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聖女の修行の章

第十一話

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 聖女の修行で私は難関にぶち当たった事があった。

 慈愛の精神により回復魔法の向上…というのが理解に苦しんだ。

 元々侯爵家で私は両親から愛を受けた事は一度もない。

 なので慈愛の意味が全く分からなかった。

 更に他人を慈しむという行為で魔法の威力を上がる…と聞かされたけど、それの理解も出来なかった。

 侯爵家では家族だけでは無くて使用人からも蔑まされて暴力を振るわれて来たので、他人を慈しむという余裕が無かった。

 それに頭を悩ました司祭は、私に慈愛の精神を学んで貰うためにある卵を渡して来たのだった。

 「この卵を愛し、この卵に慈しむ心を持ちなさい。さすればリアラの心に反応して卵が孵化するであろう。」

 卵って…普通中身を食べる為にあるんじゃ無かったっけ?

 それとも司祭様は、卵を孵化させてから成長させて私に肉を食べさせてくれる為に育てろと言っているのかな?

 コレで神殿内でも肉を食べる事が出来る!

 何の卵かは知らないけど、孵化した姿を想像しながら口から垂れる涎を拭いながらひたすら待った。

 だけど卵は幾ら待っても孵化しなかった。

 「割って食べてもただの卵だろうし、どうせなら孵化させてから育てて食べたいなぁ…」

 そんな事を語り掛けていた所為なのか、卵が孵化する事は無かった。

 他にも…「孵化して早く姿を見せて!そして私の栄養になる為に‼︎」とか、「ソースを掛けて…いえ、煮込み料理も良いかな?」なんて卵に話し掛けていたから、孵化するのを拒否しているのだろうか?

 中々孵化しない卵に私は司祭に何の卵なのかを聞いてみた。

 「司祭様、この卵って何の卵なのですか?」

 「これは精霊の卵です。孵化すると精霊が生まれますよ!」

 司祭様の話を聞いて私は思った。

 孵化して成長しても食べられないじゃん!

 せっかく肉が食べられるかと思ったのに!

 私にテンションは一気にダダ下がりした。

 そして卵から精霊が孵化する事はなく、司祭様に回収されて行ったのだった。

 慈愛の精神を学ばせる為に、司祭は次に何を用意してくるのだろうか?
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