虐げられる生活を曾祖母の秘術で破滅をさせてあげましょう。

アノマロカリス

文字の大きさ
上 下
3 / 10
第一章

第二話 屋敷を追い出された道中にて…(尾行ですか、意外と頭が回るんですね。)

しおりを挟む
 屋敷を出る時に失敗をしました。
 破滅発言は、私の負け惜しみと捉えたのですが…?
 伯爵家から追い出されたにも関わらず、私の表情が絶望的な表情では無く、無表情な表情なのがいけなかったのでしょう。
 私の歩いている後方に、気付かれない程の距離を保ちながら…尾行をする3人がいるそうです。
 どうしてこうなったのかというと…?
 それは、デリランシェス侯爵家でシャウザー様……もう様は必要無いですね。
 シャウザーがこんな事を思っていたそうです。

 「仮にも…貴族令嬢だった者が、いきなり屋敷を追い出されたにしては…絶望的な表情では無かったな?」
 
 シャウザーは、決して頭は良くありません。
 知能の殆どを、弟のシャイア様に持って行かれたという位に、頭が絶望的に悪いお方でした。
 そんな頭の悪いお方ですが、動物的な勘とでも言いましょうか…?
 悪知恵や変に鋭い所がありました。
 シャウザーの祖父であるデリス様の遺産を、部下に命じて方々を探させましたが、手掛かりすら掴めず…死者との会話が出来るという噂を使って、遺産の在処を探し出そうとする立案をしたのが、シャウザーという話でした。
 そんなシャウザーが、悪態をついていたとはいえ…屋敷を追い出された事を不審に思ったので、現在はこうして尾行をされているという訳です。

 「まずったなぁ…皮肉という悪態を吐く時に、涙を流しながら言った方が良かったかしら?」
 《ソフィアって、泣く事ができるっけ?ボクがソフィアと行動を共にする時から、ソフィアが泣いている所を見た事がないんだけど?》
 
 …そう、私が泣いたことなんて…幼い時以外にあまり無い。
 それよりも両親や妹を怖がらせて、爆笑したいのを必死に堪えて来た方が多かったからです。
 怖がらせた方法?
 それは、私を無碍に扱おうとする際に、「祖父が仁王立ちになって怒っているよ。」とか、「これ以上、私を無碍に扱おうものなら…祖父がお父様を苦しめるって。」と言うと、それ以上…関わる事を辞めたからです。
 何故、この方法が通用したのかと言うと、祖父母が生前生きていた頃は…私をとても可愛がってくれていたからです。
 実際は、祖父のゴーストなんて…屋敷内には存在していなかったんですけどね。
 私の能力を知っていた両親は、本当に父親が近くにいると思い込んでいたみたいでした。

 「それにしてもリオン、尾行している3人は…私を暗殺するのが目的では無いのよね?」
 《暗殺が目的だったら、街から離れたこの場所で仕掛けているでしょう。》
 「じゃあ、何が狙いなのかな?」
 《そこまでは聞いてはいなかったけど、少なくとも…街から離れた場所で始末をしろ!…という理由では無いみたいよ。》

 …そう、屋敷から追い出される前に…私は用心の為に、リオンに引き返させたのです。
 だけど、シャウザーが私を尾行して来いと命令をした際に、緊急性を感じて…いち早く現状を伝える為に私の元に来てしまった結果、詳しい内容までは聞けなかったそうです。

 「金も無い私がすんなり屋敷から出て行った事を想定して、遺産の場所を隠していると踏んで尾行をさせたのかな?」
 《そこまでの考えが、あのシャウザーに思い付くとは思えないんだけど?》
 「いえ、シャウザーって…一見、頭が絶望的に悪そうなんだけど…妙な勘が冴える事があるからね。」
 《それは厄介ね。なら、そろそろするべき事をしても良いんじゃないかなぁ?》
 「そうね、このまま尾行されるのも、何か鬱陶しいし…」

 私はその場で立ち止まってから、グランマから貰ったグリモアを出した。
 私の貰ったグリモアは青いグリモアで、ページを捲ってから魔導具のページを開くと、そこから箒を取り出した。
 グランマから貰ったグリモアには、様々な知識の他に…魔導具なども収納されていた。
 …なんだけど、半分以上の魔導具が役に立つものでは無く、実用性がある魔導具は…箒以外だと、一部の物しか無かったのでした。

 「この魔導具が世に出回る前だったら、物凄く価値は高かったのでしょうけど…?」
 《ベルシュナーデ王国の魔法道具店で販売された魔導具には、今持っている魔導具の改良版が世に広回りましたからね。》

 …そう、グランマから聞かされた話には、遠いの親戚がポーションを販売しているお店を出しているという話でした。
 私の容姿もその方に似ているとか…初めてグランマが私に会った時に、大変驚いたそうです。
 その方のお店では、ポーション販売の他に…グランマが持っていた魔導具と同じ物を渡されたそうなのですが、私の持っているグリモアの中身同様に大して役に立たない物があったのでは無いかと思っておりました。
 ところが、ポーション販売時に魔導具を売り出し始めたという話で、その商品がこの国にも流れて来たのですが…?
 明らかに大して役に立たない魔導具の改良版となっていました。
 そんな事をなさった方は、私と同じ歳との事ですが…いつかは会える事はあるのでしょうか?

 「リオン、後方の尾行の方達は?」
 《樹の影でこちらを伺っているみたいね。》
 
 私は箒に座ると、リオンも私の後ろに乗っていた。
 リオンはゴーストなので、肉体が無いから浮く事は出来るんだけど、飛ぶ事はあまり得意では無いみたいで…私が箒で飛んだら、追い付いてくるのは不可能だった。

 「さてと、では…1つ目の破滅を味わって頂きましょう。尾行の方々、ちゃんと報告はして下さいね。」

 私は後方に向かってそう呟くと、地面を蹴って宙に浮かんでみせた。
 そして、デリス様の遺産の在処の場所に向かって、飛んで行ったのでした。
 さて、私が飛んだ事が何故破滅なのか?
 それは、この世界には魔法が使える者が居りますが、空を飛べる程の高い魔法能力を持っている人が少ないからでした。
 それを知ったシャウザーは、どんな表情をするのでしょうね?

 その悔しそうな顔を見れないのが残念ですが…?
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

強欲な妹が姉の全てを奪おうと思ったら全てを失った話

桃瀬さら
恋愛
幼い頃、母が言った。 「よく見ていなさい。将来、全て貴方の物になるのよ」 母の言葉は本当だった。姉の周りから人はいなくなり、みんな私に優しくしてくれる。 何不自由ない生活、宝石、ドレスを手に入れた。惨めな姉に残ったのは婚約者だけ。 私は姉の全てを奪いたかった。 それなのに、どうして私はこんな目にあっているの? 姉の全てを奪うつもりが全てを失った妹の話。

かわりに王妃になってくれる優しい妹を育てた戦略家の姉

菜っぱ
恋愛
貴族学校卒業の日に第一王子から婚約破棄を言い渡されたエンブレンは、何も言わずに会場を去った。 気品高い貴族の娘であるエンブレンが、なんの文句も言わずに去っていく姿はあまりにも清々しく、その姿に違和感を覚える第一王子だが、早く愛する人と婚姻を結ぼうと急いで王が婚姻時に使う契約の間へ向かう。 姉から婚約者の座を奪った妹のアンジュッテは、嫌な予感を覚えるが……。 全てが計画通り。賢い姉による、生贄仕立て上げ逃亡劇。

金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。

銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」  私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。 「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」  とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。  なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。  え?どのくらいあるかって?  ──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。  とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。  しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。  将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。  どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。  私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?  あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 需要が有れば続きます。

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話

ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。 完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。

四季
恋愛
前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。

雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」 妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。 今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。 私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...