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第二章

第十六話 古典落語をヒントに討伐・後編

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 「アンデットって、死霊を使って攻撃して来るんじゃ無いのか⁉︎」

 アンデットレティは、四属性の魔法を駆使して向かって来た。
 ファイアボール、ウィンドカッター、アクアショット、アースバレット…と。
 ラノベでよくある初級魔法のオンパレードだが、次々と連続で放たれる為に、近付けられる事が出来なかった。
 特に風魔法のウィンドカッターを使用して来る為に、避けても服を切り裂かれてしまった。

 「アンデットなら、アンデットらしい魔法を使えよなぁ…」

 アンデットらしい魔法って、そもそも何だろうか?
 アンデットの主な魔法は、闇属性の魔法という話なので、死霊召喚と言ったアンデットを生み出す魔法なのだろうか?
 なんて考えながらレティと言われているアンデットを見ると、俺の方をチラチラと見ているだけで、直視をして来るわけではなかった。

 「一体…何だというんだ?」

 俺は自分の服を見ると、ウィンドカッターで切り裂かれた服から、所々に素肌が見えている感じだった。
 レティと言われたアンデットも、何を照れているのかは分からないが…?
 此方をあまり見ようとはして来なかった。
 何ていうか……男慣れしていない女子が、男の裸を見ると恥ずかしくて直視出来ないという感じがした。

 「此奴は、アンデットの癖に生娘かよ…」

 俺は破けているシャツを全て破り捨てると、上半身が裸になった。
 俺の身体は、鍛治工房で働いていた為に…筋肉ムキムキで筋骨隆々といった感じで、ちょっとしたボディービルダーの様な体型だった。
 その筋肉の姿をレティの前に晒すと、レティは「キャッ!」と言いながら、手で顔を覆ってから横を向いた。
 
 「思っていた通り生娘だったんだな?だとしたら、アレも通じるかもしれないが…」

 俺はレティの元へ歩み寄ろうとすると、レティはファイアボールの魔法を放って来た……が、俺には当たらずにかなり逸れて行った。
 やはり、恥ずかしさのあまりに、攻撃を当てられないみたいだな?
 俺はジリジリと歩み寄って行ったのだが、レティはウィンドハンマーを放って来て、俺は後方に跳ね飛ばされた。

 「何だよ、ちゃんと狙えるんじゃねぇか!」
 「いつまでも私が怯んでいると…」

 レティはそう言いながら此方を見た時に、俺はボディービルダーのサイドチェストのポーズを行い、胸筋を左右に動かした。
 何でこんなポーズをしたのか?
 それは、男の裸があまり慣れていない女の場合は、この動きをすると…恥ずかしくて顔を上げられないという話だった。
 この話を物語る様に、レティは顔を上げることは出来ても、視線を逸らす為にまともに見られなかった。

 「このまま、少しずつ近付いて行けば…動きを止める事ができるかな?」

 俺はゆっくりと足を前に出すと、背後に浮かんでいる頭骨が、レティに告げ口をした。
 てっきり、ただの飾りだとばかり思っていたが、あんなでも立派な役割を持っている様だった。

 「あれは厄介な事この上ないな、何か対抗策は無いものだろうか?」

 俺は頭骨をじっくりと観察する…と、俺と視線を合わせた頭骨の数匹は視線を逸らしたり、俯いていたりしていた。
 …というか、目玉……無いよな?
 あの頭骨達は、レティの監視役なのか?
 それとも、レティと意識が繋がっているのだろうか?
 レティと違い、数匹は確かに視線を逸らす様に横を向いたり、下を向いたりしているが…?
 そういうものが大丈夫という者もいる…という感じだと、意識が繋がっているとは考え難い。
 
 「もしも…背後の頭骨も、レティと同じく女性の頭骨で、意識を持っていたら…あの手が通用するかも知れないな!」

 あの手………は、非常に最低な事である。
 だが、人にやるなら恥ずかしいが、魔物相手にやる分には問題は無い…かな?
 レティは顔を背けながらも、手の平を前に出してから詠唱を唱えると、赤い陽炎が現れて…炎の魔法を放つという事が分かった。

 「やはり、レティの魔法攻撃を封じるのなら、あの方法しかない!」
 「何を考えているのかは分かりませんが、これで終わりです‼︎」

 レティは、今にでも魔法名を言い放つその時だった。
 俺は両腕を腰に当ててから、親指をトランクスに引っ掛けて………一気にズボンをトランクスごと降ろした。
 すると…俺の自慢の太くて長い竿が、空に向かって反り上がった。

 「キャァァァァァァァァァ~~~~~」

 レティは、先程まで魔法を放つ所だったが、俺がズボンを下ろした竿を見て…手で顔を覆ってから悲鳴を上げてしゃがみ込んでいった。
 そして背後の頭骨達も……頬らしき場所が紅潮して、全ての頭骨がそっぽを向いた。
 男の裸に対しては、何匹かの頭骨は凝視していても大丈夫みたいだが、流石に下半身のモロ出しをすると、此方を見る頭骨は居なかった。
 これを考えると、どうやら背後の頭骨も女性の性別だったのだろう。

 「は、早く……それを隠しなさい‼︎」
 「や~だよ、これを隠したら…お前は魔法を俺に放つつもりだろ?」
 「放ったりしませんし、約束を致します。貴方が見逃して下さるのでしたら、私はここから立ち去りますので。」

 流石に首謀者……ではないが、その配下を見逃すのはまずいよな?
 ならば、捉えるのが得策だろうな、もしかしたら礼金も出るだろうし。
 俺はニヤリと笑うと、次の作戦を実行した。

 「ほら、これで良いだろ。ズボンを穿いて隠したから、此方を向いても大丈夫だぞ。」
 「そうですか……って、引っ掛かりましたね!私がそんな約束を……って、いやぁぁぁぁぁぁぁぁん‼︎」

 ………そう、ズボンは穿いてはいなかった。
 このアンデットは、どうも胡散臭くて信用出来なかった為に、態と穿いたと嘘をつき…俺の竿を凝視させる為という作戦だった。
 俺の股間の竿を凝視したレティは、また両手で顔を覆っていた。
 俺はこの隙に、レティの元に駆け寄ってから……顔を覆っている両手首を掴んで、腕を左右に大きく開いた。
 そして俺は、レティの顔の前で腰を回してぶらんぶらんさせながら、「俺を見ろ‼︎」…と伝えた。
 当然の事ながら、レティの覆っていた手は今は無いので、レティは薄目を開けて此方を見るが…?
 目の前に移る竿を見た瞬間に、再び目を瞑った。

 「もう…辞めて下さい‼︎」
 「辞めてやっても良い………が、お前を捕らえて冒険者ギルドに渡すから、それまで大人しくしていれば良い。」
 「冒険者ギルドに捕らえられたら、私は確実に……」
 「かも知れないな。だが、このまま俺が見逃さずに、トドメを刺す……という事をしたら、どのみち死ぬのは変わらんぞ。」
 「もしも見逃して下さるのでしたら、私は元の場所によって戻って、絶対に人前には出ないと約束を致します‼︎」
 「此方を見ないで、そっぽを向いている奴の言葉を信用出来るか!」
 「履物を穿いているのでしたら、目を開けて貴方の目を見ます。」

 俺はレティの手首を離すと、俺はスボンを穿こうと……やっている時に、レティは少しずつ後ろに下がって行った。
 此奴は隙を見て、逃げ出そうとしているな?

 「ほら、これで良いだろ?」
 「また、騙すわけじゃ無いですよね?」
 「騙したりしねぇよ、嘘だと思ったら、目を開けて見てみろ。」

 レティは恐る恐る目を開けると、俺の自慢の竿がズボンに隠れていると頷きながら立ち上がった。
 そして、バックステップで2歩下がってから、此方に向けて叫んだ。
 
 「やはり人間は甘いですね!私の嘘を信じる………」

 俺は最初から嘘に気がついていた。
 そして、ズボンを穿いた訳ではなく、穿いた様に引っ掛けていただけだった。
 …ので、俺はズボンに手にかけて、引き離すと…先程の状態に戻った為に、レティは再び両手で顔を覆った。
 俺はふたたびレティの元に飛び込んでいき、両手首を掴んで広げた。

 「お前の嘘なんか、はなっから見抜いていたわ!なので、お前には最大の屈辱的なお仕置きを味合わせてやる…」
 「な、何をする気ですか⁉︎」

 俺はレティの顔の前で腰を回し始めてから、腰の竿がぶらんぶらんと揺れ始めた。
 今回はこれだけでは無い!
 屈辱的なお仕置きを始める為に、レティの両手首を後ろに引いた。
 それと同時に、レティは身体を引っ張られて……顔が俺の股間に⁉︎
 
 「成敗‼︎」

 俺はレティの顔に股間をぐりぐりと押し付けた。
 レティは、声にならない叫び声を上げると、気を失いながら後ろに倒れて行った。
 生娘には、刺激がある最低な攻撃だった。

 「良し、これであとはロープで縛ってから、ギルドに報告に行くとするか。」

 俺はズボンを穿いてから、レティを担ぎ上げると…冒険者ギルドに向かって帰還した。
 そして冒険者ギルドに入ると、その場にはギルマスと受付嬢が少し顔を赤くして立っていた。
 その様子からすると、俺に尾行をさせた者から、詳細の一部始終を聞いたのだろう。

 「首謀者の九尾の……犬なのか、狼なのかは配下のコボルド達に喰われて死に…配下のコボルド達も、俺が全て始末した。そして此奴は、九尾のボスの配下のアンデットだ。」
 「ご苦労様です、テルヤ様…」

 すると、レティは意識が覚め始めた。
 ギルマスは、水着の何処に閉まっていたのかは分からなかったが、首輪を取り出してレティに嵌めた。
 すると、レティに嵌った首輪が光り出し…レティの魔法の類は全て封じ込まれたのだった。

 「アンデットのレティですか。」
 「ここは何処なんですの⁉︎」
 「ここは冒険者ギルドのレクシアード支部ですよ。貴女は捕らえられて、冒険者ギルドの管轄下に置かれます。」
 「罪人は、牢獄では無いんですか?」
 「あんな負のオーラが渦巻いているような場所では、貴女には力を付けてしまう御褒美スポットになってしまうでしょう。それならば、冒険者ギルドで管理して…仕事をさせるという事にした方が良いかと思いましてね。」
 「ギルマス、平気なのか?」
 「魔封じの首輪を嵌めておりますし、この首輪はもう1つの特性で…忠誠の機能もありますからね。私が許しでもしない限り…一生逃れる事は出来ませんから。」
 「一生とは言ってくれますわね、兎人族風情が………私はこれでも、300年を生きていますのよ。」
 「なんだ、たった300年ですか。私はかれこれ…800歳になりますよ、たかが300歳如きで良い気になっている小娘さん。」
 「くぅ~~~~~」

 300歳も凄いが、ギルマスは800歳かよ。
 そんなのに俺は相手をされそうになっていたのか。
 見た目は若くても、ババァはもっと受け付けん………って、あ!

 「ババァで悪かったですね。今回の騒動について、追加報酬を考えていた所だったのですが……」
 「申し訳ありません。ちなみに、追加報酬とはなんだったのですか?」
 「金貨を20枚追加ですよ、本来の報酬と追加報酬を合わせて…と。」
 「元々の報酬が、金貨15枚ですよね?それから更に5枚追加って……ギルドの財政は大丈夫なんですか?」
 「問題はありませんよ、その為にレティさんが居るのですから…」
 「へ?」
 
 一般の平民が金貨1枚あれば、1年は生活が出来る金額だが、冒険者の場合だと…武器や防具の買い替え、ポーションなどの入手や食費や移動費などを入れると、金貨1枚は決して高くない金額だった。
 ギルマスはレティの肩に手を置くと、レティは素っ頓狂な声を上げていた。

 「冒険者ギルドって、現在人が足りないんですよ。特に倉庫整理がね…そこで役に立つ人材がレティさんと言うわけです。この世界にも労働環境基準法というのが存在しますが、それはあくまでもが対象ですので、アンデットのレティさんには関係ありませんし…アンデットなので睡眠も必要ありませんし、一応労働者という事で給料は発生しますが……」
 「うわぁ~~~、冒険者ギルドはとんだブラック……いや、ギルマスがブラックなんだろうな。」
 「なので、テルヤ君が気にする事はありませんよ。レティさんの分は一度私が立て替えて、レティさんには返し終わるまで自由はありません。」
 「あの、お金を返し終われば…私は開放されるんですか?」
 「はい、返し終われば…の話ですね。ただ、かなりの年数が掛かってしまいますが……にいちなので(ボソッ)。」

 今…にいちって聞こえた気が?
 にいちって、2日で1割という事だろ?
 下手な闇金よりもアコギだな。

 「それと、これがライゼン王国の冒険者ギルド宛ての手紙です。これを受付かギルマスにお渡し下さい。」
 「分かった。」
 「出発はいつにしますか?」
 「3日ぐらいに出発するよ、まだこの辺の地理が頭に入って無いしな。」

 …というか、大して疲れてはいないが、依頼が終わったばかりで旅立てる程、俺は若くは無い。
 神に幾らか年齢を若返らされてはいるが、それでもよく動くと思った身体は最初だけで、慣れてしまうと普通と変わらん。

 俺は3日後、レクシアードを出てからライゼン王国を目指して行った……訳なのだが、その途中で今後の人生を左右する人物と出会う事になるのだった。

 ~~~~~第二章・完~~~~~

 ~~~~~第三章へ続く~~~~~
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