幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?

アノマロカリス

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第四章 別大陸での活動の章

第四話 航行不可能と魔剣アトランティカの前の持ち主(意外な人でした。)

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 「船が出ない!?」

 僕達は、港の船着き場でそう言われた。
 初めての船旅で船が出ないなんて、これもテンプレなのだろうか?
 シルフィンダーが封じられてなければ空路という手もあったのだが、嘆いていても仕方がない。
 僕はその理由を、船員に聞いてみた。

 「この時期は、オロボンという深海魚の産卵時期で、浅瀬に浮上してくるんです。 その為に、漁師達には稼ぎ時の良い時期なのですが、我々の様な航海事業を行っている者には逆に嫌な季節して…」
 「オロボンって、昨日酒場の料理に出た少し大きめの魚ですよね?」
 「そうです、あれが群れをなして浮上してくるのですが、それ自体は特に問題は無いのですが、それをまとめる者が群れを率いて船を襲うんです。」
 「別に倒せばよいのでは?」
 「いえ、船を襲うのですが、船底を喰い破ってから転覆させるんです。 なので、下手に船が出せなくて…」
 「でも、漁師達は稼ぎ時で捕まえに行くと言っていましたが?」
 「浅瀬に出るので、船でも対応出来るんです。 群れをまとめる者は沖に出てくるので、そこまで行かなければ。」
 「船底かぁ…海に潜って戦う訳にもいかないしな…。」
 「ですので、産卵時期が収まるまで船が出せないので、それまで待っていただかないと…」
 「でも、海に出没するモンスターって別にそのオロボンっていう奴だけではないですよね? そういう奴等はどうしているんですか?」
 「海神の守りという護符を付けています。 完全に襲われなくなる訳ではありませんが、ある一定のモンスターは襲って来なくなるんです。 ただし、産卵時期のオロボンには何故か効果がなく、群れをまとめる者には全く効果がありません。 船旅には冒険者を雇って対処させるのですが、船底からだと対処が出来なくて。」
 「群れをまとめる者って、何匹いるの?」
 「1匹です。 産卵時期の前にオロボンが1匹だけ特質変異をするんですが、それが通常のオロボンより大きくて獰猛なんです。」
 「まいったなぁ…ちなみに、産卵時期が終わるのっていつ頃ですか?」
 「後2か月は足止めですかね…」
 「そんなに待てないが、待つしかないのか…。 オロボンか…以前捕まえたのが群れのボスなら良かったんだけどな。」
 「捕まえた…? オロボンをですか?」
 「2週間くらい前だったかな? ここから先に行った無人島で釣りをしたら捕まえました。」

 僕はそう言って、船員に無人島があった場所の方向を指さした。
 
 「高級食材って書いてあったから、捌こうとは思ったのですが、普通の魚ならともかく深海魚はやった事なくて、ここに来た時に捌いてもらおうと思って持ってきたのを忘れてましたw」
 「今もありますか?」
 「はい、これです。」

 僕はそういって、球体解除でギュンター・オロボンを出した。
 球体魔法に収納した物は時間が止まる為に腐ったりはしないので、持ち運びには役に立つのである。

 「これは!? ギュンター・オロボン!! これです、群れを率いているオロボンは!」
 「じゃあ、船は出せますか?」

 ……と聞く前に、船員は皆を呼びに行った。
 そして、漁師達を連れてくると、ギュンター・オロボンを見て驚いていた。
 
 「オイ、英雄様…これをどうやって捕まえたんですか?」
 「えぇと… カイナンの街で記者達に追われてここに来たけど、ここでも記者に追われて…無人島で魚でも釣ろうと思って釣っていたら、こいつが掛かって…」 
 「群れのボスは、普通の餌では見向きもしないんだが、英雄様は何を餌にしたんだ?」 
 「あの時は…確か、グレートホーンブルの干し肉だったかな?」
 「さ…さすが英雄様だな! こいつは高レベルのモンスターで誰も歯が立たなかったというのに、倒すどころか氷漬けにするなんてさすがだ!!」
 「氷魔法で倒してそのまま収納したんです。 収納した物は時間が止まっているので腐らないんですよ。」
 「なら、沖まで船が出せるぞー!! 英雄様、こいつを貰っても良いですか?」
 「いいですよ、僕では捌けませんし… という事は船を出せるんですね?」
 「はい、問題ありません! 色々と準備がありますので、明日には航海可能となります。」

 漁師達は、ギュンター・オロボンを数人がかりで運んで行った。
 船員達も出航に向けての準備を始めていた。
 出航までに時間があったので、僕達は一度港町を少し離れた場所に行った。

 「ここで何をするの? 修業?」
 「いや、これからの航海でしばらく風呂に入れないから、風呂に入る準備をする。」

 僕は土魔法で床を平らにして排水溝の穴を作り、壁と天井を作って浴槽を作り、その中にお湯をはり、桶と椅子と大きな桶に泡魔法の泡を大盛りで作った。
 そして今回の風呂には、扉を付けた。
 ガイウスと一緒だと、中に小部屋で待機は絶対に許しては貰えないだろうと…?

 「そういえば、ガイウスって風呂ってどうしているの?」
 「カイナンにいた時は、外の川で水浴びするか、宿屋にいる時は、水タオルで体を拭く位しか…って、なんだ?」

 ガイウス以外の僕達4人は、ガイウスから離れた。
 ガイウスからは特に臭いという匂いは無かったが、気分的に近寄りたくは無かった。
 
 「じゃあ、女の子達から先ね。 ガイウスにはこれをあげる。」

 そういって、女の子達が風呂に入っている時に、僕は垢擦りのタオルを渡した。
 いざという時用に作っていたのだが、僕の皮膚の無い体には痛すぎるので使い道がないのかと思っていたが、こんなところで使い道があるとは思わなかった。

 「ガイウスが風呂に入って出た時には、褐色の肌が白くなっていたりしてw」
 「失敬な! そこまで汚れてはない!!」

 中から声がしてきたので、僕も中に入ろうとしたらガイウスに止められた。

 「オイ、ダン…覗きに行くつもりではないだろうな?」
 「いや、覗きに行く訳ではないよ。 脱いだ服をクリーン魔法で綺麗にするだけ。」

 ガイウスは嘘は無いと確認したので、僕を中に入る事を許可した。
 ガイウスと一緒なのに覗きに行くと言った命知らずな真似は出来る筈がない。
 覗きなら、ガイウスがいない時にこっそりと…
 そんな事を考えていたら、出てきた時にガイウスに睨まれた。
 女の子達が風呂から出てきたので、ガイウスに先に入って貰った。
 
 「ガイウス、ちゃんと泡で体洗ってから湯船に入れよ。」
 「わかっている!」

 僕は風魔法と火魔法でドライヤーを放ってから、レイリアとクリアベールの髪を乾かしてあげた。
 すると中からガイウスの妙な声が聞こえてきた。
 僕も風呂に入った。

 「ダン、この泡は凄いな! 垢や汚れがすっかり落ちたぞ!!」
 「これからは定期的に風呂に入れよう! でも考えてみれば、エルヴの集落の時に鉱山に入った時に作った風呂には泡魔法覚えてなかったからな。」

 僕等は体を洗い終わると、湯船に入った。
 ガイウスは僕の体を見て言った。

 「相変わらず、ダンの体は凄いな…」
 「言うな、僕は自分の体があまり好きじゃないんだ。」

 一方、その頃…
 外にいた女の子達は、風呂の中から聞こえた言葉に興味が出てきていた。

 「ダンの体が凄いってどういう事にゃ?」
 「私もダンの裸って見た事ないの。 いつも長袖を着ていて肌を露出したりしないし、私達が一緒に入ろうと言っても拒むから…」
 「確かにダンさんって不思議な方ですよね? 普通男性に一緒に入ろうなんて言われたら喜んで入ろうとしますから…」

 「見るにゃ!」
 「見ましょう!」
 「え…なら…私も…」
 
 3人は風呂を覗いた。
 丁度、僕が湯船から上がり、腰にタオルをして脱衣場に来たところだった。
 ガイウスはまだ湯船に浸かっている。
 余程、熱い湯が好きなんだろうと思っていた。
 脱衣場で服を着ようとした時、後ろから視線を感じた。
 振り向いてみると、3人が僕の裸を見て口を押さえていた。
 そして目が合うと、3人はすぐに出て行った。
 女の子も覗きってするのだと初めて思った。

 3人の女の子達は、入り口の反対側まで行って話始めた。
 
 「ダンの体が凄いという意味がわかったにゃ…」
 「ダンは今までどんな生活をしてきたの?? あんな体をした人、集落でも見た事ないわ!」
 「皮膚がほとんどありませんでした。 何をしたら…」

 僕が頑なに長袖を脱がない意味を3人の女の子達は知った。
 クリスは反省して俯いていて、レイリアとクリアベールは口を押さえて涙を流していた。

 「ふぅ…風が心地よいなぁ。」
 
 風呂から出て、外で風に当たっていると、3人の女の子達が僕の所に来て謝ってきた。
 
 「ダン、ごめんなさい。 ダンが長袖を着ていて脱ぎたくない理由がわかりました。」
 「あぁ、その事か…見ていても気分の良い物じゃないし、別に良いよ。」
 
 僕はやんわりと言ったつもりだったが、クリスは落ち込んでいて2人は泣き出した。
 そして最悪なタイミングでガイウスが出てきた。
 ガイウスは僕がレイリアを泣かせたと思って、僕の胸倉を掴んだがクリスが事情を話して収まった。

 「お前らなぁ…俺も最初にダンの裸を見た時は同じ反応をしたが、それ以降はなるべくその話題には触れないようにしておいたんだよ。」
 「そう、そしてガイウスは僕の裸を見て、ムラムラと発情をして後ろから僕を抱きしめて、胸元に手を触れて…」
 「やっとらんわ、そんな事!! 変な妄想を言うのはやめろ!!」
 「僕は、貞操の危機を感じたよ…初めてはガイウスになるのかと…」

 僕とガイウスのやり取りを見て、3人の女の子達は吹き出して笑い始めた。
 やっぱり女の子達は、笑った顔の方が可愛いと思った。
 
 「それにしてもさぁ…」
 「何?」
 「ガイウスって、褐色の肌が薄くなってないか?」
 
 4人はガイウスを見た。
 そういえば泡魔法もスキルレベルが上がっているんだよね、なら何か追加効果でもあるのかな?
 ギルドカードを見ると、泡魔法の欄に美肌効果というのが追加されていた。
 それの影響にしては、綺麗すぎると思った。
 つまり………
 
 「ガイウス、お前は汚すぎ! うわ、汚ねぇ! やめて来ないで、不潔がうつる~!」

 そういうと僕は、土魔法を解除してから町に走った。
 ガイウスは怒って追いかけて来た。
 3人の女の子達も町に戻った。

 町について酒場で昼飯を食べた。
 明日までにはまだ時間がある。
 何をしようかと考えて、一度僕達は解散してそれぞれ自分の時間を過ごしてもらった。

 《相棒、話がある。 少し良いか?》
 《何? 話なら問題ないけど場所を移そうか?》

 僕は宿屋の部屋に移った。
 魔剣アトランティカは、話し始めた。

 《相棒よ、昨夜の夜の話していた事を聞いていたが、慱とは誰の事だ? 相棒の名前ではないのか?》
 「僕の名前でもあるけど、僕の中にも慱という存在がいるんだ。」
 《良く解らないな… 事情を話してくれないか?》
 「少し長くなるけど良いかな?」

 僕はアトランティカに今までの事を話した。
 異世界から救世主召喚で呼び出された事。
 子供の頃に野犬に襲われた事。
 その所為で、僕は慱が苦しみを逃れる為に生み出された別人格だという事。
 本来なら慱と1人になるはずが観察者に邪魔された事。
 観察者の所為で、僕のジョブやスキルがこんなになってしまった事を。

 《相棒よ、観察者というのは何者なのだ?》
 「慱の話だと、遊戯の邪神ルキシフェルという名前の神らしい…」
 《ルキシフェルだと!?》
 「アトランティカ、何か知っているの?」
 《相棒よ、オレが太古の昔に聖剣として英雄に使われた話をした事があったよな?》
 「うん、そんな話をしていたね。」
 《その時の英雄達の戦った魔の者は、ルキシフェルが生み出した奴だったんだ。》
 「!?」
 《善なる神々が世界を創造し、見守っている時に遊戯の神がそれを見ていて退屈だと思い始め、人々に戦いを強いる様に仕向けたのだが、思った以上に拡大しなかったので、遊戯の神は魔界の門を開いてその中の上級悪魔に力を与えて魔王の様な存在を作って地上を襲わせたのだ!》
 「もしかして、その時の神が?」
 《そう、遊戯の神ルキシフェルだった。 だが、この戦いで多くの者が死にルキシフェルは歓喜に奮い立ったが、善なる神々達に力を奪われ、邪神に身を落として肉体も持たずに彷徨うだけの魂となったのだが…》
 「それが僕の中に入って来たのか…」
 《相棒よ、これは厄介だぞ! あれから数世紀経っているから、奴も力を奪われているとは言っても長い時を得てある程度までは戻っているかもしれん》
 「なら、慱を解放するのは難しいか…」

 今後の戦いを考えると、慱の協力はどうしても必要不可欠になる。
 なので早く復活させたい所だけど?

 《いや、そうでもないかもしれん。 オレの現段階の力ではまだ無理だが、いずれは精神世界にも行ける能力がある。 そのおかげで、以前の相棒とは心が深く繋がって強大な力を発揮できたのだが。》
 「なら、慱を助けられるかもしれないという事か!!」
 《前の相棒…ノブナガの言う通りルキシフェルを葬っていれば、子孫たちは苦しまなくても済んだのにという話が本当になったな…》
 「以前はノブナガっていう人だったんだ? どんな人だったの?」
 《やたら態度が偉そうで、統率力もあり、何より強かった…いや、強過ぎたと言っても過言じゃない。》
 「ノブナガねぇ…元いた世界にも歴史上の人物だったけど、その名前の人がいたな。」
 《多分、相棒の言ったとおりの人物だと思うぞ。 こちらに救世主召喚をされる前は、信頼している部下に建物を燃やされて死を覚悟した時にこの世界に来たと言っていたからな。》
 「え? それって織田信長の事? という事は信頼している部下って明智光秀か…」
 《そうそう、ノブナガの名前は、ノブナガ・オダと言っていたな。 ミツヒデに騙されて火を付けられたと。》
 「なるほどそれでか、織田信長が最後に死んだ本能寺が燃えたのに死体が発見されなかったというのは、異世界召喚されていたからか…って、アトランティカは記憶が戻ったの? 自分の聖剣だった頃の名前は忘れているのに?」

 あ…いや、アトランティカは別に記憶喪失という訳ではないのか。
 長い事放置されていて記憶が欠落していただけか。

 《相棒の世界でも有名な人物だったみたいだな。》
 「第六天魔王と呼ばれた武将というこの世界でいう王様みたいなものでね、領土拡大の為に大量の人達を虐殺してきた僕らの世界の魔王だね。」
 《戦いの後は、オレは洞穴みたいな場所に押し込まれて…相棒と出会った場所だな。 それ以降はどうなったのかは知らん。》
 「この世界の王様の話によると、太古の昔に戦った英雄達はそれぞれに土地を見付けて王国を築いたっていう話だけど…」
 《ならその前にだな、オレがあの洞穴に押し込まれたのは。》
 「なら、もしかしたら子孫がいるとか?」
 《いや、もう子を成そうとは思わん…と言っていたから、城だけ築いて子はいないだろう。 ノブナガの性格は裏表がないからな。》
 「それにしても、僕の前の所有者が織田信長ねぇ…? 皆に話したら驚かれるだろうなw」

 なるほど、アトランティカを強くしていけばこの先慱を助けられるかもしれないのか…
 だとすると、2匹の鬼影衆の死体を海に捨てたのはまずったな。
 あいつらがいれば…いや、過ぎた事は諦めよう。
 大陸に移ったら、1人で我武者羅に鍛えよう。

 《なら、相棒が慱と1つになると?》
 「多分、本来の力に戻るんだと思うんだけど…」
 《なんだか歯切れが悪いな。》
 「本来の力が良く解らないんだ。 以前瞬間的に力が使えたんだけど、それ以降使えなくなったし…。」
 《オレがレベルが上がれば、固有魔法も使える様になるし、頑張ってレベルを上げてくれよ!》
 「そういえば、アトランティカのステータスってどうなっているんだろう? 舐めて良い?」
 《舐めるのは構わんが、オレのステータスは表示されないと思うぞ。 魔剣や聖剣は、本人と精神が繋がらない限りステータスは表示されないからな》
 「なんだ、今の状態でも駄目なのか…」

 アトランティカと話し終わると皆と合流した。
 そして酒場に行くと、僕が仕留めたギュンター・オロボンが料理に出てきたので食べてみた。
 今までに食べたどの魚より美味かった。
 これは毎年が楽しみだと思い、来年もここに来て、こいつを釣り上げようと思った。
 
 その後、宿屋に帰って寝た。
 翌日、僕達は船に乗る事になった。
 次の大陸まで、日数的には20日前後掛かると言っていた。
 そんなに船に乗っていられるか!
 僕はある秘策を閃いていた。

 だが、その所為でとんでもない事が起きるであった。
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