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最終章
第一話 閑話・もしも…神々の恩恵が手に入ったら?・前編(リュカは何を願うのでしょうね?)
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【神々の恩恵】とは?
純粋なる心を持つ者のどんな願いでも1つだけ叶えてくれるという、ゴッドアイテムの事である。
その存在は色々と伝承があり、魔王サズンデス戦で仲間の1人が命を失ったのを復活させたという事例もある。
ただし、邪なる者の願いは一切叶う事が無い。
リュカのチーム…【集いし英雄達】のメンバーの中では、リッカ以外の願いはきっと叶えてくれるだろう。
リッカは聖女見習いなのだが、心の中は漆黒の様に真っ黒い。
「なんか、私の事だけ酷い事を思ってない?」
「それは、みんなが思っている事だからじゃ無い?」
「みんな…私の事をそんな風に思っていたの⁉︎」
リッカの問いにチームメンバー達は、一斉にソッポ向いた。
普段の事を考えると、リッカはとてもじゃ無いが…純粋なる心を持ち合わせていない様に思えるからだ。
「リュカさんは、仮に神々の恩恵が手に入ったらどうしますか?」
「お前だったらどうするんだ、シオン…自分呪いを判明する為に使うのか?」
「自分の呪い…は、最近では昔ほど気にならなくなりましたね。ただ…リュカさんを見ていると、呪いが何なのかという興味はありますね。まぁ流石に…魔王サズンデスという事はないとは思いますけど。」
「それは無いだろうね、流石に…」
「それで、はぐらされましたけど…リュカさんの願いは何ですか?」
「う~~~ん、僕の願いを知りたいの?それはね………両親と祖父母をこの世から消し去って、リッカに強制労働させて今まで使った分の金を返して貰う………」
「ちょ、ちょっと‼︎」
「…という願いは、純粋な願いからは外れているから恐らく叶わないだろうから、この世界では無い異世界に行きたいと思っている。」
「この世界では無い異世界ですか?英雄ダンがいる地球という世界ですか?」
「そこも興味がない訳では無いけど、恐らく…魔素やマナがない世界だと思うんだよね。なぁ、キッド…無いよね、地球に魔素やマナって…」
「あぁ、ねぇな。実際に本当にいるのかは知らないけど、魔法より万能では無い力で超能力というのを使えるという奴は数人いたが、それも全てではなかった。ノワールの時代はどうだったんだ?」
「私の時代にも魔法は無かったね。そもそも、地球では昔は魔術と呼ばれていたけど…ファンタジー小説の様な魔法みたいな程の能力では無かったみたいだしね。」
キッドは地球で仕事帰りにトラックに撥ねられて死んで、別世界に転生。
ノワールも地球で暮らしていたけど、自然災害に巻き込まれて死んでから、こことは別世界に転生している。
キッドがノワールに時代を尋ねたのは、キッドが死んだ年は2016年、ノワールが死んだ年は2733年だと言う。
最も、キッドの生きていた地球とノワールの生きていた地球は、マルチバースと呼ばれている複数の地球の内の1つという話だった
ある程度の時代までの歴史は同じらしいという話だ。
「あのサウザンドマスターと呼ばれた魔法の使い手である英雄ダンが、地球という世界では一切の魔法が使えないという話だと、僕がその地球という世界に行った際に…恐らく路頭に迷うことになるだろうね。言葉は通じないし、文字は読めないし、ルールやマナーもね。そういう事が関係ない世界なら問題はなさそうだけど…」
「その地球って、場所によってそんなに違うんですか?」
「あぁ、違うな。文化や歴史、宗教的な物で環境が違って来る。都会の中と田舎くらいに違うだろうな、この世界で例えるなら…」
「そうね、こっちの世界で言うのなら…貴族と平民位に違うかもね。貴族の子供は幼い時から勉強を学ばされるけど、平民が文字を覚えさせる為の勉強を始めたら…いつになったら覚えられるかわからないし、知識も碌にないで外の世界に晒されたら…どうなるかくらいはわかるよね?」
「それにさ、この世界は全て共通言語だろ?多少の訛りや言葉のアクセントが違ったりする程度で…でも地球は違う。全部で6900ヵ国語があるから…と言いたい所だけど、その国に関わらないなら無理してその国の言葉を覚える必要もないんだけどな。まぁ、覚える必要は無いが…極める為に覚えようとする奴はいるな。」
「キッドさんの世界は6900ヵ国語なんだ?」
「大体それ位という話だ、発見されていない部族や…この世界のエルヴ族やエルフ族みたいな種族が仮に発見されて居れば、6900ヵ国語では済まないだろうな。ノワールの時代はどうだったんだ?」
「私のいた世界…と言ったほうがいいのかな?地球の言語は全部で4,300ヵ国後ですね。500年程前に宇宙平和安全条約というものが締結されてからは変わりませんが、その前に国同士が大きな戦争を起こして…人口がかなり減ったという話を聞いています。」
ノワールのいた地球は、かなり高度な文明がある世界です。
なので、勝手がずいぶん違って来るみたいです。
「何があったんだ?」
「宇宙に行ける様になった事で……という理由で分かりませんか?」
「なるほどな、新しい資源を巡る為に国同士が争いを始めたのか。別に自分達に所有権がある訳でもないのに…」
「えぇ、その戦争も…最終的には地球を管理しているアスファルドという宇宙人が出てきた事で、解決する事になりましたね。」
「あの頭の硬い各国の首脳がか?」
「はい、話によると…島程の大きさの巨大な宇宙戦艦が地球の空を覆い尽くす様な数で来た事により、各国も自分達の技術力が遠く及ばない物と悟ったからでしょう。」
「まぁ、それはそうなるだろうな…」
「何か…随分壮大な話をしているね?うん、ますます僕なら行きたくないね。」
「そうだ、やめておけ…」
「それで…リュカさんはどんな世界に行きたいんですか?」
「どんな世界に行きたいか………というよりも、どんな世界に行っていたか…かな?」
「「「「はぁ?」」」」
…そう、僕は異世界転移は初めてではない。
今迄、数ある虐待………もとい、実験の中には、異世界に渡ることが出来るか?
………そんな実験があった。
一番最初は、実際に異世界に渡れるかどうか。
二番目は、異世界に行けたなら…その証明に何かを持って帰って来るという物だった。
二番目の時は、適当にその辺にある草や地面の土や石を持って来るという物で終わっていた。
その異世界には、僕達の住んでいるセヴンスガルドにはない物質だったので、問題は無かったのだが…?
三番目からは要求が跳ね上がった。
そこに棲息する魔物や、鉱石や宝石などを持って帰る様に言ってきた。
「いやいや、転移先が海の中だったらどうするのさ!魔物………は捕縛できるかも知れないけど、鉱石や宝石の類は…」
「海だったら船とかがあるはずだよ!そこの中から拝借をしてくれば良いさね。」
拝借……と言えば聞こえは良いが、要は盗んで来いと言う話だった。
うちの家族も遂に堕ちたか。
まさか窃盗を要求する事を言って来るなんて…
そして、今までと同じ方法で異世界に行ったんだけど…?
その世界は、僕達の暮らしている世界とは何もかも違っていた。
見た目的には、僕達が住んでいる住居と同じ形の家はあった。
ただし、扉がノブで開ける物では無く…扉に触れると勝手に開くと言う物だった。
そこには熊の様な見た目の魔物もいるんだけど…僕達の世界のオリハルコンの剣では、傷1つ付けられなかった………どころか、刀身が刃こぼれしてしまった。
そして、炎属性の魔法も使えるんだけど…異常に魔素やマナが濃いのか、威力が跳ね上がるのだが…?
その魔物の当たっても涼しい顔をしている上に、焼き焦げる事もない全くの無傷だった。
それを踏まえて、一応複合統一魔法も放ってみたんだけど、さっきと一緒だった。
この世界の魔物は異常に防御力が高く、並の武器では歯が立たない上に、魔法すらも効果が無かった。
なので、魔物を連れて来るという計画を辞めて、盗みを働く事を決行した…だけど?
そこに住んでいた住人を見つけて、魔物の前に行くと…僕が散々手こずっていた魔物をあっさりと倒して去って行った。
それを見て、「あぁ、この人は僕より遥かに強いんだなぁ…」と思って、盗みをする真似をせずに接触を図る事にした。
まぁ、盗みなんか働いて見つかったりしたら…多分生きてはいないだろうからね。
「それでどうしたんですか?」
「その人は食糧に困っていてね、僕の収納魔法にある食材を分けてあげたんだよ。この世界の物じゃないと言った時に、少し怪訝そうな顔をしたけど…食べてみたら結構好評でね。それで僕の世界の話や武器の話をして、この武器が全く通じないのに、貴方の 武器は何故?なんて聞いてみたら、僕の使っている武器は旧世界の武器だなって言われたんだ。」
「旧世界の武器…ですか?なら、その世界の武器はどんな物何ですか?」
「光る剣だった。渡された時は刀身のない武器で、鍔の部分の水晶に触れると、緑色の刀身が出現する武器になった。」
「まるで、ライトセイバーだな。」
「ライト…という名前はつかなかったけど、セイバーという武器には違いないよ。でもキッドは、良く知っていたね?」
「俺の使っている剣も、見た目は古そうな装飾だけど…中身は進んだ技術の武器だからな。」
「…という事は、その世界も?」
「うん、その世界の船は星と星を移動出来るくらいの進んだ技術の異世界だった。僕はそこで知り合った人に、食材を渡す代わりにお古の武器を貰ったんだけど…帰って来てから家族にセイバーを見せたら、かー祖母ちゃんに「これはこの世界では、まだ時代が早すぎると言って没収された。」
「そうですよね、じゃ無かったら…リュカさんのメイン武器は、アトランティカでは無くて、その武器になっているでしょうから…」
その可能性は十分にあり得る話だ。
だって、僕がその人から貰ったセイバーという武器は、僕の持っているオリハルコンの剣よりも強力なんだけど、セイバーという剣はその世界では一番最低ランクの剣という話だった。
そうなると…最強はどれくらい凄い武器だったのかが気になるところだけど、それから数度にわたって異世界に行ったけど、その異世界に行く事は出来なかった。
「それで、リュカはどうして異世界に行きたいんだ?」
「実はね………」
僕は話をする前にリッカを見た。
この話を聞いたリッカは、僕を強請ってくる可能性が高いからだ。
だから、極力リッカの前ではこの話をあまりしたくは無い。
「どうしたんですか、リッカさんを見つめて…」
「まさかリュカ兄ぃ、私に関係する話とか?」
リッカは何か勘違いをしているみたいなので、ちょっとイタズラを加えよう。
さて、リッカはどこまで信じるかなw?
「とうとうこの話をする時が来たみたいだね、君がこの話を聞きたく無いというのなら…耳を塞いで、一切話を聞かないでくれ。」
「どんな内容かにもよるけど…」
「内容はね、僕とリッカ…それに家族に関係ある話なんだ。」
「家族の⁉︎」
僕が物悲しい表情をしながら、リッカに告げた。
「実はね、僕はリュカ・ハーサフェイで間違いは無いんだけど、君は本当のリッカ・ハーサフェイでは無いんだ。」
「……………はい‼︎え、どど、どういう事⁉︎」
リッカはパニクっているみたいで、凄く取り乱していた。
僕はリッカとは対照的に、淡々と話し始めた。
「僕には妹がいる。妹の名前は、リッカ・ハーサフェイ。」
「だから、それは私の事だよね?」
「いや、君はリッカ・ハーサフェイでは無いよ。本当のリッカ・ハーサフェイは、セヴンスガルドとは別の異世界にいるから…」
「えぇ~~~って、騙されたフリをしているけど…その性質の悪い冗談はその辺にして‼︎」
「いや、冗談じゃ無いんだよ。その証拠に、君の事を本当の妹に様にお前とかという呼び方はしていないだろ?」
「……そう、ですね。リュカさんはリッカさんの事を妹の様に呼ぶというよりは、他人行儀な呼び方をしていましたね。」
その話を聞いたリッカは、シオンの言葉にハッとなって驚いていた。
確かに最近の僕は、リッカの事を昔の様にお前とか…家族に向ける様な言葉遣いはしていない。
まぁ、その理由は…リッカの中のもう1つの人格のノワールが居るから、そういう呼び方が出来なくなっただけなんだけどね。
「僕が異世界に行きたい理由は、その世界にいる僕の本当の妹である…リッカに会いに行くのが理由だったんだよ!」
「異世界に…本当のリッカさんが⁉︎」
シリアスに話してはおりますが、全くの嘘っぱちです。
心の中では、ノワールに申し訳ないという気持ちと大爆笑をしながら、必死になって地面を連打しております。
この話には実は裏があり、実際の話をリッカに聞かせたくはないので、その話をする為にはリッカをこの場から去らせたいと思っている為です。
この話を最後まで聞けば、リッカはノワールに頼んで転移魔法で真相をカナイ村に聞きに戻るからね。
「僕と妹のリッカは、双子…という話は皆の知っての通りなんだけど、1つだけ皆に話していない秘密があったんです。その秘密とは、僕とリッカは魔力が桁違いに強すぎて…互いがその場所にいる事でオーバーロードを引き起こすかもしれない力を持っているんです。」
「オーバーロードって…さっきの話だと、魔力暴走を引き起こすというのか⁉︎」
「はい。それで、当時に異世界に確実に行ける方法を父さんが導き出し、その世界で知り合った住人に話をして協力して貰い…リッカが預かられる事になりました。」
「ちょっと待って!普通に考えたら…リュカさんが他の世界に行かされるんじゃ?」
「呪いの事とか…後は、実験する対象がいなくなるのを危惧したからじゃないかな?言っていて悲しくなるけど、蘇生出来れば好き勝手で都合が効く玩具を手放すくらいなら、大事に育てて来た娘の方を手放した方が良いって…」
僕はリッカを見ると、リッカの表情は面白いくらいに青ざめていた。
僕は周囲の皆に、これは嘘の話だという事をリッカには遮断して皆に伝えました。
「じゃあ、リュカ兄ぃ!私は一体誰なのよ⁉︎」
「君は………正直言って、どこの誰だかはわからない。ある時、とー祖母ちゃんとかー祖母ちゃんが連れて来た時の子供が君だったからね。僕も最初はリッカだと思っていたんだけど…本当のリッカの性格は、誰よりも優しくて、気立も良く……今のリッカの性格とは全く真逆の性格の子だったからね。」
覚えているかい、リッカ…?
君は幼少の頃に、僕が気にしている事をズケズケと容赦ない言葉を浴びせた事を…。
「リュカ兄ぃってさぁ、本当に私のお兄ちゃんなの?髪の毛と目の色は真っ黒だし、家族と全然別の色だし…実はリュカ兄ぃって、何処かの橋の下とかで拾われた子供なんじゃないの~?」
僕はこの日、初めて妹に泣かされた日だった。
僕はその時の悔しさを忘れてはいない。
その恨みをようやくこの瞬間に晴らすことが出来たんだ!
「わ、私は一体…誰なのよ‼︎」
「あの時の状況を考えて…とー祖母ちゃんとかー祖母ちゃんが関わっているところを見ると、リッカの記憶を有した精巧な魔導具人形じゃないのかな~?…と思うんだ。」
「人形……私が人形なの?」
「だって、考えも見てよ…最近ではリッカに対する接し方が、やたら優しくなっていないかな?それはリッカの稼働時間が影響している可能性があって、下手に刺激をすると動かなくなるとか思って、無碍に扱えなくなったんじゃないかな?」
リッカが最近になって丁重に扱われるようになった理由は、リッカの中のノワール の存在を知ってからだ。
ノワールの元いた世界が、英雄ダンとは違う世界だけど地球という異世界から来たという話を知ってから、両親と祖父母達は色々質問する為にリッカには優しく接するようになっていた。
僕はその件を知っていたので、その手を逆手に取って今回の話を思い付いたのだった。
「う、嘘よ!嘘よ!嘘よ~~~‼︎」
《はい、全くの大嘘です。》
リッカは両手を頭に当てて、大きく振りながら困惑している。
これは…今の所は面白いで済むけど、真実を知った場合はどうなるかな?
まぁ、その時はその時で別な手を考えるとするか。
「ノワール、真実を確認する為にカナイ村に戻りたいの‼︎」
リッカはそう言うと、ノワールに交代した。
そしてノワールは僕に何かを口パクで伝えると、そのまま転移魔法でカナイ村に戻って行った。
何を伝えたかったのかと言うと、正直良く分からないけど……恐らく覚悟をしておいた方が良いわよ…と言う意味だろう。
まぁ、それは後で考えるとして……とりあえずは、当初の目的だったリッカは排除したので、真実を話すとしますか!
「これで…リッカさんがこの場から居なくなりましたが、これで真実を話して貰えるんですよね?」
「あぁ、これから話すのは真実を話すと誓う。…とりあえず、リッカが帰って来る前に話してしまいますね。」
「さて、これは…どう言う話が聞けるのかねぇ?」
キッドはグラスに入ったスコッチを口に含んだ。
そしてシオンも、キッドから分けて貰ったスコッチを口に含むが…あまりの強さに蒸せていたみたいだった。
「僕が異世界に行きたい本当の理由は、その世界に恋人が………彼女が居るからです!」
「「はっ?」」
キッドとシオンは、素っ頓狂な声を上げた。
そりゃあ、別の異世界に恋人がいるなんて言う話を聞かされれば、そんな反応にもなるだろう。
「異世界に恋人って………」
「そうだよ、異世界でどうやって知り合えたんだよ⁉︎」
「それはですね…」
僕は何度か異世界に行く事があった…とは言え、その大半は家族の実験による物なんだけど、その実験の中で僕はとある異世界に行った。
その世界はセヴンスガルドと非常に似た世界で、動植物も鉱石や鉱物もあまり遜色が無い…これと言って珍しいものは無い世界だった。
なので、適当な物を拾ってから、帰還する時まで待っていようと思ったんだけど…?
そんな時に、遠くから悲痛な声で叫んでいる女性の声が聞こえた。
僕はその場所に赴くと、貴族の屋敷の様な趣の場所で、僕とあまり年齢が変わらない女性が沢山の研究者らしき人物達に拷問の様な扱いを受けていた。
僕はすぐに突入してから、スタン魔法で研究者を気絶させて…その女性を救い出してから移動をした。
僕はその女性に回復魔法を施そうとしたのだけど、女性は僕の前に手を出すと、怪我や傷はスッと消えて行った。
気になって鑑定魔法をしてみると、その女性には様々の特殊なスキルを持っている事がわかった。
そして色々と話をしている内に、僕の指先が何かに引っ張られる感覚を感じた。
「お願いします、このまま私をどこかに連れて行って下さいませんか?」
「そうしてあげたいのは山々ですが、僕のこの世界にいる時間が残り少ないんです。」
僕は手を女性に見せると、指先から肘の辺りが薄く消え掛かっていた。
そして暫くすると僕の姿は完全にこの世界から消えていき、気が付くと僕は元の世界に戻っていた。
「たった1回だけあって、仲良く話したから彼女扱いか?」
「それはいくらなんでも…気が早すぎませんか?」
「1回だけの話なら、そう思われても仕方がないと思う。」
実はこの異世界には、何度も行った事がある。
その際に、祖母達に説得するのがとにかく面倒くさくて、この世界には無い珍しい宝石なんだけど…とにかく採掘に異常な時間がかかると言って、再びこの世界に来る事が出来た。
その時に以前の女性を訪ねてみたんだけど、屋敷の中に女性はいた……けど、何故か牢の中で酷い怪我を負っていた。
女性には超回復のスキルを所持しているので、この程度の傷はすぐに治る筈?
だけど、この時の女性はスキルの力が非常に弱く感じた。
僕は牢の中に潜入してからその女性を癒し、僕は別な場所に転移した。
暫くして女性は目を覚まし、僕は以前に伝えられなかった名前と素性を明かす事が出来た。
そして、女性をこんな場所から連れ出す為に手を尽くしたんだけど?
それも悉く失敗を余儀なくされていた。
後編に続く…
純粋なる心を持つ者のどんな願いでも1つだけ叶えてくれるという、ゴッドアイテムの事である。
その存在は色々と伝承があり、魔王サズンデス戦で仲間の1人が命を失ったのを復活させたという事例もある。
ただし、邪なる者の願いは一切叶う事が無い。
リュカのチーム…【集いし英雄達】のメンバーの中では、リッカ以外の願いはきっと叶えてくれるだろう。
リッカは聖女見習いなのだが、心の中は漆黒の様に真っ黒い。
「なんか、私の事だけ酷い事を思ってない?」
「それは、みんなが思っている事だからじゃ無い?」
「みんな…私の事をそんな風に思っていたの⁉︎」
リッカの問いにチームメンバー達は、一斉にソッポ向いた。
普段の事を考えると、リッカはとてもじゃ無いが…純粋なる心を持ち合わせていない様に思えるからだ。
「リュカさんは、仮に神々の恩恵が手に入ったらどうしますか?」
「お前だったらどうするんだ、シオン…自分呪いを判明する為に使うのか?」
「自分の呪い…は、最近では昔ほど気にならなくなりましたね。ただ…リュカさんを見ていると、呪いが何なのかという興味はありますね。まぁ流石に…魔王サズンデスという事はないとは思いますけど。」
「それは無いだろうね、流石に…」
「それで、はぐらされましたけど…リュカさんの願いは何ですか?」
「う~~~ん、僕の願いを知りたいの?それはね………両親と祖父母をこの世から消し去って、リッカに強制労働させて今まで使った分の金を返して貰う………」
「ちょ、ちょっと‼︎」
「…という願いは、純粋な願いからは外れているから恐らく叶わないだろうから、この世界では無い異世界に行きたいと思っている。」
「この世界では無い異世界ですか?英雄ダンがいる地球という世界ですか?」
「そこも興味がない訳では無いけど、恐らく…魔素やマナがない世界だと思うんだよね。なぁ、キッド…無いよね、地球に魔素やマナって…」
「あぁ、ねぇな。実際に本当にいるのかは知らないけど、魔法より万能では無い力で超能力というのを使えるという奴は数人いたが、それも全てではなかった。ノワールの時代はどうだったんだ?」
「私の時代にも魔法は無かったね。そもそも、地球では昔は魔術と呼ばれていたけど…ファンタジー小説の様な魔法みたいな程の能力では無かったみたいだしね。」
キッドは地球で仕事帰りにトラックに撥ねられて死んで、別世界に転生。
ノワールも地球で暮らしていたけど、自然災害に巻き込まれて死んでから、こことは別世界に転生している。
キッドがノワールに時代を尋ねたのは、キッドが死んだ年は2016年、ノワールが死んだ年は2733年だと言う。
最も、キッドの生きていた地球とノワールの生きていた地球は、マルチバースと呼ばれている複数の地球の内の1つという話だった
ある程度の時代までの歴史は同じらしいという話だ。
「あのサウザンドマスターと呼ばれた魔法の使い手である英雄ダンが、地球という世界では一切の魔法が使えないという話だと、僕がその地球という世界に行った際に…恐らく路頭に迷うことになるだろうね。言葉は通じないし、文字は読めないし、ルールやマナーもね。そういう事が関係ない世界なら問題はなさそうだけど…」
「その地球って、場所によってそんなに違うんですか?」
「あぁ、違うな。文化や歴史、宗教的な物で環境が違って来る。都会の中と田舎くらいに違うだろうな、この世界で例えるなら…」
「そうね、こっちの世界で言うのなら…貴族と平民位に違うかもね。貴族の子供は幼い時から勉強を学ばされるけど、平民が文字を覚えさせる為の勉強を始めたら…いつになったら覚えられるかわからないし、知識も碌にないで外の世界に晒されたら…どうなるかくらいはわかるよね?」
「それにさ、この世界は全て共通言語だろ?多少の訛りや言葉のアクセントが違ったりする程度で…でも地球は違う。全部で6900ヵ国語があるから…と言いたい所だけど、その国に関わらないなら無理してその国の言葉を覚える必要もないんだけどな。まぁ、覚える必要は無いが…極める為に覚えようとする奴はいるな。」
「キッドさんの世界は6900ヵ国語なんだ?」
「大体それ位という話だ、発見されていない部族や…この世界のエルヴ族やエルフ族みたいな種族が仮に発見されて居れば、6900ヵ国語では済まないだろうな。ノワールの時代はどうだったんだ?」
「私のいた世界…と言ったほうがいいのかな?地球の言語は全部で4,300ヵ国後ですね。500年程前に宇宙平和安全条約というものが締結されてからは変わりませんが、その前に国同士が大きな戦争を起こして…人口がかなり減ったという話を聞いています。」
ノワールのいた地球は、かなり高度な文明がある世界です。
なので、勝手がずいぶん違って来るみたいです。
「何があったんだ?」
「宇宙に行ける様になった事で……という理由で分かりませんか?」
「なるほどな、新しい資源を巡る為に国同士が争いを始めたのか。別に自分達に所有権がある訳でもないのに…」
「えぇ、その戦争も…最終的には地球を管理しているアスファルドという宇宙人が出てきた事で、解決する事になりましたね。」
「あの頭の硬い各国の首脳がか?」
「はい、話によると…島程の大きさの巨大な宇宙戦艦が地球の空を覆い尽くす様な数で来た事により、各国も自分達の技術力が遠く及ばない物と悟ったからでしょう。」
「まぁ、それはそうなるだろうな…」
「何か…随分壮大な話をしているね?うん、ますます僕なら行きたくないね。」
「そうだ、やめておけ…」
「それで…リュカさんはどんな世界に行きたいんですか?」
「どんな世界に行きたいか………というよりも、どんな世界に行っていたか…かな?」
「「「「はぁ?」」」」
…そう、僕は異世界転移は初めてではない。
今迄、数ある虐待………もとい、実験の中には、異世界に渡ることが出来るか?
………そんな実験があった。
一番最初は、実際に異世界に渡れるかどうか。
二番目は、異世界に行けたなら…その証明に何かを持って帰って来るという物だった。
二番目の時は、適当にその辺にある草や地面の土や石を持って来るという物で終わっていた。
その異世界には、僕達の住んでいるセヴンスガルドにはない物質だったので、問題は無かったのだが…?
三番目からは要求が跳ね上がった。
そこに棲息する魔物や、鉱石や宝石などを持って帰る様に言ってきた。
「いやいや、転移先が海の中だったらどうするのさ!魔物………は捕縛できるかも知れないけど、鉱石や宝石の類は…」
「海だったら船とかがあるはずだよ!そこの中から拝借をしてくれば良いさね。」
拝借……と言えば聞こえは良いが、要は盗んで来いと言う話だった。
うちの家族も遂に堕ちたか。
まさか窃盗を要求する事を言って来るなんて…
そして、今までと同じ方法で異世界に行ったんだけど…?
その世界は、僕達の暮らしている世界とは何もかも違っていた。
見た目的には、僕達が住んでいる住居と同じ形の家はあった。
ただし、扉がノブで開ける物では無く…扉に触れると勝手に開くと言う物だった。
そこには熊の様な見た目の魔物もいるんだけど…僕達の世界のオリハルコンの剣では、傷1つ付けられなかった………どころか、刀身が刃こぼれしてしまった。
そして、炎属性の魔法も使えるんだけど…異常に魔素やマナが濃いのか、威力が跳ね上がるのだが…?
その魔物の当たっても涼しい顔をしている上に、焼き焦げる事もない全くの無傷だった。
それを踏まえて、一応複合統一魔法も放ってみたんだけど、さっきと一緒だった。
この世界の魔物は異常に防御力が高く、並の武器では歯が立たない上に、魔法すらも効果が無かった。
なので、魔物を連れて来るという計画を辞めて、盗みを働く事を決行した…だけど?
そこに住んでいた住人を見つけて、魔物の前に行くと…僕が散々手こずっていた魔物をあっさりと倒して去って行った。
それを見て、「あぁ、この人は僕より遥かに強いんだなぁ…」と思って、盗みをする真似をせずに接触を図る事にした。
まぁ、盗みなんか働いて見つかったりしたら…多分生きてはいないだろうからね。
「それでどうしたんですか?」
「その人は食糧に困っていてね、僕の収納魔法にある食材を分けてあげたんだよ。この世界の物じゃないと言った時に、少し怪訝そうな顔をしたけど…食べてみたら結構好評でね。それで僕の世界の話や武器の話をして、この武器が全く通じないのに、貴方の 武器は何故?なんて聞いてみたら、僕の使っている武器は旧世界の武器だなって言われたんだ。」
「旧世界の武器…ですか?なら、その世界の武器はどんな物何ですか?」
「光る剣だった。渡された時は刀身のない武器で、鍔の部分の水晶に触れると、緑色の刀身が出現する武器になった。」
「まるで、ライトセイバーだな。」
「ライト…という名前はつかなかったけど、セイバーという武器には違いないよ。でもキッドは、良く知っていたね?」
「俺の使っている剣も、見た目は古そうな装飾だけど…中身は進んだ技術の武器だからな。」
「…という事は、その世界も?」
「うん、その世界の船は星と星を移動出来るくらいの進んだ技術の異世界だった。僕はそこで知り合った人に、食材を渡す代わりにお古の武器を貰ったんだけど…帰って来てから家族にセイバーを見せたら、かー祖母ちゃんに「これはこの世界では、まだ時代が早すぎると言って没収された。」
「そうですよね、じゃ無かったら…リュカさんのメイン武器は、アトランティカでは無くて、その武器になっているでしょうから…」
その可能性は十分にあり得る話だ。
だって、僕がその人から貰ったセイバーという武器は、僕の持っているオリハルコンの剣よりも強力なんだけど、セイバーという剣はその世界では一番最低ランクの剣という話だった。
そうなると…最強はどれくらい凄い武器だったのかが気になるところだけど、それから数度にわたって異世界に行ったけど、その異世界に行く事は出来なかった。
「それで、リュカはどうして異世界に行きたいんだ?」
「実はね………」
僕は話をする前にリッカを見た。
この話を聞いたリッカは、僕を強請ってくる可能性が高いからだ。
だから、極力リッカの前ではこの話をあまりしたくは無い。
「どうしたんですか、リッカさんを見つめて…」
「まさかリュカ兄ぃ、私に関係する話とか?」
リッカは何か勘違いをしているみたいなので、ちょっとイタズラを加えよう。
さて、リッカはどこまで信じるかなw?
「とうとうこの話をする時が来たみたいだね、君がこの話を聞きたく無いというのなら…耳を塞いで、一切話を聞かないでくれ。」
「どんな内容かにもよるけど…」
「内容はね、僕とリッカ…それに家族に関係ある話なんだ。」
「家族の⁉︎」
僕が物悲しい表情をしながら、リッカに告げた。
「実はね、僕はリュカ・ハーサフェイで間違いは無いんだけど、君は本当のリッカ・ハーサフェイでは無いんだ。」
「……………はい‼︎え、どど、どういう事⁉︎」
リッカはパニクっているみたいで、凄く取り乱していた。
僕はリッカとは対照的に、淡々と話し始めた。
「僕には妹がいる。妹の名前は、リッカ・ハーサフェイ。」
「だから、それは私の事だよね?」
「いや、君はリッカ・ハーサフェイでは無いよ。本当のリッカ・ハーサフェイは、セヴンスガルドとは別の異世界にいるから…」
「えぇ~~~って、騙されたフリをしているけど…その性質の悪い冗談はその辺にして‼︎」
「いや、冗談じゃ無いんだよ。その証拠に、君の事を本当の妹に様にお前とかという呼び方はしていないだろ?」
「……そう、ですね。リュカさんはリッカさんの事を妹の様に呼ぶというよりは、他人行儀な呼び方をしていましたね。」
その話を聞いたリッカは、シオンの言葉にハッとなって驚いていた。
確かに最近の僕は、リッカの事を昔の様にお前とか…家族に向ける様な言葉遣いはしていない。
まぁ、その理由は…リッカの中のもう1つの人格のノワールが居るから、そういう呼び方が出来なくなっただけなんだけどね。
「僕が異世界に行きたい理由は、その世界にいる僕の本当の妹である…リッカに会いに行くのが理由だったんだよ!」
「異世界に…本当のリッカさんが⁉︎」
シリアスに話してはおりますが、全くの嘘っぱちです。
心の中では、ノワールに申し訳ないという気持ちと大爆笑をしながら、必死になって地面を連打しております。
この話には実は裏があり、実際の話をリッカに聞かせたくはないので、その話をする為にはリッカをこの場から去らせたいと思っている為です。
この話を最後まで聞けば、リッカはノワールに頼んで転移魔法で真相をカナイ村に聞きに戻るからね。
「僕と妹のリッカは、双子…という話は皆の知っての通りなんだけど、1つだけ皆に話していない秘密があったんです。その秘密とは、僕とリッカは魔力が桁違いに強すぎて…互いがその場所にいる事でオーバーロードを引き起こすかもしれない力を持っているんです。」
「オーバーロードって…さっきの話だと、魔力暴走を引き起こすというのか⁉︎」
「はい。それで、当時に異世界に確実に行ける方法を父さんが導き出し、その世界で知り合った住人に話をして協力して貰い…リッカが預かられる事になりました。」
「ちょっと待って!普通に考えたら…リュカさんが他の世界に行かされるんじゃ?」
「呪いの事とか…後は、実験する対象がいなくなるのを危惧したからじゃないかな?言っていて悲しくなるけど、蘇生出来れば好き勝手で都合が効く玩具を手放すくらいなら、大事に育てて来た娘の方を手放した方が良いって…」
僕はリッカを見ると、リッカの表情は面白いくらいに青ざめていた。
僕は周囲の皆に、これは嘘の話だという事をリッカには遮断して皆に伝えました。
「じゃあ、リュカ兄ぃ!私は一体誰なのよ⁉︎」
「君は………正直言って、どこの誰だかはわからない。ある時、とー祖母ちゃんとかー祖母ちゃんが連れて来た時の子供が君だったからね。僕も最初はリッカだと思っていたんだけど…本当のリッカの性格は、誰よりも優しくて、気立も良く……今のリッカの性格とは全く真逆の性格の子だったからね。」
覚えているかい、リッカ…?
君は幼少の頃に、僕が気にしている事をズケズケと容赦ない言葉を浴びせた事を…。
「リュカ兄ぃってさぁ、本当に私のお兄ちゃんなの?髪の毛と目の色は真っ黒だし、家族と全然別の色だし…実はリュカ兄ぃって、何処かの橋の下とかで拾われた子供なんじゃないの~?」
僕はこの日、初めて妹に泣かされた日だった。
僕はその時の悔しさを忘れてはいない。
その恨みをようやくこの瞬間に晴らすことが出来たんだ!
「わ、私は一体…誰なのよ‼︎」
「あの時の状況を考えて…とー祖母ちゃんとかー祖母ちゃんが関わっているところを見ると、リッカの記憶を有した精巧な魔導具人形じゃないのかな~?…と思うんだ。」
「人形……私が人形なの?」
「だって、考えも見てよ…最近ではリッカに対する接し方が、やたら優しくなっていないかな?それはリッカの稼働時間が影響している可能性があって、下手に刺激をすると動かなくなるとか思って、無碍に扱えなくなったんじゃないかな?」
リッカが最近になって丁重に扱われるようになった理由は、リッカの中のノワール の存在を知ってからだ。
ノワールの元いた世界が、英雄ダンとは違う世界だけど地球という異世界から来たという話を知ってから、両親と祖父母達は色々質問する為にリッカには優しく接するようになっていた。
僕はその件を知っていたので、その手を逆手に取って今回の話を思い付いたのだった。
「う、嘘よ!嘘よ!嘘よ~~~‼︎」
《はい、全くの大嘘です。》
リッカは両手を頭に当てて、大きく振りながら困惑している。
これは…今の所は面白いで済むけど、真実を知った場合はどうなるかな?
まぁ、その時はその時で別な手を考えるとするか。
「ノワール、真実を確認する為にカナイ村に戻りたいの‼︎」
リッカはそう言うと、ノワールに交代した。
そしてノワールは僕に何かを口パクで伝えると、そのまま転移魔法でカナイ村に戻って行った。
何を伝えたかったのかと言うと、正直良く分からないけど……恐らく覚悟をしておいた方が良いわよ…と言う意味だろう。
まぁ、それは後で考えるとして……とりあえずは、当初の目的だったリッカは排除したので、真実を話すとしますか!
「これで…リッカさんがこの場から居なくなりましたが、これで真実を話して貰えるんですよね?」
「あぁ、これから話すのは真実を話すと誓う。…とりあえず、リッカが帰って来る前に話してしまいますね。」
「さて、これは…どう言う話が聞けるのかねぇ?」
キッドはグラスに入ったスコッチを口に含んだ。
そしてシオンも、キッドから分けて貰ったスコッチを口に含むが…あまりの強さに蒸せていたみたいだった。
「僕が異世界に行きたい本当の理由は、その世界に恋人が………彼女が居るからです!」
「「はっ?」」
キッドとシオンは、素っ頓狂な声を上げた。
そりゃあ、別の異世界に恋人がいるなんて言う話を聞かされれば、そんな反応にもなるだろう。
「異世界に恋人って………」
「そうだよ、異世界でどうやって知り合えたんだよ⁉︎」
「それはですね…」
僕は何度か異世界に行く事があった…とは言え、その大半は家族の実験による物なんだけど、その実験の中で僕はとある異世界に行った。
その世界はセヴンスガルドと非常に似た世界で、動植物も鉱石や鉱物もあまり遜色が無い…これと言って珍しいものは無い世界だった。
なので、適当な物を拾ってから、帰還する時まで待っていようと思ったんだけど…?
そんな時に、遠くから悲痛な声で叫んでいる女性の声が聞こえた。
僕はその場所に赴くと、貴族の屋敷の様な趣の場所で、僕とあまり年齢が変わらない女性が沢山の研究者らしき人物達に拷問の様な扱いを受けていた。
僕はすぐに突入してから、スタン魔法で研究者を気絶させて…その女性を救い出してから移動をした。
僕はその女性に回復魔法を施そうとしたのだけど、女性は僕の前に手を出すと、怪我や傷はスッと消えて行った。
気になって鑑定魔法をしてみると、その女性には様々の特殊なスキルを持っている事がわかった。
そして色々と話をしている内に、僕の指先が何かに引っ張られる感覚を感じた。
「お願いします、このまま私をどこかに連れて行って下さいませんか?」
「そうしてあげたいのは山々ですが、僕のこの世界にいる時間が残り少ないんです。」
僕は手を女性に見せると、指先から肘の辺りが薄く消え掛かっていた。
そして暫くすると僕の姿は完全にこの世界から消えていき、気が付くと僕は元の世界に戻っていた。
「たった1回だけあって、仲良く話したから彼女扱いか?」
「それはいくらなんでも…気が早すぎませんか?」
「1回だけの話なら、そう思われても仕方がないと思う。」
実はこの異世界には、何度も行った事がある。
その際に、祖母達に説得するのがとにかく面倒くさくて、この世界には無い珍しい宝石なんだけど…とにかく採掘に異常な時間がかかると言って、再びこの世界に来る事が出来た。
その時に以前の女性を訪ねてみたんだけど、屋敷の中に女性はいた……けど、何故か牢の中で酷い怪我を負っていた。
女性には超回復のスキルを所持しているので、この程度の傷はすぐに治る筈?
だけど、この時の女性はスキルの力が非常に弱く感じた。
僕は牢の中に潜入してからその女性を癒し、僕は別な場所に転移した。
暫くして女性は目を覚まし、僕は以前に伝えられなかった名前と素性を明かす事が出来た。
そして、女性をこんな場所から連れ出す為に手を尽くしたんだけど?
それも悉く失敗を余儀なくされていた。
後編に続く…
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