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バックれ計画の章
第三十六話
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「ではカイル殿下、これからカイル殿下の設定をお話致しますが…旅の最中に私と一緒にバックレてから冒険者ギルドで依頼を達成して自活する道を進むという事で良いのですね?」
「初めの話では一緒に住むという話ではなかったのか?」
「最初はそれでも良いと考えていましたが、先程の煮え切らない態度を見ていると…一緒に暮らした途端に私に頼り切った生活をして私が苦労して行くのは明白なように思えてしまって。」
「多少頼る事はするかもしれないが…」
「ではお聞きしますが、王子は今迄にメイドや執事に頼らずに自分でご用意をされた経験はありますか?言っておきますが冒険者になって生計を立てるという事は、依頼を達成して金を稼いで全て自分でこなさなければなりません。着替えも食事も自分自身で用意をし、武具の手入れや宿に泊まる際も自分1人でやらなければなりませんが?」
「確かに着替えや食事は執事やメイドが用意していたが、それ位の覚悟は自負している。」
「食事は王宮で出る様なバランスの取れた食事なんかまずありませんよ。高ランク冒険者になるとかなら食事や着る物に関しては特に問題はありませんが…下積み時代の低ランク冒険者の場合は、稼ぎが悪ければ食事はパンのみで他に料理なんかはありませんし、宿屋に泊まる事すら出来なくなります。」
「それは…幾つか私物を城から持ちだそうと思っている。」
「あっはっは~~~カイル殿下は馬鹿ですか?王子としての身分ならそれを換金するのは問題ないでしょうけど、低ランク冒険者が大金になりそうな宝石や資金を持っていたらあっという間に奪われますよ。外では人は信用してはいけない、周りは全て敵だと思わない限り生き抜くのはまず不可能です。」
「全てがそんな人間ばかりではないだろう?」
「そうですね、全ての人がそうではないとは思いますが…城の外や他国の街ではそれが普通です。」
「我が国民と接する機会は何度かあったが、そんなあくどい事をする様な感じではなかったが?」
駄目だこの坊ちゃんは…何処まで頭の中がお花畑なのでしょう。
「私が街で買い物をする為に歩いていたら、財布をスラれた事がありました。神殿に帰ったら財布は戻って来ましたが…」
「ほら、拾って届けてくれる親切な者はいるだろう。」
「ですが中身は入っていませんでした。私の行った街の場所は、裏通りや危険区域ではなくて城下の往来での出来事です。人だって必ず良い人ばかりという訳ではないんですよ。」
この王子は根本的に考えが甘いんだろうなぁ。
一緒に旅をする云々の前に、現実を知って貰った方が良いかもしれないわね…。
「とりあえずですね、殿下は1人で護衛を付けずに街に行ってみて下さい。服装は庶民の服で剣も兵士が使う様な剣を所持して…そうですね、冒険者ギルドで偽名で登録をして何事もなく城に戻る事が出来たら成功という事で。もちろん、王子という身分を隠して行動するんですよ。」
「その程度なら問題は無い。」
「それを無事に完遂出来たら、国王陛下に設定の話を持ちだして旅の同行を許可するという方法を取りましょう。殿下が私が旅に出る前にもう一度会いたいと言えば、私は神殿から王城に呼ばれる事になるでしょうし。」
「わかった、問題なく事が運ぶ事を教えてやるよ。」
バシュハウダー王国では奴隷制度は禁止されているので売られる事はまずない。
それに王子が1人で街に行くともなれば監視している者が居るから大きな問題には発展はしないだろう。
だけど王子には一度世間の恐さを思い知って貰った方が良いかもね。
~~~~~その後~~~~~
翌日カイル殿下は変装をして城下街に行って冒険者ギルドに向かった。
だが冒険者ギルドに向かう前の道で財布をスられ、冒険者ギルドの登録に必要な銀貨を支払えずに後にして、帰りの道でガラの悪い冒険者に見付かって身ぐるみを剥がされてから暴力を奮われていた所を監視していた者が止めに入ってガラの悪い冒険者達は騎士団に連行されて行ったという。
私はというと、カイル殿下が子供でも出来るようなお使いを果たせなかった事により…王城から神殿に使いも者が来なかったので旅に出る準備が翌日に迫っていた。
「やっぱり無理だったかぁ~。初めは頼りになりそうな…なんて思っていたけど、即決が出来ない上に優柔不断で頭の中がお花畑だと、一緒に暮らしたところで私に頼ってヒモみたいな生活を送るのが目に見えていたしね。」
一緒に旅をしなくて良かったと思った。
私は旅支度を整えると同時に、いつバックれるかを考えていた。
だけど私の考えは初っ端で挫かれた。
最初に旅の目的地がテリガン侯爵領という話だったからだ。
「そういえば…あれから領内はどうなったんだろう?バックれるのは領内を見てからでも良いかな?」
リアラはテリガン侯爵領から出て行った後の話を一切聞いていなかったので、現在どんな状況になっているのか全く分からなかった。
まさか…あんな事になっているなんて夢にも思っていなかった。
「初めの話では一緒に住むという話ではなかったのか?」
「最初はそれでも良いと考えていましたが、先程の煮え切らない態度を見ていると…一緒に暮らした途端に私に頼り切った生活をして私が苦労して行くのは明白なように思えてしまって。」
「多少頼る事はするかもしれないが…」
「ではお聞きしますが、王子は今迄にメイドや執事に頼らずに自分でご用意をされた経験はありますか?言っておきますが冒険者になって生計を立てるという事は、依頼を達成して金を稼いで全て自分でこなさなければなりません。着替えも食事も自分自身で用意をし、武具の手入れや宿に泊まる際も自分1人でやらなければなりませんが?」
「確かに着替えや食事は執事やメイドが用意していたが、それ位の覚悟は自負している。」
「食事は王宮で出る様なバランスの取れた食事なんかまずありませんよ。高ランク冒険者になるとかなら食事や着る物に関しては特に問題はありませんが…下積み時代の低ランク冒険者の場合は、稼ぎが悪ければ食事はパンのみで他に料理なんかはありませんし、宿屋に泊まる事すら出来なくなります。」
「それは…幾つか私物を城から持ちだそうと思っている。」
「あっはっは~~~カイル殿下は馬鹿ですか?王子としての身分ならそれを換金するのは問題ないでしょうけど、低ランク冒険者が大金になりそうな宝石や資金を持っていたらあっという間に奪われますよ。外では人は信用してはいけない、周りは全て敵だと思わない限り生き抜くのはまず不可能です。」
「全てがそんな人間ばかりではないだろう?」
「そうですね、全ての人がそうではないとは思いますが…城の外や他国の街ではそれが普通です。」
「我が国民と接する機会は何度かあったが、そんなあくどい事をする様な感じではなかったが?」
駄目だこの坊ちゃんは…何処まで頭の中がお花畑なのでしょう。
「私が街で買い物をする為に歩いていたら、財布をスラれた事がありました。神殿に帰ったら財布は戻って来ましたが…」
「ほら、拾って届けてくれる親切な者はいるだろう。」
「ですが中身は入っていませんでした。私の行った街の場所は、裏通りや危険区域ではなくて城下の往来での出来事です。人だって必ず良い人ばかりという訳ではないんですよ。」
この王子は根本的に考えが甘いんだろうなぁ。
一緒に旅をする云々の前に、現実を知って貰った方が良いかもしれないわね…。
「とりあえずですね、殿下は1人で護衛を付けずに街に行ってみて下さい。服装は庶民の服で剣も兵士が使う様な剣を所持して…そうですね、冒険者ギルドで偽名で登録をして何事もなく城に戻る事が出来たら成功という事で。もちろん、王子という身分を隠して行動するんですよ。」
「その程度なら問題は無い。」
「それを無事に完遂出来たら、国王陛下に設定の話を持ちだして旅の同行を許可するという方法を取りましょう。殿下が私が旅に出る前にもう一度会いたいと言えば、私は神殿から王城に呼ばれる事になるでしょうし。」
「わかった、問題なく事が運ぶ事を教えてやるよ。」
バシュハウダー王国では奴隷制度は禁止されているので売られる事はまずない。
それに王子が1人で街に行くともなれば監視している者が居るから大きな問題には発展はしないだろう。
だけど王子には一度世間の恐さを思い知って貰った方が良いかもね。
~~~~~その後~~~~~
翌日カイル殿下は変装をして城下街に行って冒険者ギルドに向かった。
だが冒険者ギルドに向かう前の道で財布をスられ、冒険者ギルドの登録に必要な銀貨を支払えずに後にして、帰りの道でガラの悪い冒険者に見付かって身ぐるみを剥がされてから暴力を奮われていた所を監視していた者が止めに入ってガラの悪い冒険者達は騎士団に連行されて行ったという。
私はというと、カイル殿下が子供でも出来るようなお使いを果たせなかった事により…王城から神殿に使いも者が来なかったので旅に出る準備が翌日に迫っていた。
「やっぱり無理だったかぁ~。初めは頼りになりそうな…なんて思っていたけど、即決が出来ない上に優柔不断で頭の中がお花畑だと、一緒に暮らしたところで私に頼ってヒモみたいな生活を送るのが目に見えていたしね。」
一緒に旅をしなくて良かったと思った。
私は旅支度を整えると同時に、いつバックれるかを考えていた。
だけど私の考えは初っ端で挫かれた。
最初に旅の目的地がテリガン侯爵領という話だったからだ。
「そういえば…あれから領内はどうなったんだろう?バックれるのは領内を見てからでも良いかな?」
リアラはテリガン侯爵領から出て行った後の話を一切聞いていなかったので、現在どんな状況になっているのか全く分からなかった。
まさか…あんな事になっているなんて夢にも思っていなかった。
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