聖女になんかなりたくない! 聖女認定される前に…私はバックれたいと思います。

アノマロカリス

文字の大きさ
上 下
17 / 88
聖女の修行の章

第十六話

しおりを挟む
 大神殿のリアラ担当の司祭は悩んでいた。

 慈愛の精神を学ばさせる為に子牛をリアラに預けましたが…?

 ちゃんと世話していますし可愛がっているようには見えます。

 これで慈愛の精神を培ってくれれば良いのですが…?

 「ですがリアラが子牛の名前を呼ぶ度に不安な気持ちになるのは何故でしょうねぇ…?」

 司祭はリアラが子牛に名付けた「デリシャス」の意味を理解していなかった。

 この世界では存在しない単語だからである。

 そしてリアラも存在しない単語を知らない筈なのに、何故その名を名付けられたのか?

 それはリアラが異世界から転生した存在だから…という訳ではなく、ただ単に「デリシャス」という言葉がふと頭の中に過ったから付けた名前だった。

 なので意味を知っているという訳ではない。

 本当に偶然というのは恐ろしい…というか不思議な物である。

 「それに、あのデリシャスという子牛ですが…リアラが畑の作物から餌として野菜を食べさせているみたいですが、何なんですかあの野菜の大きさは⁉」

 子牛の世話をする様になってから数週間、他の仕事の傍らで子牛を育てているのですが…明らかにあの子牛の兄妹達の中で一番大きく育っているんですよね。

 愛情…なのでしょうか?

 傍から見ていたら愛を持って接している様には見えますね。

 慈愛の精神により…畑の作物にも影響が出ていて、リアラがいるだけでこの土地は豊饒の恵みにより作物の育ちも良いのですが、リアラの畑の作物だけ異常な成長を遂げているんですよね。

 ニンジンがダイコンの様に太くて大きく、キャベツは異常に成長したカボチャの様に大きく、ダイコンに至っては成人男性の身長よりも太くて大きく成長しているんです。

 本来なら牧草でも十分育つ牛が急成長する筈ですよね。

 それにただ食べさせるだけではなく、ちゃんと運動もさせていますし…デリシャスから排出されたフンも肥料と混ぜると他の畑では異常な成長を遂げていますし。

 「少し…いえ、かなり不安は残りますが…一応は慈愛の精神が身に付いていると思って良いのでしょうかねぇ?」

 司祭はしばらくすると牧場から離れて行った。

 そしてリアラとデリシャスはというと?

 「早く大きくなってミルクを一杯出せる様になってね。そして…じゅるり!」

 リアラには本当に慈愛の精神が身に付いているのだろうか?
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

[完結]裏切りの学園 〜親友・恋人・教師に葬られた学園マドンナの復讐

青空一夏
恋愛
 高校時代、完璧な優等生であった七瀬凛(ななせ りん)は、親友・恋人・教師による壮絶な裏切りにより、人生を徹底的に破壊された。  彼女の家族は死に追いやられ、彼女自身も冤罪を着せられた挙げ句、刑務所に送られる。 「何もかも失った……」そう思った彼女だったが、獄中である人物の助けを受け、地獄から這い上がる。  数年後、凛は名前も身分も変え、復讐のために社会に舞い戻るのだが…… ※全6話ぐらい。字数は一話あたり4000文字から5000文字です。

かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました

お好み焼き
恋愛
私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。その国王陛下が「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」と私に圧をかけてきました。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

処理中です...