99 / 106
最終章
第二話 閑話・もしも…神々の恩恵が手に入ったら?・後編(実は、こんな理由なんです。)
しおりを挟む
「僕が神々の恩恵を使いたい理由は1つだけ、彼女の…ミーナがいる異世界での彼女の束縛を開放する為なんだよ。」
「その女性の束縛…ですか?」
「あぁ、これも実験の最中と文献で知る事が出来た事なんだけど…その世界で生まれた身体というのは、その世界でしか生きる事が出来ない様に組み込まれているんだ。」
「どう言う事ですか…?」
これは、過去に魔王サズンデスを倒した英雄ダンと賢者の賢斗が話していた事なんだけど…?
その世界で生まれた者達は、生まれた時からその世界に縛られている為に、他の異世界で生涯を遂げるという事は出来ないという話だった。
なので、地球から救世主召喚でやって来た五人の英雄達は、どんなに帰還を拒んだとしても、セヴンスガルドに留まることが出来なかった。
なので勇者翔也、聖女華奈、剣聖飛鳥の三人は地球に戻る事を渋々認めたんだけど、賢者賢斗だけは帰る事を拒んだ。
だけど、魔王サズンデスが倒されて魔素やマナの均衡が安定すると、地球から召喚されて来た者達が強力な何かに引っ張られる感覚に陥ったという話だった。
救世主召喚で来た五人は元々地球から来たの者達なので、返還をして貰おうと言わんばかりに地球に引っ張られていると感じたらしいのだった。
それは日ごとに強くなって行き、五人は仕方無く地球に戻る事に決めて帰って行った。
「ちょっと待って下さい!…おかしくありませんか?」
「どうしたシオン?」
「魔王サズンデスを倒した後に、英雄ダンはこの世界に残って…英雄クリアベール様と結婚をされているという話ですよ⁉︎」
「その話には少し語弊があるんだ。真実はこうなっている…」
英雄ダンは伝記には伏せられているが、実は二人存在している。
英雄ダンが幼少の頃に狼の群れに襲われた際に、本来の身体の持ち主だった洲河慱は、その痛みに耐える為にある人格を作り出した。
それが…僕達の知る英雄ダンだった。
魔王サズンデスとの決戦前に洲河慱の身体から、血と肉からホムンクルスを創り出して…そのホムンクルスに英雄ダンの魂を移した。
洲河慱の魂は元の身体のままで、伝記に書いてあった英雄ダンはこの世界に留まった………が、洲河慱は勇者翔也達と共に地球に帰って行った。
「これが真実なんだよ。そうだよね、キッド?」
「あぁ、俺が地球で死んだのは、魔王サズンデスを倒して皆がその世界から戻って来た後だったからな。皆の存在と慱君の存在も確認している。」
「真実はそうだったんですね。クルシェスラーファ、ボクはこの話を聞いた事がないですよね?」
《この話はある時迄は絶対に秘密と釘を刺されていたからね。まぁ、リュカの説明をする為なら、この話は必要不可欠だし…それに聖武器の持ち主に伝える事については、真実を知りたい者なら打ち明けても構わないと相談してあったからね。》
「そうだったんですね…」
「ちなみに、こっちの世界で読んだ救世主召喚者のその後…というタイトルの本を見付けたんだが、中に書かれている内容は嘘っぱちだったな。」
「地球に戻った救世主召喚者達のその後は、勇者は聖女と結ばれる…という話ですか?」
「あぁ、それだ!まず…華奈ちゃんと結婚をしたのは、翔也君ではなくて慱君だよ。俺が二人が結婚した時の仲人を務めているしな。翔也君は……結婚式には出席しなかったが、そう言えばあの時に…異世界に呼ばれて行けなかったと変な言い訳を聞き流していたが、自身で体験しているとアレも真実だったんだろうな?」
「えっと…キッドさん、ちなみに賢者賢斗様と剣聖飛鳥様は…」
「俺が死ぬ前までは、距離感的には近かったが…結ばれては無かったな。今ではどうなのかは分からないが、当時の賢斗君は慱君と一緒になって大学院に進んで研究に没頭していたからな。何を研究していたかまでは知らんが…」
シオンは急に、今迄に知りたくても知ることが出来なかった真実を一気に聞かされて、キャパオーバー状態になっている。
僕も勇者達が地球に戻ったその後の話を聞くのは初めてだったので…
「そう言えば…慱君と華奈ちゃんの間には、双子の男女が産まれていたな。お祝いを伝える前に俺は死んでしまったが…」
僕はシオンを介抱する為に付き添っていたので、キッドの話をあまり聞いていなかった。
だけど、その話を聴いていた者が約二名いたのだった。
《あの慱と聖女華奈が一緒になるとはな…?》
[慱とはもう1人の奴か…思い出したぞ!英雄ダン以上に厄介な存在だったな…今思い出しても腹立たしい‼︎]
《お前って、慱と会った事が……そう言えばあったな?ダンの魂がホムンクルスの肉体と上手く繋がる為に、時間を稼いでくれた事が…》
[我の実力を知りたいとか抜かして、お前を携えて玉座の間に来たではないか‼︎]
《そうだった、そうだった…アレは決戦の少し前か。慱が強い事は何となく分かってはいたが、実際はとんでもない強さだったな。》
[そんな言葉で済むと思っているのか!彼奴は…悪神ルキシフェルを葬ったのだぞ‼︎]
…そう、英雄ダンとその仲間達が魔王サズンデスとの戦いの前に、慱と勇者組達は悪神ルキシフェルとの戦いで勝利していたのだった。
あの時も慱はオレを使って、悪神ルキシフェルを倒したんだったな。
今となっては良い思い出だが…?
それよりも気になるのは、オレが関わる事が出来ていない相棒の彼女の話だ!
《おい、相棒!話がかなり脱線しているが…》
「あ、そうだったね。リッカもこっちに戻って来ているかも知れないし。」
《ノワールがいるなら、また交代してから転移魔法でこっちに戻って来るだろ?》
「いや、リッカの事だから…真実を聞いたリッカが怒りで我を忘れて、飛行魔法で戻って来ると思うよ。アイツは怒ると周りが見えなくなるから、リッカのスピードだと…こっちに戻って来るまでにはもう少し掛かるかもね。なので、話をしたいところだけど?」
シオンを見ると、キャパオーバー状態で僕の話を聞くだろうか?
それと、他の者達は…って、現在の状況を説明するのを忘れていました。
現在、この場に居るのは…僕とキッド、シオンとリッカの4人だけです。
エルヴ族の集落に帰ってから、グロリアにガイアンの話をした際にはかなり取り乱しましたが、神々の恩恵の話をすると希望を持ったみたいです。
ですが、グロリアは精神的に不安な状態で暫くは戦いには参加出来ないと感じ、ガイアンの遺体とグロリアをカナイ村の母さんの元に届けました。
両親や祖父母達は、こんな症例のガイアンを見るのは初めてで…?
僕達が神々の恩恵を手に入れるまでは、ガイアンの遺体には冷凍保管魔導具を使用して維持して貰うつもりです。
…何でも、母さんの蘇生魔法でもガイアンが蘇る可能性が殆どないという話なので。
「えーっと…話を再開しても?」
「そうだったな、お前の彼女の話をしていたんだったな。それで…?」
「僕はミーナのいる世界に何度も留まろうと考えました。ですが、何度やっても制限時間が来るとセヴンスガルドに戻されてしまうんです。」
「その世界で死んでから、オートリレイズで蘇るという方法は…」
「勿論試しましたが、時間が来ると強制的に元の世界に戻ってしまうみたいなのはかわらないんです。」
「なら、お前が神々の恩恵を欲しがる理由は、その強制的に元に世界に戻る行為を解除する為にか?」
「いえ、彼女…ミーナを僕達の世界に連れて来る為に…です。」
「分からんな…?てっきりお前は家族との縁を切って、異世界で彼女との生活を希望するものだとばかり思っていたが?」
「本来の願いならそう望んでいたかも知れません。ですが、それが出来ない理由があるからなのです。」
「その理由とは…聞いても良いものなのか?」
「はい…この世界の管理者と名乗る神オルフェンシスに、僕はこの世界を守護する役目があると…ダークが目醒める少し前に、夢の中に現れて告げられました。」
「何だと⁉︎この世界の管理者の名前は、オルフェンシスというのか…?俺はこの世界に来た時に、その管理者という神に何度も会いたいと思っていたのに…やっと、名前が分かったな。」
「ただ、この話を翌朝目が覚めた時に両親や祖父母達に話したんですが…それは夢を見ていたんだろうって笑われました。その理由は、このセヴンスガルドを管理する神の名前がオルフェンシスという名前ではないからなのです。」
「何ぃ~?なら、この世界を管理する神の名は何という名前なんだ⁉︎…って聞いても、リュカは知らんよな?」
「はい、知りません。神の真名を知る者は、歴代の聖女になった者だけに伝えられるという話なので、人々が崇めている神様はその神の眷族という話です。」
元々、この世界を司る神様は女神という話で、男神ではないという話だった。
僕も幼少の頃に、この世界を司る神の名前を親から聞いた事があったんだけど……?
度重なる拷問や修業と称した虐待で何度も命を落としている度に、何度も神様に辞める様に伝えても神は一切応えてはくれなかったので、いつの間にか祈る事は無駄と感じ、神なんか存在しない物だと思って祈るのを辞めていた。
するとある時期を境に、いつの間にか神の名前を忘れる様になっていたのだった。
だから、僕の見たオルフェンシスと名乗る男神の話を家族に話しても、鼻で笑われたのだった。
オルフェンシスという神が夢の中に現れた事は、なんとなく覚えてはいたが…?
元聖女である母さんが違うというくらいだから、何かの物語を読んだ時に出て来た登場人物の何かが僕の夢に現れた…と解釈をしたのだった。
「それに彼女…ミーナも、彼女のいる世界では誓約があるみたいです。ミーナは、キッドやノワールと同じく地球からの転生者で、ミーナのいる世界の女神様に連れて来られたみたいなのです。しかもミーナには数多くの特殊なスキルを授けられて…だから、普通の方法ではミーナを他の世界に移動させる事が出来ないのです。」
「地球からの転生者となると、その子が己の異世界の神と地球の神の交渉によって合意に連れてこられたんだな。だとすると…その世界の神は、絶対に彼女を手放す様な真似はしないだろう。だが、お前は異世界を渡り…彼女の世界に行けるんだよな?」
「最初は家族の手助けがないと行けませんでしたが、現在では転移魔法で行けます…が、どんなに最長でも留まれのは…あちらの世界の時間で1週間が限度です。それ以上はどんなに帰る事を拒んだとしても、強制的に帰らされますのですが…」
僕がミーナのいる世界に行ける理由を考えられるとしたら、セヴンスガルドと非常に良く似た世界の環境を見る限り、管理者が同じか…それに近い存在ではないかと思っている。
だから、異世界に移動する事が可能なのだと。
後の問題としては、僕もだけどミーナの制約を解除出来る方法があるとすれば、純粋な者の願いを叶えられるという神々の恩恵なら…?
「収納魔法に拉致してから、厳重に保管したりしてもか?」
「拉致…という言い方はあまり感心はしませんが、その方法も何度かは試しましたが…やはり無理でした。異世界を渡る段階で見破られるのか、向こうの異世界からセヴンスガルドに戻される時に、他の異世界から拾った鉱石や宝石の原石類と言った物は平気なのですが、ミーナだけはどうしても…」
「どんな願いでも叶えられるという神々の恩恵か、確かにそういう誓約が絡んでいるのなら…リュカが欲しがるのも分かる気がするな。」
「色々試しては見たんですが、どうやっても無理だったんですよ。」
僕の母さんは、元は聖女で人を生き返らせられる力があると言って、それをミーナに話した事はある。
だけど、それしか方法がないとしても…絶対に賛成はされなかった。
普通に考えれば当然の話だし、僕の様に死に慣れているのならともかく、ミーナは死ぬよりも辛い思いを何度も経験はしていても…死ぬ事を選んだ事は一度も無いからだった。
異世界人を仮に連れて来られたとしても、蘇生が確実に出来るという保証も無いしね。
「なら、一緒になれるという方法はあるかどうかは分からないが…彼女の苦しみの元を解放する事は出来るんじゃないか?今のリュカの中にいる、ダークの力があれば…」
「確かにそれは試した事はありませんでしたね。ミーナに関する小さな問題だけは、今迄に何度か訪れた際に片付けることは出来ましたが…」
「そうか…って、そもそも…そのミーナという子は、どういった子なんだ?」
「ミーナは地球からの異世界転生で、その世界に伯爵家の御令嬢として来たそうなのですが…6歳の神託の儀式という時の際に、とんでも無い事が発覚して。」
「神託の儀って、他の異世界にもあるんだな。俺の世界にも10歳になると神託の儀によって、未来が大体決まるという話があるが…」
「この世界にも神託の儀と言うのはありますね。ただ、僕は幼少の頃からこんな状態だったし、母さんが元聖女だった事もあって、神事の類は執り行えたので問題はないという話でしたが…」
「その時の結果は聞いたのか?」
「いえ、母さんは真実は話してくれませんでした。僕には神託の儀式の神の御言葉は、それだけでは決まらない占いの様な物で、努力次第では運命を変えることが出来るからといって…」
「お前の家族らしいな。流石、愽君の教えを守り継いだ者達だな…それで、解決出来ない問題というのは…どういったものなんだ?」
…そう、ミーナのスキルを利用しようと企んでいた悪徳貴族達はなんとかなったんだけど、その背後に居る魔族が非常に厄介な存在で………
僕は何度か立ち向かって、雑魚は始末が出来たんだけど?
それ以上に強力な上級魔族には歯が立たなかった。
「それ以上に厄介な存在となると………魔王絡みか?」
「そうなんだ、大魔王サバリスという…とてつもなく強大な魔王が居てね、上級魔族だけでも敵わなかったのに、更にその上の魔王になんて…」
[サバリスだと?彼奴はその世界に送り込まれたのか⁉︎」
「え?」
どうもダークは、僕とキッドとの会話を聞いていたみたいだった。
そして明らかに…知っている素振りを見せて来た。
「ダークは、大魔王サバリスの事を知っているの⁉︎」
[あぁ、良く知っている…が、その前にキッドに尋ねたい。貴様のいた世界の魔王とはどんな奴だった?]
「何だ、この声は…?」
「その声が僕の中に存在するダーク…かつての魔王サズンデスだよ。」
「この声の奴がそうなのか。俺の世界にいた魔王は、色んな虫に変身出来るという特技を持つインセクトマスターという…」
[ヴァルサリンガか………あのクソムシ野郎は、貴様の世界にいたのだな。]
ダークの話によると、他の異世界にいる魔王達は元は魔界の住人達で…それなりに力を持つ者達が魔界の神によって選別されて、各異世界に送られる事があるという話だった。
しかも、ミーナのいる世界の大魔王サバリスは、ダーク…魔王サズンデスとほぼ互角の力を持っているという話(本人談)なので、僕では敵わない事が発覚したのだった。
ただダークは、僕の世界にいる大魔王デルフェーゾフという名前には聞き覚えがないという話だった。
【黄昏の夜明け】時代に家族達が戦った、魔界神帝グレザリスレグザリスの事は知っているという話だったのに。
[魔界もこの世界以上に広い所だからな、大魔王デルフェーゾフとやらが魔界の別な区画の住人という可能性はあるかもしれんな。我も全ての魔王になった者の名前を知っている訳ではないからな…]
「ねぇ、ダーク…僕では大魔王サバリスには勝てる……」
[無理だな。モードダークを発動し、魔剣アトランティカが揃っていれば、一部の望みはあるかも知れぬが…そもそも、転移魔法でその異世界に行けるとはいっても、魔剣アトランティカを持っていく事は叶わないのであろう?]
「異世界に渡る際に、アトランティカを収納魔法に入れて持って行こうとしても弾かれてしまうらしいんだ。だから、持って行くことはいつも出来なくて、向こうの異世界に行って鍛治工房で作った剣を使用している。」
[仮にその剣がオリハルコンやアダマンタイトで作った剣だったとしても、魔剣アトランティカの性能には遠く及ばないだろう。魔界の住人ではなく、その世界で生まれた魔王なら…倒せる可能性もあっただろうが?]
魔王サズンデスは、魔界にいた時はそれなりに力を持ったという特徴の他に、魔物を生み出す事ができる研究者でもあった。
だから魔王サズンデスの部下は、魔王サズンデスの研究によって生み出されたという者達が多かった。
今回の魔猟祭に現れたヴァンギスヴァルガーとスカイデッカーという魔獣も、かつては魔王サズンデスが三元将以上の魔王になる存在として創り出したものという話だった。
では、その世界で生まれた魔王というのは…?
その世界で生まれる魔王の中には、異常な魔力を持っている個体が突然変異によって急性中する事があるという。
ただ、そういった者達の場合…急成長したばかりの者は、力は強大だが思考能力が乏しいらしく…大体は悪い考えを持つ者に拾われて育てられる為に、悪の道に進む事が多くて、後に魔王になるという感じらしい。
魔界から異世界に送られる場合は、魔界の神により幾つかの加護(スキル)を与えられる為に、その世界では強力な存在になるという話だが?
その世界で生まれた魔王の場合だと、そういった加護は持ち合わせない為に…倒すのは容易らしいという話だった。
まぁ、人によっては相当梃子摺る場合もあるらしいけど?
だから、ダークの言っている話は、そう意味だった。
「モードダークで意識を共有している時に、大魔王サバリスと話をして何とかならないかな?」
[無理だな。彼奴は昔から碌に話を聞かぬ奴だったし、何より身体を失った我の事を快く思ったりはせぬだろう。]
「仲が悪かったの?」
[仲は…元々あまり良くなかったが、現在の状況を見せた場合…我は人間の軍門に降ったとサバリスの奴は思うだろうな。どんなに説得をしたとしても、奴は全く聞き耳を持たぬだろうしな。]
人類の解決方法の殆どは、話し合いによる解決で済んだという話だったらしいけど…?
魔界の住人達の場合は、そう簡単には事が運ばないらしい。
「あ~~~話している所に水を刺す様で悪いが、どうやらお前の妹が帰って来たみたいだ。かなり怒っているみたいだが、この場にいれば…」
「いえ、逃げます…リッカの怒りが冷めるまでの間まで。」
「この世界の何処かにか?それとも、久々に彼女に会って来れば良いんじゃないか…」
「そうですね、長い事会いに行ってはいませんし、そうするとします!転移、ヴェルシアンフォーゲン!」
リュカはそう唱えると、彼女のいる世界に転移して行ったのか…地面に魔剣アトランティカが転がっていた。
俺はそのままにしていると、リッカに拾われて人質…いや、物質にされると思ってマジックバックで預かる事にした。
呆けているシオンにもその旨を伝えて、やり過ごす事を約束させた。
「あ、キッド!リュカ兄ぃはどこに行ったの‼︎」
「単細胞のリッカには、絶対に見つからない場所だと言っていた。」
「何ですってぇ~~~?」
リッカはそう言うと、そのまままた別な場所に飛んで行ったのだった。
この世界じゃないので、絶対に見つかる訳ではないんだがな…?
「ちなみに、キッドさんがもしも神々の恩恵を手に入れたらどうするんですか?元の異世界に戻りたい…とか?」
「この世界の大魔王を倒せば、管理者という奴が元の世界に戻してくれるという話だからな。それまではこの世界にいるが………ただ俺は、その管理者という奴に未だに会えないんだよなぁ?それに、特に叶えて欲しい願いというのもないしな…シオンこそ、神々の恩恵を手に入れたらどうしたい?」
「ボクは…ザッシュと一緒に行動していた時に、その時に一緒だった仲間だった人達を生き返らせたいですね。」
「何があったんだ?」
「リュカさんがザッシュと戦いの時に、ザッシュが押されて危機感を感じた際に…より力を高める為に仲間を手に掛けた事がありまして。」
「まさに、今回のガイアンの結末と一緒だな。」
…そう、叶うなら…ボクはまた皆さんにお会いしたいです。
狼獣族のグレンさん、猫獣族のミーヤさん、ドワーフ族のレグリーさんに!
アントワネットさんには、あまり会いたくはないので別に構いませんが…。
それから数日後にリュカさんは異世界から戻って来たんですが…?
何やら、いつもと少し様子がおかしい気がしました。
※今回登場した、リュカの彼女のミーナという女性ですが…?
今後に登場するかも…
「その女性の束縛…ですか?」
「あぁ、これも実験の最中と文献で知る事が出来た事なんだけど…その世界で生まれた身体というのは、その世界でしか生きる事が出来ない様に組み込まれているんだ。」
「どう言う事ですか…?」
これは、過去に魔王サズンデスを倒した英雄ダンと賢者の賢斗が話していた事なんだけど…?
その世界で生まれた者達は、生まれた時からその世界に縛られている為に、他の異世界で生涯を遂げるという事は出来ないという話だった。
なので、地球から救世主召喚でやって来た五人の英雄達は、どんなに帰還を拒んだとしても、セヴンスガルドに留まることが出来なかった。
なので勇者翔也、聖女華奈、剣聖飛鳥の三人は地球に戻る事を渋々認めたんだけど、賢者賢斗だけは帰る事を拒んだ。
だけど、魔王サズンデスが倒されて魔素やマナの均衡が安定すると、地球から召喚されて来た者達が強力な何かに引っ張られる感覚に陥ったという話だった。
救世主召喚で来た五人は元々地球から来たの者達なので、返還をして貰おうと言わんばかりに地球に引っ張られていると感じたらしいのだった。
それは日ごとに強くなって行き、五人は仕方無く地球に戻る事に決めて帰って行った。
「ちょっと待って下さい!…おかしくありませんか?」
「どうしたシオン?」
「魔王サズンデスを倒した後に、英雄ダンはこの世界に残って…英雄クリアベール様と結婚をされているという話ですよ⁉︎」
「その話には少し語弊があるんだ。真実はこうなっている…」
英雄ダンは伝記には伏せられているが、実は二人存在している。
英雄ダンが幼少の頃に狼の群れに襲われた際に、本来の身体の持ち主だった洲河慱は、その痛みに耐える為にある人格を作り出した。
それが…僕達の知る英雄ダンだった。
魔王サズンデスとの決戦前に洲河慱の身体から、血と肉からホムンクルスを創り出して…そのホムンクルスに英雄ダンの魂を移した。
洲河慱の魂は元の身体のままで、伝記に書いてあった英雄ダンはこの世界に留まった………が、洲河慱は勇者翔也達と共に地球に帰って行った。
「これが真実なんだよ。そうだよね、キッド?」
「あぁ、俺が地球で死んだのは、魔王サズンデスを倒して皆がその世界から戻って来た後だったからな。皆の存在と慱君の存在も確認している。」
「真実はそうだったんですね。クルシェスラーファ、ボクはこの話を聞いた事がないですよね?」
《この話はある時迄は絶対に秘密と釘を刺されていたからね。まぁ、リュカの説明をする為なら、この話は必要不可欠だし…それに聖武器の持ち主に伝える事については、真実を知りたい者なら打ち明けても構わないと相談してあったからね。》
「そうだったんですね…」
「ちなみに、こっちの世界で読んだ救世主召喚者のその後…というタイトルの本を見付けたんだが、中に書かれている内容は嘘っぱちだったな。」
「地球に戻った救世主召喚者達のその後は、勇者は聖女と結ばれる…という話ですか?」
「あぁ、それだ!まず…華奈ちゃんと結婚をしたのは、翔也君ではなくて慱君だよ。俺が二人が結婚した時の仲人を務めているしな。翔也君は……結婚式には出席しなかったが、そう言えばあの時に…異世界に呼ばれて行けなかったと変な言い訳を聞き流していたが、自身で体験しているとアレも真実だったんだろうな?」
「えっと…キッドさん、ちなみに賢者賢斗様と剣聖飛鳥様は…」
「俺が死ぬ前までは、距離感的には近かったが…結ばれては無かったな。今ではどうなのかは分からないが、当時の賢斗君は慱君と一緒になって大学院に進んで研究に没頭していたからな。何を研究していたかまでは知らんが…」
シオンは急に、今迄に知りたくても知ることが出来なかった真実を一気に聞かされて、キャパオーバー状態になっている。
僕も勇者達が地球に戻ったその後の話を聞くのは初めてだったので…
「そう言えば…慱君と華奈ちゃんの間には、双子の男女が産まれていたな。お祝いを伝える前に俺は死んでしまったが…」
僕はシオンを介抱する為に付き添っていたので、キッドの話をあまり聞いていなかった。
だけど、その話を聴いていた者が約二名いたのだった。
《あの慱と聖女華奈が一緒になるとはな…?》
[慱とはもう1人の奴か…思い出したぞ!英雄ダン以上に厄介な存在だったな…今思い出しても腹立たしい‼︎]
《お前って、慱と会った事が……そう言えばあったな?ダンの魂がホムンクルスの肉体と上手く繋がる為に、時間を稼いでくれた事が…》
[我の実力を知りたいとか抜かして、お前を携えて玉座の間に来たではないか‼︎]
《そうだった、そうだった…アレは決戦の少し前か。慱が強い事は何となく分かってはいたが、実際はとんでもない強さだったな。》
[そんな言葉で済むと思っているのか!彼奴は…悪神ルキシフェルを葬ったのだぞ‼︎]
…そう、英雄ダンとその仲間達が魔王サズンデスとの戦いの前に、慱と勇者組達は悪神ルキシフェルとの戦いで勝利していたのだった。
あの時も慱はオレを使って、悪神ルキシフェルを倒したんだったな。
今となっては良い思い出だが…?
それよりも気になるのは、オレが関わる事が出来ていない相棒の彼女の話だ!
《おい、相棒!話がかなり脱線しているが…》
「あ、そうだったね。リッカもこっちに戻って来ているかも知れないし。」
《ノワールがいるなら、また交代してから転移魔法でこっちに戻って来るだろ?》
「いや、リッカの事だから…真実を聞いたリッカが怒りで我を忘れて、飛行魔法で戻って来ると思うよ。アイツは怒ると周りが見えなくなるから、リッカのスピードだと…こっちに戻って来るまでにはもう少し掛かるかもね。なので、話をしたいところだけど?」
シオンを見ると、キャパオーバー状態で僕の話を聞くだろうか?
それと、他の者達は…って、現在の状況を説明するのを忘れていました。
現在、この場に居るのは…僕とキッド、シオンとリッカの4人だけです。
エルヴ族の集落に帰ってから、グロリアにガイアンの話をした際にはかなり取り乱しましたが、神々の恩恵の話をすると希望を持ったみたいです。
ですが、グロリアは精神的に不安な状態で暫くは戦いには参加出来ないと感じ、ガイアンの遺体とグロリアをカナイ村の母さんの元に届けました。
両親や祖父母達は、こんな症例のガイアンを見るのは初めてで…?
僕達が神々の恩恵を手に入れるまでは、ガイアンの遺体には冷凍保管魔導具を使用して維持して貰うつもりです。
…何でも、母さんの蘇生魔法でもガイアンが蘇る可能性が殆どないという話なので。
「えーっと…話を再開しても?」
「そうだったな、お前の彼女の話をしていたんだったな。それで…?」
「僕はミーナのいる世界に何度も留まろうと考えました。ですが、何度やっても制限時間が来るとセヴンスガルドに戻されてしまうんです。」
「その世界で死んでから、オートリレイズで蘇るという方法は…」
「勿論試しましたが、時間が来ると強制的に元の世界に戻ってしまうみたいなのはかわらないんです。」
「なら、お前が神々の恩恵を欲しがる理由は、その強制的に元に世界に戻る行為を解除する為にか?」
「いえ、彼女…ミーナを僕達の世界に連れて来る為に…です。」
「分からんな…?てっきりお前は家族との縁を切って、異世界で彼女との生活を希望するものだとばかり思っていたが?」
「本来の願いならそう望んでいたかも知れません。ですが、それが出来ない理由があるからなのです。」
「その理由とは…聞いても良いものなのか?」
「はい…この世界の管理者と名乗る神オルフェンシスに、僕はこの世界を守護する役目があると…ダークが目醒める少し前に、夢の中に現れて告げられました。」
「何だと⁉︎この世界の管理者の名前は、オルフェンシスというのか…?俺はこの世界に来た時に、その管理者という神に何度も会いたいと思っていたのに…やっと、名前が分かったな。」
「ただ、この話を翌朝目が覚めた時に両親や祖父母達に話したんですが…それは夢を見ていたんだろうって笑われました。その理由は、このセヴンスガルドを管理する神の名前がオルフェンシスという名前ではないからなのです。」
「何ぃ~?なら、この世界を管理する神の名は何という名前なんだ⁉︎…って聞いても、リュカは知らんよな?」
「はい、知りません。神の真名を知る者は、歴代の聖女になった者だけに伝えられるという話なので、人々が崇めている神様はその神の眷族という話です。」
元々、この世界を司る神様は女神という話で、男神ではないという話だった。
僕も幼少の頃に、この世界を司る神の名前を親から聞いた事があったんだけど……?
度重なる拷問や修業と称した虐待で何度も命を落としている度に、何度も神様に辞める様に伝えても神は一切応えてはくれなかったので、いつの間にか祈る事は無駄と感じ、神なんか存在しない物だと思って祈るのを辞めていた。
するとある時期を境に、いつの間にか神の名前を忘れる様になっていたのだった。
だから、僕の見たオルフェンシスと名乗る男神の話を家族に話しても、鼻で笑われたのだった。
オルフェンシスという神が夢の中に現れた事は、なんとなく覚えてはいたが…?
元聖女である母さんが違うというくらいだから、何かの物語を読んだ時に出て来た登場人物の何かが僕の夢に現れた…と解釈をしたのだった。
「それに彼女…ミーナも、彼女のいる世界では誓約があるみたいです。ミーナは、キッドやノワールと同じく地球からの転生者で、ミーナのいる世界の女神様に連れて来られたみたいなのです。しかもミーナには数多くの特殊なスキルを授けられて…だから、普通の方法ではミーナを他の世界に移動させる事が出来ないのです。」
「地球からの転生者となると、その子が己の異世界の神と地球の神の交渉によって合意に連れてこられたんだな。だとすると…その世界の神は、絶対に彼女を手放す様な真似はしないだろう。だが、お前は異世界を渡り…彼女の世界に行けるんだよな?」
「最初は家族の手助けがないと行けませんでしたが、現在では転移魔法で行けます…が、どんなに最長でも留まれのは…あちらの世界の時間で1週間が限度です。それ以上はどんなに帰る事を拒んだとしても、強制的に帰らされますのですが…」
僕がミーナのいる世界に行ける理由を考えられるとしたら、セヴンスガルドと非常に良く似た世界の環境を見る限り、管理者が同じか…それに近い存在ではないかと思っている。
だから、異世界に移動する事が可能なのだと。
後の問題としては、僕もだけどミーナの制約を解除出来る方法があるとすれば、純粋な者の願いを叶えられるという神々の恩恵なら…?
「収納魔法に拉致してから、厳重に保管したりしてもか?」
「拉致…という言い方はあまり感心はしませんが、その方法も何度かは試しましたが…やはり無理でした。異世界を渡る段階で見破られるのか、向こうの異世界からセヴンスガルドに戻される時に、他の異世界から拾った鉱石や宝石の原石類と言った物は平気なのですが、ミーナだけはどうしても…」
「どんな願いでも叶えられるという神々の恩恵か、確かにそういう誓約が絡んでいるのなら…リュカが欲しがるのも分かる気がするな。」
「色々試しては見たんですが、どうやっても無理だったんですよ。」
僕の母さんは、元は聖女で人を生き返らせられる力があると言って、それをミーナに話した事はある。
だけど、それしか方法がないとしても…絶対に賛成はされなかった。
普通に考えれば当然の話だし、僕の様に死に慣れているのならともかく、ミーナは死ぬよりも辛い思いを何度も経験はしていても…死ぬ事を選んだ事は一度も無いからだった。
異世界人を仮に連れて来られたとしても、蘇生が確実に出来るという保証も無いしね。
「なら、一緒になれるという方法はあるかどうかは分からないが…彼女の苦しみの元を解放する事は出来るんじゃないか?今のリュカの中にいる、ダークの力があれば…」
「確かにそれは試した事はありませんでしたね。ミーナに関する小さな問題だけは、今迄に何度か訪れた際に片付けることは出来ましたが…」
「そうか…って、そもそも…そのミーナという子は、どういった子なんだ?」
「ミーナは地球からの異世界転生で、その世界に伯爵家の御令嬢として来たそうなのですが…6歳の神託の儀式という時の際に、とんでも無い事が発覚して。」
「神託の儀って、他の異世界にもあるんだな。俺の世界にも10歳になると神託の儀によって、未来が大体決まるという話があるが…」
「この世界にも神託の儀と言うのはありますね。ただ、僕は幼少の頃からこんな状態だったし、母さんが元聖女だった事もあって、神事の類は執り行えたので問題はないという話でしたが…」
「その時の結果は聞いたのか?」
「いえ、母さんは真実は話してくれませんでした。僕には神託の儀式の神の御言葉は、それだけでは決まらない占いの様な物で、努力次第では運命を変えることが出来るからといって…」
「お前の家族らしいな。流石、愽君の教えを守り継いだ者達だな…それで、解決出来ない問題というのは…どういったものなんだ?」
…そう、ミーナのスキルを利用しようと企んでいた悪徳貴族達はなんとかなったんだけど、その背後に居る魔族が非常に厄介な存在で………
僕は何度か立ち向かって、雑魚は始末が出来たんだけど?
それ以上に強力な上級魔族には歯が立たなかった。
「それ以上に厄介な存在となると………魔王絡みか?」
「そうなんだ、大魔王サバリスという…とてつもなく強大な魔王が居てね、上級魔族だけでも敵わなかったのに、更にその上の魔王になんて…」
[サバリスだと?彼奴はその世界に送り込まれたのか⁉︎」
「え?」
どうもダークは、僕とキッドとの会話を聞いていたみたいだった。
そして明らかに…知っている素振りを見せて来た。
「ダークは、大魔王サバリスの事を知っているの⁉︎」
[あぁ、良く知っている…が、その前にキッドに尋ねたい。貴様のいた世界の魔王とはどんな奴だった?]
「何だ、この声は…?」
「その声が僕の中に存在するダーク…かつての魔王サズンデスだよ。」
「この声の奴がそうなのか。俺の世界にいた魔王は、色んな虫に変身出来るという特技を持つインセクトマスターという…」
[ヴァルサリンガか………あのクソムシ野郎は、貴様の世界にいたのだな。]
ダークの話によると、他の異世界にいる魔王達は元は魔界の住人達で…それなりに力を持つ者達が魔界の神によって選別されて、各異世界に送られる事があるという話だった。
しかも、ミーナのいる世界の大魔王サバリスは、ダーク…魔王サズンデスとほぼ互角の力を持っているという話(本人談)なので、僕では敵わない事が発覚したのだった。
ただダークは、僕の世界にいる大魔王デルフェーゾフという名前には聞き覚えがないという話だった。
【黄昏の夜明け】時代に家族達が戦った、魔界神帝グレザリスレグザリスの事は知っているという話だったのに。
[魔界もこの世界以上に広い所だからな、大魔王デルフェーゾフとやらが魔界の別な区画の住人という可能性はあるかもしれんな。我も全ての魔王になった者の名前を知っている訳ではないからな…]
「ねぇ、ダーク…僕では大魔王サバリスには勝てる……」
[無理だな。モードダークを発動し、魔剣アトランティカが揃っていれば、一部の望みはあるかも知れぬが…そもそも、転移魔法でその異世界に行けるとはいっても、魔剣アトランティカを持っていく事は叶わないのであろう?]
「異世界に渡る際に、アトランティカを収納魔法に入れて持って行こうとしても弾かれてしまうらしいんだ。だから、持って行くことはいつも出来なくて、向こうの異世界に行って鍛治工房で作った剣を使用している。」
[仮にその剣がオリハルコンやアダマンタイトで作った剣だったとしても、魔剣アトランティカの性能には遠く及ばないだろう。魔界の住人ではなく、その世界で生まれた魔王なら…倒せる可能性もあっただろうが?]
魔王サズンデスは、魔界にいた時はそれなりに力を持ったという特徴の他に、魔物を生み出す事ができる研究者でもあった。
だから魔王サズンデスの部下は、魔王サズンデスの研究によって生み出されたという者達が多かった。
今回の魔猟祭に現れたヴァンギスヴァルガーとスカイデッカーという魔獣も、かつては魔王サズンデスが三元将以上の魔王になる存在として創り出したものという話だった。
では、その世界で生まれた魔王というのは…?
その世界で生まれる魔王の中には、異常な魔力を持っている個体が突然変異によって急性中する事があるという。
ただ、そういった者達の場合…急成長したばかりの者は、力は強大だが思考能力が乏しいらしく…大体は悪い考えを持つ者に拾われて育てられる為に、悪の道に進む事が多くて、後に魔王になるという感じらしい。
魔界から異世界に送られる場合は、魔界の神により幾つかの加護(スキル)を与えられる為に、その世界では強力な存在になるという話だが?
その世界で生まれた魔王の場合だと、そういった加護は持ち合わせない為に…倒すのは容易らしいという話だった。
まぁ、人によっては相当梃子摺る場合もあるらしいけど?
だから、ダークの言っている話は、そう意味だった。
「モードダークで意識を共有している時に、大魔王サバリスと話をして何とかならないかな?」
[無理だな。彼奴は昔から碌に話を聞かぬ奴だったし、何より身体を失った我の事を快く思ったりはせぬだろう。]
「仲が悪かったの?」
[仲は…元々あまり良くなかったが、現在の状況を見せた場合…我は人間の軍門に降ったとサバリスの奴は思うだろうな。どんなに説得をしたとしても、奴は全く聞き耳を持たぬだろうしな。]
人類の解決方法の殆どは、話し合いによる解決で済んだという話だったらしいけど…?
魔界の住人達の場合は、そう簡単には事が運ばないらしい。
「あ~~~話している所に水を刺す様で悪いが、どうやらお前の妹が帰って来たみたいだ。かなり怒っているみたいだが、この場にいれば…」
「いえ、逃げます…リッカの怒りが冷めるまでの間まで。」
「この世界の何処かにか?それとも、久々に彼女に会って来れば良いんじゃないか…」
「そうですね、長い事会いに行ってはいませんし、そうするとします!転移、ヴェルシアンフォーゲン!」
リュカはそう唱えると、彼女のいる世界に転移して行ったのか…地面に魔剣アトランティカが転がっていた。
俺はそのままにしていると、リッカに拾われて人質…いや、物質にされると思ってマジックバックで預かる事にした。
呆けているシオンにもその旨を伝えて、やり過ごす事を約束させた。
「あ、キッド!リュカ兄ぃはどこに行ったの‼︎」
「単細胞のリッカには、絶対に見つからない場所だと言っていた。」
「何ですってぇ~~~?」
リッカはそう言うと、そのまままた別な場所に飛んで行ったのだった。
この世界じゃないので、絶対に見つかる訳ではないんだがな…?
「ちなみに、キッドさんがもしも神々の恩恵を手に入れたらどうするんですか?元の異世界に戻りたい…とか?」
「この世界の大魔王を倒せば、管理者という奴が元の世界に戻してくれるという話だからな。それまではこの世界にいるが………ただ俺は、その管理者という奴に未だに会えないんだよなぁ?それに、特に叶えて欲しい願いというのもないしな…シオンこそ、神々の恩恵を手に入れたらどうしたい?」
「ボクは…ザッシュと一緒に行動していた時に、その時に一緒だった仲間だった人達を生き返らせたいですね。」
「何があったんだ?」
「リュカさんがザッシュと戦いの時に、ザッシュが押されて危機感を感じた際に…より力を高める為に仲間を手に掛けた事がありまして。」
「まさに、今回のガイアンの結末と一緒だな。」
…そう、叶うなら…ボクはまた皆さんにお会いしたいです。
狼獣族のグレンさん、猫獣族のミーヤさん、ドワーフ族のレグリーさんに!
アントワネットさんには、あまり会いたくはないので別に構いませんが…。
それから数日後にリュカさんは異世界から戻って来たんですが…?
何やら、いつもと少し様子がおかしい気がしました。
※今回登場した、リュカの彼女のミーナという女性ですが…?
今後に登場するかも…
53
お気に入りに追加
5,535
あなたにおすすめの小説
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。