聖女になんかなりたくない! 聖女認定される前に…私はバックれたいと思います。

アノマロカリス

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聖女の修行の章

第十三話

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 リアラは街にある食堂の前で涙を流しながら立ち尽くしていた。

 それは何故か…?

 野菜を育てて司祭から得た報酬では肉料理が食べられないからだった。

 司祭から貰った金額は銅貨10枚。

 銅貨1枚は日本円に換算すると100円に相当します。

 この世界では1番安いパンは銅貨1枚、肉は銅貨10枚で購入出来る。

 それ程までに肉は高価な食材だった。

 それはこの王都でも例外では無かった。

 そしてレストランではなく食堂を選んだのは、庶民の懐に優しい良心的な価格という事で来たのだけれど…?

 廃鶏のステーキ…卵を産み尽くして疲弊した鶏のステーキさえ銅貨15枚だった。

 持っている金額では全然足りなかった。

 しかもこの食堂は価格は良心的なので値切りは無理でツケも無い。

 リアラの期待は見事に打ち砕かれたのだった。

 「後は銅貨5枚かぁ…」

 ぶっちゃけ…銅貨5枚を稼ぐ方法は幾つかある。

 怪我人を見つけて回復魔法を掛けて報酬で貰えば良い…のだけど、問題はそれをやると騎士団に捕まる可能性がある。

 回復魔法は免許が必要だった。

 それは神官に限らずに冒険者のヒーラーも例外では無い。

 回復術士やヒーラーは貴重な存在で、冒険者として活動する際にも回復術免許が必要で神殿で発行して貰うという規則がある。

 何故そうなのかはよく分からない…というのはリアラの怠慢から来るものだった。

 リアラも聞いてはいる筈なのだが、自分には関係無いと思って素通りしていたからだ。

 その免許無しで回復魔法を使うだけなら問題は特に無いが、報酬を得たり料金を得ようとすると捕縛される対象になるという厄介な物だった。

 リアラは神殿内であればお布施を貰うという行為は問題は無いのだが、神殿の外でそれを行うと例え神官や聖女であろうとも捕まるのであった。

 野良ヒーラーもいない事はない…が、大体通報されて捕まる者が後を絶たなかった。

 「お肉を食べたい!…けど、まだ捕まりたくない!」

 神殿での聖女の修行というのは、神殿の外で生活するのに適した資金調達の為にあるのではないかと思える内容が主だった。

 まぁ…元々伝承の聖女様は、魔王を討伐する為に神殿内での生活より外で暮らしていた方が長かったという話だからね。

 聖女の修行はその名残ではないかと思えてくる。

 それ以外にも他にまだ役に立てる事を学べるかも知れない…と考えると、まだ捕まる訳にはいかないのだった。

 リアラは涙を飲んでその場を立ち去った。

 次こそは…と誓いを立てながら!
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