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第四章 別大陸での活動の章

第五話・閑話 クリアベールの奮闘日記&飛鳥頑張る!(ベルと飛鳥の物語です。)

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 ~~~~~クリアベール・クリクラ~~~~~

 6月23日…
 英雄ダン様の青空魔法教室に参加させて貰いました。
 私には無属性魔法しかなかったけど、何かのヒントを得られればと思って参加した。
 英雄ダン様は、右手に炎と左に雷を瞬時に出して見せてもらいました。
 学院で天才と呼ばれていた子も、これは出来なかった。
 こんな事を出来る人は、世界でも数人いるかいないかというのに、目の前で見せられるとは思いませんでした。
 
 その後、ダン様からの課題を言われてやってみました。
 右手で○を、左手で△を描くという物でした。
 私は両聞きなので、これは難なく終わりました。
 右と左で違う物を描く遊びは、何度もやってたので簡単です。
 次の五芒星も六芒星も八芒星もクリアできました。
 
 次の課題を言い渡されました。
 両手で手を水平にしてから、石を頭の上まで上げて取るという物でした。
 この遊びもやったことがある物だったので、別に難しくはなかったです。
 私の子供の頃は、村には同じ年頃の子が居なかったので、1人で自分の考えた遊びで遊んでいました。
 でも、目を閉じて成功させろというのには、やった事が無かったので苦戦しました。
 これは駄目だと思いました。
 
 ダン様は急に魔法でキッチンを出して料理をし始めました。
 出来上がったその料理には、私の好きな甘い香りが漂っていました。
 魔法学院を卒業してから冒険者ギルドに入っても、日々の小銭稼ぎで贅沢は出来ずに甘い物はお預け状態でした。
 その完成された料理を受付のお姉さんに渡して食べさせていました。
 お姉さんの感想を聞いていると、口の中で唾液が溜まっていきました。
 食べたければこの課題をクリアしろと言われて、集中して1番に終わらせました。
 そして、クレープという初めて見た食べ物を口に入れた瞬間、歓喜で涙が溢れました。
 クリームが一瞬で口の中で溶けて、甘過ぎる口の中を果実の酸味が後を追って中和し、食べ終わった頃には余韻が残っていました。
 また食べたい!…そう思っていたのですが、冒険者ギルドで食べれる様になるには、銀貨10枚が必要だと言われました。
 銀貨10枚なんて、日々の生活を送って貯めても、貯まるまでに1年は掛かる…
 私は諦めました。

 次の課題は、両手にそれぞれ同じ属性を出現させるという物でした。
 最初にこの課題に成功したのは、目を閉じる前まで一緒に出来ていたエルヴ族の女の子だった。
 他の子達も挑戦しているのを見て、私は突然怖くなりました。
 私の無属性魔法では、透明な塊を出すだけです。
 私はこの場から離れたいと思っていたら、ダン様が声を掛けて下さいました。
 魔法学院の先輩だったネギア先輩が無属性魔法しか使えない私をお荷物と言っていました。
 私は冒険者ギルドに入ってから、パーティに誘われた事もありましたが、すぐに無能扱いされて荷物持ちばかりやらされていました。
 時には、パーティの男性から嫌らしい目付きで私の体を見る人もいました。
 そんな視線に耐えきれなくなって、私はソロで活動する事にしたのです。

 初めは1人なんて無理だと思っていました。
 でも最低ランクの薬草採取は、滅多に大物と出くわさないので安心して出来ました。
 ですが、貰える報酬は僅かばかりの金額…何度も心が折れそうになりました。
 いつも笑われ、貶され、屈辱的な発言にも耐えてきました。
 ですが、ダン様はそんな無属性魔法しか出来なかった私を笑いませんでした。
 寧ろ無属性魔法の効果的な使い方を教えてくれました。

 青空魔法教室が終わり、自信を持った私は依頼書を確認していました。
 今の私なら1つ上のランクでも、依頼がこなせると思っていました。
 でもそんな時、ダン様からパーティ加入を言い渡されました。
 一緒の旅をして、旅が終わる頃には…最強の無属性魔法使いになれるかもしれないという言葉に参加を決意しました。
 こうして、英雄ダン様の仲間として冒険の始まりに心をウキウキしていました。

 6月22日
 お仲間の2人の女性が突然、ダン様が服を作れると言いました。
 それ以外にも下着も作れるとか…?
 レイリアさんがたぶれっと…という魔道具を見せて貰ったら、今までにない下着を着ている女性の絵がありました。
 こんな下着…私も欲しくなりました。
 でも、サイズを測る為に裸にならないといけません。
 タダで貰えるのなら多少は我慢しようと思いました。

 カイナンの街の外に出ると、ダンさんはしるふぃんだーなる馬を使わない乗り物を召喚されました。
 それに乗ると、凄まじい速さで走り飛びました。
 そして私はあまりの恐さに気絶してしまいました。
 着いたと言われてホッとしましたが、まさか漏らしてはいないよね?…と思って触ってみたらセーフでした。

 次にダンさんは、生活魔法で土の壁と床を作り、浴槽や桶、泡なども作りました。
 私の母も生活魔法は使えましたが、ここまで多彩な事は出来ませんでしたが、お風呂に入れるのは嬉しいです。
 冒険者になってから、冷たい井戸水で体を拭いているだけでしたから、凄く嬉しかった。
 お風呂に入って、泡を使って体を洗いました。
 垢も汚れも全落ちた感じで、体が少し軽くなった気がしました。

 その後に、ダンさんの前で裸になってサイズを測られました。
 ダンさんは真面目な顔でサイズを測っていましたが、私は恥ずかしさで逃げ出したくなりました。
 下着屋で購入した生地で瞬く間に下着が完成致しました。
 付け心地も肌触りも高級品と言って過言ではない出来でした。
 私もクリス姉さまも、レイリアさんも嬉しくなって下着を見せ合いっこしてました。
 ダン様の一言で我に返り、慌てて服を着ました。
 サイズを測っていた時のダンさんは、その時の記憶がなかったと言ってました。
 安心しました。

 マダムの店に行って、再び服を脱いでマダムに見られました。
 恥ずかしかったですが、今後は自分用のサイズを購入できるかと思うと、今までの苦労はなんだったのかと思いました。
 ダンさんが作ってくれた数は、上下共に29着。
 1年は買わなくても済みそうです。

 6月23日
 この日、私はダンさんに胸を舐めさせてくれと迫ってきました。
 勿論嫌ですと断ったのですが、クリス姉さまとレイリアさんが私を押さえつけて、服のボタンを外されて舐められました。
 ダンさんのスキルで、相手の隠されたステータスが解るという物でした。
 そして、ダンさんは母の事を知りました。
 母の事は硬く内緒にすると誓っていたのに、知られてしまった…。
 でも、クリス姉さまがフォローをしてくれたので、いくらか心が落ち着きました。

 その後、無属性魔法の修業として、糸作りを学びました。
 かなり地味な修行法でしたが、これが最強になる為の1歩だと思ったら頑張れる!
 ……なんて思っていた時期もありました。
 目に見える範囲の糸なら出来るのですが、それ以上になると消えかかっていました。
 そんな時、クリス姉さまとレイリアさんがクレープを食べたいと言いました。
 私も食べたいと思い、熱い視線を送ったら集中しろと怒られました。

 ダンさんがちょっと出てくると行って、数時間後…
 人攫いの組織を壊滅させ、悪徳貴族が悉く捕まり、ダンさんは更に英雄の地位を高めました。
 でも、宿に戻って待っていたのは、祝福ではなくクレープを作らされていました。
 これが英雄なのかと思っていたのですが、クレープを食べられたので良しとしました。

 6月24日
 この日はダンさんが武器屋に行くと言って出て行きました。
 今日は修業は休みだ…なんて思っていたら、サボるなよ…と言われ言うとおりにしました。
 それから数時間後…
 疲れた顔で帰ってきたダンさんの腰には剣がありました。
  
 6月25日
 今日は英雄ダンさんのパーティがカイナンの街を旅立つ日です。
 ダンさんの活躍は凄まじく、国王陛下や王妃殿下がダンさんを見送りに来ました。
 改めて、英雄としてのダンさんは凄いと思いました。
 そして、しるふぃんだーとは別のしるろんだーという馬を使わない乗り物を召喚して、乗り込みました。
 出発すると、街中の人々がいつまでも感謝と英雄を称えていました。

 6月25日
 今日はひたすらしるろんだーの中で座りながら糸の修業です。

 6月26日
 今日も糸修行です。

 6月27日
 さすがに糸作りにも飽きました。
 今日はダンさんに勝負を挑みました。
 糸修行とは別な課題をして欲しいと。
 でも勝負は私の敗北でした。
 そして糸修行の完成形があんなこともできると知ったので、私は気合を入れて糸修行を開始しました。
 ダンさんの糸魔法の最高の長さが100m…私は3mでも怪しいのに…。

 私が糸修行を開始していると、ガイウスさんとクリス姉さまがダン様に絡んでいました。
 ダンさんの挑発的な誘いに、ガイウスさんとクリス姉さまは戦いを挑み、多種多様な無属性魔法により物の数分で2人は敗北しました。
 私がダンさんと同じレベルになるまでには何年掛かるのだろうと思いました。

 6月30日
 朝・昼・晩と三食の食事におやつ生活…
 今までの冒険者生活で、昼なんか食べた事もありませんしお腹いっぱいなんてほとんどありませんでした。
 さらにおやつまで…
 ダンさんの食事は美味しい…いえ、美味しすぎるんです。
 体の事を考えて、残そうとするのですが…
 いつの間にか食べていて、皿が空になっていました。
 
 私はカイナンの街で買ったダイエット本を開きました。
 様々なダイエット方法が載っている本です。
 私が見ていると、ダンさんが本を見て言いました。
 
 「ダイエット本なんて無駄な事を…」
 「無駄じゃないですよ! いまカイナンで一番売れている本なんです!」
 「じゃあさぁ、なんでダイエット本が売れるか知ってる?」
 「みんな痩せれるからですよね?」
 「痩せないから売れるんだよ。」
 「痩せないから…って、え? どういう意味ですか?」
 「本に書かれている内容は、その人はその方法で痩せたけど、同じ方法を試して痩せれる人は殆どいないんだよ。 身長や体重、体質が同じ位な人なら効果あるかもだけど、それ以外なら多分痩せない。」
 「じゃあ、私の買った本は…」
 「金の無駄。」
 「はぅ~~~ 私はこの先どうしたら??」
 「食べても痩せられる方法ならあるけど…」
 「え? そんな方法が!?」
 「食べた分動け! 馬車馬の如く…」
 「ですよね…」
 「食事の量を減らすとか出来ます?」
 「なら、ベルだけおやつ抜き…」
 「うわ~~~ん!」

 私のダイエット生活はこうして始まりました。


 7月6日
 この数日間、忙しくて日記を付けられなかった。
 でも、糸修行だけではなく、無属性魔法の槍の出し方を学びました。
 今日は、魔王の配下の十六鬼影衆の1匹が襲ってきました。
 パーティ全員で戦いに挑み、勝利しました。
 でも、私のレベルがとんでもない事になるくらいに上がり、しばらく動けませんでした。
 ガイウスさんでさえ、レベルが5つも上がって反動があるというのに、ダンさんはケロッとして立っていました。
 英雄ってやっぱり凄かったと痛感しました。

 港町に行き、酒場で料理を食べました。
 ダンさんの料理に匹敵する位に美味しい料理でした。
 ダンさんは急に立ち上がり、どこかに行くみたいでした。
 私はトイレに行くと言って、こっそり後を付けました。
 アイマァフールの所でダンさんは何かをしていました。
 遠くからだったので良く見えませんでした。
 
 すると、羽の生えた頭が鹿で体が馬のモンスターがきました。
 話を聞いていると、アイマァフールですら敵わないという話じゃないですか!
 助けを呼ぼうかと思った瞬間、100本近い無属性の槍がモンスターを貫きました。
 そして首を刎ねると、頭に剣を突き立てました。
 ダンさんはアイマァフールの時も全く本気を出していなかったのです。
 アイマァフール戦では私は1本の槍が精一杯で、ダンさんは3本しか作れないとばかり思っていましたが…もうレベルという話より、次元その物が違うと思いました。
 そして私は、何事もなかったように酒場に帰りました。

 ダンさんに追いつく為には、あとどれ位かかるんだろう?
 先はまだまだ長いと思いました。

 ~~~~~紅蓮院 飛鳥~~~~~

 「魔法防御低下魔法マジックブレイク‼︎」
 「翔也! 睡眠魔法を‼︎」
 「おぅ! 天の術法・光の眠り!」

 翔也と賢斗と飛鳥は、華奈に向かって睡眠魔法を施していた。
 だが、華奈は翔也の天の術法に抵抗している感じだった。

 「駄目だ、飛鳥頼む‼︎」
 「華奈、御免‼︎」

 飛鳥は華奈の後頭部に刀の峰で殴り付けて空気絶させた。
 急な仲間割れ…とも思ったが、これは日常的に行われている様子だった。

 「レベルが上がった所為か、華奈の魔法防御が上がっているな!」
 「今までならここまで手荒い事をしなくても寝てくれたのだが…。」
 「仕方ないだろう、パーティーが全滅しない為の手段なんだ! 飛鳥、今の内に頼む‼︎」
 「分かったよ! 今回も凝った物は作れないけど良いよね?」
 「華奈が目を覚ます前に終わらせておきたいから、贅沢は言わんさ。」

 飛鳥は焚き火の前で準備を始めた。
 翔也と賢斗は溜息を吐くと、賢斗は華奈を監視し…翔也は周囲の警戒に当たった。 
 何故…翔也達の勇者パーティーがこんな事をしているかというと、実はここまでなるのにこんな苦労がありました。

~~~~~ダンが城を追放されてから5日後~~~~~

 ボクの剣術もやっと慣れてきた。
 紅蓮院古武芸術は、この魔法のある世界じゃないと技が発動出来ないと思う物ばかりだった。
 六之太刀まで習得できた時にそう思った。

 夕食の時間になり、食堂に行った。
 ダンのお陰で、食事は来た当初より豪華になっている。
 やっぱり、ダンは凄いと思った。
 そして、ボクは大事な事に気付いた。
 ダンがいない勇者パーティで、誰が食事当番をするのか…?
 それは勿論、華奈がやると言い出すだろう。
 それだけは阻止をさせないといけない、パーティの壊滅が掛かっている!
 
 ボクは、次の日から剣術の修業以外に料理の修業も始めた。
 子供の頃から刃物の使い方は慣れているので、野菜を切るのは得意だった…んだけど、味付けの方法は皆無だった。
 そもそも修業ばかりで、女子力を高める様な事は一切やってこなかった。
 ボクは、賢斗に相談しに行った。

 「料理? ダンに負けないようにやろうと思ったけど、僕には才能がないからやめたよ。」
 「なら、料理のレシピとか知らない?」
 「料理なら華奈が得意なんだろ? 華奈に聞けば良いじゃないか!」
 「華奈に任せたらパーティの壊滅的な危機があるから教えて欲しいと言ったの。」
 「華奈の料理って、そんなに不味いのか?」
 「賢斗って、華奈の料理を食べた事無いんだね…」 
 「あぁ、ない。 中学生の時に呼ばれた事があったけど、試験で行けなかったからな。」
 「だからね、そんな楽観的な事が言える訳だ。」
 「華奈に頼んであげようか? 事の重大さに気付くから…」
 「怖い気もするが、一度経験してみよう…。」

 ~~~~~1時間後~~~~~

 「酷かった。 毒消しの魔法が効いて良かった…冗談かと思っていたが、あそこまで酷いとは思わなかった。」
 「わかった? 私が料理の修業を始めようと思った訳が…」
 「あぁ、痛いほど良く…うぷぅ…解った。 言ってくれればどんなことでも協力しよう!」
 「野菜を切るのは大丈夫なんだけど、調理方法や時間、調味料の使い方などを知りたいの。」 
 「僕の知っている知識は専門的な物ばかりだからな… こういう時は、ダンを師だと思っている料理長に聞いてみたらどうだ?」
 「なるほど、餅は餅屋ね。」

 ボクは料理長に事情を話して料理のコツを教えてもらう為に弟子入りした。

 「自分も先生の様な事は出来ませんよ。 自分が出来るのは、調理法と調味料の使い方位です。」
 「それで良いのです、お願い致します。」
 「わかりませんね、どうしてそこまで必死になるんですか?」
 「これは、先程賢斗が食べた華奈の料理の残りなんですが、食べてみて下さい。 解りますから…」 
 「どれどれ…ん? !? !!? !!?? グホッ、ゲッホゲホ!!」
 「ボクが料理を覚えたい理由、解りましたか?」
 「これは酷い! 解毒のポーションで治るところを見ると、これ毒物ですかね?」
 「ところが、華奈は普通に食べれるんです。 ちょっと味が濃かったかな?…と言って。」
 「わかりました、剣聖様の弟子入り認めましょう。 こんな物を旅先で与えられたらパーティが全滅します。」
 「ボクの事は、アスカでお願いします。」

 そして、ボクの辛い修業が始まった。
 1日に3回厨房に立っているおかげで、1週間後にはまともな物を作れる様になった。
 だけど、レシピの量が足りない。
 レシピのバリエーションを増やす為に、賢斗もレシピ提供の為に参加した。
 ダン程の料理まではいかなくても、通常の家庭料理を作れるレベルには達した。
 ある時、翔也が食堂に来てボクをみてこう言った。

 「くだらない事をやっている暇があるなら、素振りでもやっておけよ!」
 
 この発言にボクは頭に来た。
 ボクは近くにいた賢斗と一緒に頷くと、華奈に料理を作って貰っておいた物を翔也にあげた。

 「華奈の作った料理なんだけど、食べて貰える? ボクがこんな事している意味が解るから…」
 「はぁ? まぁいいや…んぐ…? ん!? !!? !!??」

 ボクと賢斗は、ハイタッチをした。
 翔也は、吐きそうな顔を押さえながら2枚目スマイルでボクに言った。

 「俺が悪かった! 飛鳥…頑張ってくれ!! 賢斗も飛鳥のサポートを頼む…」
 
 そういって翔也は食堂から出て行った。
 扉の外から走って行く音がした。
 
 「料理長、ボクのレベルはダンにどの程度近付けたと思いますか?」
 「アスカのレベルでは、先生には遠く及ばない。 自分ですら先生には足元にも及ばない。」
 「わかっていた事だけど、事実を突きつけられるとショックだなぁ…」
 「先生の料理の作り方は、もう神のレベルですよ。 一気に10個のフライパンで10種類の料理を同時に作るだけではなく、何が出来ていて何がまだか…とか、料理を見ただけで味が薄いか濃いかをわかる御方なんですよ。」
 「ダンって、確かバイトは中華料理屋にフランス料理、イタリアン、定食屋だっけ?」
 「他にも、メキシコ料理やベトナム料理、ラーメン屋にそば屋じゃなかったか?」
 「バイトの掛け持ちが多すぎて、何処かの店を辞めようとした時に、給料を上げるから辞めないでくれと引き留められたんだっけ?」
 「学園祭の時に本格的な物を作り過ぎて、取材が来た位だからな。」
 「異なる世界の事は良く解りませんが、先生ってやはりただ者ではなかったんですね。」

 こうやって聞くと、ダンの凄さを改めて知った。
 こうしてボクは、城を出発するまでの間…城の食堂で腕を振るっていた。
 勿論、剣術の修業も忘れては無かった。
 
 そして、現在…
 華奈に料理を作らせない為に、色々試行錯誤した。
 賢斗が眠りの魔法を覚えて、食事の時間になる時に華奈を眠らせたのだ。
 ところが何度もやっていると華奈にも耐性が出来るみたいだったので、翔也が体を張って結構な怪我を自作自演したのを華奈に治療させている間に料理を作るとか、最悪な行動としては…今回の様に刀の峰で後頭部を殴打したり。
 華奈程じゃないけど賢斗も回復魔法は使える。
 ボクが料理を作り終えた時に、賢斗が回復魔法をして起こすという生活が暫く続いた。
 賢斗は耐性弱体の魔法を覚えてからは、再び眠りの魔法を使って眠らせた。
 だけど、それもいつまで持つのか?
 ここ最近の賢斗は、攻撃魔法よりも弱体魔法ばかりを研究していた。
 何故こんな事をしているかと思うでしょ?

 パーティでの合言葉…【華奈に料理を作らせるな!!】
 これがボク達3人の決定事項になったのだった。
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