異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス

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第二章 旅をする上での大事な事

第九話 続・甘い考えの三人組

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 俺とセルリアは宿の一室で話をしていた。

 「あの三人は目的を果たせると思うか?」
 「いや、無理だろう。 野宿は嫌だからという理由で…必死に魔物を倒す事は出来るだろうな。 ただ問題は、俺が体内からコアを取り出す時に近くに居なかったが…何をしていた?」
 「ミクとマミは顔を背けて、ユウトは布で口を押さえていたが…すぐに別な方を向いていた。」
 「という事は、コアを取り出す所を見ていないという事になるな。 セルリアが解体していた時も、奴等は見ようともしなかったからな。」
 「俺は最初に言ったよな? あの魔物が討伐対象だ、あの魔物を倒したらコアを取り出さないといけないと。」
 「あぁ、言っていたな。 聞いていたかどうかまでは怪しいが…」

 俺とセルリアは溜息を吐いた。
 
 ~~~~~一方、三人は?~~~~~

 「村での依頼は何も無かったな。」
 「下級冒険者が手伝っているので、ほとんど終わらせているみたい。」
 「魔物の討伐しかないけど…確か、バーゲストという黒い犬よね?」

 バーゲストというのは、生まれる個体数ではかなり多く生まれて、魔素がある程度高い場所に成長するという雑魚モンスターなのだが、平民では倒す事はまれで…Fランク冒険者でも苦戦するという討伐対象Eランクの魔物である。
 今回サクヤとセルリアが討伐して見せたのは、三人に経験を積ませるのが目的というのと、資金を稼がせるというのが目的だった。
 …というのは何故かというと、今回あの三人は…装備だけで道具類は何も持って来ていない。
 冒険者なのだから、旅をする上で必要なポーションや薬草が無い。
 食料も持参していない。
 冒険者ギルドに登録しているのに、何のクエストもしていないので金が無いという…完全人任せで着いて来たのだった。
 サクヤもセルリアも、リュックを背負っているが…それは最低限の道具をすぐに出せる為に持っている。
 サクヤの場合は、その他におおっぴらに収納魔法を使う訳にはいかないというのもある。
 だというのに…この三人は手ぶらだった。
 魔王城が歩いてすぐそこにあるとでも思ったのか?
 
 「見付けたわ、バーゲストよ!」
 「三匹いるから宿に泊まれるわね!」
 
 そして三人は、ほぼ初めての実戦でバーゲストを討伐に成功した。
 だが、1匹逃してしまった…宿に泊まれるだけの資金を得る事が出来た…と思って、村に帰ったのである。
 そして三人は俺達の泊まっている部屋の前に来て扉を叩いた。

 「何だ?」
 「サクヤ、討伐して来たわよ!」
 「これで私達も泊まれるわよね?」
 「レベルが上がった! これが証拠だ!」

 三人はギルドカードを見せると、確かにレベルが1つだけ上がっていた。
 
 「サクヤ、私達の分のお金を出してもらうわよ!」
 「それじゃあ、ん!」

 俺は手を出すと、ミクは不思議そうな顔をした。

 「お金がないじゃない!」
 「いやだから…討伐証明部位は?」
 「何それ?」
 
 この三人は、俺とセルリアが懸念していた通りの事をしてきたな。
 俺は腰の袋からコアの魔石を取り出した。

 「バーゲストの心臓に近い場所には、コアと呼ばれる魔石があって、これを冒険者ギルドに提出する事により報酬が得られるんだよ。 村に来る前の討伐時に説明しただろ?」
 「つまり自分等は…倒しただけで報酬を得られないのか?」
 「俺らが奴の体内を探っていたのを見てなかったのか?」
 「あれはそれをやっていたのか⁉」
 「はぁ…」
 「ならすぐに戻って…」
 「もう1度見付けて倒して来い!」
 「いや、死体から見付けて来れば良いだけの話だろ?」
 「これも忘れているのか…倒した魔物には時間制限があって、解体を素早く行わないと魔素と同化して消えるんだよ。 一部の魔物によっては、倒してもそのまま残っている個体もあるらしいけどな。」
 
 城にいる時は、ミクは騎士団と混じって練習をしていて…マミは教会で祈りを捧げていた。
 ユウトは、書庫室で何度か見掛けていたけど…何をしていたんだ?
 俺はこの世界の魔物の知識は、書庫室の魔物図鑑で覚えたのだが?

 「なら…自分達がやったのは無駄だったのか?」
 「完全に無駄という訳ではないだろう、レベルだって上がったんだしな。」
 「サクヤ君、私達はどうしたら良いの?」
 「このままだと、宿の外で寝るんだな。 それとも、ミクとマミは俺の部屋に来て股でも開くか?」
 「そんな事、するわ…」
 「ここで言い争っている暇があったらさっさと行け! バーゲストは夜には見つけにくい上に、暗闇だと奴等の方が能力は上だぞ!」

 俺がそう言うと、三人は急いで宿から飛び出して行った。
 そしてこの結末はどうなったのかというと…?
 レベルだけは10近くまで上がっていた。
 かなりのバーゲストを討伐したらしいのだが、時間制限に間に合わずに魔石を取り出す迄にはいかなくて消えて行ったという。
 もう少し血には慣れておかないとな。
 そして結局金を稼ぐ事が出来なかった三人は、村の中央にある大木の下で夜を明かしたという。

 翌日…三人に会うと、疲れた顔と腹を空かせていたので、干し肉を分けてやった。
 三人は干し肉を受け取ると、無我夢中で食べ始めたのだが…?

 「1人につき、銅貨2枚。」
 「え?」
 「誰がタダでやると言った?」

 この三人が金を稼げる…いや、最初に金を手に入れられるのは、いつになるのだろうか?
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