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第二章

第十一話 旅のお約束…・中編

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 「良し、3本目‼︎」

 俺はあれから順調に、クラーゴンの足を斬り飛ばして行った。
 そして現在では、4本目と5本目の足を斬り飛ばそうと冒険者達が手伝ってくている。
 この冒険者達は、クラーゴンが襲ってきた事により…絶望的な状況で、全てを諦めようとしていたのだが…?
 俺が2本目の足を斬り飛ばした時に、希望を持ち始めたみたいで…協力を俺に進言してきた。
 それで現在は、冒険者達と協力してクラーゴンの足の数を減らしているのだった。

 「剣士さん、4本目の足もそろそろですよ。」
 「兄貴、5本目の足ももう直ぐでっせ‼︎」

 …なんか俺の事を、妙な呼び方をしている者もいるが…?

 「しかし、これだけの足を切り飛ばしているのに、本体の頭は出てこないものなのか?」
 「足の数も大分減りましたし、そろそろ怒りで出現してもおかしく無いのですが…」
 「兄貴、甲板を見て下せぇ!」

 俺は甲板を見ると、クラーゴンが2本の足を使って甲板に上がって来た。
 絡まっていた足が大分減ったおかげで、1階部分の外通路も…海から上がっていたのだった。

 「俺は下に行って本体を叩くから、お前等は残りの足を頼んだぞ‼︎」
 「「「分かりました!」」」

 俺は外階段から1階の甲板に向かって降りていると、2階の外廊下に船員と冒険者が2m位の巨大な蟹の群れに襲われていた。
 俺は片っ端から蟹のハサミのある腕を斬り飛ばしていき、無力化した蟹の残りを冒険者達に任せると、船員達は礼を言ってくれた。
 そして俺は急ぎ、1階の甲板がある場所まで走ると、そこには巨大な足を2本振り回しているクラーゴンの本体がいた。

 「あの腕が厄介だな、本体の近くにある足だけあって…船体に巻き付いていた足より、筋肉で硬質化している。」

 タコの足は、頭の近くにある足ほど筋肉があって非常に硬い。
 頭から離れた足は、筋肉はあるがそれほど強くは無かった。
 なので、頭の近くの足は生え変わる事がない代わりに、他の足は自由に生え変わる事が可能なのだ。
 ※実際のタコの足も一緒です。頭の近くの2本の足が、人間で言えば腕の様なものです。

 「玉鋼の刀……持ってくれるか?」

 鉄の刀に比べれば、玉鋼の刀は比では無い程に硬くて鋭い。
 だが、筋肉質の足を何本も斬り飛ばして来たというのもあるが、紅蓮院流の技の使用も相まって、刀身の強度が脆くなり始めている。
 俺が今迄の魔物相手に紅蓮院流の技を使用して来なかったのは、技が強力なので刀身にかなり負担を掛けてしまい、折れる可能性があったからだ。
 その所為で、道場に通っている時に…何本の居合刀が破損をしてきたか。
 まぁ、実家は鍛治工房なので、居合刀の代わりは幾らでも使う事が出来たが…使い方が悪いと、親父に何度も怒られたっけか。
 だが、この状況ではそんな事を言っている場合では無い。
 俺等が何もしなければ、客船が破壊されて、海の藻屑になってしまうからだ。

 「満足の行く出来ではなかった刀だが、せめてコイツだけは耐え切ってくれ!紅蓮院剣術・九の太刀…朧月光閃‼︎」

 俺はクラーゴンの懐に飛び込んでから、襲って来る両腕を根元から斬り飛ばした後に、本体である頭の眼の間に突きを放った。
 両目の間の場所は、タコの急所に当たる部分だった。
 ※イカも同じ場所に急所があります。
 クラーゴンは口から墨を垂れ流して、激しい音を立てて甲板に倒れたのだった。
 俺は、クラーゴンから刀を抜き取ろうとしたのだが、抜いたと同時に刀の刀身に亀裂が入って砕けてしまった。

 「やはり、持たなかった。でもまぁ、倒せたのなら良しとするか!」

 客船の展望台テラスから、大きな歓声が湧き起こった。
 その声は、先程に残りの足を任せた冒険者達からだった。
 そして冒険者達が甲板に降りて来ると、俺は囲まれて賞賛を受けることになった。
 それと同時に中から船員達が出て来て、その中にいた船長が俺の方に近付いて俺の手を掴んだのだった。

 「本当に有り難う御座いました。貴方のお陰で、この船は救われました!」
 「いや、俺だけの手柄では無いよ。コイツ等のお陰でもあるさ…」
 「剣士さん…」
 「兄貴……」

 俺は自分だけの手柄にするつもりは毛頭なかった。
 コイツ等が居なければ、俺はクラーゴンを倒せられるかどうかが微妙だったからだ。

 「船長に聞きたい事があるんだが、良いか?」
 「なんで御座いましょうか?」
 「この船の中に鍛治施設はあるか?破損して砕けてしまったので、代わりを造りたいんだ。」
 「はい、船内には…魔物襲来で破損した武器を修繕する鍛治施設は存在します…が、まとめて予備を持参する冒険者が多くて、最近ではあまり使われる事はありませんが…」
 「その施設、借りても良いか?目的地到着まで、あと半月ほど船の中で過ごさなくてはならないからな。」
 「はい、構いませんよ。それと、中にある鉱石等は好きにお使い下さい。」
 
 その日の夜は、皆と宴会騒ぎになっていた。
 あんな大物を討伐出来た喜びに、冒険者達は勝利の美酒に良い知れていたのだった。
 俺も久々の酒を飲んで、最後にはぶっ倒れてしまったのだった。

 ~~~~~翌日~~~~~

 「しまったな…日課のスキル回数を増やすのを忘れていた。」

 毎日の日課を1日でもサボると、癖になってしまう。
 それだけ…この日課は、面倒で達成感を感じない日課だった。
 スキルアップを知らせる音とか鳴ったりしないからな。
 俺は船長室に行き、船長に挨拶をすると船長は鍛治施設に案内をしてくれた。

 「此処が、鍛治施設にございます。昨日も申しましたが、中にある物は好きにお使い下さい。」

 俺は中に入って、道具を確かめてみる。
 すると、道具は中々良い物が揃っていて、幾つかを持ち帰りたかった。
 そんな感じで素材の功績を見ていると、水色に輝く鉱石があったのだった。

 「これは…海鉱石か?」
 「それは、水のメリクリウスの鉱石ですね。加工をすると、非常に硬質な金属に生まれ変わるという話ですが…かなり難しくて、誰も成功した人がいらっしゃらないのです。」

 水のメリクリウス…聞いた事があるな。
 地球にも四大属性鉱石という物が存在するという。
 火のオリハルコン、地のアダマンタイト、風のミスリル、そして水のメリクリウスの4種類だ。
 これ等の鉱石は、加工が非常に困難で不可能に近い鉱石らしく、精錬時に何度も失敗をして…結局は成功する事はなかったという。
 上手く加工して金属化が出来れば、伝説上の金属になるという話だが…?
 その当時の現物を見たという記録も無く、現在の技術でも金属化は不可能だと言う。

 「現代の技術でも加工が無理なものなら、俺にもどうすれば良いかなんて…」

 なので今回は無視をして、再び玉鋼の製作と刀を打つ事にした。
 此処の炉は、ロザリアの鍛治工房の炉に比べたら…スペックは落ちるが、決して作れない事は無かった。
 俺はカバンの中からコークスを取り出して、玉鋼の製作に取り掛かったのだった。

 ~~~~~一方、神界では?~~~~~

 八神達は、俺がクラーゴンと戦っている映像を見ていた。

 「彼は、勇者として召喚したわけでは無いのですよね?」
 「あぁ、在園路瑛夜君には、魔王との決戦の際の勇者に武器を作るという役目で呼び出したのじゃ。」
 「それに…彼は碌なステータスの上昇も無ければ、勇者に与えたスキルも無い筈…ですよね?」
 「それなのに、クラーゴンを倒せるだなんて…」
 「クラーゴンは、魔獣の中でも上位に位置するランクだというのに⁉︎」
 「もしかして…儂は人選に失敗をしてしまったのだろうか?」
 「彼の強さなら、魔王と対等に戦える可能性がありますしね。」

 八神の物議が終わるのは、かなり先になったのだった。
 そして物議が終わった後に八神は、勇者以外に俺の事も注目をしたみたいで、今後の行動を見守るという事になったのだった。
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