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第三章 様々な者達の視点の章

第六話 絶望と疑問?

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 この日…魔王マーデルリアは、世界に向けて発信した。
 異世界召喚者のサクヤに、三魔王は倒されたが…元の世界に帰還させた事を。
 そして現在の戦力は三魔王が倒された事により…戦力は大幅にダウンしているが、魔王以外の軍勢は無傷である事を。
 そして魔王マーデルリアは、現在は戦力を整えるのに時間が掛かっているので、すぐには動けない事など。

 世界の人々は…魔王軍の侵攻が止まった事に喜んでいたが、反面…一部の者達は絶望感に浸っていた。
 カスケード城の国王陛下は、サクヤが三魔王を倒した事は驚き喜んでいたが…真の魔王が残っている事が懸念材料になっていた。
 そして、ユウトとミクとマミは…魔王の放送に頭を抱えていた。
 サクヤがいなければ、元の世界に帰れない事に絶望していたのだった。

 「サクヤは…私達の事を完全に見捨てたのね。」
 「もう…元の世界に戻れないし、両親にも会えないのね。」
 「自分達は…いや、嘆くより先を見よう。」

 サクヤは最後に魔王マーデルリアに言った事は嘘では無かった。
 本当に戻ろうと思えば戻れることが可能だからである。
 一度魔王を倒して元の世界に戻った場合は、鍵が閉じてその世界には二度と行けないのだが…?
 まだ魔王を倒していない世界の場合は、鍵が開いていて戻れる事が可能なのである。
 その事は、三人も知らなかった。

 ~~~~~サクヤとセルリアは?~~~~~

 異世界召喚から元の世界に戻ると、セルリアが消えていた。
 サクヤは探そうとしたが、異世界から元の世界に戻された時は異常な眠気とダルさの所為で行動が不可能だった。
 サクヤはとりあえず…本格的に探すのは明日にして家に帰って休んだ。
 そして翌日…

 「朔夜、起きなさい!」
 「んあ?」

 目が覚めると、そこは自分の部屋だった。
 両親は都内にある会社で仕事をしている為に、都内に住んでいて家に帰って来る事は滅多になかった。
 現在家に居るのは兄妹だけであった。
 先程の声は…姉の朔美の声だった。

 「いつまでも寝ていて…学校に遅刻する気? セルリアちゃんは、また朔夜の事を迎えに来て待っているわよ!」
 「そうだ、セルリア!…って、へ?」

 俺は部屋から飛び出して居間に行くと、制服を着たセルリアが目の前にいた。
 俺はセルリアを見るなり、抱き付いて感触を確かめた。
 セルリアは強く抱きしめて痛かったのか…少し変な声を出していた。
 そして俺の頭部に何かで殴られる衝撃があった。

 「朔夜…貴方は朝っぱらから何をしているの!」
 「セルリアの感触を確かめようと…」
 「貴方も年頃なのだから、そういう事をしたくなる気がするのは分かるけど、時と場合を考えなさい‼」
 
 俺はセルリアから離れてから謝った。
 っていうか…あれ?

 「何で姉さんがセルリアの事を知っているんだ?」
 「朔夜…貴方は頭は大丈夫? 子供の頃からお隣に住んでいるでしょ! セルリアちゃんは…」
 「へ?」

 おかしい…?
 魔王が倒されていないのに、情報がアップデートされてる。
 俺は目を閉じて過去を遡って見た。
 すると確かに…セルリアは子供の頃から常に一緒だった。
 何度か喧嘩をした事があったが、それでも常に一緒にいた。
 これは異世界から元の世界に帰って来た時に何度もやっていた事だった。
 そうしないと、兄妹達を認識出来なかったからだ。

 「何をしているのか知らないけど…学校に遅刻するわよ!」
 「そうだよ、朔夜…待っていてあげるからさっさと準備をして!」
 「あぁ…解った!」

 俺は準備をしてから制服に着替えると、セルリアと共に家を出た。
 俺はセルリアを見ると…特におかしい所は無かった。
 セルリアは俺がジッと見て居る事に気が付いた。
 
 「どうしたの、朔夜?」
 「セルリア…おかしな事を聞くようだが、あの世界の事は覚えているか?」
 「あの世界?」
 「いや、何でもない。」

 セルリアに尋ねた時にキョトンとしているので、俺はそれ以上聞くのを辞めた。
 そして俺とセルリアは教室に入ると、4つの席が空いている事に気が付いた。

 「あの席って…?」
 「正義と美紅と真美と悠斗の席だよ。 彼らは突然行方不明になってまだ家に帰って来ないんだって。」
 「親達は警察に届け出を出しているんだけど、足取りが全く解らないんだって。 突然消えたみたいに痕跡が無くなったとか?」
 「美紅はともかく…悠斗や正義や委員長が突然居なくなるなんて考えられないよ。 何かあったんじゃないかと…」
 
 …という事は、あの世界に異世界召喚をしたのは確かだ。
 だけど、一緒に来た筈のセルリアが翌日に幼馴染になっているというのが意味不明だった。
 本来そうなるとしたら…魔王を倒したクリア後に報酬としてそうなるのは解るが…今回は真の魔王は生きている。
 なら何故…セルリアとの関係はこうなっているのだろうか?
 俺には過去の6度の異世界召喚の記憶がある。

 「報酬前払い…とかか? クリア後の報酬は、セルリアが幼馴染になっているとか?」
 
 俺は授業中の間…そんな事を考えながら過ごしていた。
 そして昼休みの時間になると、俺は屋上を目指した…が、屋上への立ち入りは禁止されていて閉鎖されていた。
 俺は進入禁止テープ持ち上げてから扉を開けようとした。
 すると、いつの間にか背後にセルリアが居て俺の行為を止めた。

 「朔夜は何を考えているの⁉ そこに入ったら…また5人が消えたみたいになるかもしれないのよ‼」
 「4人が消えた…ではなく?」
 「朔夜も4人と一緒に消えた1人でしょ! そしてしばらくしてから…屋上で朔夜が発見されたのって…覚えてないの?」

 なるほど…セルリアが必死に止めた原因はそれか!
 セルリアを見ると、涙を流していた。

 「中学校の時も、クラスの皆が突然消えて朔夜だけが発見されたり…交換聴講生に選ばれた学校に行った時も、学校の全ての人が消えたのに朔夜だけが無事に帰って来たり…もう変な事をやって私の前から居なくならないで‼」
 
 俺は…小学校の頃から何度か転校をしている筈だったが、それが無かった事になっている。
 全てこの付近や界隈で起きた事として処理されている様だった。
 すると…このセルリアも本人ではなく、偽物だったり?
 さすがにそれはないだろうが…確かめてみるか?
  
 「わかったよ、セルリア…その代わりと言っては何だけど、家に帰ったら俺の部屋に来てくれないか?」
 「そんな事を言って…私をまたベッドに押し倒すつもり?」
 「え? 俺そんな事をしたの⁉ …いや、そうでなくて、聞きたい事があるんだよ。」
 「言葉で聞くより、体に聞いた方が早いとか言って…それ以来、朔夜の部屋に入るのは抵抗あるんだから!」
 「俺って最低だな…」

 そんな事をしていた記憶がないのもそうだが、そんな事をされていたら…確かに部屋に入るのを拒むか。
 それにしても昨日までは、あの世界でセルリアと旅をしていたのに…もう、訳が解らん。
 だが、一体どうなっているんだ⁉
 このクラスの中では…いや、この学校ではセルリアは初めっから居る事になっていた。
 そして…俺が異世界召喚で一緒に行った4人は、俺と仲が良かったという設定になっているらしい。
 この矛盾は一体何なんだ?
 やはり確認する為に…あの世界に戻る必要があるな!
 俺はある確認をする為に、セルリアより先に学校を出た。
 セルリアは部活動の事で遅くなるという話だった。
 そして歩いていると…俺を待つ人物がいた。
 あの厄介な刑事が…

 「不知火朔夜君、少し宜しいですかね? 要件は言わなくても分かるよね?」
 「あんたの事を忘れていたよ…ちっ、面倒だな。」
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