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第二章 旅をする上での大事な事

第十二話 1つの区切り

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 あれから3日経った。
 あれから三人とはあまり会話が無かった。
 まぁ、原因があるとすれば…猿扱いしたのが原因だろう。
 他にもあるが…。
 俺達は山越えをしてから麓に降りると、カスケード城下街程ではないが…そこそこに大きいフレイラッツの街に到着した。
 そしてしばらく歩いていると、噴水が見えたので三人に声を掛けた。

 「しばらくはここを拠点にするので、ここが合流場所としておこう。 セルリア、この街には宿が幾つある?」
 「この街には5か所あるな。」
 「では…まずは宿に行くか。」
 「そこの宿は大きな風呂があるからな。」

 風呂と聞いてミクとマミは顔が明るくなった。
 残念だが…そこはお前達では泊まる事は出来ないのだよ。

 「ここは…宿屋というよりも、もうホテルだな。」
 「前回も泊まったが、中々の設備だ。」

 俺達はフロントに行くと、案内係に話し掛けた。

 「いらっしゃいませ…当ホテルは、冒険者ランクAランク以上の方専用となっております。」
 「なら、2人頼む。」
 「Sランクのセルリア様と…SSランクですか⁉」
 「俺の名はサクヤだ。」
 「サクヤ様ですね…では、2人を案内します。」
 
 …という話をしていると、ミクが予想していた通りに文句を言って来た。

 「私達はまた外に寝ろとでも言うの?」
 「いや、ここはAランク以上専用のホテルだから、お前達はリーズナブルな安い宿を探して泊まれ。」
 「その宿には風呂はあるの?」
 「普通の宿には風呂なんかないぞ。 井戸から水を汲んで体を拭く位だ。」
 
 セルリアの言葉に不服そうな顔をしていた。

 「サクヤ君、私達はパーティーなのよ!」
 「そうだな…だから?」
 「パーティーなら仲間も一緒にというのが普通じゃない?」
 「とはいっても、お前等Fランクじゃん。」
 「この宿はパーティーとか関係なしに、Aランク以下は泊まれないんだ。 諦めて他を探すしかないぞ。」
 「セルリア姉さん…」
 「それにお前等は実績がない上に、完全に人任せだったじゃないか! これ以上、まだ俺達に頼るのか? 自分達は何もしないで、何か言われたらすぐに文句を言いだして…」
 
 これはハッキリ言っておいた方が良いな。
 
 「お前達はこの世界の事をどこまで理解している?」
 「この世界の事?」
 「この世界は、レベルが上がれば勝手に魔法を覚えるゲームの世界じゃないからな。 お前達はこの世界に召喚されてから何をしていた?」
 「私は神殿で祈りを…」
 「私は騎士達と混じって訓練を…」
 「自分は魔法の訓練を…」
 「それは丸1日ずっとか? ユウトは以前、書庫室で顔を合わせた事があったが…あの時は何をしていたんだ?」
 「あれは…魔術について調べ物を…」

 コイツ等は鹿だとは思っていたが、ここまでの鹿だとは思わなかった。
 日本もそうだが、情報が物をいう世界なのに…戦いの知識だけ蓄えてどうする?
 
 「はぁ…あのさ、お前達はこの世界の事を何も学んでなかったのか?」
 「それはどういう…?」
 「そこまで言わないと解らないのか? じゃあ、聞くが…お前等が仮に俺やセルリアとはぐれた場合はどうするんだ? いつまでもその場に突っ立っていて、俺達が迎えに来るのを待つのか?」
 「それは探しに…」
 「どうやって? どこを探すんだ?」
 「目の見える範囲から、すれ違った人に聞いたり…」
 「素直に答えてくれる奴もいるだろうが、そうじゃない奴もいるぞ!」
 「その時は…」
 「俺が第一の異世界召喚から続けている事がある。 それは、書庫や図書館で情報を集める事だ。 まず、この世界の成り立ち、次にその世界の神々や信仰、島や大陸の把握や街や村の情報、城のある場所や伝承にまつわる場所、魔物の生態などな。」
 「書庫室では、そんな事をしていたのか⁉」
 「重要な事だからな。」

 このセリフが出るという事は、完全に人任せにする気だったんだな。
 魔王を倒す為に旅をするとか言っていたけど、所詮その程度の浅い考えだったか!

 「何より俺が腹立っている理由があるが…それが何か分かるか?」
 「すぐに尋ねるとかか?」
 「いや…とりあえず、お前達は今日は人と話して情報を集めながら宿を探して泊まれ。 そして明日噴水広場で合流した際に俺が腹立っている理由が解っていなかったら、パーティーは解散だ。 お前達はこの街で冒険者家業をして生活をしろ! 魔王を倒したら迎えに来るまでな!」
 
 俺はそう言うと、三人はホテルから出て行った。
 このままだと、キレていたかもしれないが…敢えてそこは我慢して飲み込んだ。
 そして俺とセルリアは部屋に案内されて、話し合った。

 「もしかして…あの三人にはサクヤの様に収納魔術を取得していたりするか?」
 「それはないな…俺の収納魔法は、俺のオリジナル魔法だからな。 あ、この世界では魔術と呼ばれていたんだっけか?」
 「もしも収納魔術を取得しているのなら、手ぶらも納得出来たのだが?」
 「キャンプした時に、自分達の食材を一切用意せずに人の料理をたかろうとする奴等が?」
 「確かにな。」
 「セルリアくらいな物だよ、リュックから干し肉を出して使ってくれと言ってくれたのは…」
 「明日あの三人は条件を揃えていると思うか?」
 
 俺は無言で答えた。
 
 「サクヤ…もしも、三人が条件を揃えていなかったら?」
 「パーティーを解散すると言って、しばらく冒険者家業に専念させよう。 頼る者がいなくなった時に自分達で考えて行動できるかどうかをな。」
 「ただ…あの三人だと、優しい言葉を掛けられたらついて行きそうだな?」
 「それが懸念材料でもある。」

 とりあえずは明日になってからだ。
 俺とセルリアは久々の入浴を楽しんでから寝た…ただし、別々なベッドでだぞ!
 そして翌日…噴水広場で合流したのだが、条件は…物の見事に達していなかった。

 「はぁ…これはどうした物かな?」
 「どうしたサクヤ?」
 「いや…昨日もあれから時間があった筈だし、もしかしたらと期待をしてみたんだが…」
 「言いたい事があるならハッキリ言いなさいよ‼」
 「お前等はまず、インナースーツはそのままで良いから、武器と防具を脱いでくれ。」
 「何でよ?」
 「お前達にはもう必要ないからだ。 だが安心しろ、代わりの武具は買ってやるよ。」

 俺は三人から武具を回収すると、武器屋と防具屋を回って、ミクは鋼の剣とプレートメイルやシールドなどの一式を揃えた。
 マミもユウトも魔術師のローブに、魔導師の杖と法術士の杖を揃えてやった。

 「うんうん、良く似合っている。 お前達に聖なる武具や伝承の杖はまだ早かったな。」
 「それで、これからどうするんだ?」
 「これから? パーティーは解散して、俺とセルリアは先に進む代わりに、お前達はしばらくこの街を拠点にして活動してもらう。 3か月後に迎えに来るので、最低でもCランクまではクエストをこなしてランクを上げておけ。」
 「サクヤ君、何でそんな事に?」
 「そうよ、訳が分からないわ!」
 「そうだ、ちゃんと説明しろよ!」
 
 俺は大きく息を吸うと、一気に吐き出しながら言った。

 「なら教えてやるよ‼ お前等は人に頼り過ぎで人に甘え過ぎだ‼ 俺は言ったよな? 腹を立てている理由があると…お前等は、怪我をした時はどうするんだ? MPが切れたらどうするんだ? 他にも…水に濡れたらそのままでいるのか? キャンプの時は毛布も何も無しで寝るのか? 食べ物や水はどうするんだ? あと…お前達が学校に通う時は鞄は持っていなかったのか? お前達は何処の金持ちの坊ちゃんでお嬢様だったんだ?」
 
 先程まで文句を言っていた三人が一気に黙った。

 「俺が欲しいのは肩を並べて歩ける仲間だ! 決して人に寄生して楽に生きる様な奴じゃない…むしろそんな奴は願い下げだ‼」
 「そ…それは、次からちゃんとするから。」
 「でたよ~次はシリーズ! 次はちゃんとするから~! 次は頑張るから~! 次は…なんかねぇんだよ‼」
 
 感情のまま怒鳴ってしまった。
 通行人に何人か見られていた。

 「お前達はこの世界を甘く見過ぎている節がある。 少しは自分達で行動をして、知識を手に入れて、ランクを上げてみろ。 3か月後にCランクになっていなかったら、今度こそ本当にお別れだ。」
 「もしも私達が事故に遭って死んだらどうするのよ?」
 「その時は、マサギにあの世で会えるぞ! マサギは1人でこの世界のあの世にいる筈だから、会いに行ってから仲直りでもしろ!」
 「私は本気で言っているのよ‼」
 「俺も冗談で言っているつもりはないが?」
 「サクヤ、魔王を倒して一緒に帰ろうというあの言葉は嘘だったのか?」
 「嘘では無いが…」
 「なら何故⁉」
 「このままのペースでお前達に付き合っていると、本当に10年でも旅が終わらない可能性があるからだよ! 俺の予想では、とっくに次の大陸に上陸して活動していた筈だったんだ。」
 
 三人は何か考え込んでいるようだが、まだ何か言い足りないのか?
 ここまで言われたら、普通なら自分達で何とかしてみるという流れだろ?

 「自分達はサクヤと違って、異世界召喚は慣れていないんだよ!」
 「俺は異世界召喚の数は多いが、この世界は初めてだぞ?」
 「サクヤは前の異世界召喚の知識があるから上手く立ち振る舞えているかもしれないけど…」
 「言っておくが、この世界の魔物は…以前にいた世界でも見た事が無い種類ばかりだが?」
 「サクヤは使える魔法の種類が多いじゃないか!」
 「だが、全部が全部効果があるという訳ではないが?」
 「それに武具も多く所持しているし…」
 「ユウトはさっきから何が言いたいんだ?」
 
 まぁ、こうは言ったが…言いたい事は何となく理由がわかる。
 
 「俺だって…最初から全てが全て上手く行っていた訳じゃないぞ! 俺とお前達の違いは分かるか?」
 「異世界召喚での経験が…」
 「違う! 俺が最初の異世界召喚の時は、まだ世間に疎く、未発達な小学生だったって事だ。 だが、お前達の最初の異世界召喚は17歳だろ? これだけでかなり違うんだよ。」
 「12歳というのは聞いていたが、小学生だったのか…」
 「しかも1人で訳の解らない世界に飛ばされて、右も左も分からない世界で生き抜いたんだ。 その点、ユウトにはミクやマミという仲間がいる。 これだけで俺の最初の時とは大きく違うんだよ!」
 
 あの時は本当に…何をしたら良いのかが解らなかった。
 周りには宛に出来る知り合いも居なかったし、本当に頭の中で思い付く限りの事を実践して成長する事が出来た。
 何度も失敗を繰り返して経験して…。

 「とりあえず3か月だ! 3か月間は自分達で考えて行動しろ! 3か月後に迎えに来るまでにその甘い考えは捨てておけ!」
 「わかった…」
 「ちょっと、ユウト!」
 「ユウト、本気⁉」
 「お前達はサクヤにここまで言われて悔しくは無いのか? 自分達を変えようとか思わないのか? それとも、このままサクヤに寄生した人生を送るのか?」
 「それは…」
 「俺だったら別に良いぞ! ただし、お前達の事はこれからは奴隷として扱うからな。 夜の相手は勿論、仕事が出来なかったら飯は出ないし、厄介な魔物や数が多い魔物が出た場合はその場で置いて逃げるけどな!」
 「3か月で良いのよね?」
 「あぁ…3か月後に先程言った条件を満たせれば…な!」
 「ならやってあげるわよ!」

 見事に挑発に引っ掛かってくれたな。
 これで、コイツ等の中で何かが変わるだろう。
 後は失敗を繰り返して経験していければ問題はない。
 俺達は3か月後にここで会うことを約束して、この場で別れた。
 一応念の為に、三人が気付かない様に護衛は置いておく。
 
 さて、3か月後に会った時に…三人に変化は起きているだろうか?
 でもその前に…ちょっとしたテストを仕掛けようとしていた。
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