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バックれ計画実行の章

第五十七話

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 「助けて~捕まったら売られる~~~!」

 私は人が行き交う往来で、追ってのオメガから逃れる為に敢えてそう叫んで走っていた。

 バシュハウアー王国では奴隷の売買は禁止されているが、他の場所では違う。

 そしてこの往来は様々な冒険者や商人達が行き交っていた。

 すると私は冒険者らしき男に声を掛けられた。

 「見たところ嬢ちゃんは神殿の神官に見えるし、後ろの方にいるのは神殿騎士じゃ無いのか?」

 「いえ、あの人は神殿騎士の鎧を纏っているけど奴隷商人の者です。私に神官の衣装を着させてから依頼者に売り飛ばす迄の移動に際に、何を叫ぼうが神殿関係者なら街の者達には手が出せないとか言われて…」

 私の言葉に冒険者達はオメガの元に向かって取り囲んだ。

 オメガは手を振りながら必死に否定するアピールをしているが、声を出して否定しない限り冒険者達は納得しなかった。

 そしてオメガは辺りをキョロキョロと見渡していた。

 多分探しているのは他の3人だと思うけど、3人が向かった店はこの付近には無い。

 騒ぎを聞きつけて助けに来る可能性はあるかもしれないけど、そうなるまでには時間が掛かるはず?

 「今の内だ嬢ちゃん、奴を押さえておくからさっさと逃げな!」

 「ありがとう、冒険者さん!」

 私はお礼を言ってから走り出した。

 後ろを振り返ると、大勢の冒険者に取り囲まれているオメガは必死に抵抗している。

 オメガの強さを考えると…冒険者達は大した時間稼ぎにならないだろう。

 私は取り敢えず人が多く出入りしている店に入ってやり過ごそうとした。

 すると目の前に食堂らしきお店があったので、中に入ってから一番奥の余り目立たなそうな場所に座った。

 そして以前、商業都市グランリーザの雑貨屋からパクったフード付きのローブを収納魔法から取り出して羽織った。

 こんな大勢の者達の前で全裸になる気はないので法衣を脱ぐわけには行かないから、せめて店の中を覗いてもすぐにはバレない様に羽織って身を隠した。

 「此処にいればしばらくは身を隠せるし…何より入り口付近は体の大きい人達が多いから私は目立たない。」

 だけど、この店は食堂で席に着けばお客様という事になる為に何も注文しないわけには行かなかった。

 私はメニューを見ながら入り口を警戒していると、メニューの一番上の欄に特製ブルステーキという品書きを見つけた。

 3人は此処にはいないし、オメガは取り押さえられている。

 そして何も注文しないわけには行かないので、私は仕方なく…本当に仕方なく、特製ブルステーキを注文した。

 食べれるのが先か、見つかって怒られるのが先かは分からない。

 でもこのチャンスを逃さすべく、私はメニューで顔を隠しながら入り口を見張っていた。

 すると…美味しそうな匂いが近寄って来た。

 目の前にはジュウジュウと鉄板の上で焼けている肉がある。

 私は入り口を警戒する筈が目の前にあるステーキに目が釘付けになっていた。

 私はナイフとフォークで肉を切ってから口に入れるという瞬間に怒った様な声が聞こえて来た。

 「リアラ…何をしているの!」

 私は顔を上げると、そこには…怒った表情をした4人が目の前に立っていた。

 オメガだけだと思っていたら、騒ぎを聞き付けたのか4人が合流していたのだった。

 普通の人なら4人を目の前にして何も行動を起こせずに動けなくなる…のだけど、私には関係なしにフォークに刺さっている肉を口に入れて咀嚼し始めた。

 口の中に広がる柔らかくて噛みごたえのある肉、溢れ出す肉汁に肉の甘み…私はその肉を今にも飲み込もうとした瞬間に、ディーナが私の口の中に手を突っ込んで肉を奪って行った。

 「リアラ…貴女は本当に何をしているの⁉︎」

 私は逃げようとした…けど、座っている席は一番奥で逃げ道がない場所。

 私の両脇にはシーダとディーナがいて、右手をシーダが左手をディーナが握っていて、テーブルの両脇にはアルファとオメガがいる。

 どう足掻いても逃げることができない私は…前屈みになってステーキに喰らい付いた。

 口の中に入れた時の味を感じても飲み込むまでは…と思っての行動だったが、口に咥えた肉もシーダに奪われてから、私はシーダとディーナに連れられて店から出て行った。

 そして宿屋に連れて行かれた私は、シーダとディーナにものすごい剣幕で怒鳴られたのだった。

 だけど私にはもう1つ秘策がある!

 後は通用するかだけど…?
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