上 下
13 / 35
第二章

第二話 魔剣士デスブリンガー(これから復讐の…)

しおりを挟む
 魔王サズンデスの紹介により、ダン・スーガーは仲間に…当然歓迎はされなかった。
 人種を滅ぼすという魔王サズンデスの言動が、僕という存在で覆ってしまったからだ。
 魔王の配下の者達からも、当然不満は出ているが…?
 魔王の決定は絶対なので、逆らおうとする者はいなかった。
 だが、これは…陰でシメられる事を覚悟した方が良いのかと思っていた。

 『納得していない者も多いだろう…ならば、ダン・スーガーよ! 皆の意を示す為にある試練を与えよう…』

 そう言って魔王サズンデスは、手を前に出すと…?
 深い闇の中から刀身は紫、鍔には髑髏、柄は背骨らしき禍々しい妖気を放った剣が現れた。
 見る限り、呪われている様にしか見えない剣だった。

 『これは、前魔王様から与えられた魔剣ネクロイシスなのだが…我の手に余るものでな、我の代わりに手に取り…見事従える事が出来るのであれば、幹部に取り立ててやろう…』
 「この剣を手に取るだけで幹部か…」

 正直言って、あまりにも禍々しいオーラを放っている物を触りたくは無い。
 だが、このままだと示しが付かなくて迫害されるのは避けたい。
 僕は一歩前に出て、剣を手に取ろうとした。

 「こんな人間のガキに幹部だと? それならオレが手に入れて幹部になってやる!」

 そう言って、ミノタウロス族の配下が魔剣に触れると、一瞬で砕け散って消滅した。
 その様子を見ていた周りの配下達は、声を上げて魔剣から距離を取った。

 『だから我の手に余ると言ったであろう…我も触れただけで気が狂いそうな感覚に陥ったのだ…』

 僕は少し恐くなった。
 出世欲が絡んだ配下が自滅するのは構わないが…
 何故これから手にしようとする者の前で、自ら実験台になって死を演出するのだろうか?
 この状態で引けなくなる様な行動は謹んでもらいたい所だが、配下の皆の視線は僕に向いていた。
 そういえば、魔王ですら手に余ると言っていたもんな…?
 あの強大な力を持つ魔王が僕に試練を与えると言ってこの剣を出現させたのは、僕の力を測る為か?
 それとも、魔王の中では僕という存在は居てもいなくても問題ないというどうでも良い存在なのか?
 そう考えると、少し腹が立って来た。

 「この剣を手に入れたとして…幹部とはどの地位に据えて貰えるのでしょうか?」
 『三元将、四天王、八魔将とあるが…どの地位が良い?』
 「そうですねぇ…三元将の地位を戴きたいですね。」

 僕がそう言うと、周りから野次や暴言が巻き起こった。
 魔王が静止させると、剣を手にとる様に命じられた。
 剣の柄に手を伸ばすが、一瞬配下のミノタウロスが消滅した姿を思い出した。
 だが、ここで引いたら魔王は落胆して、僕の居場所は無くなるだろう。
 どうせあの時に助けて貰えなければ死んでいたんだ、僕は剣の柄を掴んだ。

 「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!…って、あれ? 何ともないぞ⁉︎」
 『ほほぉ…』
 
 あのミノタウロスは無駄死にだったのではないかと思う位に何も無かった。
 この程度の事で地位が得られるなんて、何て幸運なのかと思っていた。
 ところが…油断をしていた瞬間!
 魔剣ネクロイシスから凄まじいエネルギーが僕の体に入って来た。
 思わず剣を手放したくなるくらいの絶望感と虚無感のエネルギーに襲われたが、死を覚悟したあの時に比べたら耐えられた。
 そして、全てのエネルギーが体に入ると、内側から凄まじい力が溢れて来た。

 「これが、魔剣ネクロイシスの力か…気に入ったよ!」

 僕は気付かなかったが、僕の体から凄まじい魔力と威圧感が配下達を襲っていた。
 配下達は、立ち上がれずに地面に平伏している状態だった。

 「魔王サズンデス様、見事魔剣ネクロイシスを従う事が出来ました。」
 『おぉ! ダン・スーガーよ…見事だ! 三元将の地位を与えようと思うのだが…貴様等3人の中でダン・スーガーに席を譲ってやれ!』
 
 先程のセルリアに、獅子のぬいぐるみに、ブサイクな傷だらけの虎の獣人がいた。
 三元将という魔王に近い地位を手放そうとする者はまず居ない。
 僕は3人を見てから、ある奴に声を掛けた。

 「おい、そこのブサイク…君が三元将の地位を辞退しろ!」
 「何だと⁉︎ 俺様の事を言っているのか? 人間風情が…調子に乗るな‼︎」

 ブサイクな獣人は、僕に襲い掛かろうと向かって来た。
 だけど、魔剣ネクロイシスを手に入れたからなのか…動きが凄く鈍く感じた。
 僕は魔王を見ると、魔王は頷いたので…ブサイクな獣人を斬撃で細切れにした。
 僕は笑みを浮かべて肉塊を踏みしめると、皆は恐怖の意を示した。

 『これで新たなる三元将の誕生だ! ダン・スーガーよ…いや、これだと威厳が感じられぬな…新たな名を決めるが良い!』
 「そうですねぇ…では、僕の事は今後はデスブリンガーとお呼び下さい、魔王閣下…」
 『魔界の騎士を思わせる良い名だ! 三元将が壱元…魔剣士デスブリンガーとこの時より名乗るが良い‼︎』
 「謹んでその名を拝命致します!」

 僕は魔王サズンデスに頭を上げると、振り返って他の配下達を見た。
 配下達は僕の前で跪いていた。
 何という良い気分なんだろうか!
 
 こうして、ダンは三元将の地位を獲得したのだった。
 そしてこの時より、デスブリンガーの…いや、ダン・スーガーの復讐が幕を開けるのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。 ネット小説やファンタジー小説が好きな少年、洲河 慱(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りに雑談をしていると突然魔法陣が現れて光に包まれて… 幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】という素晴らしいジョブを手に入れたけど、僕はそれ以上のジョブと多彩なスキルを手に入れた。 王宮からは、過去の勇者パーティと同じジョブを持つ幼馴染達が世界を救うのが掟と言われた。 なら僕は、夢にまで見たこの異世界で好きに生きる事を選び、幼馴染達とは別に行動する事に決めた。 自分のジョブとスキルを駆使して無双する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?」で、慱が本来の力を手に入れた場合のもう1つのパラレルストーリー。 11月14日にHOT男性向け1位になりました。 応援、ありがとうございます!

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...