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自由なスローライフの章

第六十三話

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 私は家の結界に体当たりをしているボアを仕留めた。

 ボアは食糧を求めて森を彷徨っている時に、私の家の庭にある実りに実った野菜を狙っていたみたいだった。

 私は家の中にいたのだけど、流石に結界に体当たりをかましている音に気付かないわけはないので…仕留めてから血抜きをして氷魔法で冷やして体温を下げておいた。

 そして収納袋に納めてからカシリスの街に来た。

 今回は前回のポーションは持って来ている。

 薬品屋に卸すためと食堂にボアを卸すためだ。

 まず薬品屋に行くと、この間のいい加減な店員はおらずに店主がいた。

 私はポーションを出したのだけど、中級ポーションは全て売れたけど上級ポーションを買い取る程の金は無いという話だった。

 これだけの品質なら、寧ろ商業都市グランリーザに持ち込んだ方が高値で売れるという話だった。

 次に私は食堂にボアを卸しに行った。

 「前回に引き続き…また見事なボアだな!今回も報酬とは別に1品サービスするが…」

 私は学びと悟りを得ていた。

 食堂で食べようとすれば、また誰かに邪魔されるかもしれない。

 なので弁当という形で持ち帰りを選び、誰にも邪魔されない家の中で味わう事をする為に出来上がるまで食堂の席に座って待っていた。

 するとそこに、前回冒険者ギルドで私が食べようとして奪って行った少年の冒険者が私の前に来て行った。

 「おい、ガキ!お前の所為で俺はギルマスに殴られただけじゃなくてランクも降格されたんだぞ‼︎」

 「それは自業自得じゃないの?人の物を横取りした挙句に罵声を浴びせたのだから…」

 私の言葉に少年の冒険者は押し黙った。

 「話はそれだけならもういい?」

 「まだだ、俺の気が治らないんだよ‼︎」

 少年の冒険者の事情なんてどうでも良い。

 少年は憤っていてまだ何かを話したそうにしていたが、私にはどうでも良い話だった。

 そうしていると店主がボアステーキを箱に詰めた物を持って来てくれた。

 私は両手を出して受け取ろうとすると、少年が手を伸ばして奪い取ってから床に叩き付けて…ぐちゃぐちゃに踏み潰した。

 「俺の話はまだ終わってないぞ‼︎」

 私は床にぐちゃぐちゃに踏み潰されたボアステーキに涙を流していた。

 今回は今までと違って良い策だと思ったのに、それすらも阻止された事に…

 私はあまりにも悲しくなって食堂を飛び出した。

 追加で注文をすればよかったと思ったけど、そんな気分ではなかった。

 「おい、何処へ行くんだよ!俺の話はまだ…」

 少年の冒険者は私を追いかけて来て言った。

 元はと言えば…コイツが元凶だ。

 私はギャーギャーと騒いでいる少年の冒険者に、死なない程度の最大火力の雷魔法を放った。

 少年の冒険者は体が青く発光するくらいに光った後に黒焦げになって口から煙を吐いていた。

 「次に私の前に現れたら…消すわよ‼︎」

 少年の冒険者は首をカクンと動かすとそのまま前のめりになって倒れた。

 魔法を使わないようにしようと思っていたんだけど、怒ると歯止めが効かなくなるなぁ…?

 私はそのまま家に向かって行った。

 ~~~~~一方その頃~~~~~

 アルファ達はバシュハウアー王国の大神殿に到着した。

 そして神殿内にリアラの遺体が運び込まれた。

 司祭や神官達は嘆き、司教は遺体を…?

 「この遺体はおかしい…ここまで運ぶまでに何日掛かりましたか?」

 「およそ2ヶ月ですが…」

 「氷だけでここまで腐敗もせずに持って来れるはずはないのですが…?」

 司教はリアラの遺体にディスペルを施した。

 すると…遺体は錬金術の魔導錬成で造られた物だと判明した。

 「この遺体は精巧に造られた偽物です!リアラは…生きていますよ‼︎」

 その言葉に安堵の息を吐いた4人だったが、同時に怒りも噴き出していた。

 「リアラを捜しなさい!神殿騎士達も増員しますので。」

 アルファ達4人以外に12人の神殿騎士が追加された。

 計16人の神殿騎士達がリアラの元に向かって行った。

 果たして…リアラは無事に見つからずにいられるのだろうか?
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