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第二章
第十三話 苦悩する国王(報告を聞いて計画し始めたようです。)
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「黒衣の騎士だと⁉」
「はい、その者に騎士団は全滅させられました。」
国王陛下と翔也は、謁見の間で二人だけで話していた。
その話とは、慟哭の森での一件だった。
「その者は…何が目的で⁉」
「目的までは分かりませんでしたが、その場にいた者達を全て殺そうと企んでいた感じとしか…」
「ふむぅ…? 黒衣の騎士と言っておったが、その者の鎧に何か特徴の様な物は無かったか?」
「特徴ですか? 言われてみれば、騎士団の鎧を黒く染めた…という感じでは無かったですね。 どこか禍々しいというか、悪魔を彷彿とさせる様な姿をしていました。」
翔也の話を聞いて、国王陛下は焦りだした。
その話を聞いて連想される答えがあるとすれば、十中八九が魔王に与する者の仕業なのだろうと。
しかし、何故魔王に与する者があんな森に?
考え付くとすれば、あの無能に関係する事だろう位しか思い付かなかった。
「恐らくだが…狙いは騎士団ではなく、翔也殿と飛鳥殿だった可能性があるな!」
「俺達…ですか?」
「異世界人というのはこの世界の者とは違い、独特の…気配を纏っているという話らしいのだ。 そう考えると、魔王に関係する黒衣の騎士があの森に現れた説明が想像出来る。」
翔也は身体を触りながら確認するかのように首を傾げていた。
独特の気配と言われてもピンと来なかったからだ。
「魔王に関係する者が動いたとなると、あまり悠長な事は言ってはおられないな!」
「そうですね、俺達は一刻も早く…戦って強くならないといけませんからね。 ただ、賢斗はともかく華奈があの調子では…」
華奈は慱の死を知ってからはそれ以降、部屋に籠って誰とも会おうとはしない。
唯一心を開いているのは、この国の第二王女のアルカディア位だった。
「なぁに、華奈殿をやる気にさせる方法は無くはない…が、翔也殿にはあまり愉快な話では無いがな。」
「それは…一体どういう事ですか?」
国王は騎士を呼び、華奈を謁見の間に寄越す様に命令した。
慱に関して良い話があると言って。
すると、華奈はアルカディア王女に付き添われる形で謁見の間に現れたのだった。
「お父様、華奈様はまだ万全ではございませんが…」
「確かに、長年一緒に行動を共にした知人の訃報を聞かされたのだから落ち込む理由は分かる。 だが、そんな悠長な事を言っておられない事態が起きたのだ!」
「それは一体…どういう事ですか?」
「翔也殿と飛鳥殿が騎士団を率いて慟哭の森に入った際に、魔王に与すると思われる黒衣の騎士に騎士団は全滅させられて、二人も命を狙われたという話なのだ!」
「な、なんですって⁉」
その話を聞いて華奈は顔を上げて翔也を見ると、翔也は華奈に無言で頷いた。
その後に翔也は華奈に、異世界人はこの世界の者にはない気配を纏っていて、その気配に気付いた魔王の者達が接触して来る可能性があると話した。
「それよりもお父様、慱様に関して良い話があると仰られておりましたが…?」
「その事なんだが、アルカディアは知っていると思うが…この世界には【神々の恩恵】と呼ばれるアイテムがあるのだ。」
「【神々の恩恵】って、純粋な者の願いを叶えるという…あれですか?」
「華奈殿がその【神々の恩恵】を手にし、慱殿の復活を願えば…叶う可能性がある。」
「それで慱を蘇らせる事が出来るのですね‼」
【神々の恩恵】は実在するアイテムだった。
伝承では、幾人の願いを叶えて来たと言われる物なのだが…?
今まで落ち込んでいた華奈の顔が希望に満ちた表情をしていた。
逆に翔也は面白くなさそうな表情を浮かべていた。
「その【神々の恩恵】なのだが、所在はハッキリとした場所は分からず仕舞いなのだが…予想では魔王城にある可能性が非常に高い。」
「確かに…魔王にとっては純粋な者の願いが魔王を滅ぼせなんて願われたら、困るのは魔王でしょうからね。」
「だが、今の状態の翔也殿達が魔王城に赴くのはあまりにも危険過ぎる! なので、戦いを得て経験を積み、レベルを上げる事で魔王を倒す事が出来たのなら…」
その先は言わないでも分かったらしく、華奈はアルカディア王女と共に謁見の間を後にした。
希望に満ちた表情の華奈は、今迄の分を取り戻すかのように行動を起こすみたいだった。
そして再び、国王と翔也の二人が謁見の間に残っていた。
「俺にとって面白くないという話はこれだったのか…」
「安心しろ翔也殿、確かに【神々の恩恵】は存在する物だが…所在はハッキリしておらん!」
「先程は魔王城にあると…?」
「可能性が非常に高いと言っただけで、本当にあるという事は無いだろう。 魔王にしてみれば、そんな不吉な物をいつまでも放って置く筈が無いからな!」
そう…これはあくまでも、華奈に希望をもたらせる為の嘘だった。
今のままでは慱と同様に全く使い物にならない存在になっていた華奈だが、こうして希望を持たせておけば…やる気を起こすのには十分だろうと考えていたからだった。
「さて、翔也殿…これから忙しくなってくるぞ!」
「華奈が元気になった切っ掛けが慱の為というのが気に入りませんが、これでパーティーとしての活動が出来る様になるのは確かですからね。」
「華奈殿に付け入るチャンスは、旅の中で幾らでもあるだろう。 強いては事を仕損じる…という言葉がある通り、あまり急がずに行動を起こしていけば…」
「俺にもチャンスが巡って来るという事か‼」
翔也は意気込みながら、謁見の間を出て行った。
残った国王は、玉座で笑みを浮かべていた。
「今度の勇者は、面白い位に扱いやすいな! だがこれで計画も…」
それから数か月、勇者パーティーは必死に鍛錬をこなして行き…
その後日に、国民達にお披露目が行われるのだった。
「はい、その者に騎士団は全滅させられました。」
国王陛下と翔也は、謁見の間で二人だけで話していた。
その話とは、慟哭の森での一件だった。
「その者は…何が目的で⁉」
「目的までは分かりませんでしたが、その場にいた者達を全て殺そうと企んでいた感じとしか…」
「ふむぅ…? 黒衣の騎士と言っておったが、その者の鎧に何か特徴の様な物は無かったか?」
「特徴ですか? 言われてみれば、騎士団の鎧を黒く染めた…という感じでは無かったですね。 どこか禍々しいというか、悪魔を彷彿とさせる様な姿をしていました。」
翔也の話を聞いて、国王陛下は焦りだした。
その話を聞いて連想される答えがあるとすれば、十中八九が魔王に与する者の仕業なのだろうと。
しかし、何故魔王に与する者があんな森に?
考え付くとすれば、あの無能に関係する事だろう位しか思い付かなかった。
「恐らくだが…狙いは騎士団ではなく、翔也殿と飛鳥殿だった可能性があるな!」
「俺達…ですか?」
「異世界人というのはこの世界の者とは違い、独特の…気配を纏っているという話らしいのだ。 そう考えると、魔王に関係する黒衣の騎士があの森に現れた説明が想像出来る。」
翔也は身体を触りながら確認するかのように首を傾げていた。
独特の気配と言われてもピンと来なかったからだ。
「魔王に関係する者が動いたとなると、あまり悠長な事は言ってはおられないな!」
「そうですね、俺達は一刻も早く…戦って強くならないといけませんからね。 ただ、賢斗はともかく華奈があの調子では…」
華奈は慱の死を知ってからはそれ以降、部屋に籠って誰とも会おうとはしない。
唯一心を開いているのは、この国の第二王女のアルカディア位だった。
「なぁに、華奈殿をやる気にさせる方法は無くはない…が、翔也殿にはあまり愉快な話では無いがな。」
「それは…一体どういう事ですか?」
国王は騎士を呼び、華奈を謁見の間に寄越す様に命令した。
慱に関して良い話があると言って。
すると、華奈はアルカディア王女に付き添われる形で謁見の間に現れたのだった。
「お父様、華奈様はまだ万全ではございませんが…」
「確かに、長年一緒に行動を共にした知人の訃報を聞かされたのだから落ち込む理由は分かる。 だが、そんな悠長な事を言っておられない事態が起きたのだ!」
「それは一体…どういう事ですか?」
「翔也殿と飛鳥殿が騎士団を率いて慟哭の森に入った際に、魔王に与すると思われる黒衣の騎士に騎士団は全滅させられて、二人も命を狙われたという話なのだ!」
「な、なんですって⁉」
その話を聞いて華奈は顔を上げて翔也を見ると、翔也は華奈に無言で頷いた。
その後に翔也は華奈に、異世界人はこの世界の者にはない気配を纏っていて、その気配に気付いた魔王の者達が接触して来る可能性があると話した。
「それよりもお父様、慱様に関して良い話があると仰られておりましたが…?」
「その事なんだが、アルカディアは知っていると思うが…この世界には【神々の恩恵】と呼ばれるアイテムがあるのだ。」
「【神々の恩恵】って、純粋な者の願いを叶えるという…あれですか?」
「華奈殿がその【神々の恩恵】を手にし、慱殿の復活を願えば…叶う可能性がある。」
「それで慱を蘇らせる事が出来るのですね‼」
【神々の恩恵】は実在するアイテムだった。
伝承では、幾人の願いを叶えて来たと言われる物なのだが…?
今まで落ち込んでいた華奈の顔が希望に満ちた表情をしていた。
逆に翔也は面白くなさそうな表情を浮かべていた。
「その【神々の恩恵】なのだが、所在はハッキリとした場所は分からず仕舞いなのだが…予想では魔王城にある可能性が非常に高い。」
「確かに…魔王にとっては純粋な者の願いが魔王を滅ぼせなんて願われたら、困るのは魔王でしょうからね。」
「だが、今の状態の翔也殿達が魔王城に赴くのはあまりにも危険過ぎる! なので、戦いを得て経験を積み、レベルを上げる事で魔王を倒す事が出来たのなら…」
その先は言わないでも分かったらしく、華奈はアルカディア王女と共に謁見の間を後にした。
希望に満ちた表情の華奈は、今迄の分を取り戻すかのように行動を起こすみたいだった。
そして再び、国王と翔也の二人が謁見の間に残っていた。
「俺にとって面白くないという話はこれだったのか…」
「安心しろ翔也殿、確かに【神々の恩恵】は存在する物だが…所在はハッキリしておらん!」
「先程は魔王城にあると…?」
「可能性が非常に高いと言っただけで、本当にあるという事は無いだろう。 魔王にしてみれば、そんな不吉な物をいつまでも放って置く筈が無いからな!」
そう…これはあくまでも、華奈に希望をもたらせる為の嘘だった。
今のままでは慱と同様に全く使い物にならない存在になっていた華奈だが、こうして希望を持たせておけば…やる気を起こすのには十分だろうと考えていたからだった。
「さて、翔也殿…これから忙しくなってくるぞ!」
「華奈が元気になった切っ掛けが慱の為というのが気に入りませんが、これでパーティーとしての活動が出来る様になるのは確かですからね。」
「華奈殿に付け入るチャンスは、旅の中で幾らでもあるだろう。 強いては事を仕損じる…という言葉がある通り、あまり急がずに行動を起こしていけば…」
「俺にもチャンスが巡って来るという事か‼」
翔也は意気込みながら、謁見の間を出て行った。
残った国王は、玉座で笑みを浮かべていた。
「今度の勇者は、面白い位に扱いやすいな! だがこれで計画も…」
それから数か月、勇者パーティーは必死に鍛錬をこなして行き…
その後日に、国民達にお披露目が行われるのだった。
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