そして部屋にあった魔石を全て浄化が終わると、私はベッドに行って休もうとした。
すると部屋の扉が開いて、また大量の魔石が積まれて行った。
「休んでいる暇はないぞ! これが次の分だ!」
「もう…休ませて下さい! 体が…」
「ならん! この魔石は今まで以上に高値で売られたのだ!」
「口答えしない! 良いからやるのよ‼」
私はベッドから引き摺り下ろされてから魔石を渡されて、浄化作業を…出来なかった。
そして気絶する様にそのまま倒れた。
どうせなら、このまま目覚める事なく眠りにつきたい…私は深い眠りについた。
しばらくしてから目が覚めると、私の体は今までに無い位に軽さを感じていた。
部屋を見ると、窓があり綺麗な景色が広がっていた。
私は起き上がると、ベッドの前にあるテーブルに食事が用意されていた。
見ると【お召し上がりください】という紙があった。
私は夢中になって食事を食べていた。
「それにしても、ここはどこだろう? 部屋ではないみたいだけど…?」
しばらくすると、見た事ない人が部屋に入って来た。
そしてその人は言った。
「もう、心配はないみたいですね? それでは先に入浴をしましょうか!」
数人のメイドが私の体を洗ってくれた。
そして、綺麗なドレスが用意されていてそれを着させてくれた。
「では、行きましょう!」
そう言われた時に、またあの部屋に連れ戻されると思っていた。
ところが、私の連れて行かれた場所は国王陛下と王妃陛下の前だった。
「お目覚めになられて良かったです、聖女様!」
「え? 聖女⁉」
私は王妃陛下に聖女と呼ばれていた。
これは…もしかして夢なのかな?
「何が起きているのか解らないという感じですね?」
「はい、何が何だか…」
「では、説明を致しましょう! 貴女が浄化した魔石ですが、今迄の魔石と違い聖なる力が宿っていました。 それは伝承にある聖女様にしか出来ない浄化能力なんです。」
「私の浄化は魔石しか浄化出来ないと思っていました。」
「続けますね…アイウエオ男爵が持って来た虹色に輝く魔石は、聖女にしか出来ない事。 王国は男爵家に赴いて気絶していた貴女を救い出して城に運びました。」
「では、ここはお城なんです…って、国王陛下と王妃陛下がいるのでしたらそうなりますか。」
「そして私達は貴女の存在を知り、聖女だという事が解ると男爵家の者達を捕らえました。 いままで辛い毎日を送っておられていたみたいですが、もう大丈夫です!」
何もかもが夢みたいだった。
すこしキャパがオーバーしているけど…?
「あの…私はこの後はどうしたら良いのでしょうか?」
「ワターシ、貴女はこれから何をしたいですか? 今迄の貴女の功績を考えれば好きな事が出来る様になります!」
「では、学院に行って勉強をしたいです! あと、10年間家から出して貰えなかったので、お散歩もしてみたいです! それから…」
「えぇ、貴女の全てを叶えましょう! そして、将来は聖女としてこの国に仕えて欲しいと思うのですが…」
「ではそれまでの間は、好きにやってみたい…と思うのですが宜しいですか?」
王妃陛下は微笑みながら頷いた。
「そういえば、私の両親と妹はどうなったのですか?」
「現在捕らえて地下牢に入れています。 会いに行かれますか?」
「会いに行くのは構わないのですが、両親と妹はこれからどうなるのですか?」
「男爵家は取り潰され、領地は没収されます。 貴女の両親と妹の処遇は、貴女にお任せ致します。」
「ですが、男爵家が取り潰されたら…私は何処で暮らせば良いのでしょうか?」
「ワターシは、私達の息子の王子の嫁になり、王族の仲間入りになります。」
「私は王子妃になるのですか?」
「そうですよ、嫌ですか?」
「いえ、嬉しいです!」
では、元両親と妹はどうしましょうか?
あんな最低なクズでろくでなしでも一応両親だからね。
「両親と妹の処遇が決まりました!」
「では、どうしたいか言ってみて下さい。」
「両親と妹は、鉱山送りにして10年間1歩も外に出られない状況で仕事をさせて下さい。 10年が過ぎたら、外に開放という形で…」
「中々軽い罰ですね? 良いのですか?」
「はい、それでお願いします! あと、この処遇を伝えた後に合わせて貰っても良いですか?」
「構いませんよ!」
王妃陛下は騎士に命じると、謁見の間から出て行った。
そしてしばらくしてから、地下牢の両親と妹に会いに行った。
「おぉ、ワターシ! ここから出してくれ!」
「お願いよ、私達をここから出して!」
「お姉様…お願いですから!」
牢屋の中で憐れにも私に助けを求める家族達…
見ていて思わず笑いそうになるのを堪えながら、近くの騎士に言った。
「私は、両親と妹に会えると思ってこの場所に来ました。 ですが、この方達は私の両親と妹ではありません。」
「何を言っているの? 私は貴方の母よ!」
「私は父だ!」
「いえいえ、そんな筈はありませんわ…私の父は、常に態度が大きく、いつも私に無理難題を吹っ掛ける最低な父で、母は私の何が気に入らないのか解りませんが、少しでも口答えすると高圧的な態度をとり、妹は私を姉とは思わずに見下した態度で接して来たのです。 間違っても、その3人が私に助けを求める何て事はしませんですわ! 全くの別人です。」
私はこの場を去ろうとしました。
ですが、家族達は必死に私を呼び止めようとしていました。
「お前! 下手に出ていれば付けやがりやがって! 育てて貰った恩を忘れたのか?」
「育てて貰った? はて? そんな事ありましたっけ? 10年間外に1度も出さずに部屋に閉じ込めて置いて?」
「私は貴女を可愛がっていたでしょう?」
「平手で顔を叩くのを可愛がっているというのですか?」
「私はお姉様を慕っていました。」
「私が親に怒られる姿を見て嘲笑っていたのを慕っているというのですか?」
この後の数十分間…家族達はありとあらゆる事を言ったけど、私に論破されて行った。
何を言っても墓穴を掘る事しか出来ない家族達だった。
「安心して下さい! これからあなた方は…暗い洞窟の中で10年間外に出られずに仕事をして貰いますので。」
「そんな事をしたら死んでしまう!」
「大丈夫ですよ、私は外に1歩も出されないで10年間仕事が出来ていましたから、血の繋がったあなた達なら耐えられます!」
「貴女は、親を何だと思っているの⁉」
「もう、違いますよ。」
「違うって何が?」
「私のこれからは、この城の王子様と婚約をし、結婚してから王族の一員となるのです。 もう、あなた達とは縁もゆかりもありませんので…」
「お前が王族だと⁉ 馬鹿な事を言ってんじゃない‼」
「騎士の方…お聞きになりましたね?」
「はい!」
「不敬罪で懲役10年追加です。 20年間は鉱山から出さない様にお願いします。」
「かしこまりました!」
私は牢屋を後にしようと…する前に、最後に声を掛けた。
「次に会えるとしたら、20年後ですね! それまでお元気で…」
私は牢屋を出て行った。
………その後………
私は無事に学院に入学した。
最初は勉強に追い付けなかったけど、必死に勉強する事により頭角を現して…学年を飛び級した。
その後、王子様と同じクラスになり…婚約発表されてから、その数年後に結婚をして王子妃になった。
それ以外に、聖女としての仕事もしながら国を支えて行った。
どん底の人生から一転、私は幸せを掴んだのであった。
………そして、元家族達は?………
2年後に父親は鉱山仕事の最中に落盤事故に遭い死亡。
母親は、3年後に流行り病で死亡した。
妹は最後まで仕事をやりぬいて外に出られたが、結婚適齢期を過ぎた妹に相手はおらず、姉を頼ろうと王城に行くが相手にされず、帰りに馬車に引かれて不運な事故として生涯を終えた。
アイウエオ男爵家の長女です。
私は今、アイウエオ男爵家の領地で採れる魔石の浄化作業をしています。
魔石は、浄化作業をしないと一般には使えません。
なので、浄化作業が必要なのですが…私は休みなく働かせられています。
この浄化作業が私にか出来ないからです。
「ワターシお姉様、浄化作業の済んだ魔石はこれですか?」
「イモート、今あるのはそれで全部です。」
「たったこれっぽっちですか? お姉様、ちゃんと浄化作業しているんですか?」
「やっているわ! でも、食事をあまり摂らせて貰えない上に、寝る時間も殆ど無くて浄化作業の効率も落ちます。」
すると、イモートが魔石を持って何処かに出て行きました。
そして帰ってきた時には、父親のパーパ・アイウエオが一緒でした。
「またお姉様が言い訳するんですよ、お父様…」
「おい、ワターシ‼ こんな量で何を威張っているんだ⁉」
「ですが…休みもなくの作業では、私が壊れてしまいます!」
「なら、他の者を雇うだけだ! そうした場合は、お前は不要になるから、不要な奴は家には要らないから出て行くんだな!」
私は常にこう言われて親の命令に従って来た。
だが、もう…この理不尽な命令にも嫌気がさしてきた。
「イモート、そろそろ時間では無いのか?」
「あら本当? では、学院に行って参りますわ!」
妹はそういうと、部屋を出て行った。
元々男爵家は、領地が少ない土地を与えられて、領民の数も少なかった。
ある時、領地にある採石場から魔石と呼ばれる黒い石が発掘された。
最初は魔石が起死回生になる物だと思っていたのだが、黒い魔石では全く使い物にならなかった。
屋敷に持ち帰り、何とか使えないかと模索している時に、幼い私が黒い魔石に触れると白く輝き、魔石を浄化した。
すると、今迄使っていた新たなエネルギーとしての需要が出て来て、他国からも注文が殺到し、貧しかった男爵家は潤って行った。
だが、魔石の解析だけはあまり進んでおらず、魔石を浄化できるのは私と数人しかいなかった。
私は部屋に軟禁されて、ひたすら魔石の浄化をやらされていた。
両親と妹は贅沢な暮らしをし、私には必要最低限の物しか与えられなかった。
私が学院に行きたいというと、お前に学院は必要ないと言われ、妹だけが学院に行く事を許された。
そしてかれこれ10年余り、私は外の景色すら見る事なく魔石の浄化をやらされているのだった。
「もう…無理です!」
「何がもう無理なんだ? 注文の分はまだ終わってないぞ‼」
「浄化が終わっても次から次えと増えるではないですか⁉」
「それはお前の浄化が遅いからだ! つべこべ言わずにさっさとやれ!」
すると、派手なドレスに宝石を付けた女性が入って来た。
私の母のマーマ・アイウエオだ。
「さっきから聞いていれば…全く浄化しか取り柄が無いのに言い訳ばかりして!」
「全くだ! イモートはあんなに優秀な子なのに、ワターシは言い訳ばかり漏らしやがって…」
「私だって学院に行ければ、優秀な所をお見せ出来ます!」
「なら、その間は誰が浄化作業をするんだ?」
「お父様が言っていた通りに、他の人に任せれば良いのではないですか?」
そう、浄化作業を出来る者は他にもいる。
昔ならともかく、今の男爵家なら人を雇う余裕位あるのだ。
「そうだなぁ…お前ほどの浄化能力がある者が見付かったら考えても良い。」
「そうね、見付かれば構わないわよ! ただし、その時は貴女には家を出て行って貰いますので、平民として自分で稼いで学院に行くなり、結婚相手を探すなり好きになさい!」
「そ…そんな…!」
「いやなら文句を言わずに続けろ!」
「今の貴女には、これしか取り柄が無いのですから、サボるんじゃないわよ‼」
私にそういうと、両親は部屋から出て行った。
確かに浄化作業が出来る人は他にもいる。
だけど、私程の浄化能力を持っている人はいないし、浄化した後の純度の高い魔石を作れる人もいない。
なので、両親は色々理由を付けて私を出す気は一切ないのだ。
「まだ、あんなに山の様に積まれている。 これでは、いつまで経っても終わりが見えない。」
私が浄化作業が出来る様になる事を知った両親は、この部屋から一歩も出してはくれなかった。
部屋には分厚い扉に鍵が掛かっており、窓が一切ない部屋。
本もぬいぐるみすらない部屋で、あるのはベッドとトイレのみ。
こんな部屋でよく10年間も耐えて来たと思う。
栄養が行き届いてないので、体は妹よりも小さい。
逆らおうとしても、力では一切勝てなかった。
「もう…死にたい。」
そう思った事は何度あった事か…
だが、下手な事をすると監視をされている為にすぐに誰かが飛んでくるのだ。
そして体罰を受ける…何があっても逃げる事が出来ない。
死ぬ事すら許されない。
「続けましょう…」
また次の黒い魔石を取り出してから浄化作業をした。
すると、浄化が終わると白く変化する筈の魔石が、虹色になっていた。
今迄にはない現象だった。
「綺麗! だけど、なんだろう?」
私は虹色に輝く魔石を浄化した。
だけど、虹色から白に変わる事は無かった。
他の魔石を手に取ってから浄化をするが、同じ様に虹色になるだけだった。
その後の7個も全て虹色に変化しただけだった。
「どうなっているの? 何故、こんな色に⁉」
すると、監視から聞きつけた両親が部屋に入って来た。
そして虹色の魔石を手に取ってから、何かの魔道具に近付けた。
「これは、なんという純度だ! 素晴らしい‼」
「ワータシ、一体何をしたの⁉」
「私にも解りません! 突然こんな色に…」
すると両親は、虹色に輝く魔石を持って部屋から出て行った。
そしてしばらくしてから部屋に戻ってきて、新たな命令を私にしてきた。
「あれは今迄の様な魔石とは全くの別物だ! これからはアレを作りだすんだ!」
「あれはいつもの浄化作業をやっていてあぁなっただけで、やり方は解りません!」
「口答えをするな! いいからやるんだ‼」
「そうよ、貴女にはそれしか取り柄が無いんだから‼」
私は魔石の浄化作業を続けて行った。
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「もう…休ませて下さい! 体が…」
「ならん! この魔石は今まで以上に高値で売られたのだ!」
「口答えしない! 良いからやるのよ‼」
私はベッドから引き摺り下ろされてから魔石を渡されて、浄化作業を…出来なかった。
そして気絶する様にそのまま倒れた。
どうせなら、このまま目覚める事なく眠りにつきたい…私は深い眠りについた。
しばらくしてから目が覚めると、私の体は今までに無い位に軽さを感じていた。
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しばらくすると、見た事ない人が部屋に入って来た。
そしてその人は言った。
「もう、心配はないみたいですね? それでは先に入浴をしましょうか!」
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そして、綺麗なドレスが用意されていてそれを着させてくれた。
「では、行きましょう!」
そう言われた時に、またあの部屋に連れ戻されると思っていた。
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「お目覚めになられて良かったです、聖女様!」
「え? 聖女⁉」
私は王妃陛下に聖女と呼ばれていた。
これは…もしかして夢なのかな?
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「はい、何が何だか…」
「では、説明を致しましょう! 貴女が浄化した魔石ですが、今迄の魔石と違い聖なる力が宿っていました。 それは伝承にある聖女様にしか出来ない浄化能力なんです。」
「私の浄化は魔石しか浄化出来ないと思っていました。」
「続けますね…アイウエオ男爵が持って来た虹色に輝く魔石は、聖女にしか出来ない事。 王国は男爵家に赴いて気絶していた貴女を救い出して城に運びました。」
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「構いませんよ!」
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「おぉ、ワターシ! ここから出してくれ!」
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「大丈夫ですよ、私は外に1歩も出されないで10年間仕事が出来ていましたから、血の繋がったあなた達なら耐えられます!」
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「もう、違いますよ。」
「違うって何が?」
「私のこれからは、この城の王子様と婚約をし、結婚してから王族の一員となるのです。 もう、あなた達とは縁もゆかりもありませんので…」
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覗いて頂きありがとうございます
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