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第一章
第一話 ん? 何だこれ…⁉︎(絶望へのカウントダウン)
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「ようこそ、我がテルシア王国にいらっしゃいました、救世主様方!」
白い法衣の女性は、僕達を救世主様と呼んで歓迎してくれた。
「えーっと…、来たくて来たわけじゃないんだけど? いきなり魔法陣が現れて、気付いたらここにいて…」
「それは大変申し訳ありませんでした。 メンバーのリーダーらしき方に、私達の世界に危険が及んでいますので、助けて戴きませんか?…とメッセンジャーを送り、答えてくれたものだと…」
僕達は顔を見合わせた。
リーダーって、誰の事だ?
僕は飛鳥の顔を見たが首を振っている。
華奈を見ても、賢斗を見ても同じ反応だった。
「まさか…翔也?」
「いや~頭の中に綺麗な女性の声が響いてきて、世界に危険が起きていて助けてくれないかと声がしたから、いいよ~って軽いノリで答えたら、まさか本当に別世界に来るなんてな…」
僕達は頭を押さえて溜息を吐いた。
翔也は、物事は何か起きてから対処する奴なので、細かい事は気にしないのだ。
「すいません、元の世界に戻しては貰えませんか?」
「それは出来かねます。 今回の召喚もギリギリでしたので…」
僕は身体が痛み出し、膝を付いた。
白い法衣の女性は僕に駆け寄ってくれて、手から光を出して身体を包むと痛みが消えて行った。
「あれ? 身体の痛みが消えた…今のは何ですか?」
「癒しの魔法です。 大丈夫ですか?」
僕は頷くと、白い法衣の女性は名を明かした。
「私はテルシア王国第二王女のアルカディアと申します。 救世主様方、我が王がお待ちですので、まずは玉座の間まで着いて来て戴けませんか?」
「わかりました、とりあえず状況も知りたいですし、同行致します。」
僕はそういうと、幼馴染達と一緒に国王陛下のいる玉座の間に行った。
玉座の間につくと、向かいの玉座に座っているこの国の国王陛下、右に杖と魔導書を持った高齢の魔術師、その隣に体格の良い中年の男、国王の反対側にアルカディア王女が着き、その周囲には騎士が8人いた。
「救世主様方、ようこそこの世界…セヴンスガルドに来られました事を歓迎致します。」
「まぁ、なりゆきで仕方なくですが…ところで国王陛下、お聞きしたい事があるのですが…」
「何であろうか、救世主殿?」
「先程王女様から、僕達を元の世界に戻せない様なお話を聞いたのですが、それは永遠にですか?」
「ウム…それを含めてお話ししましょう。 実はこの世界には、70年前にも異世界から救世主召喚をして魔王を討伐して貰ったのですが、その魔王が1年半前に復活しまして、魔王がこの世界のマナを喰らう物でマナが枯渇しかかっているのです。 魔王を倒せばマナも戻り、救世主様方を元の世界に戻す事が可能になるのですが…」
「では、70年前の勇者も魔王を倒して元の世界に戻れたのですね?」
国王陛下は頷いてみせた。
なるほど、ファンタジー小説にある通りの展開になったな。
僕達は顔を見合わせてから頷くと、国王陛下に進言した。
「わかりました。 魔王の討伐を承ります!」
魔王を倒せない限り、元の世界に戻せないのなら倒すしかないだろうし、70年前に僕達の世界の人も同じ様に出来たのだから、決して不可能ではない筈…
「では、各自にギルドカードをお渡ししますので、説明の後に表示してくだされ!」
「では、説明をさせて戴きます。 このギルドカードを額に当てて目を閉じると、救世主様が手に入れられるジョブが手に入ります。 それによってスキルも得られますので、やってみて下さい!」
アルカディア王女の説明が終わると、中年の男が懐から5枚のカードを出した。
翔也は額にカードを当てると、【勇者】を引いた。
次に華奈が【聖女】を引いて、飛鳥は【剣聖】を引いた。
最後に賢斗が【賢者】を引き、僕は…?
「どうなされました…確か慱様でしたね?」
「ええと…?」
僕は再び目を閉じてカードを額に当てると、黒いモヤがカードに吸い込まれて行った…のだが、黒いモヤはすぐにカードから飛び出ると、「こいつ、何もない…」という声が聞こえて霧散して消えて行った。
「何もない…ですか? どういう意味でしょう?」
「慱殿、もう1度やってみては貰えぬか?」
「あ、はい!」
慱は何度も目を閉じてカードを額に当てたが、何も得られなかった。
カードのステータスには、ジョブもスキルも記載されておらず、ステータスも標準以下だった。
「信じられん! 救世主様は必ず強力なジョブを授かるというのに、何もないとは…」
「この国では、10歳になると神からの啓示によりジョブが与えられますが、慱様には反応が無いなんて…こんな事は初めてです!」
「この場合、僕はどうしたら良いのでしょうか?」
国王陛下は、傍に居た者達と話し始めた。
そして出た結論は…
「無能だな! 救世主様の中にも無能が混じっているとはな、使えない奴だ‼」
国王陛下は、急に態度が変化した。
そして国王陛下は手を挙げると騎士達が僕を捕らえた。
幼馴染達は国王陛下に抗議をしたが、国王はそれを無視した。
僕は、騎士達に城の地下の牢屋に放り込まれた。
それから2日間、僕は牢屋から出られずにいた。
食事は1日2回のみで、中にいても特にやる事が無かった。
ただ、カバンだけは没収されなかったので、スマホの小説を読みながら時間を潰した。
そして3日後、華奈が来てくれた。
「慱、大丈夫?」
「大丈夫に見えるか?」
「そうよね…有無を言わさずに牢屋の中なんて酷過ぎる!」
「華奈以外は誰も来ないけど、どうしたの?」
「他の皆は国王陛下に抗議を何度もしたけど、一切聞く耳を持たなかったの。 ただ、アルカディア王女が動いてくれてこうして会いに来られたの。」
そうか、やっぱり翔也達は…
僕は疑っていた翔也達に申し訳ない気持ちになった。
「華奈、僕はどうなるのかな?」
「いま翔也や賢斗が対策を練っているみたい。 私達が魔王の戦いに行く時のパーティに慱を参加出来るようにって。」
「でも、僕はジョブもスキルもないよ…役に立てるかな?」
「そんなの関係ないわ! 慱は慱だし、私達の大事な幼馴染だからね!」
華奈の優しさが嬉しかった。
そして、翔也や賢斗達の努力も…
僕は希望を持つ事が出来た。
「なるべく早く迎えに来てね!」
「わかってる、慱をいつまでもこんな場所に置いておけないから!」
華奈は、アルカディア王女と一緒に去っていこうとした。
アルカディア王女は僕を見て頭を下げると、去って行った。
さて、自分に出来る事を考えよう!
いつまでもこんな場所で腐っている訳にはいかないしね。
だが、慱は知らなかった。
勇者パーティ…いや、幼馴染達と魔王の討伐する旅には参加できない事に…
白い法衣の女性は、僕達を救世主様と呼んで歓迎してくれた。
「えーっと…、来たくて来たわけじゃないんだけど? いきなり魔法陣が現れて、気付いたらここにいて…」
「それは大変申し訳ありませんでした。 メンバーのリーダーらしき方に、私達の世界に危険が及んでいますので、助けて戴きませんか?…とメッセンジャーを送り、答えてくれたものだと…」
僕達は顔を見合わせた。
リーダーって、誰の事だ?
僕は飛鳥の顔を見たが首を振っている。
華奈を見ても、賢斗を見ても同じ反応だった。
「まさか…翔也?」
「いや~頭の中に綺麗な女性の声が響いてきて、世界に危険が起きていて助けてくれないかと声がしたから、いいよ~って軽いノリで答えたら、まさか本当に別世界に来るなんてな…」
僕達は頭を押さえて溜息を吐いた。
翔也は、物事は何か起きてから対処する奴なので、細かい事は気にしないのだ。
「すいません、元の世界に戻しては貰えませんか?」
「それは出来かねます。 今回の召喚もギリギリでしたので…」
僕は身体が痛み出し、膝を付いた。
白い法衣の女性は僕に駆け寄ってくれて、手から光を出して身体を包むと痛みが消えて行った。
「あれ? 身体の痛みが消えた…今のは何ですか?」
「癒しの魔法です。 大丈夫ですか?」
僕は頷くと、白い法衣の女性は名を明かした。
「私はテルシア王国第二王女のアルカディアと申します。 救世主様方、我が王がお待ちですので、まずは玉座の間まで着いて来て戴けませんか?」
「わかりました、とりあえず状況も知りたいですし、同行致します。」
僕はそういうと、幼馴染達と一緒に国王陛下のいる玉座の間に行った。
玉座の間につくと、向かいの玉座に座っているこの国の国王陛下、右に杖と魔導書を持った高齢の魔術師、その隣に体格の良い中年の男、国王の反対側にアルカディア王女が着き、その周囲には騎士が8人いた。
「救世主様方、ようこそこの世界…セヴンスガルドに来られました事を歓迎致します。」
「まぁ、なりゆきで仕方なくですが…ところで国王陛下、お聞きしたい事があるのですが…」
「何であろうか、救世主殿?」
「先程王女様から、僕達を元の世界に戻せない様なお話を聞いたのですが、それは永遠にですか?」
「ウム…それを含めてお話ししましょう。 実はこの世界には、70年前にも異世界から救世主召喚をして魔王を討伐して貰ったのですが、その魔王が1年半前に復活しまして、魔王がこの世界のマナを喰らう物でマナが枯渇しかかっているのです。 魔王を倒せばマナも戻り、救世主様方を元の世界に戻す事が可能になるのですが…」
「では、70年前の勇者も魔王を倒して元の世界に戻れたのですね?」
国王陛下は頷いてみせた。
なるほど、ファンタジー小説にある通りの展開になったな。
僕達は顔を見合わせてから頷くと、国王陛下に進言した。
「わかりました。 魔王の討伐を承ります!」
魔王を倒せない限り、元の世界に戻せないのなら倒すしかないだろうし、70年前に僕達の世界の人も同じ様に出来たのだから、決して不可能ではない筈…
「では、各自にギルドカードをお渡ししますので、説明の後に表示してくだされ!」
「では、説明をさせて戴きます。 このギルドカードを額に当てて目を閉じると、救世主様が手に入れられるジョブが手に入ります。 それによってスキルも得られますので、やってみて下さい!」
アルカディア王女の説明が終わると、中年の男が懐から5枚のカードを出した。
翔也は額にカードを当てると、【勇者】を引いた。
次に華奈が【聖女】を引いて、飛鳥は【剣聖】を引いた。
最後に賢斗が【賢者】を引き、僕は…?
「どうなされました…確か慱様でしたね?」
「ええと…?」
僕は再び目を閉じてカードを額に当てると、黒いモヤがカードに吸い込まれて行った…のだが、黒いモヤはすぐにカードから飛び出ると、「こいつ、何もない…」という声が聞こえて霧散して消えて行った。
「何もない…ですか? どういう意味でしょう?」
「慱殿、もう1度やってみては貰えぬか?」
「あ、はい!」
慱は何度も目を閉じてカードを額に当てたが、何も得られなかった。
カードのステータスには、ジョブもスキルも記載されておらず、ステータスも標準以下だった。
「信じられん! 救世主様は必ず強力なジョブを授かるというのに、何もないとは…」
「この国では、10歳になると神からの啓示によりジョブが与えられますが、慱様には反応が無いなんて…こんな事は初めてです!」
「この場合、僕はどうしたら良いのでしょうか?」
国王陛下は、傍に居た者達と話し始めた。
そして出た結論は…
「無能だな! 救世主様の中にも無能が混じっているとはな、使えない奴だ‼」
国王陛下は、急に態度が変化した。
そして国王陛下は手を挙げると騎士達が僕を捕らえた。
幼馴染達は国王陛下に抗議をしたが、国王はそれを無視した。
僕は、騎士達に城の地下の牢屋に放り込まれた。
それから2日間、僕は牢屋から出られずにいた。
食事は1日2回のみで、中にいても特にやる事が無かった。
ただ、カバンだけは没収されなかったので、スマホの小説を読みながら時間を潰した。
そして3日後、華奈が来てくれた。
「慱、大丈夫?」
「大丈夫に見えるか?」
「そうよね…有無を言わさずに牢屋の中なんて酷過ぎる!」
「華奈以外は誰も来ないけど、どうしたの?」
「他の皆は国王陛下に抗議を何度もしたけど、一切聞く耳を持たなかったの。 ただ、アルカディア王女が動いてくれてこうして会いに来られたの。」
そうか、やっぱり翔也達は…
僕は疑っていた翔也達に申し訳ない気持ちになった。
「華奈、僕はどうなるのかな?」
「いま翔也や賢斗が対策を練っているみたい。 私達が魔王の戦いに行く時のパーティに慱を参加出来るようにって。」
「でも、僕はジョブもスキルもないよ…役に立てるかな?」
「そんなの関係ないわ! 慱は慱だし、私達の大事な幼馴染だからね!」
華奈の優しさが嬉しかった。
そして、翔也や賢斗達の努力も…
僕は希望を持つ事が出来た。
「なるべく早く迎えに来てね!」
「わかってる、慱をいつまでもこんな場所に置いておけないから!」
華奈は、アルカディア王女と一緒に去っていこうとした。
アルカディア王女は僕を見て頭を下げると、去って行った。
さて、自分に出来る事を考えよう!
いつまでもこんな場所で腐っている訳にはいかないしね。
だが、慱は知らなかった。
勇者パーティ…いや、幼馴染達と魔王の討伐する旅には参加できない事に…
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