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異世界転移の章
第十三話 どこまで似ているんだ?
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俺はまた自警団の詰め所に呼ばれて来ていた。
ここ迄のパターンを考えると、今度はあの夫婦の子供が来たのだろう。
そして案の定というべきか…あの夫婦の子供は、双子の娘で俺の妹達にそっくりな顔をしていた。
…っていうか、俺はいないんだな?
まぁどうせコイツ等も…地球に居た頃の妹達と似た様な性格なんだろうな。
次はどんな手で来るのかねぇ?
「お前がおとーさんとおかーさんを殺したんだよ‼」
「馬鹿らしい…もう帰って良いか?」
「そんなこと言って私らから逃げようとしているんでしょ‼」
「せや、逃がさへんでぇ‼」
地球にいる妹達は、姉の方は言葉が乱暴で妹の方は言葉遣いは丁寧だが、厭味ったらしい話し方をするが。
こいつらは標準語と地方の方便で話すみたいだな?
俺は2人を確かに殺した…が、不思議と罪悪感は無かった。
地球にいるクソ両親と似ているというのもあったが、この世界のアイツ等も…恐らく碌な事をしていなかっただろうだから他に被害が出る前に始末しただけだった。
それによって…まさか娘も来るとは思わなかった。
「あぁ、鬱陶しい! んで、俺に何をして欲しいんだよ?」
「これからの私達の生活を保障する為に、お前の全財産で手を打つよ!」
「せや、おとんもおかんもいないから…収入が無いんよ。 なら、お前が保証するのは当たり前やろ?」
「さっきから何度も話したが、お前等の両親が死んだのは俺は全く関係ないぞ?」
父親は腕に抱えた金塊から零れ落ちた金塊を追って崖から飛び降りた。
母親は崖が脆くなっていて地割れで落ちて行ったと説明していた。
両方とも痛ましい事故で…と話しているのだが、娘の方はそんな事は関係なしで話してきた。
…というか、両親が死んで悲しんでいるという事はないのか?
声からは悲しいという感情が全く聞こえないんだが?
俺は腰に付けていた財布の中身をテーブルに出した。
銅貨で9枚しかなかった。
「これが全財産だ! では、俺はこれで…」
「嘘つくんやない! それだけしかない何て…明らかに変や‼」
「そっちのカバンに入っているんじゃないの? それも見せなさい‼」
俺はカバンを開いて中を見せた。
俺が手を入れればマジックバックになるが、他の者が触れるとただのカバンで…中には短剣や薬草しか入っていなかった。
「ほんまに金が入ってせぇへん!」
「だから言ったろ、銅貨9枚が全財産だと…全財産を出したのだから、俺は開放されるんだよな?」
俺は隊長の方を向くと、隊長は頷いて見せた。
俺はそれで解放された…が、双子の娘達は納得をしていない顔をしていた。
俺は詰め所を出てから外に向かって歩いて行くと…双子の娘は気付かないとでも思っているのかという位のバレバレな尾行をしていた。
まぁ、普通に考えて…冒険者の所持金が銅貨9枚な筈がない!
双子の娘は他の場所に隠していると踏んだ訳だ。
「これは…また崖から突き落とすか!」
毎回毎回…殺害方法がワンパターンになっている気がする。
だが、下手に死体が出ないやり方を考えると…雲海に落とした方が手っ取り早い。
さて、今回はどうやって突き落とそうかね?
地球の妹達と性格が一緒なら、あの方法が効果的だろう。
俺はあの両親の子供達が来た用に、予め宝箱を3つ作っておいた。
1つは土を創造作製で作った金塊、2つ目は大量の石を創造作製でコイン状にしてから金を施して大量の金貨に見える箱、3つ目は…?
俺は土の中から取り出した3つの箱の内、2つを双子の娘に見せてから…1個だけを持ち帰るという方法に出た場合、双子の娘はどう判断をするか?
地球の妹達の場合は確実に3つとも欲しがる上に…開けてはダメだと言ってもその場では返事をするが、3秒後には開けているというくらいに我慢が出来ない。
2つで満足をすれば許し、3つ目まで要求したら…?
さて、どうなるかな?
俺はまたも崖の近くの場所の土を掘り出してその中から宝箱を3つ出したフリをした。
そして1つ目の箱を開けてから金塊を取り出した。
2つ目の箱を開けて金貨を数枚取り出した。
その様子を近くの木の陰に隠れている双子の娘にわざと見せつけながら…
「やっぱり! 此処に隠していたのね‼︎」
「魔物を倒して報酬を得ている冒険者の所持金があんな少ないはず無いと思ったん!」
3つ目の箱を開ける前に出て来たか。
やはり地球にいる妹達と同じ性格みたいだったな。
「何でお前らが⁉︎」
「全財産と言っていた金を奪われたら、絶対に補充すると思っていたのよ。」
「ウチらに気付かへんで、案内御苦労さん。」
双子の娘は俺の事を指差しながら笑っていたが、あんな雑な尾行に気付かないと思っていたのだろうか?
双子の娘は金塊の入っている箱と金貨の入っている箱に近付いて来た。
…というかこの双子は、この状況をわかっているのかねぇ?
此処は街の中ではなく、魔物が徘徊する外のエリアで俺達3人しかいない事を…
「この金塊と金貨はウチらがもらうで! 全財産という話を隠し持っていたら、コレも…」
「そうよ! コレで今回は勘弁してあげるわ! この量なら当分は問題無いけど、無くなりそうになったらまた請求するから!」
「あのなぁ…」
「おっと、動かへんで! もしもウチらに何かしたら街の者が黙ってないで!」
「余所者の貴方の言葉と私達の言葉を街の人達はどっちを信じるかしらね?」
本当に良い度胸しているな…この状況で強気な態度を取れるのは凄いが、この場で始末されるという事は考えないところを見ると、如何に平和な場所でぬくぬくと過ごして来たかがよく分かる。
「分かったよ、ならそれらは渡すからもう良いよな?」
俺はもう1つの箱を持ってその場から立ち去ろうとした。
この双子の娘が地球にいる妹達と同じ性格なら…この3つ目の箱も見逃さない筈だ。
「ちょい待ち! その箱は何なん?」
「私も気になっていたの…その箱の中身は?」
「この箱の中身は、そっちの2つに比べたら大した価値は無いよ。 宝石とか鉱石が入っているだけだ。」
この双子の娘は鉱石だけなら大した反応は見せないだろうが、宝石という言葉に反応を示したみたいだった。
すると当然…この箱も置いていけと言う筈だろう。
「ホンマに価値が無いものかどうか見るから置いとき!」
「そうね…本当にこの2つより価値が無いか見定めるわ!」
双子の娘は、俺の持っている箱を地面に置く様に指示した。
普通なら…従う事はしないのだが、この3つ目の箱が罠の本命の箱なので大人しくいう事を聞いて地面に置いた。
欲を掻いた人間の末路がどうなるのかを身をもって知ってもらおう!
双子の娘は俺の持っていた箱に近付いて、何の躊躇もなく箱を開けると周囲を白い閃光が包んでから大爆発と爆風が巻き起こった。
双子の娘は爆発に巻き込まれてから爆風により、崖の方に落ちて行った。
3つ目の箱の中身は確かに宝石と鉱石だった。
箱を開けた瞬間に仕掛けが発動して、さらに宝石と鉱石が空気に触れると大爆発を起こす仕掛けを施していた。
ちゃんとした手順を踏んで箱を開ければ爆発はしないのだが…この双子の娘は自分達の方が立場が上だと思っていて全く警戒をしていなかった。
「欲を掻くからこういう目に…ん?」
崖の方に耳を傾けると何やら声がしていた。
俺は崖の方を見ると、双子の娘は崖の下の突起に手を掛けて落ちるのを防いでいた。
…が、登る力は無いようでしがみ付いているだけだった。
まぁ…このまま放っておけば体力が無くなっていずれは落ちるだろう。
だが、俺はそれを選択しなかった。
「おぉ、運が良いな!」
「た…助けてよ‼︎」
「ウチらを助けるんや‼︎」
「はぁ? 寝言は寝て言えよ! 俺の財産を持って行こうとしただけでなく、住人に俺の評判を落とす以外に…なくなったらまた請求するとかほざいている奴を助けると思うか?」
「そ…その事については悪かったわ!」
「謝るからウチ等を助けて‼︎」
この手の性格の奴は助けてやった場合…手のひらを返したように強気な態度に出る奴が多い。
「助けたいのは山々だが、この崖の状態を見る限りでは…2人を助けるのは無理そうだな。 どっちが助かりたい?」
「「はぁ?」」
俺は地面に手を置いてから創造作製で崖の方に亀裂を作った。
すると双子は事情を察してか…醜く喚き散らした。
「妹なら姉に譲るべきよ!」
「何言うてんのや! 姉らしい事はほとんどしてこなかった癖に今更都合がいいこと言わんといて‼︎」
「どうでも良いが…このままだと両方とも落ちるぞ。」
俺は更に創造作製で亀裂を増やした。
「私よ! 私を助けて! 妹は助ける必要はないから‼︎」
「ウチや! ウチを助けて! この女は助けないでもえぇから‼︎」
どんなに仲良し姉妹を演じていても、危機的状況に陥ると人間は本性を表すものだ。
本当に醜いな。
「それで、お前達を助けた所で俺に何の得がある?」
「私を助けてくれたら…貴方の奴隷になって何でも言う事を聞くわ‼︎」
「ウチを助けてくれたら…毎日でも好きに抱いて構わんから‼︎」
うわぁ…その場限りの嘘というのがよく分かるな~。
助けた時点で手にひらを返すのは、この女の性格ならあり得るからな。
ここまで仲違いさせたので、2人同時に救いを与えてやろう。
どうなるのか見ものだし…。
俺は大岩にロープを括り付けてから、余ったロープを足で踏んで双子の娘の方に投げてやった。
双子はロープにしがみつくと、安堵した表情を浮かべていた。
俺はそのままロープを手繰り寄せて行き、崖の上の方に近付いてくると…案の定、またもや強気な態度に出て物を言い出した。
「全く…助けるのなら早く助けなさいよ‼︎」
「せや、助かったからには…あの2つの金じゃ足りへんから、あんさんが破産になるまで搾り取ってやるさかいな‼︎」
そういう言葉は助かった時に言う言葉だと思うのだが、もう助かった気でいるみたいだな?
俺はロープを離してから、更に足で踏んでいた余ったロープも離すと…双子の娘達は20m位下まで落ちて行った。
助かったと思っていた双子の娘達は、また懇願し始めたのだが…舌の根も渇かない内によくもまぁあれだけの演技を出来るものだと感心してしまう。
俺はロープに水から創造作製で灯油を作り出してからロープに垂らして行くと…灯油はロープを伝って双子の娘達の方に向かって伝って行った。
そして火打ち石でロープに火を付けると、ロープは勢いを付けて燃え広がって行った。
さて、炎が自分達の方に向かって来たらロープから手を離すかな?
「おーい、早く上がって来ないとロープが焼けて切れるぞ~!」
双子の娘達は、俺を睨み付けるような目付きをしながらロープを登って来た。
火が付いたロープを少しずつ登って来ているために、双子の娘達の手は火傷をしていたが…それでも手放すような事はしなかった。
必死なのか…先程の崖にしがみついているだけでとは違って俺の近くの方まで登って来ると、また強気な態度で悪態をついて来た。
「覚えてなさいよ! 私達をこんな目に遭わせて…」
「せや、生きている事を後悔させてやるかんな‼︎」
そう言う言葉は無事に上がれたら吐くものだと学ばなかったのかねぇ?
俺は剣を取り出してから、ロープに切れ込みを入れた。
双子の娘達の重さで、ロープは少しずつ切れている部分が広がっていた。
「な…何をしているのよ⁉︎」
「何って…あんな発言をしておいて俺が助けると思うか?」
「ば…馬鹿な真似はやめなさい‼︎」
本当は2人を引き上げた後に、崖にしがみ付いていた時に片方を犠牲にすると言った際に罵っていた決着を見たかった所だったが…もうどうでも良くなった。
2人は切れ込みが広がっている部分を見て激しく動揺して、焦って動きが大げさになっていた。
その為に切れ込みはどんどん広がって行った。
このままでは時間の問題だろう…と考えた俺は、助からない事を前提に双子の娘達に言い放った。
「このまま落ちていけば…お前達の両親が雲海の下で待っているぞ!」
「やっぱり、両親を落としたのは…」
それが娘達の最後の言葉だった。
ロープが切れて双子の娘達は…悲鳴を上げて落ちて行ったのだった。
俺はそれを見届けると、街に戻って行った。
すると自警団の隊長に聞かれた。
「あの双子の娘さん達に会わなかったか? 君を追いかけて外に出て行ったみたいなんだが…」
「俺を追って外にって…誰も護衛を付けずにですか?」
俺は会わないし見てもいなくて…途中で魔物に見つかって見つかって襲われたのだろうと言った。
隊長はその言葉を信じて部屋に戻って行った。
これでこの件は終わりを告げた…と思っていた。
この世界の俺に会うまでは…って、いつになったら終わるんだよ‼︎
ここ迄のパターンを考えると、今度はあの夫婦の子供が来たのだろう。
そして案の定というべきか…あの夫婦の子供は、双子の娘で俺の妹達にそっくりな顔をしていた。
…っていうか、俺はいないんだな?
まぁどうせコイツ等も…地球に居た頃の妹達と似た様な性格なんだろうな。
次はどんな手で来るのかねぇ?
「お前がおとーさんとおかーさんを殺したんだよ‼」
「馬鹿らしい…もう帰って良いか?」
「そんなこと言って私らから逃げようとしているんでしょ‼」
「せや、逃がさへんでぇ‼」
地球にいる妹達は、姉の方は言葉が乱暴で妹の方は言葉遣いは丁寧だが、厭味ったらしい話し方をするが。
こいつらは標準語と地方の方便で話すみたいだな?
俺は2人を確かに殺した…が、不思議と罪悪感は無かった。
地球にいるクソ両親と似ているというのもあったが、この世界のアイツ等も…恐らく碌な事をしていなかっただろうだから他に被害が出る前に始末しただけだった。
それによって…まさか娘も来るとは思わなかった。
「あぁ、鬱陶しい! んで、俺に何をして欲しいんだよ?」
「これからの私達の生活を保障する為に、お前の全財産で手を打つよ!」
「せや、おとんもおかんもいないから…収入が無いんよ。 なら、お前が保証するのは当たり前やろ?」
「さっきから何度も話したが、お前等の両親が死んだのは俺は全く関係ないぞ?」
父親は腕に抱えた金塊から零れ落ちた金塊を追って崖から飛び降りた。
母親は崖が脆くなっていて地割れで落ちて行ったと説明していた。
両方とも痛ましい事故で…と話しているのだが、娘の方はそんな事は関係なしで話してきた。
…というか、両親が死んで悲しんでいるという事はないのか?
声からは悲しいという感情が全く聞こえないんだが?
俺は腰に付けていた財布の中身をテーブルに出した。
銅貨で9枚しかなかった。
「これが全財産だ! では、俺はこれで…」
「嘘つくんやない! それだけしかない何て…明らかに変や‼」
「そっちのカバンに入っているんじゃないの? それも見せなさい‼」
俺はカバンを開いて中を見せた。
俺が手を入れればマジックバックになるが、他の者が触れるとただのカバンで…中には短剣や薬草しか入っていなかった。
「ほんまに金が入ってせぇへん!」
「だから言ったろ、銅貨9枚が全財産だと…全財産を出したのだから、俺は開放されるんだよな?」
俺は隊長の方を向くと、隊長は頷いて見せた。
俺はそれで解放された…が、双子の娘達は納得をしていない顔をしていた。
俺は詰め所を出てから外に向かって歩いて行くと…双子の娘は気付かないとでも思っているのかという位のバレバレな尾行をしていた。
まぁ、普通に考えて…冒険者の所持金が銅貨9枚な筈がない!
双子の娘は他の場所に隠していると踏んだ訳だ。
「これは…また崖から突き落とすか!」
毎回毎回…殺害方法がワンパターンになっている気がする。
だが、下手に死体が出ないやり方を考えると…雲海に落とした方が手っ取り早い。
さて、今回はどうやって突き落とそうかね?
地球の妹達と性格が一緒なら、あの方法が効果的だろう。
俺はあの両親の子供達が来た用に、予め宝箱を3つ作っておいた。
1つは土を創造作製で作った金塊、2つ目は大量の石を創造作製でコイン状にしてから金を施して大量の金貨に見える箱、3つ目は…?
俺は土の中から取り出した3つの箱の内、2つを双子の娘に見せてから…1個だけを持ち帰るという方法に出た場合、双子の娘はどう判断をするか?
地球の妹達の場合は確実に3つとも欲しがる上に…開けてはダメだと言ってもその場では返事をするが、3秒後には開けているというくらいに我慢が出来ない。
2つで満足をすれば許し、3つ目まで要求したら…?
さて、どうなるかな?
俺はまたも崖の近くの場所の土を掘り出してその中から宝箱を3つ出したフリをした。
そして1つ目の箱を開けてから金塊を取り出した。
2つ目の箱を開けて金貨を数枚取り出した。
その様子を近くの木の陰に隠れている双子の娘にわざと見せつけながら…
「やっぱり! 此処に隠していたのね‼︎」
「魔物を倒して報酬を得ている冒険者の所持金があんな少ないはず無いと思ったん!」
3つ目の箱を開ける前に出て来たか。
やはり地球にいる妹達と同じ性格みたいだったな。
「何でお前らが⁉︎」
「全財産と言っていた金を奪われたら、絶対に補充すると思っていたのよ。」
「ウチらに気付かへんで、案内御苦労さん。」
双子の娘は俺の事を指差しながら笑っていたが、あんな雑な尾行に気付かないと思っていたのだろうか?
双子の娘は金塊の入っている箱と金貨の入っている箱に近付いて来た。
…というかこの双子は、この状況をわかっているのかねぇ?
此処は街の中ではなく、魔物が徘徊する外のエリアで俺達3人しかいない事を…
「この金塊と金貨はウチらがもらうで! 全財産という話を隠し持っていたら、コレも…」
「そうよ! コレで今回は勘弁してあげるわ! この量なら当分は問題無いけど、無くなりそうになったらまた請求するから!」
「あのなぁ…」
「おっと、動かへんで! もしもウチらに何かしたら街の者が黙ってないで!」
「余所者の貴方の言葉と私達の言葉を街の人達はどっちを信じるかしらね?」
本当に良い度胸しているな…この状況で強気な態度を取れるのは凄いが、この場で始末されるという事は考えないところを見ると、如何に平和な場所でぬくぬくと過ごして来たかがよく分かる。
「分かったよ、ならそれらは渡すからもう良いよな?」
俺はもう1つの箱を持ってその場から立ち去ろうとした。
この双子の娘が地球にいる妹達と同じ性格なら…この3つ目の箱も見逃さない筈だ。
「ちょい待ち! その箱は何なん?」
「私も気になっていたの…その箱の中身は?」
「この箱の中身は、そっちの2つに比べたら大した価値は無いよ。 宝石とか鉱石が入っているだけだ。」
この双子の娘は鉱石だけなら大した反応は見せないだろうが、宝石という言葉に反応を示したみたいだった。
すると当然…この箱も置いていけと言う筈だろう。
「ホンマに価値が無いものかどうか見るから置いとき!」
「そうね…本当にこの2つより価値が無いか見定めるわ!」
双子の娘は、俺の持っている箱を地面に置く様に指示した。
普通なら…従う事はしないのだが、この3つ目の箱が罠の本命の箱なので大人しくいう事を聞いて地面に置いた。
欲を掻いた人間の末路がどうなるのかを身をもって知ってもらおう!
双子の娘は俺の持っていた箱に近付いて、何の躊躇もなく箱を開けると周囲を白い閃光が包んでから大爆発と爆風が巻き起こった。
双子の娘は爆発に巻き込まれてから爆風により、崖の方に落ちて行った。
3つ目の箱の中身は確かに宝石と鉱石だった。
箱を開けた瞬間に仕掛けが発動して、さらに宝石と鉱石が空気に触れると大爆発を起こす仕掛けを施していた。
ちゃんとした手順を踏んで箱を開ければ爆発はしないのだが…この双子の娘は自分達の方が立場が上だと思っていて全く警戒をしていなかった。
「欲を掻くからこういう目に…ん?」
崖の方に耳を傾けると何やら声がしていた。
俺は崖の方を見ると、双子の娘は崖の下の突起に手を掛けて落ちるのを防いでいた。
…が、登る力は無いようでしがみ付いているだけだった。
まぁ…このまま放っておけば体力が無くなっていずれは落ちるだろう。
だが、俺はそれを選択しなかった。
「おぉ、運が良いな!」
「た…助けてよ‼︎」
「ウチらを助けるんや‼︎」
「はぁ? 寝言は寝て言えよ! 俺の財産を持って行こうとしただけでなく、住人に俺の評判を落とす以外に…なくなったらまた請求するとかほざいている奴を助けると思うか?」
「そ…その事については悪かったわ!」
「謝るからウチ等を助けて‼︎」
この手の性格の奴は助けてやった場合…手のひらを返したように強気な態度に出る奴が多い。
「助けたいのは山々だが、この崖の状態を見る限りでは…2人を助けるのは無理そうだな。 どっちが助かりたい?」
「「はぁ?」」
俺は地面に手を置いてから創造作製で崖の方に亀裂を作った。
すると双子は事情を察してか…醜く喚き散らした。
「妹なら姉に譲るべきよ!」
「何言うてんのや! 姉らしい事はほとんどしてこなかった癖に今更都合がいいこと言わんといて‼︎」
「どうでも良いが…このままだと両方とも落ちるぞ。」
俺は更に創造作製で亀裂を増やした。
「私よ! 私を助けて! 妹は助ける必要はないから‼︎」
「ウチや! ウチを助けて! この女は助けないでもえぇから‼︎」
どんなに仲良し姉妹を演じていても、危機的状況に陥ると人間は本性を表すものだ。
本当に醜いな。
「それで、お前達を助けた所で俺に何の得がある?」
「私を助けてくれたら…貴方の奴隷になって何でも言う事を聞くわ‼︎」
「ウチを助けてくれたら…毎日でも好きに抱いて構わんから‼︎」
うわぁ…その場限りの嘘というのがよく分かるな~。
助けた時点で手にひらを返すのは、この女の性格ならあり得るからな。
ここまで仲違いさせたので、2人同時に救いを与えてやろう。
どうなるのか見ものだし…。
俺は大岩にロープを括り付けてから、余ったロープを足で踏んで双子の娘の方に投げてやった。
双子はロープにしがみつくと、安堵した表情を浮かべていた。
俺はそのままロープを手繰り寄せて行き、崖の上の方に近付いてくると…案の定、またもや強気な態度に出て物を言い出した。
「全く…助けるのなら早く助けなさいよ‼︎」
「せや、助かったからには…あの2つの金じゃ足りへんから、あんさんが破産になるまで搾り取ってやるさかいな‼︎」
そういう言葉は助かった時に言う言葉だと思うのだが、もう助かった気でいるみたいだな?
俺はロープを離してから、更に足で踏んでいた余ったロープも離すと…双子の娘達は20m位下まで落ちて行った。
助かったと思っていた双子の娘達は、また懇願し始めたのだが…舌の根も渇かない内によくもまぁあれだけの演技を出来るものだと感心してしまう。
俺はロープに水から創造作製で灯油を作り出してからロープに垂らして行くと…灯油はロープを伝って双子の娘達の方に向かって伝って行った。
そして火打ち石でロープに火を付けると、ロープは勢いを付けて燃え広がって行った。
さて、炎が自分達の方に向かって来たらロープから手を離すかな?
「おーい、早く上がって来ないとロープが焼けて切れるぞ~!」
双子の娘達は、俺を睨み付けるような目付きをしながらロープを登って来た。
火が付いたロープを少しずつ登って来ているために、双子の娘達の手は火傷をしていたが…それでも手放すような事はしなかった。
必死なのか…先程の崖にしがみついているだけでとは違って俺の近くの方まで登って来ると、また強気な態度で悪態をついて来た。
「覚えてなさいよ! 私達をこんな目に遭わせて…」
「せや、生きている事を後悔させてやるかんな‼︎」
そう言う言葉は無事に上がれたら吐くものだと学ばなかったのかねぇ?
俺は剣を取り出してから、ロープに切れ込みを入れた。
双子の娘達の重さで、ロープは少しずつ切れている部分が広がっていた。
「な…何をしているのよ⁉︎」
「何って…あんな発言をしておいて俺が助けると思うか?」
「ば…馬鹿な真似はやめなさい‼︎」
本当は2人を引き上げた後に、崖にしがみ付いていた時に片方を犠牲にすると言った際に罵っていた決着を見たかった所だったが…もうどうでも良くなった。
2人は切れ込みが広がっている部分を見て激しく動揺して、焦って動きが大げさになっていた。
その為に切れ込みはどんどん広がって行った。
このままでは時間の問題だろう…と考えた俺は、助からない事を前提に双子の娘達に言い放った。
「このまま落ちていけば…お前達の両親が雲海の下で待っているぞ!」
「やっぱり、両親を落としたのは…」
それが娘達の最後の言葉だった。
ロープが切れて双子の娘達は…悲鳴を上げて落ちて行ったのだった。
俺はそれを見届けると、街に戻って行った。
すると自警団の隊長に聞かれた。
「あの双子の娘さん達に会わなかったか? 君を追いかけて外に出て行ったみたいなんだが…」
「俺を追って外にって…誰も護衛を付けずにですか?」
俺は会わないし見てもいなくて…途中で魔物に見つかって見つかって襲われたのだろうと言った。
隊長はその言葉を信じて部屋に戻って行った。
これでこの件は終わりを告げた…と思っていた。
この世界の俺に会うまでは…って、いつになったら終わるんだよ‼︎
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