聖女になんかなりたくない! 聖女認定される前に…私はバックれたいと思います。

アノマロカリス

文字の大きさ
上 下
40 / 88
バックれ計画の章

第三十九話

しおりを挟む
 商業都市グランリーザ迄の道のりは、真面に進む事が出来ても20日前後掛かるという。

 ならばその間に私の計画を実行する為に色々と実行してみた。

 私の計画…それは神殿騎士団の監視を逃れてバックレる事だ。

 男性神殿騎士のアルファとオメガは何とかやり過ごす事は出来るだろうけど、女性神殿騎士のシーダとディーナは結構手強い。

 お花摘み大作戦…これをやると男性神殿騎士は流石に遠慮するが、女性神殿騎士だと平気で付いて来る。

 用を足す際には少し離れた場所で待機をしているが、私を挟み込む様に警備をしている為に逃がさない様にしていた。

 バックレる計画を知っている訳ではないと思うので、逃がさない様にというよりも何かあった時にすぐに対応できる為の位置なのだろうけど、これを掻い潜ってバックレるのは難しいだろうなぁ…。

 深夜警備抜け出し作戦…見張りは交代制で、男女2名が番をして残り2人が休むという形を取っていた。

 しかも私を挟み込む様に寝ている上に、少しでも起き上がろうと動いただけで目を覚まして声を掛けて来る。

 勘が鋭いのか、寝たふりをしているのかは分からないけど…此処から逃げ出すのは容易ではない。

 私は両脇で寝ている2人に対して、癒しの歌と称した睡眠魔法を放ってみたが…眠りの耐性が強いのか、私のレベルが低いのかで眠りが深くなる事は無かった。

 精鋭とも呼べる神殿騎士には相当強い耐性があるのか…この方法もあまり有効には思えなかった。

 お食事毒物混入作戦…毒物と言っても本当の毒を混入する訳ではない。

 神殿から内緒で持ち込んだ眠り草や麻痺草を食事の中に混入するという物だった。

 私には聖女にちなんだ加護がある為に、そういった物が一切効かなかったのだが…?

 神殿騎士の4人にも睡眠魔法同様に効果が薄かった。

 「う~ん…手強いなぁ。」

 魔物襲撃時にバックレ大作戦…と思ったんだけどね、さすがに精鋭と呼ばれる神殿騎士なので強さは異常な程に別格の強さだった。

 更に言えば、女性騎士の2人が戦闘に加わる事なく男性騎士だけで蹴散らしていた。

 ここ迄になると…スタンピードやドラゴンでも襲って来ない限り私からの注意を逸らす事はまず不可能だろう。

 そして私は神殿で戦いの方法を学んだけど、私が戦闘に加わるという事は一切なかった。

 バックレる為には少しでもレベルを上げておきたいんだけどなぁ…?

 魔物を倒して経験値を入手してレベルを上げる…この世界での強くなる秘訣はそれしかなかった。

 私に戦わせたくないのは、下手に戦闘に加わって私が怪我をするのが恐れているのか…と考えたんだけど、別な意味で私が強くなる事を望まないのかと思えて来る。

 「やっぱりあのお花畑王子がゲロったのかなぁ?」

 何をしてもバックレ計画の先手を打たれている様にしか思えなかった。

 商業都市グランリーザに向かう途中で私達は名も無き村に立ち寄った。

 その村も若干だけど穢れに侵されていたので、私は光魔法で浄化を行った。

 そして村人達の怪我を癒している時に、何をやっても癒す事が出来なかった病魔に蝕ばまれた少女がいた。

 私は聖女になる気は無かったけど、その少女を見た時に神殿に来る前の様な私の姿とダブった。

 この少女だけは救いたい…そう思って回復魔法を施したが結局治る事も無くてその少女の死を看取った。

 暗く沈んだ空気の中ならバックレるのも容易いかもしれない…という気持ちは一切起こらなかった。

 私達は少女を救う事は出来なかったけど、村人達には感謝をされながら村を去った。

 そして村から少し離れた場所で馬車を停止させて、私は神殿騎士達に話した。

 「今回の様に助けられる命を救えませんでした。これを打開する為に私も戦いに参加したいと思います!」

 「ですが…戦いの経験がないリアラ様には荷が重いと思います。」

 「それは分かっています、ですが先程…女神様から啓示を受け(大ウソ)ました。より大きな力を得たいと願うのであれば、戦いに参加をしてレベルを上げなさいと。それによって私の癒しの力は強大になるでしょうと…」

 レベルが上がれば私の使える能力が向上するのは間違いない。

 レベルを上げる為に私は女神様からの啓示という事を神殿騎士達に話した。

 神殿騎士達が神の声が聞こえるか迄は謎だけど、聖女である私の言葉を無視する事はしない筈?

 馬車が再び走り出して商業都市グランリーザに向かう途中で何度か魔物の襲撃に遭ったが、そこでは私も戦闘に参加して魔物を倒して行った。

 初めの戦闘では上手く行かない事があり、何度かミスをしたが騎士達は優しくアドバイスをしてくれた。

 そして私も謙虚に教えを乞いながら成長をして行った。

 当分の間は真剣に事に及ぶ事にした。

 ある時は書物を開いて勉強をし、またある時は馬車での移動中に祈りを捧げていた。

 それは聖女の使命に目覚めたから…という事は全く無くて、神殿騎士達に信用をさせる為だった。

 全てはバックレる為の計画だ。

 どれだけ神殿騎士達の信頼を得られるかによってバックレる確率も高くなるだろう。

 そうしている内に私達は商業都市グランリーザに辿り着いた。

 「ある程度は信用を得たとは思うけど、まだ足りないよね?」

 私は次に信用させる行動に移ろうとしていた。

 それは…かなり姑息で信頼度は上がるけど、裏切った場合には非常に恐ろしい報復が待っている様な行動だった。

 さて、それはどんな行動なのだろうか?
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

歪んだ恋にさようなら

木蓮
恋愛
双子の姉妹のアリアとセレンと婚約者たちは仲の良い友人だった。しかし自分が信じる”恋人への愛”を叶えるために好き勝手に振るまうセレンにアリアは心がすり減っていく。そして、セレンがアリアの大切な物を奪っていった時、アリアはセレンが信じる愛を奪うことにした。 小説家になろう様にも投稿しています。

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

美人な姉と『じゃない方』の私

LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。 そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。 みんな姉を好きになる… どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…? 私なんか、姉には遠く及ばない…

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました

お好み焼き
恋愛
私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。その国王陛下が「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」と私に圧をかけてきました。

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

処理中です...