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異世界転移の章
プロローグ
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俺の名前は、寿 幸運という。
両親が俺に対して適当に付けた名前で、俺は子供の頃からラッキーとか言われて散々揶揄われて来た。
だが、俺の家の生活は名前の幸運とは程遠い生活を送っていた。
まず、両親は一切仕事をしないで毎日ギャンブル三昧だった。
ギャンブルが当たればかなりの金額を手にして家に帰って来るが、その金額も1週間もすれば綺麗さっぱりに消えていた。
俺には妹が2人いる。
2歳離れている妹で双子なのだが、性格は両親譲りの最悪な性格で我が儘し放題の妹達だった。
両親にとっては娘の方が可愛いらしく、娘のいう事は何でも叶えてやった。
俺はこんな両親からは物を貰った事はない。
それでも中学を卒業するまでは必死に我慢して絶えていた。
何故なら、高校には奨学金を貰ってこの家からおさらば出来るからだ!
…ところが、その日はギャンブルをしてない筈の両親が大量の金を持っていてこう言って来た。
「ラック、俺達はこれから家族で旅行に行って来るが…」
「そんな金がこの家のどこにあるんだよ?」
「ちょっとした臨時収入が入ったのでな! その金で行ってくるが…お前は留守番でもしていろよ!」
こんな事は日常茶飯事だ。
俺は常に爪弾きされていて、両親と妹がどこかに出かける時でも俺は決まって留守番だった。
子供の頃はそれでぐずった事もあったが、今となっては居なくなってくれた方が清々する。
「はいはい、好きにしろ!」
そういうと両親と妹達は、家の中にある私物のほとんどを持って家を出て行った。
あんな大荷物を持って何処に行く気なんだろうか?
その時はその程度の事位しか考えて無かった。
だが、翌日になってあの大金の意味が判明した。
まず、俺が入る高校から連絡が来たので向かってみると…?
両親が俺がこの高校に在学する期間の奨学金全てを引き出していたのだった。
普通ではまずあり得ない事なのだが、俺の母親は天才的な詐欺師みたいな能力がある為に、上手く誘導して引き出したのだろう。
このままでは…俺は高校に入れなくなる。
そう絶望的な気持ちで家に帰ると、扉には【金返せ!】や【踏み倒すんじゃねぇ!】と書いた貼り紙が貼られている上に、ポストの中には大量の借用書が入っていた。
俺の父親は、返済能力こそ無いが…金を引っ張ってくる才能は抜き身出ている。
そして両親が揃ってコレをやると…ブラックリストに登録されている身でも平気で大金を持って来るのだった。
「この借用書の数を見る限りだと…闇金から借りたな?」
どうせ僕には関係のない話だ。
それにしてもあの両親の性格を知っていても尚、保証人になる奴はどんな奴なんだろう?
そう思って借用書を見ると、保証人の名前は俺の名前になっていた。
まさかと思って全ての借用書を見たが、全て俺の名前が記載されていた。
「そうか…普通の金融会社なら未成年の俺の名前は使えないが、闇金の場合は未成年だろうが家族の名前は有効なんだな。」
(コレはフィクションなので、現実ではあり得ません。)
それに…金額がえげつない。
合計で1億2千万円近くある。
「いや…どうやって返済するんだ、これ?」
闇金から金を借りている以上、無利子無担保な訳が無い!
1日に1万円を稼いだとして、1年で365万円。
10年で3.560.000円…ってムリじゃん!
まともな方法なら返済に40年は掛かるぞ‼
俺は借用証の束の中から俺宛の手紙を見付けた。
開いて読んでみると、それは父親が書いた物でこう書いてあった。
【ラック、お前の体内の中にはGPSが埋め込まれていて普通の方法では取り出す事は出来ない。 そしてそのGPSのコントローラーは、信用を得る為に連中に渡してしまった。 なのでお前の逃亡は一切が不可能だ! なので、俺達の借金はお前が返済してくれ! 全てを返済し終わったら…】
「再び会って家族として共に暮らそう…だと⁉ ふざけんじゃねぇぞ‼」
何を考えているんだ、あの馬鹿両親は‼
自分達の借金を俺に押し付けておいて、全てを返済したら家族として共に暮らそうだと!
そんな奴等を家族となんか思う訳が無いだろ‼
嘆いていても仕方がない…が、そもそも俺のどこにGPSなんか埋め込んだんだ?
俺は生まれてからこの方、大きな病気なんかは1度もした事が無いので入院でもして手術でもしない限りGPSなんか埋め込まれる筈がない。
…という事は、父親のハッタリか!
俺は早速逃げる手はずを整えた。
家の中には俺しか知らない金の隠し場所がある。
あの家族の事は一切信用出来なかったので、俺なりに考えた場所に隠しておいた。
そして金をかき集めると、全部で5万近くあった。
俺はその金を握りしめてアパートを出ようとした。
ところが、扉を開けると闇金の取り立て屋が目の前にいた。
「ラック君、君はこれからどこに出掛けるんだい?」
「馬鹿親父の残した借金を返済する為に、バイトの情報誌や履歴書を買いに行こうと思っているんですよ。」
俺はまさか扉の外で取り立て屋が待ち構えているとは知らずに、咄嗟に嘘を吐いた。
「そうだったのか。 もしかしたら大量の借用書を前に逃げ出そうなんて考えていたのではないかと思っていたのだが…鳥越し苦労だったな!」
「俺はあんなロクデナシの父親とは違って、借りた物はちゃんと返す主義だ!」
「それは素晴らしい!」
今は少しでもコイツ等に疑われない様に信じてもらうしかない!
そうしないと俺は逃げられないからだ!
…ところが、その考えも次の一言で打ち砕かれた。
「適当な事を言ってそのままバックレようとか考えていないかと思ったのだが、それは無くて安心したよ。 まぁ、仮に逃げた所で君の体内に入っているGPSでどこに居ても場所を把握しているから逃げられないのだがね。」
男は俺にGPSのコントローラーを見せた。
そのコントローラーには、赤いランプが点滅していた。
てっきり嘘だとばかり思っていたのに、まさか本当の事だとは思わなかった。
ここまでやるか…あのクソ親父‼
これは絶対に逃げられないパターンだな。
俺は諦めてコンビニに行ってバイト情報誌と履歴書を購入した。
そして稼げるバイトを見付けてから連絡を入れて、朝・昼・晩とバイトをする事になったのだった。
地獄の日々が始まった。
毎日、俺を確認する為に尋ねて来る取り立て屋…俺は気が休まる日が無くて、毎日疲弊して暮らしていた。
そんな生活が8か月を続けていると、部屋のポストに手紙が入っていた。
それはクソ親父の書いた手紙だった。
【まだ借金の返済は終わらないのかよ? いい加減、先方も痺れを切らしちまってな…これで妥協案をしたんだよ。 お前の臓器を売りに出す事にした。 全ての臓器を売れば借金が帳消しになるという話なので、俺達はその意見に乗った。 借金を返済し終わったら再び家族として暮らせるかと思っていたのだが…これで叶わなくなっちまったな! まぁ、お前の墓参りくらいは毎年行ってやるから、それで許せ!】
「はぁ~⁉ ふざけてんじゃねぇぞ‼」
俺は手紙を丸めてから床に叩きつけた。
ちょっと待てよ…この手紙はいつ届いた物だ?
やばい、此処に居るのは危険だな!
俺は心許ない金額を持ってすぐにアパートを出た。
とりあえず、ここではない何処かに逃げる為だった。
だが、俺の体の中にはGPSがあってそのコントローラーはあいつ等が持っている。
そうなると、捕まるのは時間の問題になる!
俺は無我夢中で逃げて行った。
だが、至る場所で奴等の車を目撃した。
奴等も俺の事を探し回っていた。
捕まったら臓器を取り出されて殺されてしまう。
ならば自殺でもして…いや、臓器が使い物にならなくなる位の自殺をした方が良いか!
そうすれば、俺の臓器が売れなくて返済がクソ両親の元に向かう筈だ!
一番良い自殺場所とすれば、ビルの屋上から飛び降りるというのが手っ取り早いが…屋上はおろか建物にすらセキュリティーが厳しくて入れない。
どこかないか…?
そう思って走っていると、俺はある橋の真ん中にいた。
前を見ると奴等の車があった。
後ろを見ても奴等の車がある。
そして橋の下には高速道路でたくさんの車が走っていた。
「この高さから飛び降りれば、地面に激突して死ねる上に…車に轢かれたら臓器は使い物にならないだろう。」
車から降りて奴等がこちらに向かってくる前に、フェンスによじ登ってから高速道路にダイブした。
これでこの苦しみから解放される‼
…そう思っていたのだが、俺は意識を覚ますとそこは真っ白な空間にいた。
そして目の前には白い服を着たおっさんが立っていた。
『寿 幸運君だな?』
「あんたは誰だ?」
『儂は異世界の神じゃ! 幸運君はこの世界で命を絶とうとしたが、今は儂の権限で死んではおらん。』
「俺に何をさせたいんだ?」
『君に2つの選択肢を与えよう! 1つは儂の管理する異世界に送り込まれるのが良いか…もう1つはこのままこの世界に留まるかだが…?』
「異世界に送って下さい‼ お願いします‼」
『異世界に行きたい理由はなんじゃ?』
「このまま元の世界に戻されたら死ぬ未来しかないからですよ‼ なら一刻も早く異世界に行きたいんだ‼」
『何やら事情がありそうじゃな? 分かった、お主を異世界に転移させてやろう。』
元の世界じゃなければ何処だって良い‼
流石の奴等も異世界にまで来る事は出来ないだろうしな!
『では、異世界に転移する際にギフトを1つ授けよう。 どの様な物が良い?』
「それは選べるのか?」
『余程の無茶な願いでなければな!』
「なら…手に触れた物を頭の中で思い描いた物に変化出来る能力が良いな。」
『なるほど、創造作製のスキルじゃな! じゃが、さすがに世界を破壊する核爆弾とかは作りだせんぞ?』
「生まれ変わって謳歌する世界を破壊したいとは思わん。 俺は異世界に行ったら、当分は静かに暮らしたいだけだ‼」
『それがそうも言ってはおれんぞ! 異世界には魔王がいてな、異世界転移者は魔王を倒すのが役目なのじゃ‼』
「それ…今聞いたんだが?」
『じゃが安心せよ! 君以外にも異世界に送った転移者は数名居るので、その者達と合流して魔王討伐に精を出してくれ‼』
「まぁ、元の世界に戻されるくらいならそれでも良いか。 送られた場所でいきなり…という事はないよな?」
『世界を把握するのに時間は必要じゃろうて! 少しくらいの時間ならゆっくりしても問題は無かろう。』
魔王ねぇ…まぁ、良いか!
魔王さえ倒してしまえば、後はのんびりできるだろうし。
『では送るが…良いな?』
「あんがとよ、爺さん!」
こうして俺は異世界に転移した。
そこで待ち受けている物は…まだ良く解らん。
両親が俺に対して適当に付けた名前で、俺は子供の頃からラッキーとか言われて散々揶揄われて来た。
だが、俺の家の生活は名前の幸運とは程遠い生活を送っていた。
まず、両親は一切仕事をしないで毎日ギャンブル三昧だった。
ギャンブルが当たればかなりの金額を手にして家に帰って来るが、その金額も1週間もすれば綺麗さっぱりに消えていた。
俺には妹が2人いる。
2歳離れている妹で双子なのだが、性格は両親譲りの最悪な性格で我が儘し放題の妹達だった。
両親にとっては娘の方が可愛いらしく、娘のいう事は何でも叶えてやった。
俺はこんな両親からは物を貰った事はない。
それでも中学を卒業するまでは必死に我慢して絶えていた。
何故なら、高校には奨学金を貰ってこの家からおさらば出来るからだ!
…ところが、その日はギャンブルをしてない筈の両親が大量の金を持っていてこう言って来た。
「ラック、俺達はこれから家族で旅行に行って来るが…」
「そんな金がこの家のどこにあるんだよ?」
「ちょっとした臨時収入が入ったのでな! その金で行ってくるが…お前は留守番でもしていろよ!」
こんな事は日常茶飯事だ。
俺は常に爪弾きされていて、両親と妹がどこかに出かける時でも俺は決まって留守番だった。
子供の頃はそれでぐずった事もあったが、今となっては居なくなってくれた方が清々する。
「はいはい、好きにしろ!」
そういうと両親と妹達は、家の中にある私物のほとんどを持って家を出て行った。
あんな大荷物を持って何処に行く気なんだろうか?
その時はその程度の事位しか考えて無かった。
だが、翌日になってあの大金の意味が判明した。
まず、俺が入る高校から連絡が来たので向かってみると…?
両親が俺がこの高校に在学する期間の奨学金全てを引き出していたのだった。
普通ではまずあり得ない事なのだが、俺の母親は天才的な詐欺師みたいな能力がある為に、上手く誘導して引き出したのだろう。
このままでは…俺は高校に入れなくなる。
そう絶望的な気持ちで家に帰ると、扉には【金返せ!】や【踏み倒すんじゃねぇ!】と書いた貼り紙が貼られている上に、ポストの中には大量の借用書が入っていた。
俺の父親は、返済能力こそ無いが…金を引っ張ってくる才能は抜き身出ている。
そして両親が揃ってコレをやると…ブラックリストに登録されている身でも平気で大金を持って来るのだった。
「この借用書の数を見る限りだと…闇金から借りたな?」
どうせ僕には関係のない話だ。
それにしてもあの両親の性格を知っていても尚、保証人になる奴はどんな奴なんだろう?
そう思って借用書を見ると、保証人の名前は俺の名前になっていた。
まさかと思って全ての借用書を見たが、全て俺の名前が記載されていた。
「そうか…普通の金融会社なら未成年の俺の名前は使えないが、闇金の場合は未成年だろうが家族の名前は有効なんだな。」
(コレはフィクションなので、現実ではあり得ません。)
それに…金額がえげつない。
合計で1億2千万円近くある。
「いや…どうやって返済するんだ、これ?」
闇金から金を借りている以上、無利子無担保な訳が無い!
1日に1万円を稼いだとして、1年で365万円。
10年で3.560.000円…ってムリじゃん!
まともな方法なら返済に40年は掛かるぞ‼
俺は借用証の束の中から俺宛の手紙を見付けた。
開いて読んでみると、それは父親が書いた物でこう書いてあった。
【ラック、お前の体内の中にはGPSが埋め込まれていて普通の方法では取り出す事は出来ない。 そしてそのGPSのコントローラーは、信用を得る為に連中に渡してしまった。 なのでお前の逃亡は一切が不可能だ! なので、俺達の借金はお前が返済してくれ! 全てを返済し終わったら…】
「再び会って家族として共に暮らそう…だと⁉ ふざけんじゃねぇぞ‼」
何を考えているんだ、あの馬鹿両親は‼
自分達の借金を俺に押し付けておいて、全てを返済したら家族として共に暮らそうだと!
そんな奴等を家族となんか思う訳が無いだろ‼
嘆いていても仕方がない…が、そもそも俺のどこにGPSなんか埋め込んだんだ?
俺は生まれてからこの方、大きな病気なんかは1度もした事が無いので入院でもして手術でもしない限りGPSなんか埋め込まれる筈がない。
…という事は、父親のハッタリか!
俺は早速逃げる手はずを整えた。
家の中には俺しか知らない金の隠し場所がある。
あの家族の事は一切信用出来なかったので、俺なりに考えた場所に隠しておいた。
そして金をかき集めると、全部で5万近くあった。
俺はその金を握りしめてアパートを出ようとした。
ところが、扉を開けると闇金の取り立て屋が目の前にいた。
「ラック君、君はこれからどこに出掛けるんだい?」
「馬鹿親父の残した借金を返済する為に、バイトの情報誌や履歴書を買いに行こうと思っているんですよ。」
俺はまさか扉の外で取り立て屋が待ち構えているとは知らずに、咄嗟に嘘を吐いた。
「そうだったのか。 もしかしたら大量の借用書を前に逃げ出そうなんて考えていたのではないかと思っていたのだが…鳥越し苦労だったな!」
「俺はあんなロクデナシの父親とは違って、借りた物はちゃんと返す主義だ!」
「それは素晴らしい!」
今は少しでもコイツ等に疑われない様に信じてもらうしかない!
そうしないと俺は逃げられないからだ!
…ところが、その考えも次の一言で打ち砕かれた。
「適当な事を言ってそのままバックレようとか考えていないかと思ったのだが、それは無くて安心したよ。 まぁ、仮に逃げた所で君の体内に入っているGPSでどこに居ても場所を把握しているから逃げられないのだがね。」
男は俺にGPSのコントローラーを見せた。
そのコントローラーには、赤いランプが点滅していた。
てっきり嘘だとばかり思っていたのに、まさか本当の事だとは思わなかった。
ここまでやるか…あのクソ親父‼
これは絶対に逃げられないパターンだな。
俺は諦めてコンビニに行ってバイト情報誌と履歴書を購入した。
そして稼げるバイトを見付けてから連絡を入れて、朝・昼・晩とバイトをする事になったのだった。
地獄の日々が始まった。
毎日、俺を確認する為に尋ねて来る取り立て屋…俺は気が休まる日が無くて、毎日疲弊して暮らしていた。
そんな生活が8か月を続けていると、部屋のポストに手紙が入っていた。
それはクソ親父の書いた手紙だった。
【まだ借金の返済は終わらないのかよ? いい加減、先方も痺れを切らしちまってな…これで妥協案をしたんだよ。 お前の臓器を売りに出す事にした。 全ての臓器を売れば借金が帳消しになるという話なので、俺達はその意見に乗った。 借金を返済し終わったら再び家族として暮らせるかと思っていたのだが…これで叶わなくなっちまったな! まぁ、お前の墓参りくらいは毎年行ってやるから、それで許せ!】
「はぁ~⁉ ふざけてんじゃねぇぞ‼」
俺は手紙を丸めてから床に叩きつけた。
ちょっと待てよ…この手紙はいつ届いた物だ?
やばい、此処に居るのは危険だな!
俺は心許ない金額を持ってすぐにアパートを出た。
とりあえず、ここではない何処かに逃げる為だった。
だが、俺の体の中にはGPSがあってそのコントローラーはあいつ等が持っている。
そうなると、捕まるのは時間の問題になる!
俺は無我夢中で逃げて行った。
だが、至る場所で奴等の車を目撃した。
奴等も俺の事を探し回っていた。
捕まったら臓器を取り出されて殺されてしまう。
ならば自殺でもして…いや、臓器が使い物にならなくなる位の自殺をした方が良いか!
そうすれば、俺の臓器が売れなくて返済がクソ両親の元に向かう筈だ!
一番良い自殺場所とすれば、ビルの屋上から飛び降りるというのが手っ取り早いが…屋上はおろか建物にすらセキュリティーが厳しくて入れない。
どこかないか…?
そう思って走っていると、俺はある橋の真ん中にいた。
前を見ると奴等の車があった。
後ろを見ても奴等の車がある。
そして橋の下には高速道路でたくさんの車が走っていた。
「この高さから飛び降りれば、地面に激突して死ねる上に…車に轢かれたら臓器は使い物にならないだろう。」
車から降りて奴等がこちらに向かってくる前に、フェンスによじ登ってから高速道路にダイブした。
これでこの苦しみから解放される‼
…そう思っていたのだが、俺は意識を覚ますとそこは真っ白な空間にいた。
そして目の前には白い服を着たおっさんが立っていた。
『寿 幸運君だな?』
「あんたは誰だ?」
『儂は異世界の神じゃ! 幸運君はこの世界で命を絶とうとしたが、今は儂の権限で死んではおらん。』
「俺に何をさせたいんだ?」
『君に2つの選択肢を与えよう! 1つは儂の管理する異世界に送り込まれるのが良いか…もう1つはこのままこの世界に留まるかだが…?』
「異世界に送って下さい‼ お願いします‼」
『異世界に行きたい理由はなんじゃ?』
「このまま元の世界に戻されたら死ぬ未来しかないからですよ‼ なら一刻も早く異世界に行きたいんだ‼」
『何やら事情がありそうじゃな? 分かった、お主を異世界に転移させてやろう。』
元の世界じゃなければ何処だって良い‼
流石の奴等も異世界にまで来る事は出来ないだろうしな!
『では、異世界に転移する際にギフトを1つ授けよう。 どの様な物が良い?』
「それは選べるのか?」
『余程の無茶な願いでなければな!』
「なら…手に触れた物を頭の中で思い描いた物に変化出来る能力が良いな。」
『なるほど、創造作製のスキルじゃな! じゃが、さすがに世界を破壊する核爆弾とかは作りだせんぞ?』
「生まれ変わって謳歌する世界を破壊したいとは思わん。 俺は異世界に行ったら、当分は静かに暮らしたいだけだ‼」
『それがそうも言ってはおれんぞ! 異世界には魔王がいてな、異世界転移者は魔王を倒すのが役目なのじゃ‼』
「それ…今聞いたんだが?」
『じゃが安心せよ! 君以外にも異世界に送った転移者は数名居るので、その者達と合流して魔王討伐に精を出してくれ‼』
「まぁ、元の世界に戻されるくらいならそれでも良いか。 送られた場所でいきなり…という事はないよな?」
『世界を把握するのに時間は必要じゃろうて! 少しくらいの時間ならゆっくりしても問題は無かろう。』
魔王ねぇ…まぁ、良いか!
魔王さえ倒してしまえば、後はのんびりできるだろうし。
『では送るが…良いな?』
「あんがとよ、爺さん!」
こうして俺は異世界に転移した。
そこで待ち受けている物は…まだ良く解らん。
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