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第三章 サーディリアン聖王国の章
第一話 初めての街・カイナン!(そういえばダンって、街に行くのは初めてでは?)
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「やっと…ついた! ここまで来るのに長かったなぁ…。」
ここは、サーディリアン聖王国の領内にあるカイナンの街である。
サーディリアンの領内には、4つの街があり…
北の街ノーチス・東の街イースタル・西の街サイカークス・南の街カイナンである。
その中心に位置する国が、サーディリアン聖王国という訳だ。
「この街に来るのは久しぶりだな!」
「ガイウスは、ここに来た事あるんだ?」
「2年位前だな、集落の者がここに店を構えると言って手伝った事がある。」
「案内をしてもらいたい…所なんだが、所用を果たした後じゃないとゆっくり回れないか…」
そう、テルシア王国のギルドマスターのヴァルガンから、カイナンの街に着いたら冒険者ギルドマスターに渡す手紙を預かっていたのだった。
街を見ると、出店が沢山あり活気ついていた。
夢にまでに見た異世界の街…僕は感動していた。
何故なら、テルシア王国では街に行く事を禁じられていたからだ。
~~~~~と、その前に~~~~~
エルヴ大森林から、ガイウスとレイリアを連れて旅立った後の話をしよう。
アーベント草原に着いた僕達は球体解除でシルフィンダーを出した。
レイリアは初めて見るであろう乗り物に驚きを隠せないでいた。
早速乗り込もうと思ったが、シルフィンダーの前に行き動力部分を開いてふと思った。
ここに入っている魔法力は、ある程度貯めてはいるけど満タンではない。
そして、レイリアの【魔人】というジョブの詳細が詳しく解らない。
強過ぎる魔力が…という事くらいで全く解らなかった。
「ガイウス、レイリアにお願いしたい事があるんだが良いかな?」
「なぜレイリアの事で俺の許可が必要なんだ?」
「だって、ガイウス無視してレイリアを舐めさせてくれって迫ったら、僕を殺す気で向かってくるだろ?」
「あぁ、スキルか。」
「そそ、ジョブの【魔人】というのは城のジョブ図鑑でも見た事がないのでな、詳細が知りたい。」
ガイウスはレイリアに話して承諾を得た。
でも確か人物の鑑定には…心臓に近い場所を舐めるという事だったが?
人にやる舌鑑定の方法は、ガイウスには教えてない。
さて、どうするか…?
1.正直に言う…多分殺される。
2.ガイウスに目を閉じて貰う…でも小声で胸を舐めさせてという話を聞かれた後に殺される。
3.ガイウスを貫通魔法で掘った穴に落として、無理矢理実行する。 レイリアにチクられて殺される。
うん、どれも積みだ。
あ、でも…嘘は言ってないから、ガイウスの精霊の加護も反応はしないから信じてもらえるはず?
うん、正直に話してみよう。
「ガイウス、この舌鑑定なんだが…人物の詳しい詳細を得る為には、鑑定する人物の心臓に近い場所を舐めないといけないのだが良いか?」
「くっ…これは嘘ではないのか!? わかった……妹を助ける為ならば許そう!」
ガイウスはレイリアに告げると、ガイウスは後ろを向き耳を塞いだ。
余計な事をしたら、確実にガイウスに殺されるだろうから、レイリアに協力してもらい素早く心臓の近くの胸を舐めた。
レイリアは顔を赤くしながら胸を晒していた。
赤くならないで、僕も恥ずかしいから。
【レイリア・エルヴ】18歳(13歳から成長が止まっている)
ジョブ・【魔人】Lv21
【魔人】賢者や魔導士より上位のジョブである。
12歳を過ぎてから魔力が覚醒し、桁違いの魔力で体内を危険にする。
魔力を発散すれば体内への負担は少ないが、【魔人】の魔力はファイアボールがエクスプロード並みの火力がある為、発散できる場所が限られている。
スキル【四属性系統魔法】 エクストラスキル【超魔力】
【HP】6148/6150
【MP】238.320/120.000
MPが凄まじいな…!
…という事は、適当に発散すれば問題がないという事か…。
*ちなみに、ダンの様な生活魔法の事を魔法力と呼び、属性魔法の場合は魔力という言い方をする。
魔法力と魔力では、質が違うので威力も異なるのだが…?
ダンは空の球体を5つ用意した。
ガイウスを見ると、まだ後ろを向いたまま耳を塞いでいた。
「おーい、ガイウス! ガイウス~?」
だめだ、聞こえてない…。
仕方ないな…集落で散々蹴られた仕返しをしよう!
貫通魔法でガイウスの足元に穴を作ると、ガイウスは落ちて行った。
「うぉおわわわわぁぁ!」
「ガイウス、ダイジョーブデスカ?」
「ダン、貴様何しやがる! それに何故カタコトなんだ??」
「いや、呼んでも返事がなかったから…」
「呼んでも返事がない人間を普通穴に落とすか!? 肩を叩いたりすれば済むだけの話だろ!」
「でもそのおかげで、君の間抜けな叫び声を聞けた。」
僕は貫通解除をすると、ガイウスは戻ってきた。
ガイウスは酷く御立腹の様で、槍を構えて威嚇してきた。
「やめろよ! 親友じゃないか!」
「貴様はその親友を返事がないからと穴に落としたんだぞ!」
「はぁ、話が先に進まないから少し頭冷やしてこい。 右手から強風、左手から強風、複合統一魔法・テンペストストーム!」
「のわぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!」
そう叫びながら、ガイウスは遠くに飛んで行った。
しばらく帰ってこれないな?
そう思って、僕はレイリアに話をしようとした…が?
「ダンって本当に多数スキル持ちなんだね? それに属性同時発生に複合統一魔法も使えるなんて。」
「複合統一魔法? あぁ…なれれば簡単だよ。 それよりもレイリアにやってほしい事があるんだけど…」
そういって僕は、空の球体を渡して魔力をフルに貯める様にお願いした。
レイリアは目を閉じて球体に手を合わせると、魔力を注ぎ込んでいた…が?
球体に貯め過ぎて亀裂が入った。
まさか、亀裂が入るとは思わなかった。
勿体ないが、球体は破棄してもう1度お願いした。
レイリアはコツを掴んだのか、今度は亀裂が入らずにフル状態になった。
続いて、4つの球体を渡して風魔法を込めて貰う事にした。
4つともフルになると、レイリアは表情が明るくなった。
もう1度、舌鑑定をさせて貰った。
【MP】108.000/120.000
うん、MPがオーバーしていない。
普通の表情をしていたけど、無理をしていたんだなぁ。
シルフィンダーの動力から僕が込めた魔法力の球体を取り出し、レイリアの魔力を詰めた球体をセットした。
あれ? そういえばガイウスは?
「ガイウスーーーそろそろいくぞーーー!」
飛んで行った方向に叫んでみたが反応がない。
まさか、打ち所が悪くて動けないとか…ってことは無いか。
僕はもう1度叫ぶ事にした。
ガイウスが聞いたら、間違いなくブチギレる内容を…
「じゃあな、ガイウス! お前は置いて行く! 僕はレイリアとカイウスの街に行き、宿屋を1部屋借りて一緒の布団で寝るつもりだからーーー!!」
遠くの方から土煙を上げて、ガイウスが走ってきた。
ガイウスは槍の穂先を僕の顔に向けた。
「冗談だよ、冗談…本気にするなよ!」
「貴様の言っていた言葉に精霊の加護は動かなかった。 貴様、本気で言っていたな?」
僕とガイウスのやり取りをみて、レイリアはクスクスと笑っていた。
さて、気を取り直して、僕らはシルフィンダーに乗り込んだ。
ペンダントの紋章をハンドルにセットして起動した。
今までない位にシルフィンダーは唸っている。
魔法力と魔力ではここまで違う物だと実感した。
「本当に風になりそうだな…シルフィンダーGo!」
軽く発進したのに、すでに速度は150㎞を越えていた。
レイリアは速く走っているシルフィンダーに楽しんでいたが、ガイウスは青い顔をして両手を合わせて祈るような仕草をしていた。
なるほど、ガイウスが頑なに拒んだ理由は、これか…。
僕は意地悪をしたくなり、フライトモードに切り替えて空を飛んだ。
僕とレイリアは平気だったが、ガイウスはというと…?
「やめ、やめろ、やめて、おろして、降ろしてくれ、いやだーーー俺は降りるーーー」
…と叫んでいた。
その様子をみて、僕とレイリアは笑っていた。
しばらく飛んでいると、間所らしき場所と馬車が行き交うのが見えたので、フライトモードを解除した。
そしてしばらく走っていると、目の前に馬車が見えたので横に避けて進んだ。
僕は馬車の操縦者に手を挙げて挨拶すると、レイリアも手を振っていた。
馬車の操縦者は驚いた顔をしていた。
シルフィンダーを加速して、馬車をぶっちぎった。
間所に着くと、兵士たちが国境の手続きをしていた。
そこにいる兵士達はシルフィンダーを見て凄く驚いている。
間所の中にある馬車の停車場にシルフィンダーを止めて、ガイウスとレイリアにシルフィンダーの護衛を任せて僕は手続きに行った。
ただ、手続きの前に散々質問や説明を求められたのは言うまでもない。
そして手続きが終わり、シルフィンダーの元に戻ってみると、貴族らしき人物から声が掛かってきた。
「馬を使わない乗り物なんて大変素晴らしい! 是非売ってくれないか??」
「ふっ…御冗談を。」
そういって僕はシルフィンダーに乗ろうとしたが、貴族に止められた。
「言い値で買い取ろう!」
あー貴族の常套句がでたよ…。
売る気はないんだがな。
まぁ、こういう者の交わし方は知っている。
「さぁ、いくらでも支払おう! いくらだ!?」
「貴方の全財産、爵位、領地を全て払っても、これの1億分の1でしかない。 払えますか?」
貴族は口をつぐんだ。
当たり前だ、貴族の全財産でもシルフィンダーは渡せないし渡すつもりもない。
僕は紋章をセットして、間所を発進しようとした…が、先程の貴族が馬車で前を塞いできた。
あーーーもう、しつこい!
前回には書いていなかったが、武器ではないのだがクラクションはある。
『グヴァォォォォォン!!!』
ただし、魔獣の声の音なのだが、馬車の馬には効果が絶大で、怯えた声を発して貴族を置いたまま馬車は走り去っていった。
そしてそれを追いかける貴族…マヌケだ。
さて、邪魔者はいなくなったし行くか…。
間所を出たが、カイナンの街まで距離は長い。
しばらく走っていると、先程の逃げ出した馬車が道を塞いでいた。
そして道の真ん中に先程の貴族…ほんとしつこい!!
魔獣の声に驚くと言っても、調教はしてあるんだからすぐに止まって貴族も追いついたんだろうが…道を塞いでまでする事か?
僕は呆れたが、なら道を塞いでも無駄な事を教えてあげようと思い、フライトモードで飛ぶ事にした。
道を塞いでいる馬車までの道は、助走には充分だったので飛び立った。
貴族は口をあんぐりと開けながら見上げていた。
*この貴族とは後日、意外な所で出会うのだが…
これは、このまま走って行ったら、カイナンの街でも同じ事が起きそうだな。
カイナンの街が見える手前の場所でフライトモードを解除して、シルフィンダーから降りて球体にして紋章の中心に仕舞える仕組みになっているので、取り付けた。
それから、僕らはカイナンの街に歩いて行き、辿り着いたのである。
……で、話は冒頭に戻る。
「ガイウス、レイリア、僕は冒険者ギルドに行くけど、2人はどうする?」
「俺達は、知り合いの店に顔を出してくるよ。 レイリアの事も伝えておきたいしな。」
「なら、どっちが早いか…? 待ち合わせはどうする?」
「この道を真っ直ぐ行った先に、噴水があるのでそこで落ち会おう。」
「了解した…と言いたい所だけど、冒険者ギルドってどっちだ?」
「噴水の先に青い屋根の建物があるから、それが冒険者ギルドだ。」
僕達は一旦別れて、別行動をする事にした。
噴水を抜けてから、青い屋根…これか!?
街のどの建物よりも大きかった。
バーの様な扉を抜けると、カウンターがあり、座席があり座席には冒険者が酒を飲んでいる。
壁には依頼書関係のボードがあり、まさに小説でよくある風景だった。
僕はテルシア王国の冒険者ギルドには行けなかったので、始めて来られて感動した。
……と、感動している場合ではないな、カウンターはあの女の人の所に行くか。
カウンターに向かっていると、体格の大きい品の無さそうな男が声を掛けてきた。
「おい、ここはガキが来る場所じゃねえぞ!」
これもテンプレというものだろうか?
実際にあるんだな…これ?
僕は軽く手を挙げて先に進んだ。
「あ、すいません…」
「おい、こっちはまだ話は終わっちゃいねぇぞ!!」
僕は品の無い冒険者から胸倉を掴まれ持ち上げられた。
「無視していたつもりはないのですが…すいません、先に用事を済ませてもらっても良いですか?」
「何の用かは知らねえが早くしろ! その後に俺様が教育してやるからよ…」
僕は降ろされると、受付のお姉さんに話しかけた。
「すいません、実は…テルシア王国のギルドマスターのヴァルガン様から、こちらのギルドマスター宛の手紙をお預かりしているのですが…。」
「はい、畏まりました。 至急ギルドマスターを呼んでまいります。」
僕は受付のお姉さんに手紙を渡した。
お姉さんは、手紙を受け取るとカウンター裏の階段上がって行った。
僕は品の無い冒険者に話しかけた。
「お待たせしました。 それでどんな教育をして下さるのでしょうか?」
「お前の用事ってギルドマスターだったのか?? いや、その…何でもないです。」
この世界の冒険者ギルドでは、ギルドマスターに会える者なんてそうそういない。
上位のランカーや上位貴族、王族くらいしか会えない存在である。
なので、そんな話が出たら…品の無い冒険者ではどうしようもないのである。
どう見てもこの品の無い冒険者は低ランクだろうし、上位ランクが新人みたいなのを見つけて声を掛けるなんて言う真似はしないだろう。
「お待たせしました。 ギルドマスターがお会いになるそうです。 こちらにお越し下さい。」
僕とお姉さんは階段を上がっていくと、応接室の前について…
「ギルドマスターにお手紙を持参してくださった方をお連れしました。」
「入らせよ…」
お姉さんは扉を開けると、下に戻って行った。
僕は「失礼します」といって中に入った。
「そこに掛けてくれ」と言われてソファーに座った。
「俺の名前はヴォルガン、テレシアのヴァルガンの弟だ、宜しくな!」
「僕はダンです。 宜しくお願いします…というか、兄弟だけあってそっくりですね。」
そういって、握手を交わした。
ヴォルガンは手紙を読んでいる途中だったのか、「少し待っててくれ」といって手紙を読み始めた。
ヴォルガンは手紙を読みながら、顎に手を置いたり、頭を掻いたり、考え込んだりと表情がコロコロ変わっていた。
そして手紙を読み終わると、気難しそうな顔をしていた。
「この手紙によると、ダン殿は救世主召喚で呼び出された異なる世界の住人となっているが、間違いはないか?」
「はい、その通りですが… その手紙には何を書いてあるんですか?」
ヴォルガンは説明した。
僕が異なる世界から呼び出された事、聞いた事がないジョブを持っている事、複数のスキルを所持している事、ステータスがアンノウンと表示されていて正確な数値が解らない事、属性同時出現可能や複合統一魔法が使えることなど…ほぼ全部じゃん。
「この手紙の事を鵜呑みにするには、実際に見てみない事にはなぁ…? 魔法を使ってみせてくれ。」
「右手から氷、左手から風、複合統一魔法・クーラー」
両手からそれぞれ違う属性を出してから、合わせてクーラーを発動してヴォルガンに掛けた。
「手紙に書かれていた事は本当だったのか!!! これは…どう表現したものか…」
「別にこの程度、造作もないですが?」
僕はそういうと、ヴォルガンは悩んでいた。
「手紙には、5つのスキルとユニークスキルという特殊スキルを持っていると書いてあるが?」
「あ、いまスキルは10個ありますね。 ユニークスキルを抜いてですが…」
「信じられんな…救世主召喚の救世主様のスキルは2つと伝えられているのに…?」
「そうですねぇ、なんででしょうね?」
「それで結局、僕はこの後どうすれば良いのでしょうか?」
「実はな、兄貴からダン殿の能力を計って、適正なギルドランクを決めてくれという事なんだが…?」
「適正なギルドランク…ですか?」
「勇者や聖女、賢者や剣聖は最上級ジョブに位置づいているものなので、これらのジョブはSSランクなんだよ。 だが…ダン殿のランクをどの程度に位置付ければ良いか解らなくてな。」
「別に適当で良いですよ。 依頼こなしてランクアップすれば良いだけの話ですから…」
「そうもいかないんだよ!! 属性同時出現や複合統一魔法が出来る人間を低ランクなんかに出来ないんだ!! だから悩んでいるんだ!!」
ヴォルガンは部屋に響き渡る声を発しながら、テーブルをバンバン叩いた。
「いままでどんなモンスターを… いや、ギルドカードを貸してくれ!」
僕はギルドカードをヴォルガンに渡すと、ヴォルガンはギルドカードを水晶に当てた。
「キリングラビット×9 グリーディ・ボア×2 ハルモニアゴーレム×1 ダスティーボロウ×21 ギガントダスティーボロウ×1…って、何だこりゃあ!!!」
うん? なんかおかしい事でもあったのか??
「キリングラビットとグリーディ・ボアはまぁ良いとして…ハルモニアゴーレム?とか、ダスティーボロウ何てBランカーでも倒せないぞ!! ダン殿は一体、どんな戦い方をしたんだ?」
僕は今までの戦いを事細かく説明した。
説明を聞いていたヴォルガンは、頭を押さえて悩みだした。
「ダン殿は、Aランクだ! 戦闘経験と魔法に関するものでAランクに位置付けた。 君のギルドカードとこのメモを下のカウンターの職員に渡してくれ… あとAランクの専用馬車というのがあるがどうする?」
「馬車は遠慮します。 馬を使わない乗り物がありますので。」
「あ…あはは…俺はもう驚かんぞ!」
この応接室は、何気に広い。
シルフィンダーを出しても差し支えないと思った僕は、ギルドマスターに許可を取った。
そして、球体解除してシルフィンダーを出現させ、紋章をセットした。
重い音を発しながら、シルフィンダーは起動した。
「実際に見ると凄まじいな! これ、速度はどれくらい出る?」
「馬が最大の速度で走っても、これには全く追いつけません。 アーベント草原からカイナンまで半日で着きました。」
…まぁ、途中空も飛んだけど…。
「アーベントから半日だと…? 最速の馬車でも3日は掛かるというのに…」
「ですので、専用馬車はいりません。」
「さすがにもう無いよな!! もう無いよな!!?」
「はい、もうありません!」
本当は空も飛べる事を話しても良いのだが、これ以上混乱させるのも面倒だ。
「わかった、もう良い」と言われたので、シルフィンダーを収納した。
「今まで生きてきて、こんなに驚いた事は無かったぞ… まぁとりあえず、下で受付してくれ。」
そういってヴォルガンは、僕のギルドカードとメモを渡してくれたので、受け取って部屋を出た。
そして、下に行ってカウンターのお姉さんにカードとメモを渡した。
「はい、受付しますね。 ダン・スーガー様はAランクとして… Aランク!?」
ギルド内がざわつき始めた。
先程の品の無い冒険者は、手に持っているジョッキから酒が流れ落ちてる。
「失礼しました。 ではダン様、御渡し致します。」
「これから宜しくね…えーと、お姉さんの名前は?」
「私はキャサリアと申します。 宜しくお願い致します。 ところで依頼は今日受けますか?」
「今日はギルドマスターに会いに来ただけなので、依頼は後日にします。」
「畏まりました。 では、依頼を受ける日をお待ちしております。」
そういってギルドカードを貰うと、先程の品の無い冒険者の元に行った。
「これから宜しくね、いつか教育というのを教えてね。」
「滅相もありません! 先程は大変失礼しました。」
品の無い冒険者は、土下座して謝った。
ふむ、この世界にも土下座ってあるんだと感心した。
~~~~~噴水の前~~~~~
僕はガイウスとレイリアに合流した。
僕の用事の方が長かったらしく、2人は待ちくたびれていた。
「そういえば、冒険者ギルドが騒がしかったが何かあったのか?」
「ふふん、ほら僕のギルドカード…Aランク!」
「はぁ!? 俺はまだBランクだぞ!!」
「ダン、凄いね!」
「ハルモニアゴーレムとダスティーボロウを倒した功績だと、他にもまぁ…魔法で評価されたけど。 というかさぁ、ダスティーボロウってBランクでも倒せないって言ってたけど、そんなに強いのアレ?」
「お前が特殊過ぎるんだ、ダスティーボロウは普通の魔道士でも倒せん。」
割とあっさり倒せたんだが…?
まぁ、良いか。
「それよりもお前を待っていて腹が減った。 何か喰おうぜ!」
僕達3人は、街の屋台を回って食べまくった。
そして宿をとって眠る事にした。
明日の冒険にそなえて…。
ここは、サーディリアン聖王国の領内にあるカイナンの街である。
サーディリアンの領内には、4つの街があり…
北の街ノーチス・東の街イースタル・西の街サイカークス・南の街カイナンである。
その中心に位置する国が、サーディリアン聖王国という訳だ。
「この街に来るのは久しぶりだな!」
「ガイウスは、ここに来た事あるんだ?」
「2年位前だな、集落の者がここに店を構えると言って手伝った事がある。」
「案内をしてもらいたい…所なんだが、所用を果たした後じゃないとゆっくり回れないか…」
そう、テルシア王国のギルドマスターのヴァルガンから、カイナンの街に着いたら冒険者ギルドマスターに渡す手紙を預かっていたのだった。
街を見ると、出店が沢山あり活気ついていた。
夢にまでに見た異世界の街…僕は感動していた。
何故なら、テルシア王国では街に行く事を禁じられていたからだ。
~~~~~と、その前に~~~~~
エルヴ大森林から、ガイウスとレイリアを連れて旅立った後の話をしよう。
アーベント草原に着いた僕達は球体解除でシルフィンダーを出した。
レイリアは初めて見るであろう乗り物に驚きを隠せないでいた。
早速乗り込もうと思ったが、シルフィンダーの前に行き動力部分を開いてふと思った。
ここに入っている魔法力は、ある程度貯めてはいるけど満タンではない。
そして、レイリアの【魔人】というジョブの詳細が詳しく解らない。
強過ぎる魔力が…という事くらいで全く解らなかった。
「ガイウス、レイリアにお願いしたい事があるんだが良いかな?」
「なぜレイリアの事で俺の許可が必要なんだ?」
「だって、ガイウス無視してレイリアを舐めさせてくれって迫ったら、僕を殺す気で向かってくるだろ?」
「あぁ、スキルか。」
「そそ、ジョブの【魔人】というのは城のジョブ図鑑でも見た事がないのでな、詳細が知りたい。」
ガイウスはレイリアに話して承諾を得た。
でも確か人物の鑑定には…心臓に近い場所を舐めるという事だったが?
人にやる舌鑑定の方法は、ガイウスには教えてない。
さて、どうするか…?
1.正直に言う…多分殺される。
2.ガイウスに目を閉じて貰う…でも小声で胸を舐めさせてという話を聞かれた後に殺される。
3.ガイウスを貫通魔法で掘った穴に落として、無理矢理実行する。 レイリアにチクられて殺される。
うん、どれも積みだ。
あ、でも…嘘は言ってないから、ガイウスの精霊の加護も反応はしないから信じてもらえるはず?
うん、正直に話してみよう。
「ガイウス、この舌鑑定なんだが…人物の詳しい詳細を得る為には、鑑定する人物の心臓に近い場所を舐めないといけないのだが良いか?」
「くっ…これは嘘ではないのか!? わかった……妹を助ける為ならば許そう!」
ガイウスはレイリアに告げると、ガイウスは後ろを向き耳を塞いだ。
余計な事をしたら、確実にガイウスに殺されるだろうから、レイリアに協力してもらい素早く心臓の近くの胸を舐めた。
レイリアは顔を赤くしながら胸を晒していた。
赤くならないで、僕も恥ずかしいから。
【レイリア・エルヴ】18歳(13歳から成長が止まっている)
ジョブ・【魔人】Lv21
【魔人】賢者や魔導士より上位のジョブである。
12歳を過ぎてから魔力が覚醒し、桁違いの魔力で体内を危険にする。
魔力を発散すれば体内への負担は少ないが、【魔人】の魔力はファイアボールがエクスプロード並みの火力がある為、発散できる場所が限られている。
スキル【四属性系統魔法】 エクストラスキル【超魔力】
【HP】6148/6150
【MP】238.320/120.000
MPが凄まじいな…!
…という事は、適当に発散すれば問題がないという事か…。
*ちなみに、ダンの様な生活魔法の事を魔法力と呼び、属性魔法の場合は魔力という言い方をする。
魔法力と魔力では、質が違うので威力も異なるのだが…?
ダンは空の球体を5つ用意した。
ガイウスを見ると、まだ後ろを向いたまま耳を塞いでいた。
「おーい、ガイウス! ガイウス~?」
だめだ、聞こえてない…。
仕方ないな…集落で散々蹴られた仕返しをしよう!
貫通魔法でガイウスの足元に穴を作ると、ガイウスは落ちて行った。
「うぉおわわわわぁぁ!」
「ガイウス、ダイジョーブデスカ?」
「ダン、貴様何しやがる! それに何故カタコトなんだ??」
「いや、呼んでも返事がなかったから…」
「呼んでも返事がない人間を普通穴に落とすか!? 肩を叩いたりすれば済むだけの話だろ!」
「でもそのおかげで、君の間抜けな叫び声を聞けた。」
僕は貫通解除をすると、ガイウスは戻ってきた。
ガイウスは酷く御立腹の様で、槍を構えて威嚇してきた。
「やめろよ! 親友じゃないか!」
「貴様はその親友を返事がないからと穴に落としたんだぞ!」
「はぁ、話が先に進まないから少し頭冷やしてこい。 右手から強風、左手から強風、複合統一魔法・テンペストストーム!」
「のわぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!」
そう叫びながら、ガイウスは遠くに飛んで行った。
しばらく帰ってこれないな?
そう思って、僕はレイリアに話をしようとした…が?
「ダンって本当に多数スキル持ちなんだね? それに属性同時発生に複合統一魔法も使えるなんて。」
「複合統一魔法? あぁ…なれれば簡単だよ。 それよりもレイリアにやってほしい事があるんだけど…」
そういって僕は、空の球体を渡して魔力をフルに貯める様にお願いした。
レイリアは目を閉じて球体に手を合わせると、魔力を注ぎ込んでいた…が?
球体に貯め過ぎて亀裂が入った。
まさか、亀裂が入るとは思わなかった。
勿体ないが、球体は破棄してもう1度お願いした。
レイリアはコツを掴んだのか、今度は亀裂が入らずにフル状態になった。
続いて、4つの球体を渡して風魔法を込めて貰う事にした。
4つともフルになると、レイリアは表情が明るくなった。
もう1度、舌鑑定をさせて貰った。
【MP】108.000/120.000
うん、MPがオーバーしていない。
普通の表情をしていたけど、無理をしていたんだなぁ。
シルフィンダーの動力から僕が込めた魔法力の球体を取り出し、レイリアの魔力を詰めた球体をセットした。
あれ? そういえばガイウスは?
「ガイウスーーーそろそろいくぞーーー!」
飛んで行った方向に叫んでみたが反応がない。
まさか、打ち所が悪くて動けないとか…ってことは無いか。
僕はもう1度叫ぶ事にした。
ガイウスが聞いたら、間違いなくブチギレる内容を…
「じゃあな、ガイウス! お前は置いて行く! 僕はレイリアとカイウスの街に行き、宿屋を1部屋借りて一緒の布団で寝るつもりだからーーー!!」
遠くの方から土煙を上げて、ガイウスが走ってきた。
ガイウスは槍の穂先を僕の顔に向けた。
「冗談だよ、冗談…本気にするなよ!」
「貴様の言っていた言葉に精霊の加護は動かなかった。 貴様、本気で言っていたな?」
僕とガイウスのやり取りをみて、レイリアはクスクスと笑っていた。
さて、気を取り直して、僕らはシルフィンダーに乗り込んだ。
ペンダントの紋章をハンドルにセットして起動した。
今までない位にシルフィンダーは唸っている。
魔法力と魔力ではここまで違う物だと実感した。
「本当に風になりそうだな…シルフィンダーGo!」
軽く発進したのに、すでに速度は150㎞を越えていた。
レイリアは速く走っているシルフィンダーに楽しんでいたが、ガイウスは青い顔をして両手を合わせて祈るような仕草をしていた。
なるほど、ガイウスが頑なに拒んだ理由は、これか…。
僕は意地悪をしたくなり、フライトモードに切り替えて空を飛んだ。
僕とレイリアは平気だったが、ガイウスはというと…?
「やめ、やめろ、やめて、おろして、降ろしてくれ、いやだーーー俺は降りるーーー」
…と叫んでいた。
その様子をみて、僕とレイリアは笑っていた。
しばらく飛んでいると、間所らしき場所と馬車が行き交うのが見えたので、フライトモードを解除した。
そしてしばらく走っていると、目の前に馬車が見えたので横に避けて進んだ。
僕は馬車の操縦者に手を挙げて挨拶すると、レイリアも手を振っていた。
馬車の操縦者は驚いた顔をしていた。
シルフィンダーを加速して、馬車をぶっちぎった。
間所に着くと、兵士たちが国境の手続きをしていた。
そこにいる兵士達はシルフィンダーを見て凄く驚いている。
間所の中にある馬車の停車場にシルフィンダーを止めて、ガイウスとレイリアにシルフィンダーの護衛を任せて僕は手続きに行った。
ただ、手続きの前に散々質問や説明を求められたのは言うまでもない。
そして手続きが終わり、シルフィンダーの元に戻ってみると、貴族らしき人物から声が掛かってきた。
「馬を使わない乗り物なんて大変素晴らしい! 是非売ってくれないか??」
「ふっ…御冗談を。」
そういって僕はシルフィンダーに乗ろうとしたが、貴族に止められた。
「言い値で買い取ろう!」
あー貴族の常套句がでたよ…。
売る気はないんだがな。
まぁ、こういう者の交わし方は知っている。
「さぁ、いくらでも支払おう! いくらだ!?」
「貴方の全財産、爵位、領地を全て払っても、これの1億分の1でしかない。 払えますか?」
貴族は口をつぐんだ。
当たり前だ、貴族の全財産でもシルフィンダーは渡せないし渡すつもりもない。
僕は紋章をセットして、間所を発進しようとした…が、先程の貴族が馬車で前を塞いできた。
あーーーもう、しつこい!
前回には書いていなかったが、武器ではないのだがクラクションはある。
『グヴァォォォォォン!!!』
ただし、魔獣の声の音なのだが、馬車の馬には効果が絶大で、怯えた声を発して貴族を置いたまま馬車は走り去っていった。
そしてそれを追いかける貴族…マヌケだ。
さて、邪魔者はいなくなったし行くか…。
間所を出たが、カイナンの街まで距離は長い。
しばらく走っていると、先程の逃げ出した馬車が道を塞いでいた。
そして道の真ん中に先程の貴族…ほんとしつこい!!
魔獣の声に驚くと言っても、調教はしてあるんだからすぐに止まって貴族も追いついたんだろうが…道を塞いでまでする事か?
僕は呆れたが、なら道を塞いでも無駄な事を教えてあげようと思い、フライトモードで飛ぶ事にした。
道を塞いでいる馬車までの道は、助走には充分だったので飛び立った。
貴族は口をあんぐりと開けながら見上げていた。
*この貴族とは後日、意外な所で出会うのだが…
これは、このまま走って行ったら、カイナンの街でも同じ事が起きそうだな。
カイナンの街が見える手前の場所でフライトモードを解除して、シルフィンダーから降りて球体にして紋章の中心に仕舞える仕組みになっているので、取り付けた。
それから、僕らはカイナンの街に歩いて行き、辿り着いたのである。
……で、話は冒頭に戻る。
「ガイウス、レイリア、僕は冒険者ギルドに行くけど、2人はどうする?」
「俺達は、知り合いの店に顔を出してくるよ。 レイリアの事も伝えておきたいしな。」
「なら、どっちが早いか…? 待ち合わせはどうする?」
「この道を真っ直ぐ行った先に、噴水があるのでそこで落ち会おう。」
「了解した…と言いたい所だけど、冒険者ギルドってどっちだ?」
「噴水の先に青い屋根の建物があるから、それが冒険者ギルドだ。」
僕達は一旦別れて、別行動をする事にした。
噴水を抜けてから、青い屋根…これか!?
街のどの建物よりも大きかった。
バーの様な扉を抜けると、カウンターがあり、座席があり座席には冒険者が酒を飲んでいる。
壁には依頼書関係のボードがあり、まさに小説でよくある風景だった。
僕はテルシア王国の冒険者ギルドには行けなかったので、始めて来られて感動した。
……と、感動している場合ではないな、カウンターはあの女の人の所に行くか。
カウンターに向かっていると、体格の大きい品の無さそうな男が声を掛けてきた。
「おい、ここはガキが来る場所じゃねえぞ!」
これもテンプレというものだろうか?
実際にあるんだな…これ?
僕は軽く手を挙げて先に進んだ。
「あ、すいません…」
「おい、こっちはまだ話は終わっちゃいねぇぞ!!」
僕は品の無い冒険者から胸倉を掴まれ持ち上げられた。
「無視していたつもりはないのですが…すいません、先に用事を済ませてもらっても良いですか?」
「何の用かは知らねえが早くしろ! その後に俺様が教育してやるからよ…」
僕は降ろされると、受付のお姉さんに話しかけた。
「すいません、実は…テルシア王国のギルドマスターのヴァルガン様から、こちらのギルドマスター宛の手紙をお預かりしているのですが…。」
「はい、畏まりました。 至急ギルドマスターを呼んでまいります。」
僕は受付のお姉さんに手紙を渡した。
お姉さんは、手紙を受け取るとカウンター裏の階段上がって行った。
僕は品の無い冒険者に話しかけた。
「お待たせしました。 それでどんな教育をして下さるのでしょうか?」
「お前の用事ってギルドマスターだったのか?? いや、その…何でもないです。」
この世界の冒険者ギルドでは、ギルドマスターに会える者なんてそうそういない。
上位のランカーや上位貴族、王族くらいしか会えない存在である。
なので、そんな話が出たら…品の無い冒険者ではどうしようもないのである。
どう見てもこの品の無い冒険者は低ランクだろうし、上位ランクが新人みたいなのを見つけて声を掛けるなんて言う真似はしないだろう。
「お待たせしました。 ギルドマスターがお会いになるそうです。 こちらにお越し下さい。」
僕とお姉さんは階段を上がっていくと、応接室の前について…
「ギルドマスターにお手紙を持参してくださった方をお連れしました。」
「入らせよ…」
お姉さんは扉を開けると、下に戻って行った。
僕は「失礼します」といって中に入った。
「そこに掛けてくれ」と言われてソファーに座った。
「俺の名前はヴォルガン、テレシアのヴァルガンの弟だ、宜しくな!」
「僕はダンです。 宜しくお願いします…というか、兄弟だけあってそっくりですね。」
そういって、握手を交わした。
ヴォルガンは手紙を読んでいる途中だったのか、「少し待っててくれ」といって手紙を読み始めた。
ヴォルガンは手紙を読みながら、顎に手を置いたり、頭を掻いたり、考え込んだりと表情がコロコロ変わっていた。
そして手紙を読み終わると、気難しそうな顔をしていた。
「この手紙によると、ダン殿は救世主召喚で呼び出された異なる世界の住人となっているが、間違いはないか?」
「はい、その通りですが… その手紙には何を書いてあるんですか?」
ヴォルガンは説明した。
僕が異なる世界から呼び出された事、聞いた事がないジョブを持っている事、複数のスキルを所持している事、ステータスがアンノウンと表示されていて正確な数値が解らない事、属性同時出現可能や複合統一魔法が使えることなど…ほぼ全部じゃん。
「この手紙の事を鵜呑みにするには、実際に見てみない事にはなぁ…? 魔法を使ってみせてくれ。」
「右手から氷、左手から風、複合統一魔法・クーラー」
両手からそれぞれ違う属性を出してから、合わせてクーラーを発動してヴォルガンに掛けた。
「手紙に書かれていた事は本当だったのか!!! これは…どう表現したものか…」
「別にこの程度、造作もないですが?」
僕はそういうと、ヴォルガンは悩んでいた。
「手紙には、5つのスキルとユニークスキルという特殊スキルを持っていると書いてあるが?」
「あ、いまスキルは10個ありますね。 ユニークスキルを抜いてですが…」
「信じられんな…救世主召喚の救世主様のスキルは2つと伝えられているのに…?」
「そうですねぇ、なんででしょうね?」
「それで結局、僕はこの後どうすれば良いのでしょうか?」
「実はな、兄貴からダン殿の能力を計って、適正なギルドランクを決めてくれという事なんだが…?」
「適正なギルドランク…ですか?」
「勇者や聖女、賢者や剣聖は最上級ジョブに位置づいているものなので、これらのジョブはSSランクなんだよ。 だが…ダン殿のランクをどの程度に位置付ければ良いか解らなくてな。」
「別に適当で良いですよ。 依頼こなしてランクアップすれば良いだけの話ですから…」
「そうもいかないんだよ!! 属性同時出現や複合統一魔法が出来る人間を低ランクなんかに出来ないんだ!! だから悩んでいるんだ!!」
ヴォルガンは部屋に響き渡る声を発しながら、テーブルをバンバン叩いた。
「いままでどんなモンスターを… いや、ギルドカードを貸してくれ!」
僕はギルドカードをヴォルガンに渡すと、ヴォルガンはギルドカードを水晶に当てた。
「キリングラビット×9 グリーディ・ボア×2 ハルモニアゴーレム×1 ダスティーボロウ×21 ギガントダスティーボロウ×1…って、何だこりゃあ!!!」
うん? なんかおかしい事でもあったのか??
「キリングラビットとグリーディ・ボアはまぁ良いとして…ハルモニアゴーレム?とか、ダスティーボロウ何てBランカーでも倒せないぞ!! ダン殿は一体、どんな戦い方をしたんだ?」
僕は今までの戦いを事細かく説明した。
説明を聞いていたヴォルガンは、頭を押さえて悩みだした。
「ダン殿は、Aランクだ! 戦闘経験と魔法に関するものでAランクに位置付けた。 君のギルドカードとこのメモを下のカウンターの職員に渡してくれ… あとAランクの専用馬車というのがあるがどうする?」
「馬車は遠慮します。 馬を使わない乗り物がありますので。」
「あ…あはは…俺はもう驚かんぞ!」
この応接室は、何気に広い。
シルフィンダーを出しても差し支えないと思った僕は、ギルドマスターに許可を取った。
そして、球体解除してシルフィンダーを出現させ、紋章をセットした。
重い音を発しながら、シルフィンダーは起動した。
「実際に見ると凄まじいな! これ、速度はどれくらい出る?」
「馬が最大の速度で走っても、これには全く追いつけません。 アーベント草原からカイナンまで半日で着きました。」
…まぁ、途中空も飛んだけど…。
「アーベントから半日だと…? 最速の馬車でも3日は掛かるというのに…」
「ですので、専用馬車はいりません。」
「さすがにもう無いよな!! もう無いよな!!?」
「はい、もうありません!」
本当は空も飛べる事を話しても良いのだが、これ以上混乱させるのも面倒だ。
「わかった、もう良い」と言われたので、シルフィンダーを収納した。
「今まで生きてきて、こんなに驚いた事は無かったぞ… まぁとりあえず、下で受付してくれ。」
そういってヴォルガンは、僕のギルドカードとメモを渡してくれたので、受け取って部屋を出た。
そして、下に行ってカウンターのお姉さんにカードとメモを渡した。
「はい、受付しますね。 ダン・スーガー様はAランクとして… Aランク!?」
ギルド内がざわつき始めた。
先程の品の無い冒険者は、手に持っているジョッキから酒が流れ落ちてる。
「失礼しました。 ではダン様、御渡し致します。」
「これから宜しくね…えーと、お姉さんの名前は?」
「私はキャサリアと申します。 宜しくお願い致します。 ところで依頼は今日受けますか?」
「今日はギルドマスターに会いに来ただけなので、依頼は後日にします。」
「畏まりました。 では、依頼を受ける日をお待ちしております。」
そういってギルドカードを貰うと、先程の品の無い冒険者の元に行った。
「これから宜しくね、いつか教育というのを教えてね。」
「滅相もありません! 先程は大変失礼しました。」
品の無い冒険者は、土下座して謝った。
ふむ、この世界にも土下座ってあるんだと感心した。
~~~~~噴水の前~~~~~
僕はガイウスとレイリアに合流した。
僕の用事の方が長かったらしく、2人は待ちくたびれていた。
「そういえば、冒険者ギルドが騒がしかったが何かあったのか?」
「ふふん、ほら僕のギルドカード…Aランク!」
「はぁ!? 俺はまだBランクだぞ!!」
「ダン、凄いね!」
「ハルモニアゴーレムとダスティーボロウを倒した功績だと、他にもまぁ…魔法で評価されたけど。 というかさぁ、ダスティーボロウってBランクでも倒せないって言ってたけど、そんなに強いのアレ?」
「お前が特殊過ぎるんだ、ダスティーボロウは普通の魔道士でも倒せん。」
割とあっさり倒せたんだが…?
まぁ、良いか。
「それよりもお前を待っていて腹が減った。 何か喰おうぜ!」
僕達3人は、街の屋台を回って食べまくった。
そして宿をとって眠る事にした。
明日の冒険にそなえて…。
応援ありがとうございます!
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