虐げられる生活を曾祖母の秘術で破滅をさせてあげましょう。

アノマロカリス

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第一章

第四話 冒険者適性テスト・前編(ソフィアは今後の金策の方法を考えました。)

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 「2つ目の遺産を頂きました。デリス様には、本当に感謝です!」

 私はディンガルド地方のとある墓場に来ております……いえ、来ています。
 この場所は、今迄に遺産なった場所とは違い、2つの高価な価値のある遺産は…墓場に隠されており……いえ、ました。
 長年の貴族習慣はどうしても捨てきれませんね。
 リオンに、これから貴族社会以外の場所で生活をして行くなら、この喋り方を指摘されて、標準的な喋り方を心がける様にと言われて、現在は修整をするべく特訓中です。

 「墓場というだけあって…ゴーストが多いわね。」
 《ボクにとっては、至極当たり前の日常なんだけどね。》

 リオンは辺りを見渡しながら、そう言っていました。
 リオンも私に気を使って、言葉を教えてくれています。
 元々はこう言った喋り方だったのですが、私が貴族社会の中にいる時に、ちょっとした会話の内容で映ってしまう事があるという事で合わせてくれていました。
 ですが貴族社会から抜けたら、普通に標準語を話せる様になったと喜んでいます。

 《それにしても、デリス様は見事な考えの方の様ですね。墓場だったら、一般の人はあまり近寄らないでしょうから…》
 「ゴーストに襲われるから…とか?」
 《ゴーストは別に襲って来た訳ではないですよ?未練を断ち切る為にとか、先に死んでしまった後悔を伝えようとして、伝えられる者を見て近寄って来るだけです。中には、悪霊に身を落とした者なら襲って来る方もいるかも知れないけど…?》

 この世界には、魔力が無い人でもゴーストを視えたり、話したり出来る人も居る。
 一種の霊感が強い人なんでしょうけど…?
 側から見たら、怖い顔をして襲って来る様に視えますからね。
 そんな感じなら、誰だって逃げるでしょう。

 《それに、ただの一般人が墓場に来れる人もあまりいないでしょう。遺体と共に埋蔵されている宝石類を窃盗する命知らずの盗賊などはたまに来ますが、墓暴きをして災いを吹っ掛けられるのがオチでしょうから…》
 「まぁ、死者にそんな扱いをすれば、そうなるわよね?」

 この世界の墓場は、ゴーストが出たからといって、死者を弔わないという訳では無い。
 死者を弔う際には、神殿のプリーストに同伴をして貰い、神聖な方陣を展開して葬式が行われるのだった。
 それをする事により、低級のゴーストは近寄ってはこなくなる訳なんだけど…?
 あくまでも低級にしか効果は無く、中級や上級のゴーストだと、高位のプリーストでなければ退ける事はできない訳なのだが、その分の支払いは高額を要求される為に、あまり頼む者はいなかった。
 まぁ、仮に中級や上級のゴーストが出没する様な墓の場合、諦めて別な場所に墓を作るという話になるんだけどね。

 《あれ?今回の遺産の中に、刀もあるわね?》
 「何だか変わった感じの刀ね?妖刀・邪霊刀じゃれいとうっていうみたい。」
 
 私は鑑定魔法を使って武器を見ました。
 妖刀という名前は初めて聞きましたけど、魔剣と似た様なものかな?
 
 《それにしても、デリス様も値打ち物の品をちゃんと伝えてくれませんとねぇ?》
 「そうね、多少の金貨はありましたが…逆に値打ち物の過ぎる、美術品や像や絵画などばかりですからね。」

 …そう、値打ち物の遺産は、貴族が娯楽品や嗜好品等の物が多かった。
 確かに貴族に売りつける事が可能なら、高値で買い取ってくれる品物でしょう。
 ですが、平民となった私に貴族が取り引きを持ち掛けるという事もなければ、仮に買い取ってくれるという事になっても、足元を見て金額を吹っ掛けてくるのは目に見えております。
 せっかくデリス様から頂いた物ですが、換金方法が無い私にとっては、ただの宝の持ち腐れの様な物でした。

 「まともに使える貨幣は、金貨6枚ですか…」
 《いえ、金貨3枚ですよ。残りの金貨3枚は、昔の金貨で……コレクターが居れば、買い取って貰える可能性はあるかも知れないけどね。》
 「前貨幣ですか…では、実際に使えるお金は金貨3枚だけかぁ~」

 この国では、30年前に貨幣のデザインが一新されました。
 何故変わったのかは、その当時は偽貨幣が出回った事による物でした。
 その為に、シンプルなデザインの金貨は廃止され、複雑なデザインに変わってからは、偽貨幣問題にも終止符が落とされたのですが…?
 金貨3枚でも当面の生活費は何とかなるかも知れないけど、節約しても3ヶ月……いえ、2ヶ月が良いところですね。

 「参りましたね、効果な遺産の換金が出来ないとなると…資金を調達する術がありません。」
 《それなら、冒険者ギルドに登録をするというのはどうかな?》
 「冒険者ギルド?」
 《貴族の護衛には、貴族が雇っている私兵がいるのは知っているよね?》
 「勿論です。プルネリア伯爵家にも居ましたからね。」
 《貴族が旅をするのに護衛が必要な場合は、私兵が付いてきて貰えますが…商人や下級貴族の場合はどうしているか分かりますか?》
 
 言われてみればそうね?
 子爵や男爵家には、私兵を雇い入れる財力があるとは聞いた事なかったけど…実際はどうしているんだろう?

 《そういった人達の護衛をするのが冒険者達なのです。冒険者になるのは、主に平民や下級貴族の家督を継げなかった者達でお金を稼がないと生活が出来ない人達の事です。》
 「その冒険者になると、資金稼ぎが出来るという事?」
 《はい、依頼を受けて完遂すれば、報酬として金銭が受け取れる様になります。ただ、高額な報酬のある依頼はランクを上げないといけなくなりますが…》

 何だか、楽な道で稼げるという訳では無いのね。
 今の私は平民だから、地道にお金稼ぎをするしか無いのよね。
 貴族の考えになっていたわ。

 「だとしたら、1度街に戻った方が良いのかな?」
 《シャウザーの兵に見つかりたいのなら止めないけどね。ソフィアの能力を知って、躍起になっているでしょうから…》
 「うぅ…それは面倒ね。」
 《隣国にあるランジールの街に行くのはどう?あそこなら、シャウザーの兵も居ないだろうし、何よりソフィアの事を知っている人も居ないでしょうから…》

 …そう、私は元の街であるザンバリアでは、ちょっとした有名人になっている。
 私が街に行くと、大体の人は目を合わせるなと言われるし、店に入ったってあからさまに嫌な顔をしてくる。
 私は特に何もしていないんだけどね。
 死者と話せるというのが、気味悪く感じるみたいね
 
 「ランジールだと、どっちの方向?」
 《クワ~ウ~》
 《ここから南の方角だって。》
 
 リオンのペット?のクゥールが、首を右に見て鳴いた。
 クゥールは、滅多な事で鳴くという事はない。
 正き道を示して鳴く事があった。
 リオンと一緒で、幼い時からいるけど…正体不明なカラスだった。
 とりあえず私達は、ランジールの街に向かう事になるんだけど…?

 そこでは、ちょっとした騒ぎになるんだよね。
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