辺境の鍛治職人は、契約期日迄に鍛治技術を極めたい。

アノマロカリス

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第一章

第一話 異世界召喚

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 瑛夜は、現在の状況が意味不明で辺りを見渡していた。
 状況的に考えて、ラノベとかで良くある…死亡した様な感じと、状況が非常に似ていたからだ。
 何故ならそこは、見渡す限り雲が広がっており…中央には、ギリシャのパルテノン神殿みたいな建物があったからだった。

 「俺は………死んだのか?だとしたら、死因は一体何なんだ⁉」

 俺は少し前の状況を思い出す。
 いつも通りの修業を終えて、片手間のアクセサリーのデザインを寝ながら模索していた筈で、トラックに轢かれたとか、死に直結する様な事はなかった筈だ。
 …と、その前にまずは俺の事を話した方が良いな。
 俺の名前は、在園路ざいえんじ 瑛夜てるや36歳。
 彼女も居なければ、婚期を逃した36歳の中年である。
 実家は、在園路家刀匠…まぁ、簡単に言えば、刀鍛冶を専門の鍛冶職人である。
 在園路家の現在の刀匠は、親父である在園路 公比古きみひこ
 年齢は70代の後半で、俺には他に上に兄が2人と姉がいる。
 兄や姉達は結婚していて子もいるが、この家業が嫌で他の仕事についている。
 俺も本来は、この家とは関係ない職に就いていたのだが…?
 親父があまり長くないと医者から余命宣告を受けて、この家業を継ぐ事になった。
 …というのは親父の策略で、兄妹の中で家業を継ぐ者がいないので、白羽の矢が俺に刺さったという感じだった。
 普通は、後継ぎがいる兄か姉が家業を継ぐ筈なんだけどな。
 …まぁ、こんな理由があって、俺は勤めていた会社を辞めさせられて、家業を継ぐ為に修業をさせられているという感じだった。
 まぁ、会社内で色々と嫌がらせを受けていたし、ちょうど辞めたいと思っていたから丁度良かったが…?
 この話は、今から9年前の話だった。
 そして現在では、刀を造る刀工という立場を獲得出来たのだった…が、やっている事と言えば、刀を打つ事は殆ど無くて…?
 ひたすらアクセサリー作りをやらさせられている感じだった。

 「親父や兄弟子達がいる以上、俺が刀を打てる様になるのはいつにのなるのやら…?」

 刀を造るには、それ相応の技術が求められる。
 年に数度、日本刀の展覧会が開催されており…?
 其処には多くの流派の刀匠が打ったとされる、日本刀を献上して良さを競う物だった。
 我が在園路家は、過去に賞を取った事はある。
 …が、ここ最近ではあまり賞を取った事は無いどころか、すっかり低迷している感じだった。
 昭和の時代には、多くの鍛冶職人が競い合っている程に流派も多かったのだが…?
 令和の時代になると鍛冶職人の数も少なくなり、賞も取りやすくなる…と思いきや、最近では芸術面が強調されて、昔ながらの刀はあまり評価されなくなっている。
 なので、芸術面に乏しい在園路家の刀では、ここ最近はあまりパッとしないのだった。

 「今の俺なら、芸術面の刀を打つ事は出来ると思うんだがな…」

 鍛冶職人の主な仕事は、日本刀は展覧会が近付いて来た時に製作であって、普段は包丁や農作業器具などを製作して生計を立てている。
 それで俺の仕事はというと?
 刀は練習位でしか打たせては貰えず、包丁や農機具の類の仕事もさせては貰えず、もっぱら…小物やアクセサリー製作が主だった。
 刀匠の親父曰く、こういった技術を生み出す事により、いずれは芸術面の刀を製作して貰うというのが理由だった。
 …と、前置きが随分と長くなってしまって申し訳ない。
 あまりにも現在の状況が理解出来なくて、少し現実逃避をしてしまっていた。

 「とりあえず、此処に居ても仕方ないか…」

 そう思って俺は、パルテノン神殿らしき建物に入る事にした。
 中に入ってから通路を進んでいると大きな扉があり、その扉開けると…目の前には会議室の様な大きなテーブルに、恐らく神様だろう人達が8人座っていた。
 そして、その中の中心にいる老人の様な見た目の方が、俺に話し掛けて来た。

 「この場に來るまでに随分と時間が掛かったみたいじゃったが…?」
 「すいません、気付いた場所で何が起きたのかが分からずに呆けておりました。この様な場所に来た…と言う事は、俺は死んだのでしょうか?」
 「在園路瑛夜君、君は死んでこの場所に来た訳では無い。我等は、其方から見れば異世界の神でのぉ…君は我等のある願いを叶える為に、異世界召喚でこの地に呼び寄せて貰ったのじゃ。」

 老神から言われて俺は安心した。
 どうやら、死んでこの場所に来た訳では無いという事に…?
 では、俺みたいな中年なんかに何の願いをするつもりなんだろうか?

 「実はのぉ、我々の管理する世界には、数百年に1度に魔王が誕生するのだ。」

 魔王が出現するという事は、魔王を倒す為に俺は呼ばれたの…

 「いや、在園路瑛夜君を呼び出した理由は、勇者になって魔王を倒すという事ではない。…というか、魔王を倒す勇者という存在達は、君を呼ぶ前に既に召喚してから魔王討伐の為に地上に降ろして、戦う為の術を学んで貰って居る。」 
 「俺は勇者では無いのか…ん、達?」
 「そうじゃ、勇者達じゃ。この世界に誕生する魔王は、複数存在するからのぅ。なので当然、呼び寄せる勇者も1人では無いのだ。1人だけに全てを背負わせるのも酷じゃし、その者だけが命を落としてしまった場合…再召喚をしてから育てるには、色々と時間も足りんしな。」
 「だとすると、俺の役目は…敗北した勇者の代わりの戦闘要員とか…」
 「いや、在園路瑛夜君の役割は…勇者達が魔王との最終決戦の際に、討伐する為の武器の製作をして貰いたいのだ。」

 普通、ラノベとかの異世界系の魔王が登場する話だと…
 神から与えられた聖剣とか、試練の旅の後に手に入れる物だと思ったが…?

 「確かに初めの頃までは、鍛治神ヘパイスディスが聖剣を鍛えて勇者に渡して来たのだが、数世代前の魔王側では魔王を倒せる聖剣の対策をして来てな。神々の世界にはオリハルコンしか無くての、それ以外の鉱石が発掘されなかったのだ。…というか、神界にはオリハルコン以外の鉱石が必要だと思えなくてな。それでどうしたら良いかと相談していると地上の職人達が、複合精錬術という…二種の全く異なる鉱石を複合させて新たな金属を作り出す事に成功し、それで製作した剣がオリハルコンよりも優れた金属として、魔王を討伐に成功したのじゃが…問題が1つあっての、この複合精錬術はかなり難しい技法となっており、成功率が極端に低いのじゃ。それでもその当時は複合精錬術の成功率がそれなりに高かったのじゃが、時代の流れというのか現在の職人達では複合精錬術の成功率が著しく…というより、技術は伝わっているが出来る者が殆ど皆無で…腕の良い職人が極端に減っているのじゃ。」
 「それだったら、神々の…鍛治神がその複合精錬術を使用して聖剣を造れば良いのでは?」
 「それが出来れば問題はないのじゃが、神が地上の民が創り出した技法を真似するわけには…とか申してな、それ以来…鍛治神ヘパイスディスは不貞腐れて、聖剣製作の任を地上の民に任せて籠ってしまったのじゃ。」
 「神の癖に…なんて繊細なんだろうか?地上の職人達が神を上回る物を創り出した…なんて知れば、流石に神のプライドもへし折られるか。」
 「それでな、現代の地上の職人達では先代の頃に比べて衰退しておってな、とてもじゃないが…複合精錬術どころか、かつて鍛治神ヘパイスディスが創り出した聖剣すら製作が不可能と感じ、ならば地球の職人を呼び出して、その技術を役立たせようと思って…在園路瑛夜君を呼び出したのじゃ。」
 「それ自体としては光栄なんだが、俺は鍛治職人達の中ではまだまだ若輩者という感じで未熟者の部類なんだが…」
 「だが在園路瑛夜君には、それなりの技術を持ち合わせてはおるじゃろう?」
 「まぁ、一応刀工と呼ばれる程には技術を取得しているからな。」

 本来なら、刀匠と刀工は同じ意味なんだが…?
 昨今では、刀匠と刀工では身分が違うのである。
 (※あくまで物語上の話です。)

 「在園路瑛夜君よりも下の年齢の職人はいるみたいだが、技術はそれほど高くないと感じ…上の年齢の職人だと、年齢はかなりかけ離れているので、異世界での生活に順応出来ないと感じたのじゃ。」
 「はぁ…」

 俺の年齢より下の職人でも、俺以上の技術を持った職人はいる。
 ただ、技術はあるが…知識が足りてないという事もあるだろう。
 逆に、親父の世代に刀匠だと…技術的な問題に関しては問題はないだろうが、インフラ整備の整った日本とは違い、異世界が地球のどの年代なのかにもよるが、仮に中世と同じだとすると…移動するにも骨が折れる事になるだろう。
 道は舗装されてはいないだろうし、荷物1つも運ぶのに台車は必須になるだろうが…重量を軽減する装置なども装備されていないだろうからな。
 例え、俺よりも元気な老人だとしてもな。

 「俺は、他の同世代…がいるかどうかは分からないが、鍛治職人としての修業が遅かった為に、技術や知識はあっても実践があまり無い。」
 「現在の地球では、職人は極端に減っていて…他の者の情報もすんなり調べる事ができると思うのじゃが?」
 「職人ってな、変な所で頑固で…他社の動向を素人は考え無いんだよ。なので、展覧会とかでその人物を知るという以外にあまり接点がないんだよ。」
 「なるほど、同世代がいるかどうかと言っていたのは、そういう意味じゃったか。しかし…実践があまりないと言った意味はどういう事なんじゃ?」

 先程の現実逃避の際の回想の時に話したが、俺は親父に騙されてこの世界に入る前は、鍛治職人とは全く関係もない…とある企業に就職をしていた。
 その企業はその界隈では有名な玩具メーカーで、入社条件には幾らかの条件があるものの…完全実力主義の企業だった。
 俺は大学を卒業してから就職し、そこでは商品開発の部署にいた。
 それから2年が経過した。
 俺は主任になっており、そんな折に社長の息子の双子が入社して来た事により、状況が一変する事になった。
 社長の双子の兄は東大出身で、弟は京大出身という話だった。
 その為、この双子は周囲の社員達を馬鹿にする言動が目立つ様になった。
 要は、学歴マウントという奴だな。
 確かに、東大出身や京大出身の入学には並外れた努力が必要となる。
 俺の通っていた大学は、名前を書けば入学出来る様な大学だった。
 そして、双子は俺の事を知るや否や…兄からは三流大学、弟からはFラン大学とマウントを取って来た。
 それ以降は名前を呼ばれる事はなく、常に学歴マウントを取って来て、社長の息子をひけらかして…設計の手柄などの横取りが目立つ様になって来た。
 社員の数名は、一応社長に直談判をしたのだが…?
 社長の子供と言うことだけあって、子供には甘く…出世の見込みがないと知った社員達は、辞職をして行った。

 「俺も…この頃からは嫌気がさして来たてね、その頃に親父の訃報を聞かされて家に戻る事になったのですが、それが親父の罠と気付き…でもまぁ、働き難い今の会社にいるよりも…実家の家業を継ぐのも有りかもという事で、勤めている会社を辞める事にしました。」
 「君の性格上…ただ辞めた訳ではないよな?」
 「えぇ…今迄に散々馬鹿にされて来たので、なんとか報復をしようと…双子の前に立ちはだかって言いました。」

 なんて言ったか…?
 俺は辞表を双子に見せ付けながら言った。
 
 「俺は確かに、三流大学やFラン大学と呼ばれる様な所を卒業しましたが…お前等と立場的には一緒だよな?そんな所で馬鹿みたいに馬鹿みたいにいつまでも学生気分が抜けなくて学歴マウントを取りやがって…東大や京大って、そんな事も分からない位に頭が悪い大学なのか~?しかも社会人になって学歴自慢もそうだが、それだけ頭が良いと自慢するなら、何で外資系企業とかじゃなくて玩具メーカーなんだ?…とまぁ、聞くだけ野暮な話だよな。だって、有名大学を卒業しても三流大学やFラン大学と呼ばれる出身者が勤める企業にしか就職出来なかったんだろ?」

 俺がそう言うと、双子は怒りの表情をしてはいるが、図星なのか…何も言えなくなっていた。
 幾ら社長が親である企業でも、学歴不正は出来ないだろう。
 この双子の親である社長は、親族で経営をしている訳ではないので、学歴不正は処罰対象になるだろうからな。
 学歴は本物…だが、親の企業しか入れない所を見ると…就職には失敗し続けて来たのだろう。
 まぁ、社会人になっても学歴マウントを取って来る様な奴等だからなぁ?

 「そんな事を言ったら、その双子は向かっては来なかったのか?」
 「俺は…見た目が怖い厳つい面をしていますし、体格はかなり大きいですからね。これから辞めるという人間が辞表を見せているんですよ、仮に企業のトップである社長威光で好き勝手出来た双子が俺に歯向かうなんて真似はしませんよ。」

 辞表を見せ付けながら、相手を罵る…という事は、歯向かってきよう物なら返り討ちに遭うかも知れないと思うだろう。
 だから双子も、怒るに表情を浮かべているだけで、歯向かおうとはしなかったのだった。
 
 「中々痛快な話じゃのう、じゃが…それで終わりなのか?」
 「いえ、トドメの言葉を言い放ちましたよ。」

 …そう、これで終わった訳ではない。
 俺は最期に、双子が絶望する内容を叩き付けたのだった。

 「あ、そうそう…お前等が今迄に行なってきた不正は、全て記録してあるからな。俺や辞めて行った社員達からも訴えられるだろう。懲役刑を喰らうかどうかは、実刑が判決されないと何とも言えないが…損害賠償の請求はあるだろうな。借金…何年で支払えるんだろうな?まぁ、とりあえず…裁判所からの書面が届くのを、首を長くして待っていると良い!」

 俺はそう言って部屋を出た。
 それからすぐに双子は部屋を飛び出して、エレベーターに向かって行った。
 恐らく双子は、社長室に駆け込むのだろう。

 「ふむ、ちょっとお灸が効き過ぎただろうか?」

 証拠や記録なんていうものは、初めから存在しない。
 辞めて行った社員達が訴えるかどうかは分からんが…俺にはそんな気はない。
 これまでの鬱憤は、今の言動で発散出来たからな。
 だが、双子にとっては、気が気じゃないだろう。
 それだけあの双子は、色々とやらかしていたからな。
 俺は人事部に辞表を提出して、今迄勤めていた企業を辞めた。
 そして帰りに今迄使用していたスマホを解約し、新たなスマホを契約した。
 なので、会社から連絡が来る事はなかったのだが…?
 連絡が取れない事に焦りを感じた社長が、双子を連れて家を訪ねて来た事があったみたいだった。
 だが、俺の工房がある実家の外観は、門は武家屋敷の様な造りで周囲は高い塀に囲まれている。
 今時、こんな外観の家は…ヤ○ザ絡みの家か政治家の屋敷と間違われてもおかしくは無い。
 なので、社長と双子はその場から逃げ出して行き…後日ニュースで、社長の解任を知ったのだった。

 「一体、その社長は何があったというのじゃ?」
 「家の前に来て、建物を見ただけで勝手に勘違いをしたんだろう。昔からよく勘違いする奴も多かったからな。」
 「警察…という所には行かなかったのか?」
 「警察なんてよく知っているな。まぁ、双子と社長は自ら捕まる為に警察署には行かんだろう。双子の不正を黙認したり、社長自身も社員からの訴えを無視したりしていたからな。捕まればどういう刑に処されるか…という事を考えて、解任の道を選んだんだろう。まぁ、そんな事をしたところで…訴えられたら、今迄の不正が明るみになって破滅するんだろうけど。」

 まぁ、それだけが理由という訳ではない。
 うちの工房に出入りをしている弟子達の所作が、昔の任侠映画のヤ○ザの様な挨拶をするからだった。
 近所の人達は、うちがどういう家なのかは知っているが、うちを知らない者達だと、あの光景を見ると勘違いをする。
 なので、社長が勝手に勘違いしたというのは、そう事だからである。
 あの社長自体、会社内では偉そうだったが…結構気弱そうな感じもしていたしな。

 「在園路瑛夜君は、中々な場所に住んでいるのじゃな。」
 「ただ古いだけですよ。俺も子供の頃は、親父が筋モノの関係者だと言われましたからね。」
 
 子供の頃から俺は、この家が嫌いだった。
 なので高校を卒業をしてからは、家を出て…必死にバイトをして学費を払いながら一人暮らしをしていたのだった。
 …のだが、まさか戻って来るとは思わなかった。

 「中々痛快な話を聞けたな。それで、修業が遅かったというのは?」
 「通常、家業を次ぐ時の修業は、高卒の場合は18歳からで大卒の場合は22歳から…って、俺の世界の学校は分かりますか?」
 「以前に日本から召喚された者達から、色々話を聞いて知っておる。」
 「そうか、だが俺の場合は修業が二十代半ばを過ぎた事から開始されていてな、だから同年代…の刀工に比べられると、修業期間がそれ程多くは無いんだ。」
 「…とは言っても、一応武器を製作出来る技量はあるのじゃろう?」
 「まぁ、刀工になったので…一応刀は打てるが、西洋の刀剣の類は…1度だけ遊びで製作した事はあったが、だが…思った様な刀身の厚さにはならなかったな。」

 その遊びで作った西洋剣は、薄い刀身の両刃の剣だった。
 過去の文献を見ると、剣の刀身は非常に分厚く、斬るというよりは叩きつけると言った感じの剣で…斬れ味が鈍い棍棒の様な作りだったという。
 ただ、製法がどの文献を見ても書いてあるものがなくて、形だけしか表記されていなかった。
 
 「この世界に関する武器を造っている鍛治工房の近くに、在園路瑛夜君を向かわせる事にするのでそこから学んで欲しい。だが仮に造りにくいと感じるなら、在園路瑛夜君が造りやすい剣でも構わんぞ。」
 「そうですね、とりあえずはその鍛治工房で製法を見てから決めるとします。」

 こうして剣の製作に関する話は終わった。
 次に、この世界で暮らす為のスキルの付与に関する話なのだが…?

 「うわっ…マジかぁ~!」
 「すまんのぅ、在園路瑛夜君。」

 俺は老神から、耳を疑う話を聞いた。
 普通…異世界転移や召喚で、神様から貰えるスキルはチート系のスキルだとばかり思っていた。
 先にこの世界に来た勇者達は、チート系のスキルを授かったという話なのだが、俺に与えられるスキルはそうではないみたいだった。

 「異世界の勇者に授ける神は五神で、それ以外の神は碌なスキルを持ち合わせてはおらん。この達がこの世界にいる間は、与えた神もスキルを使用する事はできんのじゃ…」
 「えーっと…爺さんは、勇者にスキルを与えた五神の1人なのか?」
 「いや、儂は五神の誰かでは無く主神じゃ。儂も主神になる前の若い頃は、勇者達にスキルを与える側だったのじゃが…現在ではその力も衰退しておってのぉ、なので世代交代という感じで、若い神がその役目を担っておるのじゃ。」
 
 それが五神か…という事は、八神の中で五神以外の神の役目は…あ、聖剣を造る鍛治神ヘパイスディスと…?

 「自然と調和を司る女神リーチェなのじゃが、リーチェのスキルを与えてしまうと地上の管理が疎かになってしまい、様々な障害が起きてしまうので…儂とヘパイスディスとリーチェ以外の五神がスキル譲渡の役目を担っておるのじゃ。」
 「…となると、俺にはスキルは貰えないのか。」
 「いや、そういう訳ではないんじゃが…五神が勇者に与えたスキルに比べたら、性能的に劣るというくらいで、全く使えない物ではない。」
 「おい、こっち見て言えよ。」

 老神がそう言った後に、俺から視線を逸らした。
 視線を逸らすという事は、俺に与えられるスキルというのは、決して碌な物じゃないんだろう。

 「いや、仕方が無いんじゃよ。先程も話したが…今回、在園路瑛夜君を呼び出したのはあくまでも異例で、五神のスキル譲渡で事が足りると思っていたから、在園路瑛夜君に授けられるスキルの事を全く考えておらんかったのじゃ。」
 「そういえば、最初にそんな事を言っていたな。」

 俺がこの世界での役目は、勇者達が魔王に立ち向かう為の剣を造り出すことなので、戦闘関係は殆ど……?

 「なぁ、爺さん…俺がこれから向かう場所はそんな所なんだ?」
 「そうじゃな、まずは在園路瑛夜君がこれから向かう世界を説明しよう。世界の広さは、地球と同等の広さで…大陸は五芒星の様な感じで6つの王国が存在し、五芒星の大陸の周囲には…魔王が収める大陸が存在する。まぁ、それ以外にも島が存在はするが…人口はそれほど多くは無いじゃろう。」
 
 老神はテーブルの上に世界地図を広げて見せてくれた。
 五芒星…と呼ばれるだけあって、星の様な形をしている大陸だった。
 だが、目を凝らして良く見てみると…星の形はしているが、大陸は全てが繋がっている訳では無い。
 大陸間に大きな川…があったりして、離れている場所もあった。
 俺が向かう先は、五芒星の大陸の中心部である中央大陸で、世界の中心というだけあって、様々な物流が集まるという場所だった。
 それ以外にも中央大陸の王国は、他の大陸に比べ最強の騎士団が存在しており、他の王国に比べて圧倒的な強さを誇っているという話だった。
 そして、日本から召喚された5人の勇者達は、中央大陸以外の5つの大陸に降り立っており、それぞれの場所で魔王に立ち向かう為の修業を行っているという感じだった。
 これなら俺が戦う必要は無いな…と思っていたが、肝心な話を聞く事にした。

 「なぁ、爺さん…この世界にも通貨はあるよな?」
 「無論じゃ、ただ…この世界の通貨は、全世界共通となっている紙幣じゃ。」
 「俺がその中央大陸にある鍛治工房に向かうというのは良いとして、勇者達が魔王を全て倒す迄の間…生活の保証はしてくれるのか?」
 「在園路瑛夜君には…」
 「いちいちフルネームで呼ばなくても良いぞ。」
 「なら、瑛夜君で構わないかね?」
 「それで良い。」
 「ふむ、では瑛夜君には当面の生活費として、金貨100枚を渡す事にする。これだけあれば無駄遣いをしなければ、勇者達が魔王を倒す迄の資金は問題無いはずじゃ。」

 俺はその後に老神から、この世界の紙幣の話を聞いた。
 この世界は、銅貨→銀貨→金貨→白金貨の順に上がって行き、金貨1枚で一般の平民は1年を暮らせられるという話だった。
 ただし、中央大陸は他の大陸に比べて物価が多少高いという話だが…?
 資材の購入で足りなくなった場合は、自分で稼いでくれと言って来た。
 なら、金貨じゃなくて、白金貨にしてくれよ‼︎

 「…いや、白金貨にしてしまうと…まず両替が出来る場所が限られる上に、多くの者達から目をつけられる事になるのじゃ。瑛夜君は、外に出る度に誰かの視線を感じながら暮らしたくはあるまい?」
 「なら、白金貨は諦める。その代わり、金貨を1000枚にしてくれ!」
 「いや、流石にそこまで必要は無いじゃろう。先程も説明したが、もしも足りなくなったのなら…己自身で稼ぐ術を考えてくれ。」
 「ちっ…神の癖にケチだな。」
 「なら、渡さなくてもいいんじゃな?」
 「すいませんでした…」
 「分かれば良い。」

 剣以外で他の武器や調理器具などを造って資金を得る…という事でもするか。
 過去の勇者達は、殆どが大学生か高校生という話だし、料理に関する発展はあっても…調理器具を伝える事は無いだろうからな。
 ただ、この世界の料理のレベルがどの程度なんだろうな?
 俺は別にグルメという訳では無いが、それ相応に喰える料理があると良いのだがな。
 期待しているぞ、過去にこの世界に来た勇者達!

 「それで、スキル譲渡の話なのじゃが…瑛夜君には、儂からスキルを譲渡してやろう。」
 「それは有り難いが、どう言ったスキルなんだ?」
 「儂のスキルは、五神に比べるとそれ程能力は高くは無い。五神のスキルがすぐに使える最高のスキルだとすると、儂が与えるスキルは成長するスキルというものじゃ。」
 「成長するスキル…か、どんな物があるんだ?」
 「様々なスキルがあるので、どんなスキルが欲しいかを言って欲しい。」

 目の前の老神は、かつては勇者達にスキルを与えたと言っていた。
 なら、成長するスキルという物がどう言った物なのかは分からんが、碌なスキルという事は無いだろう。

 「頭の中で創造する物を出現させる能力…」
 「そんなスキルは儂にも無いし、五神ですら無い…というか、そんなスキルが存在するなら態々瑛夜君を呼び出さなくても、魔王を倒せる聖剣を作り放題じゃろう。」
 「だよな。えーっと…転移魔法は?」
 「任意の場所を移動する魔法か、儂には無いが…五神の2人は持っているな。」
 「転移魔法以外の転生者のチートスキルというと…?全属性魔法…」
 「いや、瑛夜君は魔王を倒すとかでは無いからな。攻撃系の魔法は必要無いじゃろうし、そもそも儂にも全属性の魔法は無い。」
 「これも無いか、なら…鑑定魔法は?」
 
 俺がそう言い終わると、老神は何やら難しそうな顔をしている。
 異世界系のラノベに出てくる魔法としては、定番中の定番だろう。
 まさか、これすら無いのか?

 「いや、無い訳じゃ無いんじゃが………先程話した成長するスキルというのは、スキルの使用回数が多ければ多い程に成長するという物でな、使い始めだと…名前くらいしか表示されんのじゃ。」
 「いやいや、名称しか表示されず、使用用途が分からない鑑定魔法って…別な意味で珍しいぞ。」

 あ、薬草採取や毒草採取とかには役に立ちそうだな。
 事前に名前を調べておいて、草を見付けて鑑定魔法をすれば、名前が表示されるだろうからな。
 ただ、調べた物以外の草があったりすると…?
 使えるのか、このスキル⁉︎

 「ちなみに成長するスキルの使用回数は何百回か?」
 「いや…千回以上じゃ。」

 ラノベにある様な詳細な鑑定魔法を使用するには、何千回使用すれば会得出来るんだ?
 下手すると、勇者達が魔王を倒すより後に覚えるんじゃ無いのか?

 「はぁ…ならば、アイテムボックス……収納魔法の類は?」
 「それならあるぞ!初めは10cm四方の収納しか出来んが…」

 10cm四方って………?
 折り畳んだ財布が入るか入らないかの大きさじゃ無いか?
 スマホとかは、絶対に入らないだろうな。

 「聞きたいんだが、これの最大容量ってどれくらいなんだ?」
 「アイテムボックスの最大容量は、小さな小屋が入る位の大きさになる。」
 「だけど、これも成長させるには千回以上か?」
 「いや、これは何十回以上で10cmずつ広くなって行く。」

 使用回数が何十回で済むのなら、鑑定魔法に比べたらマシなのか?
 ただ、10cmずつしか成長しないとなると…1mまで成長させる為には、何百回……いや、下手すると何千回の可能性があるな。

 「さぁ、瑛夜君…他には何か無いか?」
 「何か無いかと言われてもなぁ…?この世界の言葉や文字の関連は?」
 「異世界召喚の特典で、既に瑛夜君には備わっておる。他に何か無いか?」

 他に何か無いか…と言われてもなぁ?
 どちらにしても、えげつない使用回数をこなさないと成長しないからなぁ。
 他のスキルも当てにならない……いや待てよ?
 ラノベの授かる他のスキルは…?

 「生活魔法の類は?」
 「何が欲しいかにもよるのぅ。」
 「生活魔法で一番必要な物を挙げると、クリーン魔法…」
 「儂には無いが、五神には持っている者がいる。」
 「水を発生させる魔法…」
 「手を握ると、1滴だけ水が滴り落ちる。成長すると、滝の様な水量を発生させる事も可能になるのじゃが…」

 あぁ…これもまた何千回の類の話か。
 飲料水を確保するには、井戸水を煮沸消毒しないとヤバい感じか。
 俺はその後に、生活魔法で色々と要望を伝えたのだが…?
 どれもこれも、碌な生活魔法がなかった。

 「あのさぁ爺さん、これが全てなのか…?何か忘れている大事なスキルとか無いか?」
 「儂の与えられるスキルは、先程話した通りじゃ。その中から選んでもらうしか無いのぉ。」

 …と言われても、碌なスキルがない。
 その中で俺が選んだスキルは、どれも最高まで成長させれば凄まじい事にはなるのだが?1つ目…名前しか表示されない鑑定魔法、2つ目…10cm四方しか容量の無いアイテムボックス、3つ目…最高になると滝の様な水量を発生させる事が出来るが、手を握ると1滴だけ水が滴り落ちるという水魔法、4つ目…目的の物を見付け出すという探査魔法だ。
 ただしこの探査魔法は、例えば鉱石とかの場合…坑道の通路を歩いていてその場所が光っているという訳では無く、坑道に入る前に目的の物があるかどうかを表示される魔法だ。
 ある意味、無駄を省ける魔法…だと思うだろ?
 目的の物がある場合も表示はしてくれる…が、何処にあると迄は表示されない。
 極めれば、目的の場所まで誘導をしてくれるらしいが、何千回…いや、何万回というえげつない回数が必要らしいが、案外これが唯一まともだと思えて来る。
 5つ目…成長促進数○倍というスキルを授けて貰った。
 この成長促進数○倍は、他のスキルと組み合わせる事により、回数が大幅に稼げる………という可能性がある。
 仮に数億倍とか、数兆倍なんていう事が起きれば…そのスキルを極められる事が出来るらしいが、それが発動する確率が1万分の1という…ある意味、博打的なスキルである。
 ステータス関連の身体強化はないという話だし、幸運度くらいは上げて欲しかったなぁ。

 「他には何か必要なものはないかのぅ?」
 「え…これ以外に何か貰えるのか?…確か、俺に与えられるスキルの数は5種類と聞いていたが?」
 「あ、そうだったのぅ…」
 「必要な知識は教えて貰ったし、大して役に立たなさそうなスキルも貰ったし…あ、金貨はまだ貰ってないな。金貨をくれないか、200枚…」
 「100枚じゃよ、勝手に数を増やしているんじゃない‼︎」
 「ちっ、そこまで耄碌はしていなかったか…」
 「瑛夜君…」
 「いや、だって…与えられたスキルは、極めない限り碌な効果を発揮しないんだぞ。だから、所持金を100枚に増やしても良いじゃないか!」
 「お主なぁ、足りない分は自分で何かを作り出して売れと、先程言っておいただろぅ。」
 「良いじゃないか、スキル関連で不満を言いたいところを我慢しているんだから、これ位は目を瞑ってくれても…どうせ、幾らでも作れるんだし。」
 「いや、流石の儂等も…紙幣の類は作れんぞ。お主に渡す紙幣は、完全に儂のポケットマネーじゃしな。」
 「何だよ、爺さんの小遣いかよ…っていうか、主神の癖に…それっぽっちしかないのか?」
 「それっぽっち…って、先程の話を聞いていなかったのか?金貨1枚で平民は1年は暮らせられると…」
 「食事や生活に関するものだけならそれで問題は無いだろうが、鉱石や資材の入手の場合、恐らく金貨1枚では足りんと思うぞ…俺が向かう先は、王国が中心にある中央大陸なんだろ?…だとすると、物価の関係は1番高いんじゃないか?」
 「確かに他の大陸に比べたら、物価は1倍高いかもしれん…が。」
 「それに鍛治に使用する鉱石や金属だって、1回の購入で間に合うという訳じゃないんだぞ。初めはまとまった量が必要となり、その鉱石や金属を……って、世界に出回っている一般的な鉱石や金属は何なんだ?」
 「一般的な鉱石や金属は、主に鉄関係の鉄鉱石じゃ。それ以外にも、ミスリルやヒヒイロカネと言った金属も存在するが…流石にオリハルコンは採掘されんのう。」
 「オリハルコンは、神界にしか発掘されないと言っていただろ。だから、最初から全く当てにはしていなかった。それにしてもミスリルやヒヒイロカネか…ミスリルは、ファンタジー関係の定番としても、ヒヒイロカネはなぁ…?」
 「何か問題があるのかのぅ?」
 「確か、オリハルコンと同等の金属という話で…神のみしか鍛える事が叶わずに、人の手では…」
 「誰から聞いたのじゃ、その話…?」

 誰から聞いたっけ、この話…?
 鋼より上の金属の加工には、人の手では限界があると聞いた事があったんだよな。
 なので工房では、鋼より上の金属加工には…鍛造プレスなどを使用すると言われた事がある。
 ただ、鋼よりも上の金属ってあったっけ?
 日本では大昔に、ヒヒイロカネはあったという伝承が存在したというらしいが…って、神が不思議そうな顔をして見ているな?
 あ…そう言えば、複合精錬術を完成させてオリハルコンよりも強い金属を加工したのは、地上の人間という話だったな。
 だとすれば、鋼以上の金属の加工も問題無いのだろうか?
 
 「とりあえず、机上の空論を話し合っていても埒があかないから…とりあえず、俺が向かう中央大陸にあるという鍛治工房がある街に降ろしてくれないか?」
 「分かったのじゃ。では、次に会う時は…勇者達が魔王を倒した時にな。」

 こうして俺は、地上に降ろされる事になる。
 先行きは、正直言って不安でしか無い。
 果たして俺は、まともな生活を送って行けるのだろうか?

 在園路瑛夜の………いや、テルヤ=ザイエンジの物語が始まるのだった。
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