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第三章 サーディリアン聖王国の章

第十四話 無駄に過ぎた1日(無駄…になったのかな?)

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 ここ最近、色々あって休む暇が無かったので…武器屋にも行かないといけなかったが、別に急ぐ必要はないのでベッドに寝そべりながら考えていた。
 まぁ僕の場合、武器といっても包丁しか装備が出来ないので…武器屋にあるのかが問題だった。
 すると、3人にタブレットを見てみたいと言われて貸していたら、唐突に声を掛けて来た。

 「ダンってさ、服は作れるよね?」
 「まぁ、スキルで作れるけど…」
 「なら、下着は作れるかにゃ?」

 クリアベールを仲間に入れて、紹介した翌日に突然聞かれた。
 服や下着は、作ろうと思えば作れない事は無い。
 【創造作製】で材料さえあれば作れるのだが…?
 何故こんな事を言われたかというと、3人が僕のタブレットを見てその中に女性の服や下着のカタログが入っていたのを見たからだ。
 何故そんなものが入っていると思っている人もいるだろう?
 それは、向こうの世界で華奈や飛鳥にプレゼントする為に参考として入れていた物だった。

 *タブレットに入っていた下着の雑誌は、無料でドラッグストア等で良く見かける女性の分厚い雑誌です。

 「作ろうと思えば作れない事もないんだけど、1つ問題が…」
 「何? 材料費が必要とか?」
 「何でも言って欲しいにゃ!」
 「大変言い難い事なんだけど…」
 「「うんうん!」」
 「服は寸法さえ測れば作れない事は無いんだけど、下着となると…」
 「なると?」
 「裸になった状態を実際に見ないと作れない…」
 「なーんだ、そんな事なの。」
 「別に見られても平気だにゃ!」

 この世界の女性の倫理観はどうなっているんだろう?
 普通見られたら恥ずかしがるものだよ、そこにいるクリアベールみたいに顔を真っ赤にして首を振るみたいに。
 
 「見られても平気だというのはわかった…だけど、レイリアは確かこの間買ったばかりだろう?」
 「でも、こんな刺繍で作られた機能性のある下着は持ってない!」

 この世界の下着は飾りっ気がない。
 機能性を重視している為に、分厚くて無骨なデザインなので可愛さがないのである。
 考えてみると確かに、以前レイリアに逆風の舞をやった時に水色だったが色気は無かったな。
 でも、下着用のゴムって作れるのかな?
 時間が掛かりそうだし最悪、紐でも良いか…。
 
 「ところで、ガイウスは今どうしてる?」
 「兄はエルヴの店に行ってる。」
 「なら、今すぐ出るから準備して…」
 「「「はい」」」

 さて…市場に来たのは良いけど、布屋ってあるのかな?
 探してみたけど、古着屋はあるけど服飾関係の店は無かった。
 
 「ダンは何を探しているの?」
 「布とかの生地屋を探しているんだけど、見付からなくてね。」
 「それなら、下着屋にあります。」
 「それなら、れっつごーにゃ!」

 僕等は下着屋の前に来た。
 欲しいのは布材や糸等なのだが…?
 英雄として有名になった僕が女性の下着売り場には入れないし、そもそも英雄とか以前に男が下着売り場には入れない。
 それにこの3人に買ってきてもらおうとすると、考えている物と別な物を買いそうだしな…。
 僕はクリアベール、クリス、レイリアの順にみる。
 一番まともそうなのはクリアベールなのだが…?
 あ、【フェイク】があったの忘れてた!

 【フェイク・クリス】を発動してクリスの姿になると、クリスが顔を近付けてくる。
 やはり自分の姿になると気になる物なのだろうか?
 以前はレイリアも同じ風に見てきたしな…。
 それはそうと、僕は店の中に入った。
 素材を探すうちに、下着を見るが…確かに飾りっ気がない。
 本当に機能性重視で色気もない。
 そして奥に布材を発見した。

 「シルク、ビロード、ベルベッド…その他にも30種類くらい布材があるな…異世界の布屋って怖いな…。 しかも、シルクやビロードがめっちゃ安い…うん、買おう!」

 僕はシルクとビロードを銀貨267枚で全て購入した。
 両方とも20m位はある。
 今後の事も考えての購入だった。
 さて、次は場所だが…宿屋は無理だな、ガイウスが帰って来ると面倒そうだ。
 なら、外にするか。
 僕等はカイナンの街の入り口でた。
 
 「もしかして、あそこ? でも、今回はどうするの?」
 「スキルが開放されたという事は、シルフィンダーも使えるはずだから…」

 僕とレイリアの会話にクリアベールとクリスは頭に「?」が浮いていた。
 まぁ、見せた方が早いか…僕は球体解除をすると、シルフィンダーを出現させた。
 
 「なんにゃ、これは~~~!?」
 「なんですか、これ?」
 「馬を使わない乗り物のシルフィンダーだよ!」
 「皆は後ろに乗って。」

 僕は運転席に乗る。
 3人は後部座席に乗った。
 紋章をセットすると、魔導音が唸った。
 街道を真っ直ぐ走った後にフライトモードでガレサステップに向かった。
 到着すると、やけに静かだと思ったら案の定レイリア以外は気絶していた。
 シルフィンダーを収納した後に、まずは【結界】で周囲を囲むと、土魔法で壁と天井と煙突を作り、地面を平らにして風呂釜を作り、そこに湯を張った。
 そこに少し粗目のタオルを3つと吸水性に優れたタオルを3つ用意し、大きなたらいに泡魔法で山盛りにしてから、前回と同じ様に小部屋を作ってそこに待機した。
 3人は服を脱いで風呂に入っていた。
 見ないのか?…と思う者もいるかもしれないが、覗いて痛い目を見たくないのが現状。
 でも正直に言えば、すっごく見たい!!!
 
 「先輩達は凄くスタイルが良いですねぇ!」
 「本当に凄いのはクリスだよね、スタイル抜群だもん!」
 「クリアベールは胸が凄いにゃ! まるでメロンみたいにゃ!」

 我慢…我慢……がま……ん…
 
 「触ってみても良いかにゃ?」
 「私も触ってみたい!」
 「先輩達駄目ですって…ン…ア…♡」

 が…が…が…がま……ん
 僕の心のHPは1桁です。
 あ、スキルがあった…。
 まさか慱はこの為にこのスキルを渡してくれたのかな?
 スキル【無心】発動…先程までの欲求が嘘のように消えた。
 それはまるで、悟りを開いた僧侶の様に…。

 体を拭き終わった3人は、裸の状態で僕の前に来た。
 そして体を見てサイズを目視すると、【創造作製で】彼女たちの下着を作った。
 ブラと下はヒモパンだった。
 ゴムだけは作れない…事は無いのだが、人数分を作りだそうとするとかなり時間が掛かるので、これで妥協してもらった。
 そしてクリスのヒモパンには、尻尾の穴も開けておいた。
 それぞれに30着ずつ作り、彼女たちは下着を着ると僕はいつの間にか【無心】が解けていた。
 この【無心】は、発動時の記憶を忘れるという物だった。
 勿体ないと思ったが、理性があってニヤけた顔をして今後のパーティに影響があるのは避けたいので、これで良しとしよう。

 「あの…君たち…」
 「「「え?」」」
 「嬉しいのは分かるけど、男性の目の前で下着姿なのはどうかと思いますが…?」
 「さっき、私たちの裸を見たのに?」
 「下着を作っている間は、スキル【無心】というのを使っていたので、見た記憶は消えています。」
 「そうなの?」
 「そうにゃの?」
 「ほっ…」
 「服はクリーン魔法で綺麗にしてあるので、とりあえず着て下さい。 それと、そうだな…食事をしたら、もう一度下着屋に行きます。 その時3人は、下着屋の店長さんの前で下着姿になってもらいます。 良いですか?」
 「別に構わないけど、どうして?」
 「店長のマダム・ラスティーナさんにこの下着を見てもらうのです。 そうすると…」
 「そうすると?」
 「今後は彼女の各国の店で、もしかしたらこの下着が売っているかも…と」
 「そういう事なら異論はないわ。」
 「私も合うサイズが無くていつも特注かサラシを巻いていて…」
 「あちきも尻尾穴が開いている下着がないから、売れる様になれば助かるにゃ!」
 「あ、それと…君たちの下着の上下の1着をお店に渡す事になると思うので、了承してね。」
 「1枚くらいなら別に良いよ。」
 
 僕は料理をして、皆に振舞った。
 僕も風呂に入りたかったが、今回はクリーン魔法で我慢した。
 そして、この先を考えると…少し手続きが面倒になる。
 ヴォルガンや国王陛下にも言われたけど、僕が異世界から来たという話はなるべく広めない方が良いと言われた。
 よし、ヴォルガンに犠牲になって貰おう…。
 食事後、僕らはシルフィンダーに乗ってカイナンの街に戻り、下着屋に行く前に冒険者ギルドに寄った。

 「キャサリアさん、今日は私服なんですね?」
 「ちょっと忘れ物を取り来てまして、ダン様は今日はどの様な?」 
 「ギルドマスターにとある場所に一緒に来て欲しいのですが…います?」
 「はい、いますけど呼んできましょうか?」
 「はい、お願いします。 それとティルティナさんと…キャサリアさんもこの後用事が無ければ一緒に行って欲しい場所があるのですが、良いですか?」
 「はい、今日は非番なので構いませんが。」

 しばらく待っていると、ヴォルガンとティルティナさんが来た。
 なんか機嫌が悪そうだな…あ、ヴォルガンね。

 「ダン殿…何か用か?」
 「ちょっとヴォルガン様にお願いしたい事がありまして…」
 「どんなロクでもない用事だ?」
 「人聞きが悪いなぁ…そうですね、女性に関する事で着いてきて欲しい所があるんですが…」

 僕等はマダム・ラスティーナの店に着いた。
 ヴォルガンは店を見ると…?

 「俺は帰る!」
 「ちょっと待って、ここの店主に用事があるんですよ!」
 「男の俺がこんな店に入れる訳ないだろうが!!」
 「そうですか…なら、ここの店主に僕が異世界人と話すしかないですね。 本当ならヴォルガンに立ち会って他言無用の契約の立会いをしてもらおうと思っていたのですが。」
 「その為に俺をこんな所に…あ~もう、わかった!」
 「話が早くて助かる!」
 「アタシの店の前で男が何を騒いでいるんだい?」
 
 声をした方を振り向くと、恰幅の良い40代半ばくらいのおばさんが立っていた。
 以前店に入った時に店の壁に掛けられている肖像画を見ていたので、僕にはそれがマダム・ラスティーナというのがすぐに解った。

 「あ、マダム・ラスティーナ! 実はお話したい事があるのですが、店の中ではない部屋はありませんか?」
 「英雄ダン様じゃないか! 部屋なら商談室があるけどそこで良いのかい?」

 僕等は、商談室に入った。
 そこで僕はテルシア王国から、異なる世界の救世主の1人だと紹介され、マダムに口止めの契約をヴォルガンに立ち会ってもらった。

 「今回見て貰いたい物は、これなんです! レイリア、クリス、クリアベール服を脱いで!」
 「うん」

 3人は下着姿になると、マダムは食い入る様に3人の下着を見た。
 キャサリアさんもティルティナさんも見た事ない下着にテンションが上がっていた。
 ヴォルガンがイヤらしい目つきで見ていたので、ティルティナさんの尻尾で目を攻撃されて手で顔面を押さえていた。

 「これが普通の下着で…マダム、白と黒のレース生地はありますか?」
 「あぁ、持ってくるよ!」

 そういって店に戻ると、材料を持ってすぐに戻ってきた。
  
 「少し生地を貰いますね…【創造作製】…」

 僕はストッキングとガーターとガーターベルトを作った。
 それをレイリアとクリスに着かたを説明して着てもらった。
 
 「こんな感じになるのですが…これは商品としては売れませんか?」
 「そう、ワタシの考えていた物はこういうモノだったのよ!! でも、生地が薄すぎて不安だという声が多くてね。」
 「なら、魔力糸や魔力生地で編んだ物を売り出だせばよいのでは?」 
 「そうか! それなら薄くても丈夫な物が出来る。」

 魔力糸も魔力布も普通の布や糸と違うのでかなり値が張るだろう。
 でもまぁ、購入目的が恐らく貴族の令嬢や婦人だろうし…多少の値段には問題はないか。

 「あと、紙をいくつか欲しいのですが…」
 「羊皮紙がこれだけあるけど、足りないかい?」

 僕はスキル【転写】を使った。
 タブレットのカタログの下着を次々と羊皮紙に転写していった。
 ただ、元々下着雑誌という訳ではないので、全てではないがかなりの量を転写出来た。
 凝り過ぎた刺繡はこの世界では作るのが難しいと判断した。
 僕のスキルの【創造作製】なら問題は無いだろうが、この能力がバレると勧誘されかねない。
 
 「これと、彼女たちが着ている下着をお渡し致しますので、それを参考に作ってみて下さい。」
 「わかったよ、ワタシに任せな!」

 僕等は握手をした。
 そしてマダムはというと?

 「オイ、今日は店じまいだよ! それとスタッフをありったけ集めな! 休んでいる者には連絡を取って来てもらいな! これは革新的な物が世に出回るよ!!」
 「なら、コンセプトは機能性からファッションへ…かな?」

 「それ、戴いたよ!! さぁ、打ち合わせするよ!!」
 「僕等も出ようか…」

 3人は服を着ると僕達は店を出た。
 この調子だと、あまり時間が経たない内に発売される事になるだろう。
 キャサリアさんもティルティナさんも、新しい下着に興味津々だったし、発売されるのが待ち遠しい感じにみえた。
 これで、僕はスキルで下着作りから解放されたね。
 良かった良かっ…あ、武器…は明日で良いか。

 旅立ちまで残り2日…


 ~~~~~半年後~~~~~

 立ち寄った冒険者ギルドで新聞を読んでいた。
 ページをめくっていくと、ある記事が1面を飾っていた。

 『これからの時代、女性の下着は革新的な進化を遂げます! 機能性からファッションへ… 貴女を生まれ変わらせるでしょう。 ある時は自分を優雅に…またある時は男性を虜に… マダム・ラスティーナが贈るランジェリー、ダンブランド! 新発売です! 多種族のお子様から老人まで全てを御用意してお待ちしております。 サイズが合わない方は特注品を御用意致します。 ダンブランドを貴女も是非! 手に取って見定めてみてね♪』

 これ…どう見ても僕の名前使っているよね?
 しばらくの間、マダム・ラスティーナの支店の店の前を通ると、女の子達がダンブランド…ダンブランド…と騒いでいた。
 やめて、恥ずかしくなるから…。
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