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新天地の章

第八十二話

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 「何者か…って、なんて答えよう?」

 此処でうっかり、聖女である事をバラしたりすると…後々に厄介な事になることは目に見えている。

 まぁ、でも…?

 見た目は私と同年代か少し下位だし、聖女である事をバラし……いえ、此処は用心のために聖女である事は伏せて、神殿の……聖職者とでも言っておきましょう。

 「私は神殿に所属しているプリーストの………」

 そういえば、名前はどうしよう?

 聖女である事をバラすのもそうだけど、本名を話してしまうのも危険な気がする。

 あ、「何者だ!」…としか聞かれてないんだし、敢えて名前を教える必要も無いか。

 とりあえず今は、神殿のプリーストという事で納得して貰おう。

 「私は神殿に所属しているプリーストで、この大陸には瘴気の話を聞いて来たの。」

 「本当か?それにしては、神殿の関係者という割には、1人しか居ないみたいだが…」

 この少年は、神殿の事に詳しいわね?

 神殿のプリーストには、必ず護衛が存在して、常に誰かしらと行動をする…というのを知っているみたいだけど?

 「神殿のプリースト…そういえば名前は?」

 やっぱり、それを聞いて来るか。

 適当に、ディーナの名前でも答えておくかなぁ?

 「…と、名前を聞く前に俺の名を名乗っていなかったな。俺はディーノと言って、神殿で騎士として働いているディーナという姉の弟だ。」

 「え…ディーナの弟なの⁉︎」

 私は思わず、驚いて聞いてしまった。

 各支部の神殿には、多くの神官や騎士が在中している。

 同じ神殿の関係者とかでは無い限り、その特定の人物を知るなんて事はまず無い。

 私はこの少年…ディーノの言葉に出鼻を挫かれて、うっかり話してしまっていた。

 「なんだ?俺の姉貴と知り合いなのか…?そういえば、その姿……姉貴の手紙に書かれていた聖女に特徴が似ているな?」

 ディーナは私の事を他人に漏らしていたのね?

 あ、でも…弟なら他人という訳では無いのか。

 「ディーナとは、私が見習い(ウソ)の頃に少しの間だけ一緒に働いた事があるだけよ。それにしても、聖女に特徴が似ているって、一体どういう事?」

 「姉貴の手紙に書いてあったんだよ。お前の様な身体的特徴の女の子を護衛しているってな…」

 「それはどういう…?」

 「身長が低くて、童顔で幼児体型で年齢相応には見えないって…」

 確かに私の身体的特徴はその通りだけど、よくもまぁ…私の事を此処まで貶してくれるわね!

 なら…?

 「ディーナは今では聖女様を守護する程に出世したのね。普段から男にだらしなくて、神殿内でも遊んでいる姿をよく目撃していたけど…」

 「俺の姉貴は、そんな事はしていない!」

 「そりゃあ、実の弟君には本当の事は書けないよね。でも、それが…私の知るディーナの特徴よ。」

 私は正直に言われた特徴に対して、腹が立って嘘を弟に吹き込んだ。

 この位の復讐は別に構わないよね?

 「お前が嘘を付いている…という可能性もあるから、明日まで待っていろ!」

 「明日…明日に何かあるの?」

 「姉貴の手紙で、近日中にこっちに戻って来ると書いてあった。消印の感じからすると…恐らく明日か、早ければ今晩にはこっちに戻って来るからな。」

 「えぇ!?」

 ディーナはゾイディック大陸に向かったんじゃ無いの⁉︎

 なんで…こっちに戻って来るのよ‼︎

 これは…鉢合わせする前に、この場から立ち去ったほうが良いわね。

 でも、私の転移魔法では他大陸に行ける程の力は無いし…この大陸だと、何処に向かえば良いのかなぁ?
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